ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「にしても、どの依頼も他の街かぁ」
「王都の近くに湧くモンスターはザコばっか。当然のことだにゃ」
「むぅ……」
一般開拓兵になって受けられるようになった依頼の中に王都で達成可能なモノは皆無だ。
これではロクに実績を重ねることができない。
かといって遠くに行こうにも王都の方が何かと便利なところがある。
「あ、そーいえば。あれは? 戦闘訓練。ほら、五日前の」
「アレにゃら明日の枠と一週間後の枠があったはず……てかそんなことよく憶えてるにゃ?」
「ほとんど記憶に残ってなかったんだが今思い出した」
本当に偶然だ。
「明日と一週間後か……明日で」
「にゃら明日一度ギルドに来て。時間はいつも通りで、そしたら入るのに必要な書類渡すから」
「……入る?」
「うん」
決断を早まった説が拭いきれないぞぅ?
どこか施設があって、入るのに書類なり許可が必要。
……もしかして責任重大な感じ?
……頑張ろ。
「場所は国立ルートヴィヒ学園。そこの初等部生徒の外部指南者」
「つ、強い?」
「初等部だし大体一〇から一三くらいの子が大半だから多分平気じゃにゃい?」
「よかった、自分より強かったら教えることないじゃんとかなるところだった」
というかその歳アンド初等部で俺以上だったらメンタルがヤバくなる。
「んじゃ、明日また来るわ」
「わかった。……精々頑張ってね」
「うるさいやい」
そんなニヤニヤしながら言わないでもらえる?
言われなくてもわかってるわ。
「おっ、オニーサンじゃないッスか。前のヤツ受け取りに来たんスか?」
「そうそう。出来てる?」
「もちろんッス。え~っと、これッスネ」
「おおぉ」
灰色のガントレット。
籠手、いや、手甲だろうか。
呼び方はわからないがともかく武器としても防具としても使うことのできる武具。
装備した感触は違和感なく、重苦しさもほとんどない。
「いやぁ、軽装の中にコレは浮くッスネ」
「気にすんな。殴れりゃいい」
「殴る経験はあるんスか?」
「……ないッ」
手が痛いじゃん。
「ならなんでッスか?」
「単純にメイン武器を失った時の対処を考えてと、やってみたかった!」
「適当ッスネ」
「そんなモンよ」
ただ軽く素振りをしてみた感じ違和感はある。
装備の所為ではなく、俺個人の問題だ。
短剣を振るのとではモーションが違うから変な感じがする。
初めての感覚だから身体が気持ち悪いと訴えるのだ。
「どんな感じか試してみるッスか?」
「ここで? どうやって?」
「アタシが造った試作の盾があるんス。出来が粗末だから売り物にはならないんスけど的にはなるかなって。試作の剣の試し切りとかにも使ってるんで表面はボロボロッスけど」
「んじゃやってみるべ」
そのためにいちいち街の外に出るのも面倒だったから助かる。
盾を殴るという初めての行為にも少し高揚しているし。
「なんだっけ? なんか、踏み込んだり腕をひねったり腰をひねったりするんだっけ? ……憶えてねーや」
殴るための一連の動作を思い出そうとするが、如何せんそれを聞いたのがかなり昔のことだから思い出そうにもほとんど思い出せない。
感覚でやるしかなさそうだ。
「構えて……」
右腕を引いて、魔力を練りながら意識を集中する。
「打つッ!」
ガンッ――という音を発して盾とガントレットがぶつかり、拳はそこで静止した。
貫通することも衝撃波が出ることもなく。
俺がゆっくり拳を引くと盾は壊れていたことを思い出したかのようにバラバラに崩れた。
「えぇッ!? 壊れたのはともかくっ、タイミングおかしくないッスか!?」
「ビックリだな」
「な、何したんスか?!」
「え? こう……盾に当たった瞬間に魔力を盾に流してそのまま開放した?」
「…………魔力弾と同じッスか?」
「ま、そんな感じじゃね?」
魔力を圧縮してそのまま放つ、言ってしまえば鉄を剣にするんじゃなくてそのままインゴットの状態で投げる、みたいな行為だ。
鉄をぶつける以上それなりの攻撃力があるのだが打撃として攻撃するにしてもハンマーにした方が良いから多分そこまで効率は良くない。
ただこれはなんとなくスカッとする。
「……これ、もう一回やってくれないッスか?」
「え、まあいいけど」
「ちょ、ちょっと待っててください! 今新品の持ってくるッスからぁ~!!」
わざわざ新品の?
もしかして盾がこんなにバラバラになったのがそんなショックだった?
