ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「んっ……くすぐったい……」
「変な声出すな。動くとちゃンと触れねェだろォが」
「だからってそんな隅々まで……くっ……」
俺は今、下着姿というほぼ全裸状態で全身くまなくマユゲに撫でまわすように触られている。
状況としては、俺がこの世界に来てから今日で二週間。
この世界、というか魔の要素によって自然治癒力が高まっているためその期間でもそれなりの肉体には仕上がった。
その完成度を確認して、何かしらを判断するらしい。
「まだ目標には少し足りねェがまァ良いだろ。ちょっと手ェ出せ」
「お、おう」
良いというのは肉体のことだろうけれど何を基準に良しとしたんだろうか。
確かに元はただ痩せていて筋肉が浮き出ているだけ、という感じだったのが、筋肉が鍛えられている、という雰囲気にはなっている。
ただ身長が一七〇弱と低めだから少し頼りなく見える気がする。
マユゲは俺の手を取ると指輪を前のように弄りはじめた。
前と同じなら設定を変えているのだろう。
「これでモンスターを倒したら
「うん。で、なんで指輪没収?」
指輪を弄ってせっかくレベルアップができるようになったというのにマユゲは俺の指から全ての指輪を抜き、腕輪も外した。
元々マユゲのモノだから別に文句はないが。
「じゃあ今から仕上げンぞ」
「……え?」
「詳しい理屈は省く。魔術で全身を補助しつつ負荷をかけて肉体を完成させる」
「お、おう」
そんな軽いノリで言われても……。
数日どころか数時間でやろうなんて……無理が過ぎないか?
「心配いらねェよ。お前が激痛に耐える強さを持ってたらの話だがなァ」
「お、挑発か? 乗っちゃうぞ?」
「ちげェっての。……まあやるならそれでいい」
「なら服着ろ……よし、着たな」
こんな普段着でやるのか。
でも一体何を?
「まずはだなァ。今ある体内魔力全部出せ」
「よくわからんがわかった」
意識を魔力に向け、内に留まっている魔力を外に放出する。
全身から熱が抜けるような、体力がなくなるような、そんな感覚だ。
俺の少し増えたとはいえ魔力はそこまで多くないから魔力は一瞬で底を尽きる。
「それで全部かァ?」
「ああ」
「加減してンじゃねェよ。全部つったら全部だ、食ったもン全部ゲロっても無理やり胃酸吐き出すみてェになァ、限界まで出せっつったンだよォ」
一応全部出したつもりではあった。
おかげで三半規管がバグったみたいになって平衡感覚が曖昧だし頭が痛いし寒いし熱いし。
けれど確かにまだ残っている感覚はある。
全身の不調のせいで感覚が鈍っていたけれど、よく意識したら感覚が鈍る時と鋭くなる時の波があって、鋭くなる時はマユゲの場所どころかポーズすらも見ずともわかった。
「多分これで全部ら」
「よし、意識が低下してンな。残った
俺の意識がはっきりとせず、マユゲの言葉すら全く理解できない状態で、マユゲは俺のレベルアップを阻んでいた指輪を装着して手を俺にかざした。
指輪が起動すると魔力の枯渇によって魔術への耐性をほぼ失った俺に魔道具の魔術が掛かり、俺の中に存在していた魔は全て吸い尽くされる。
それによって俺の身体は通常ではありえないことに。
通常、魔力が枯渇したといっても自然回復があるから全くのゼロになることはない。
あったとしてもほぼゼロに近い状態、というモノであって大気中からの吸収で僅かながら魔力は常に存在する。
けれどこの空間はマユゲの造った特殊な空間であり、外部からの魔の供給はマユゲが意図的に行わない限りはなく、今は魔道具によって全て吸収されているからこの空間に魔は一切存在しない。
ありえない状況が特殊環境によって引き起こされ、魔の欠乏によってまず初めに胸が苦しみ始めた。
「ぐぅぅぅぅぅぅッッ!? ア゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ゙ッ゙!!」
胸の苦しみはすぐさま痛みに転じ、全身に転じる。
血管を大量の小さな針が流れているんじゃないかと思うような刺す痛み。
そしてどういうワケかその瞬間、曖昧だった俺の意識が鮮明になった。
「痛い、痛い痛い痛いッ!」
「そォいうモンだからなァ……」
なんで。
どうしてこんなにイタい。
タえれるキがしない。
キゼツできれば。
何故承諾してしまったのか。
後悔だけが湧き上がる。
せめて説明を聞けば良かったと。
ただそれだけが思考を埋め尽くす。
そうしなければ正気を保てる自信がなかった。
痛みに意識を向けてしまえば意識は痛みに縛り付けられ、気絶したくてもできない地獄を見る。
「さて、それだけじゃァ意味がねェンだ。動いてもらうぜ?」
「うグッ、ガァ……」
