ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 開拓兵という立場でありつつも教える側という立場を考えた結果、今回ヒイラギの口調がいつにも増してふざけた感じに……


第五二話 不真面目で真面目な生徒

「今回戦闘訓練の依頼を受けたヒイラギだ、よろしくね」

「……ああ」

「よろしくお願いしますね」

「雑魚だったら許さねーからな?」

 

 どうしたら良いんだ、これ。

 一人がなんというか貴族としてのプライドで俺を舐めながらも一応は礼儀として最低限の言葉で済ませる奴で。

 一人がニコニコと人懐っこい笑みを浮かべながらも目が一切笑ってなくて怖い奴で。

 一人が全力で舐め腐ったような態度で見下してることを隠しもしない奴。

 まあ奥に知らない(ヤツ)を尊敬して敬語を使うなんて無理だろうし使えと強制する気も使って欲しいとも思ってない。

 ただこれは最低限言葉遣いを注意するべきなのか……。

 貴族だからそれが当然で、それに命令するようなことを言ったら不敬で打ち首とかなったら嫌だし。

 ま、その辺の教育は俺の仕事じゃねーや。

 俺はあくまで戦闘。

 それに一緒に依頼を受けた他の奴らはそもそも敬語って概念があんまないから気にしてなさそうだし。

 

「ノーマン先生、でしたっけ? もうこれは始めちゃっていい感じですかね?」

「ええ、もう大丈夫ですよ」

 

 ならさっさとやっちまうか。

 時間がもったいないし。

 

「んじゃあやりますかぁ。まずはキミらの実力がどんなもんか知りたいからそれぞれ一戦、やろうか」

「なるほど、なら俺からやってやるよ」

「武器は?」

「俺の武器はこれよ」

「斧か」

 

 先端が尖っていて刺突もできる戦斧。

 両手で構えてはいるが見た感じの力み具合だと片手でも振り回せそうではある。

 

「うん、キミの実力を見る場だ。好きなタイミングで掛かってくるといい」

「ふん……」

 

 お、意外だ。

 性格的に速攻を仕掛けてくると思ってたんだが思いの外慎重。

 構えも俺を牽制しつつ、間合いも自分は踏み込んだら攻撃が届く位置にいる。

 初等部とはいえ俺でも理解できる程度にはしっかりしてる。

 

「つーかテメェは素手かよ」

「え? ……ああ、訓練用の武器だから忘れてた。持ってきた奴は殺せるヤツだからここで用意するか」

「テメェ、大丈夫かよ、頭」

 

 うるせぇやい。

 作れるから良いんだよ。

 

「ほら、懸念点はなくなったから、攻めてきていいよ」

「ちっ、癇に障る奴だ!」

「いいねぇ。実に力強い」

 

 衝撃が腕に伝わってきてほんの少しだけど一瞬腕が痺れる。

 歳を考えると実力は充分だ。

 

「けど攻撃に重心を載せすぎ。身体が入ってない攻撃は弱いけどやりすぎると防がれた時に隙になる」

「うるッ、せぇッ!」

「一撃必殺は別に構わないけど今相手にしてるのがそれなりに経験を積んだ開拓兵ってことを忘れないようにね?」

 

 理念を否定する気はない。

 そういう鍛冶派閥があるのも知っている。

 けれど真正面からそれをして、ほとんど効果を出せない相手に一撃必殺は弱点にしかならない。

 エルドエーベル派の理念は一撃必殺であってそこに正々堂々は必須ではない。

 最も効果的に攻撃を叩き込めるタイミングで最強の一撃を叩きこむのがエルドエーベル派の理念だ。

 

「クソッ」

「うん。感情を荒げても腕は鈍らない、練習してるんだね」

 

 だが残念。

 大体把握したからもういい。

 

「よッ、と」

「…………は?」

「柔術……もどき。は~い、次はどっち?」

「ま、待てよ」

「ん? こうして喉に攻撃を寸止めされて、まだやる?」

「……負けました」

「素直でよろしい」

 

 口調とか態度とかのワリに素直だよね、キミ。

 聞き分けが良いのはやりやすくて好きよ。

 

「なら……次は俺だ」

「オーケー、キミね。武器は槍か」

「ああ」

 

 最近よく見るな。

 流行り?