ごめん、もう少し手加減した方が良かったか。
でも今更手を抜いても遅いし。
下手な嘘つくよりさっきと同じようにやった方が良いよな。
「こっ、これっ! 素材はさっきと同じッスけど実験で術式を組み込んだヤツッス」
「壊してもいい?」
「しょ、正直壊れるのは鍛冶師としては駄作を作ったってことなんで嫌ッスけど……思いっきりやっちゃってください!」
「よし来たッ」
お望み通りやってやらぁッ。
壊せるかは知らんが壊す気でやってやんよ。
それが礼儀ってモンだろう。
「さっきと同じように構えて……打つ!」
身体に残った感覚。
再現するように拳を放つ。
拳が盾と当たった瞬間に貯めていた魔力を盾に対して押し込むが、さっきよりも反発力が強い。
さっきは皆無に近かった反発力が今はタイヤを殴るような感じがイメージとしては一番近かった。
あれこれ考えている時間はなく、全ては一瞬のこと。
ゴリ押すように俺は魔力を盾にねじ込んだ。
「ッ!」
反発力に思わず籠める魔力が増えたのか、それとも組み込まれていた術式の影響か。
パァンッ――と盾は弾け、全方位に飛び散って頬などに細かな切り傷をつけた。
「やっぱり……さっきと同じ壊れ方……」
「同じ? 破片の形も大きさも数も全然違うだろ。……てかキミも切ってるじゃん、ああもう……」
破片を手に取ってさっきのモノと比較するように見る彼女は顔についた大量の切り傷に気づいていないかのように夢中で。
俺はため息交じりに彼女の頭にチョップを入れ、治癒魔術を施した。
「キミねぇ……」
「これッ、ただ壊れてるんじゃなくて破壊されてるんスよ!」
「だから……ん? どう違うんだ?」
「素材が脆化してるんス」
「?」
都合のいいところだけが聞こえる都合のいい耳を持っていることはさておき、言っていることがよくわからない。
脆化、という言葉やその意味自体はそれなりに知っている。
水素による水素脆化や放射線による照射脆化。
有名なので言えば動画サイトなどで見かける液体ガリウムなどによる液体金属脆化。
けれどそれが何故この状況で出てくるのか。
殴ってその力に耐え切れなくなれば壊れるのはどの物質も同じのはず。
「詳しいことはわかんないッスけどボロボロッスネ~」
「わからんのかよ」
「この辺なんて粉みたいになってるッスよ。ウヒャ~」
楽しそうね。
まあ知らない壊され方したら研究のし甲斐があるだろうし、俺も共感はできるけど。
「見解は?」
「そうッスネ。見た感じの特徴と雰囲気からいって……単純に耐え切れなくなったんだと思うッス」
「耐え切れなく?」
「恐らく魔力の反発? によって柔軟性? が失われたんだと思うッス」
「えらく曖昧だな」
「だってそのあたり詳しくないっスもん!」
まあ魔力が関わっているのは合ってると思う。
反発力強かったし。
柔軟性は知らんけど。
「……もういい?」
「あっ、もう大丈夫ッス」
「そっか。つーか手が痛いわぁ。こりゃ慣れが必要だな」
「というかそもそも動きが全然ダメッスからね」
「マジかよ」
そういうのは一回目で言って?
盾壊せたから二回目とか自信満々でやっちゃったじゃんよ。
「アタシもそこまで上手くはないっスけど。たしか……こうッ、ッス」
「えっと……こうッ、か?」
「そうそう。そんな感じッス」
確かにこれの方が動きやすいな。
こうして、こうッ、か。
「呑み込み速いッスネ」
「まあ、見て覚えることは前よりかは上手くなったな」
何度も自己洗脳で他者の動きを真似したせいか、最近は普通に見て動こうとするだけで模倣できることが増えてきた。
もっとも、それには何度も観察しなければならなかったりするから手っ取り早く真似するにはやっぱり自己洗脳の方が早い。
真似以外にも目的があるから自己洗脳に依存する気はないのだが。
「や~、いいモン造ってもらったわ。これ代金ね」
「あ、毎度アリッス。って、爪伸び伸びじゃないッスか、爪切んないとダメッスよ」
「サーセン」
爪切りないんだよなぁ。
作れるかな?
「ほら、このナイフあげるんでちゃんと爪の手入れするんスよ?」
「……ナイフでするの?」
「そりゃ勿論」
「指切りそうで怖い」
「その時は魔術で治せば良いんスよ」
ヤダなぁ。
普通に怪我しない方が良いじゃん。
「まあ、ありがとうな……え~と――」
「あ、アタシはポーラ、ッス。ポーラ・プロミネンス、ッス」
「そうか、ありがとうなポーラ」
「また来るッスよ~」
お、このナイフすっげぇピカピカしてる。
普通のヤツだから武器には使えないけど切れ味は良いだろうな。
陽の光を反射するナイフ。
鏡になりそうなほど反射の綺麗なその姿は少年心がくすぐられる。
……明日に備えて色々頑張るか。
マユゲに今日も場所借りよ。
脆化の部分はそうなんだ~程度の認識で大丈夫です
ポーラの私見でしかないですし
今は『魔力を貯めて殴ったら威力UP』でOK
この設定使う時はまたその時に描写しますから(使うかはわからない)