ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第四九話 村人M

「早かったにゃ~、普通もうちょっと掛かるんだけど」

「いやぁ、強くてゴメン」

「カッコつけてるにゃあ」

 

 そりゃあ昇格早いって言われたらカッコつけるでしょうが。

 似合わないことやってる自覚はあるから恥ずかしいけど。

 

「今日はどうするの?」

「う~ん、ぶっちゃけ無事の報告しに来ただからなぁ……そうだ、俺に客とか来なかった?」

「……ファンなんて来るわけにゃいよ」

「違うんだけど……まあ来てないならいい」

 

 てっきり来てると思ったんだけどな。

 まあ決心には時間が掛かるってことなんだろう。

 ……それも問題ないように思ってたんだけどなぁ。

 

「ヒ、ヒイラギさんッ!?」

「あン?」

 

 立ち去ろうと思っていたら聞き慣れない少女の声が俺を呼んだ。

 知ってはいるが知らないに等しい。

 

「よぉ。開拓兵になったのか」

「は、はい!」

「……もしかしてその子が今の(はにゃし)の?」

「おう。一度だけ会ってな。六日前だっけか?」

「そうです! 憶えていてもらえて嬉しいです!」

 

 村で会って以来か。

 まあそこ以外会う機会なかったから当然だけど。

 

「元気が良いのは構わんが……公共の場だから静かにな」

「す、すみません」

「あ~……名前聞いたっけ?」

「いえ、自己紹介はまだです。私はミア・マイヤーって言います、ミアって呼んでください」

「オーケー、ミアね。頑張って憶えるわ」

 

 この世界の人間って結構見分けつくし髪色も色とりどりだから前に比べたら憶えやすくて助かるわぁ。

 あれかな?

 見た目がアニメ的だからキャラ憶える感覚で憶えられるとかそういう。

 

 実はというと俺はクラスメイト達の名前と顔をほとんど憶えていない。

 これはこの世界に来て二週間近く経つから、ではなく。

 そもそも初めから憶えていない。

 端的に、接触がないからだ。

 

「それで? なんかあった? まあ前会った時に言ってるし、飯奢ってやるよ」

「あ、ありがとうございます」

「んじゃ案内してやるよ」

「はいッ」

「じゃあフェーニャン、また明日~」

 

 さて、この辺だと……叢雲亭が良いな。

 高すぎず安すぎず。

 そこそこ有名で美味いと評判。

 飯も酒もある。

 

「ここですか?」

「おう。来たことあるか?」

「ないです。ここってアレですよね……求道の英雄・ルイスの仲間のネルが生まれ育った家!」

「……そうッ」

 

 へ~、この酒場ってそういう理由で有名なんだ。

 なんか有名人関係ってのは知ってたけど。

 

「ほ、本当に良いんですか?」

「言うほど高くはないぞ」

「そうなんですか? 有名だからてっきり……」

「いやいや、有名がイコールで高いってのは違うだろ。確かに普通よりはちょっと高いけど問題ない範囲だって」

 

 サービスが良いらしいからちょっと高いだけで高級ってワケではない。

 その分店の中は静からしいから奢るにも話を聞くにも雰囲気は適している。

 

「どれにする? どれでも良いぞ、奢るって言ってるワケだし遠慮はするな」

「ならお言葉に甘えて……このシーサーペントの唐揚げ丼を」

「飲み物は?」

「え、ええと……リンゴ果実水を」

「オーケー。すみませ~ん、シーサーペントの唐揚げ丼二つ、それとこの子にはリンゴ果実水、俺はツィッタ産のミード!」

「は~い」

 

 できた。

 思ったより早くやる機会があったッ。

 産地プラス酒ッ。

 ……あれ?

 でも初心者向けだから揶揄われる時もあるんだっけ?

 ミスったかも。

 

「ヒイラギさんは普段からお酒飲むんですか?」

「うん? いや、俺異世界人でさ、俺のいたトコじゃ俺って酒飲める年じゃなかったから飲むようになったのはこっち来てから、大体二週間だな」

「そうなんですか。なんというか慣れてるって感じでカッコよかったのでよく飲んでるのかと」

 

 ほう、カッコよかったと。

 そんなこと言うとお小遣い上げちゃうぞ?

