ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 色々調べていると時間がどんどん無くなって、ストックも減って困る
 けど調べないと今以上にクソに……知識が欲しい……


第五三話 成長の実感と快楽

「まず一人目。力は充分あるけどそれを生かせていない。当たれば可能性はあるけれど当たらない。その理由は攻撃の全てが相手を傷つけることにしか意識が行っていないからだね。重い一撃を当てたいのならそれを有効打にできる状況を作る方法を知らないと。せっかく穂先があるんだからそれで突いたり、足とか首に引っ掛けたりして相手を崩せば攻撃は簡単に当たる」

「はっ、そんな簡単にいくかよ」

「ならやってみようか」

 

 技なんて口であれこれ言っても理解はできないし見せた方が早い。

 

「緩めに首を狙うからそれを防いでね」

「あ? なんで俺が」

「いいからいいから」

「ちっ、めんどくせーな」

 

 なんだかんだ言ってちゃんと相手はしてくれる。

 口よりはよほど素直だ。

 

「はい、じゃあやるから気をつけて。そっちの二人も見ておくと良いよ」

「ふん、何をするのかは知らないが見物だな」

「頑張ってくださぁい」

 

 頑張るって程じゃないんだけどな。

 

 同じような長い柄の戦斧を作り、構える。

 そして軽く振りかぶって首を狙って振るい、それは言った流れの通り防がれた。

 ポーズとしてはそれぞれ同じ。

 柄の部分で打ち合い、力のぶつかり合いでバインド状態だ。

 

「よっ、と」

 

 相手の力に逆らわずに、自分の持つ戦斧を巻いて斧刃の反対側を相手の足に引っ掛けて引き倒す。

 力のぶつかり合いだと思っていたから呆気に取られているし、足を狙われるとも思っていなかったから少年は容易く転んだ。

 

「……は?」

「と、まあこんな感じに相手を崩せば簡単に隙を突けるワケだね」

「何……しやがったッ」

「何って……重心を崩しただけだよ? 何も特別なことはない、普通のこと。対人戦でもモンスター相手でも使う技術」

 

 ベアトリクスとの戦いでは速攻で重心崩しを使われたし海悪魔(サハギン)も転ばせようとするのはやって来た。

 多分形のある相手には大体使える。

 

「え、流石に重心はわかるよね?」

「バカにすんじゃねえ! それくらいわかるっての!」

「なら良いや。まあとりあえずキミに言えるのはこんな感じだね、一撃を信用し過ぎ」

「……ちっ」

 

 流石に自分の弱さを自覚してるから変に暴言を吐いたりはしないか。

 そのあたりは大人びてる。

 

「はい次二人目。魔術の腕に関しては腕を見張るモノがあったけどそれを活かしきれていない。魔術がメインだからといって動かなくて済むほど戦いは甘くないし、移動するのは前提として体術との並行も必要だからね。連射ができるなら多少の構築速度を捨ててでも逃げ回りなさいってのが一点。他は射程範囲だね。あの時の前後でキミには二つの選択肢があって、それは射程を誤認させるっていうのと射程の指摘にシラを切るっていうモノ。例えば一五メートルの射程でも魔術の末端操作を放棄して一四メートルと相手に思い込ませれば相手に攻撃を届かせることができる。指摘に関しては上手く射程を誤魔化せば相手は必要以上に距離を取ってくれるから戦闘が楽になる。あとせっかく近づいてしばらく待ってあげたのに一切槍を使わないのなんなのさ、使わないなら荷物でしかないでしょうに」

 

 初等部だから仕方ないとはいえ色々問題点が多すぎる。

 戦闘に対する根本的な意識から変えないとダメそうだ。

 