 今時の若い子は槍が好きなの?

 

「聞くが……魔術はありなのか?」

「良いよぉ。好きに使って」

「わかった」

 

 むしろ戦闘訓練で魔術使わなくてどうするよ。

 格好つけちゃって意外と理解力ない系男子?

 ま、ンなワケないか。

 年下とはいえ中学生程度ではある。

 その歳になってその知能とか悲しすぎる。

 

「ただし周囲には気をつけろよ」

「言われなくても……」

「なら良い」

 

 ちゃんと周囲と距離を取っているとはいえ流れ弾が他の生徒に当たったら大惨事になりかねない。

 監督不行き届きでどやされたくねーぞ。

 

「【炎爆(フレア)】」

「お、中々強い魔術」

 

 現状俺の使えない魔術だ。

 工程は途中まで【炎投(ボム)】と同じだが、圧縮した炎をそのまま投げつけて着弾地点で開放する【炎投(ボム)】と異なって【炎爆(フレア)】は圧縮した炎を手元でそのまま開放する。

 ただし開放するのは攻撃する一方向のみ。

 範囲を限定することで威力を爆発的に向上させる魔術なのだが、そのコントロールが想像以上に難しい。

 やっていることをわかりやすく例えるなら【炎投(ボム)】は水風船を投げることで、【炎爆(フレア)】はその水風船に一点だけ穴を開け、その上でその穴が広がらないように押し留めること。

 ガラスに入った小さな亀裂が一気に拡大するのと同じように水風船は一か所にほんの小さな穴が開けば圧力に耐え切れずに穴は拡大する。

 だから初手を譲った集中可能な状況とはいえこれができるのは非常に凄いことだ。

 俺は集中しても現状できていない。

 

「だけど甘いっ」

 

 覚えたことをすぐ使いたがる子どものように俺は距離を取った。

 射程範囲外にいれば炎は容易に拡散する。

 射程範囲は向かってくる炎を観察すれば炎の揺らぎでなんとなくわかる。

 

「なるほど、大体この位置一五メートルね」

「ちッ」

 

 露骨に舌打ちするんじゃありません。

 もうちょっと自分の限界を悟られないようにだね――。

 

「って、ワォ。連射できるの?」

「余裕かますな」

「なら追い詰めなさいよ」

 

 それになんでどいつもこいつもこんなに素直過ぎるのさ。

 子どもは素直がかわいいけどその歳でこんなに素直な子に会ったことないよ、俺。

 前の世界の子どもとか大体クソ生意気だったからなぁ。

 

「というかもう少し手数を見せなさいよッ」

「なッ!?」

 

 馬鹿の一つ覚えみたいに一つの魔術だけ使いやがって。

 実力把握の為って言ったでしょうが。

 せめて他の系統を弱くていいから見せなさいよ。

 

「もういいや、長引くから後でね!」

「何を……ぐぅッ!?」

「動かないと避けながらノロノロ魔術構築しても間に合うの。後衛だから動かないとかなし、ね」

 

 こんなん足元に落とし穴掘って終わりだわ。

 戦闘訓練であって魔術の打ち合いじゃねーっての。

 

「はい次、最後。やるよ」

「はぁい。よろしくお願いしますね」

「うん、よろしくね」

「お手柔らかに」

「それはモチロン」

 

 手加減はするさ。

 兎を狩るのに全力を出すようなエネルギーの無駄はしない。

 本気は出すけどね。

 

「はぁッ!!」

「うおッ!? 速いな!」

 

 今のは本気で驚いた。

 よろしくお願いします、とお辞儀をしたかと思ったら実は踏み込みのために姿勢を低くして。

 そのまま一気に突っ込んで来た。

 敵意がなかったから対処が一瞬遅れたし。

 

「やッ、はッ、たぁッ!!」

「速度は良いけどそれだけ? 軽いよ?」

「油断させるためかもッ、しれませんよッ」

「だと嬉しいかな」

 

 動きが素直過ぎて見てから対処が簡単なんだよなあ。

 戦闘に関しては汚くなって良いと思うんだが……もしかしてそういうのは貴族として恥とか?