 

「それで? 調子はどうだ?」

「は、はい。ええと……昨日は大体三〇〇〇アスターの稼ぎでしたっ」

「銀貨三〇……開拓兵になったのは昨日?」

「三日前です」

「なるほど。まあ悪くはない稼ぎじゃないか? ソロかパーティかは知らねーけど一人の稼ぎとしては充分だろ。三日に一回だとしても総収入は三〇〇〇〇、経費を抜いても純利益二〇〇〇〇は余裕。月二〇〇〇〇の貯蓄が出来んなら問題はねーな」

 

 【洗脳】でズルい稼ぎをしていた俺は比較対象にならないから除外するとして、たった三日の経歴で一日銀貨三〇はなかなか実力がある。

 命の危険がある分普通の仕事より収入が良いのは当然だが、それでもたった一度でそれは油断してると俺をあっと言う間に抜かしそうだ。

 

「そう、ですかね?」

「……別に焦る必要はないぞ」

「こちらシーサーペントの唐揚げ丼二つとリンゴ果実水とツィッタのミードです」

「はいよ。ほら食うぞ」

「あ、はい」

 

 この世界にも米があって良かったなぁ。

 流石に品種改良された現代の米ほどの味はないけどそれでも米があるのは満足感がある。

 それに単純な話、主食の選択肢が増えるのも良い。

 

「あッあッあッ、熱いッ。出来立て熱いッ、そんで美味いッ」

「本当ですねッ、すごく美味しいですッ」

 

 別にこれまで食べた料理を馬鹿にするつもりはないのだが、それでもこの唐揚げ丼は半端じゃなく美味い。

 素材が良いというのもあるが、しつこ過ぎない下味や適度な衣に全体にかけられたタレ。

 原価を考えず、味だけで言えば正直倍は払っても良いと思えるレベルだ。

 

「くぁぁッ、しょっぱい飯に甘い飲みモンの組み合わせは無限にイケる気がするぜぇ」

 

 熱い飯と冷たい飲み物というのも最高である。

 熱の籠った状態で飲むと口や喉がキュッとする感じがしてたまらない。

 

「これまで食べてきた中で一番美味しいですッ」

「それな」

 

 美味い飯の食える世界はそれだけで生きる価値があると思える。

 元々帰る気ないけどこの世界に永住しちゃう。

 ……そーいや他の奴らはどう思ってんだろぉな。

 帰れる確率が天文学的確率って言われてても諦めない奴らは居そうだし。

 ゼロじゃない以上その努力を無駄だと言うつもりはないけど……ホント、なんで帰りたいんだろうな。

 住めば都っていうし、まずこの世界に目を向けてみりゃいいのに。

 俺だってこの世界に来てちったぁ変わったっての。

 ……考えても仕方ねーか。

 

「んで、何の話してたっけ? 稼ぎ? 最近の調子?」

「あ~、なら最近の調子というか、悩んでいることというか……そのことについて少し相談に乗ってもらっても良いですか?」

「可能な範囲ならな」

 

 無茶ぶりはすんな。

 絶対にだ。

 

「私の武器って槍なんです」

「まあ、見りゃわかるな。強度重視か?」

「はい、初心者なら切れ味とかより壊れないことを重視しろって。それで相談というのが……私の槍って我流なんです。子どもの時からこっそり森でゴブリンに手を出してて、近づくのが怖かったから距離(リーチ)の稼げる槍を、って」

「あ~、ぶっちゃけ俺もほぼほぼ我流だぞ? 一週間くらい先輩開拓兵に訓練の相手として戦ってもらったけど戦いの中で自分の動きを効率化しただけだし」

「そうなんですか!? てっきりクランか何かに入ってるものかと……」

 

 クラン。

 確か昔存在したという組織のことだ。

 ステイタスが生まれる前、つまりは魔闘技(スキル)があった時代。

 それぞれ独自の魔闘技(スキル)を開発し、それを弟子が手ほどきを受けることで習得する。

 その頃はクランに入っていないとギルドに入る資格なしと言われて不文律となるくらいには大事なことだったという話だ。

 少なくとも五〇年以上前の話のはずである。

 

「いつの時代だよ」

「す、すみません。憧れてて」

「……ルイス?」

「そうですッ、その時代を象徴するモノなんでもうほとんどないとはわかっていても……」

「どうせあっても形骸化してるだろうけど」

 

 今は普通にステイタスの中にスキルがあるからほぼほぼ無意味だろう。

 まあ俺はレベルアップしてないからスキルないんだけど。

 

「まあ、だから正直俺は槍について教えられることないかな~。俺の武器って基本短剣と魔術だし」

「そうですか。聞いてくれてどうもありがとうございます」

「……あ、ちょっと可能性あるかも」

「え?」

「この後ヒマ?」

「え、ええ……まあ、決まった用事はないです。ゴブリン退治に行こうと思ってたくらいですし」

「ならちょっと付き合ってちょーだい」




 普通の人は毎日のように戦いに行ったりはしません
 適度に休日を挟みます

 ヒイラギは毎日戦うのが普通だと認識してます
 理由はゲーム感覚が抜けきっていないから
 ゲームが当然のように即時戦闘が可能なせいで休むという概念がないっていう
 そんな無理ができるのは若さゆえ、ですね

 ミアに言ったのは『俺と違って無理する必要ないだろ』っていう理由です
 異世界人と違って引き返す道はあるんだから、ってことで言いました

 おまいう
 ヒイラギが毎日戦っていることを知っているこの世界の人間は少し心配していますが、まさか毎日戦うのが普通だと思っているとは知らないので『言っても聞かないだろう』程度の認識です
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