「フン、自分はわかっているって自慢? くだらない」

「違う……戦いは絶対に腕力や魔力が優劣を決めるモノじゃないんだ。一に心、二に知識」

「根性論? 心底くだらない」

「だからどうしてそうなるんだ……。例えば、どれだけ力に優れた人間だろうとも覚悟がなければ、殺す気がなければ殺しを教え込まれた子どもには勝てない。そしてどれだけ腕力魔力に優れていてもそれを活かす知識、つまり技や術式を知らなければ意味がない」

「……一応は理解した」

 

 それに精神論をバカにしてはならない。

 そもそも人間は心で動く生物だと俺は思っている。

 根本的に人間は自分の利益で動く。

 嫌だと思っている仕事をするのはそれによって得た金でしたいことがあるから。

 こいつらだってわざわざ退屈な『何もしない』を選んだのは俺に教わりたくないっていう感情があるからだ。

 精神論だから合理的じゃない、は合理的じゃない。

 それが合理的で在れるのはコンピュータか、洗脳を受けた人間くらいだ。

 

「それじゃ最後。正直速さは凄いと思った、けど速さだけでそれ以外の長所を持てていない。そっちの斧使いの子にも言ったように皆戦いにおける狡猾さを身に着けるべきだ。じゃないと誰にも勝てないよ? せっかく手数が多いんだから全てを攻撃に向けるんじゃなくて役割を分担した一連の動き、技を身に着けるべきだと思うけどな」

 

 もっとも、それが有効なのはあの速度を維持し続けられる体力があることが前提だ。

 持久力なしで一瞬に全てを出し切ってしまえば実力が拮抗した相手には負けの方が濃厚。

 とはいえ持久力は鍛えればどうとでもなる。

 

「キミたちがどういう理由で狡猾さを持たないのかは知らない。単に無知なだけかもしれないし、狡猾さを身に着けて戦う姿がみっともないと思うから嫌なのかもしれない」

「……」

「……ふん」

 

 どう思おうが全てはこいつらの勝手だ。

 それによってどうなろうとそこまで興味はない。

 世界に三つ、死体が増えるだけ。

 強いて気になることを言うならば『先を見据えているのか』ということ。

 

「もしみっともないから(・・・・・・・・)と考えているならその考えは訂正した方が良い。想像すればわかること、もし体裁を取り繕って狡猾さがあれば勝てた相手に負けるとする。それによって待っているのはキミらが思っているよりもみっともない(・・・・・・)姿だよ。無残に食い殺され、ボロボロになり、腐敗し、蛆が湧いて、蠅が集り、その綺麗な顔はぐちゃぐちゃだ」

「っ……」

「気色わりぃこと言ってんじゃねぇよ」

「想像したくもありません」

 

 が、戦うなら想像しなければならない。

 

「まあ、キミたちがどうするかは俺には関係のない話。その選択によって得るモノ失うモノを考えて選ぶと良いよ」

「ちッ、いけすかねぇ野郎だ」

「上から目線が癪に障るね」

「……」

「ははっ」

 

 酷い言われようだ。

 そんなに俺から教わりたくない?

 まあ歳の差のワリに実力差はそこまでないし、若さゆえの余裕か。

 

「さて、そろそろ時間だからそれぞれに一つ動きを教えて終わろうか」

「はぁ?」

「ちゃんと見ておくように」

 

 まずは戦斧。

 同じ長物だから槍の動きを改変すれば良いだろう。

 槍は海悪魔(サハギン)の動き。

 双剣は俺の動きで良いか。

 流れは……うん、初心者でも出来る激しくない動きでなおかつ実用性の高い動きが良いから、よし。

 ざっと決まった。

 あとはそれを使えるように俺が合わせるとして……よし、まずは。

 

「じゃあそれぞれの動きを見せるね」

 

 そう言って俺を見るように仕向けてから戦斧、槍、双剣の動きを見せる。

 どれも相手を崩すことを目的に始まって、崩しが完了したところで止めを刺す動きだ。

 けれど正直言って相手がいなければ一人で動いているに過ぎないから三人からすれば全く意味が解らないだろう。

 