 流石に殺し殺されのシビアな世界でそんな綺麗ごとは言わんわな。

 

「ずっと余裕そうにしてますけどッ、痛い目見ても知りませんからねッ!」

「そう言うならいちいち宣言してないでさっさとその双剣を振るといい」

「言われなくてもそのつもりですよ」

 

 双剣の重さに腕が持って行かれはしていない。

 左右の連携に狂いもない。

 ただその連携は失敗していないだけで上手くもないのが欠点だ。

 

「単調はダメだよ。魔術は使わないの?」

「使って効果が見込めるなら使ってます……」

「ならどうして剣を振るってるの……っていうのは流石に酷な質問か……」

 

 大人げないな、大人じゃないけど……って、この世界じゃもう大人か。

 前の感覚が抜けねぇ。

 

「……降参です」

「おやおや? 諦めが早い」

「勝てない相手に本気を出しても疲れるので」

「……まあ良いか」

 

 つーかこのキャラ疲れてきた……。

 素のノリ以外で長時間精神維持すんのって超絶面倒。

 俳優ってスゲー。

 

「まあおおよそわかった。アレだね、キミたちビックリするほど素直だね」

「ああ? なんだテメェ、喧嘩売ってんのか?」

「はっはっは、仮にそうだとしてもロクに太刀打ちできなかった相手のケンカ買うつもり? やめといた方が賢明だよ?」

「御託はいい」

「そうですよ。言いたいことがあるならハッキリ言ってください」

「や~、スマンスマン」

 

 なんせ空気が読めないもんでね、言葉選びがヘタなんだよ。

 

「捻くれた性格してると思ってたからね、驚いてるんだ」

「俺らが素直だって? 一体どいつを見てそう思ったんだよ」

「皆素直さ。剣筋が過ぎるほどに真っすぐで、フェイントも何もない。初動さえ見れば目をつぶってても受けれるくらいには正直な攻撃だったよ」

「……」

「そっちの女の子にはちょっと期待したんだけど口だけで最後まで罠も何もなかったし。良いモノは持ってるから実にモッタイナイネ」

 

 なんというか大きな土台の上で砂遊びをしているのを見ている気分だ。

 

「ま、そのあたりは俺の仕事だし。アドバイスはするよ」

「悪いが信用できないな」

「ロクに覇気のねえ奴に何が教えられるってんだよ」

「間違ったことを教えられては私たちの将来が貴方の所為でダメになってしまいますから」

 

 なんつーか。

 ドラマみたいな熱血教師はいるけれどドラマみたいな物分かりのイイ生徒はいない、って話を思い出した。

 まあ俺はマトモな教師もマトモな同級生も見たことはないんだけど。

 

「そっかぁ、俺の言う通りには動きたくないのかぁ。残念だなぁ」

「何を……」

「あ、でも授業をサボらず来てるってことはやる気はあるんだ。なら問題ないね」

 

 動く気がないだけで聞く気はあるなら問題なし。

 聞く気がなくても長時間を何もせずにいるのは普通は難しいから聞かせる。

 なんの心配もないな、多分。




異世界語小話

 使おうと思って使わなかった言い回し
 『豚に真珠』『猫に小判』『馬の耳に念仏』のこの世界版で『モンスターに平和を説く』というモノがあります

 モッタイナイネのあたりに入れようと思ったものの状況的にふさわしい言葉ではないと判断して入れませんでした
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