「動きを見てもらったから、はい、さっきと同じ順番で出てきてね。戦斧」

「何すりゃ良いんだよ」

「え~っと、三人にはこれから順番に俺と軽い打ち合いをしてもらうワケだけど、その動きってのはさっきの動きで。俺が魔術で三人の身体を動かす。けれど抵抗したら上手くいかないから抵抗しないように」

「俺たちを操るのかよ」

「不愉快だな」

「まあまあ。試しに『右手を上げて』もらうね」

 

 宥めながら軽めの【洗脳】を掛けると三人は自分たちの意思とは関係なく右手が上がったことに驚く。

 戦斧の少年は最後まで上げ、槍の少年はほんの少し動いた程度、双剣の少女は半ばで止まっていた。

 

「動く気はないのに動くのは違和感があるだろうけど抵抗しないでね」

「よくわかんねーが変なコトさせやがったらぶん殴るからな」

「暴力反対」

 

 ケラケラと笑いながら俺たちは互いに戦斧を構える。

 

「じゃあ『さっき見た動きを真似して』もらうから」

 

 不意を打つように【洗脳】をすると、少年は俺に向かってさっき俺がやったのとまったく同じ動きで襲い掛かってきた。

 それに対して俺は動きを合わせ、さっきの動きの答え合わせをするように一連の動作を見せる。

 打ち、防がれ、そこに搦め手を合わせ、カウンターをされ、カウンターに対してカウンダ―をして、最後の一撃を仕掛けて。

 そこで終わり。

 

「なんだ……これ……」

「体験したからさっき見た動きへの理解度が一気に深まったでしょ?」

「あ、ああ……」

 

 自分の身体で行われた自分のモノではない動き。

 けれど戦いの基礎が身についているからその動きが意味するモノが明確にわかる。

 打ち合いの流れに無駄はなく、お互いがその場における最高の一手を打った必然の結果。

 基礎の組み合わせ。

 それを体験してしまった少年は驚きが禁じ得ない。

 

「じゃあ次」

「……」

 

 そうして少年と少女にも同じように動きを教える。

 反応は戦斧の少年とほとんど同じ。

 理解できる動きだけで構築された未知の動きは、それを自分がやったという事実によって圧倒的快楽へと変わっていた。

 それは三人にとって素人同然の自分たちがプロと同じになった、という錯覚をもたらすからである。

 

「これでおしまい。これからキミたちがどう成長するかは知らないし見る機会もないけど、せっかく教えたんだしたまに思い出して成長の糧にはしてほしい。それじゃあね」

 

 授業は終わり、これ以上の滞在は俺には許されていない。

 異世界の教育機関というモノに少し興味はあったのだが、どうしても知りたいというワケではないし知ったからといって役に立つことも恐らくないだろう。

 ただの興味ゆえ尾を引くモノは何もなく、俺は三人に軽く別れを告げてそのまま学園を出た。




 ヒイラギの目的は三人に動きを教えることではありませんでした
 教えたのはあくまでも手段であって目的じゃないんです
 つい少し前まで現役の学生だったヒイラギは『ダメな教育者による苦手意識』というモノが存在していることをちゃんと理解していて
 そのため何かを教えるならまず初めにするべきことは『楽しい』と思わせることだと考えたワケですね

 実際、出来なかったことが出来るようになるのって楽しいじゃないですか
 作者も高校生時代、体育の授業でサッカーをやった際に初めは二回程度だったリフティングが一か月後には一〇回出来るようになった時は楽しかったです

 つまり何かを学ぶときにまず重要なのはその快楽を知ること
 本人の力ではなくても『出来た』と認識させること
 ヒイラギは自分の出来る範囲で生徒に何がしてあげられるかと考えた抜いた末に【洗脳】で実力以上だけど肉体的には可能なことを体験させることにしました
 ただ経験不足ゆえに下手さが出てますね
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