意識の波で何も考えることができない。
少し辛そうなマユゲの表情が目に映る。
マユゲが俺を【洗脳】して、強制的に身体を動かした。
抵抗しようにもできない。
魔力を失った影響か、抵抗しようと思っても一切の抵抗力が生まれない。
【洗脳】の力の前には口さえ動かず、けれど身体の感覚だけは無慈悲にも襲い掛かって来る。
無理に身体を動かすせいで激痛は加速していた。
それでも気絶はできない。
俺は初めて理解した。
これまでの痛みなどこれに比べればなんともなかったのだと。
殴られようと蹴られようと、所詮は子どものレベルだったということを。
「終わりだ……」
「……」
魔力が供給される。
今度は一気に魔力が増えたせいで酩酊状態のようになった。
「どうだった?」
「生きてるって……苦しい」
「気分は?」
「複雑。防衛機制か知らんがなんというか……性癖歪んだらどうしてくれんだこの女郎……」
「素質があったってことだろォよ」
「そんなバカな……」
否定し辛いのが困りもんだな。
そもそも自論として『逆境は多いほど人生を善くする』ってあるし。
よし、間を取って人間には皆マゾの素質があるってことにしとこう。
「ぶっちゃけ、あれ、何?」
「そォだなァ。簡単に言えば魔が枯渇したことで全身から魔を引き出そうとするが通常ではありえない完全枯渇状態だからダメージを負ったって感じだなァ。さっきの吐くモン何もない状態で無理に吐こうとして胃酸出すってヤツ、アレで起こる胃の負担みたいなモンだ」
「なるほど、わかった。イメージ的には把握できたわ」
理論とかを理解する気が初めからないなら概要はこういうざっくりイメージで充分だ。
とりあえず疑問は解消できるからスッキリしてモヤモヤすることがない。
「ついでに言うと治癒魔術を掛けてたから痛みは倍だァ」
「嬉しくねー」
それなら強さを倍にしてくれ。
だったら我慢もできる。
「倍じゃねェけど強くはなってるぜェ」
「なら問題ないな。死ぬほど痛かったけど死んでないからネ」
終わりよければオールオッケーだ。
それにしても何が変わったのだろう。
痛みが幻痛として残っているせいなのか身体に特に変わったところは感じられない。
痛むだけで軽くも重くもなっていないのだ。
「ちょっと待て、今治癒魔術掛けっからァ」
「あ~、いつも以上にムズムズするぅ」
「魔力が空だからなァ。ダメージと合わせて感覚が変わンのは当然だァ」
満たされる感じがする。
別に魔力は回復してないんだが、その穴を治癒魔術が一時的に埋め合わせるみたいな感じだ。
ちょっと面白い。
「試しに動いてみろ」
「おう……う~ん? 変わったか?」
「まァ、違いがわかンのは明日からじゃねェか?」
「寝て待てってことね、オーケー」
まあどうせ今日はすることがない。
ギルドにもシャプルのとこにもエリナのとこにも顔を見せたし、暇を持て余している。
「あ、そうだ。俺これからしばらく多分暇なんだよな」
「…………なンでだ?」
「この辺じゃ一般の難易度の依頼がないから」
「ほ~ン。……遠くに行きゃ良いじゃねェか」
「しばらく会えないじゃん?」
「……それに何か問題あっか?」
「あるよッ。俺の心の癒しがなくなっちゃうじゃん」
この街から離れたら皆に会えなくなる。
俺としては大問題だ。
「寂しがり屋さンですかァ? 良いから行ってこいってンだァ」
「え~」
「……そォいえばこのままだと多分……、そうだな」
「? 何ブツブツ言ってんだ? 地味にこえーぞ」
「仕方ねェ。ンンっ……欲しいモノがあるから買ってきてほしいんだぁ、この街じゃ買えないからお願いできないかなって? ……ダメ?」
「良いですとも!! ……はッ!?」
俺は今一体何を見て、聞いたんだ!?
あ…ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
『おれはどうにかして街を出ずに済む言い訳を考えていたと思ったらいつの間にか街を出ることになっていた』
な…何を言ってるか、わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった…。
【催眠術】だとか【
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。
演技だとわかっていてなおこの破壊力。
勝てる気がしねえぜ。
「流石に量が多いだろォから特別に指輪の制限もう一つ解除してやンよ」
「どんな効果?」
「あ~、なンだ? お前の言葉で……インベントリ? だ」
「……ようするに収納空間?」
「そういうこった」
す、スゲエ。
流石に時間停止はないだろうけど、それでもスゲエ。
理屈的にはなんだ?
この空間を作ってる結界みたいな感じで特殊な空間を作り出してその内部に貯蔵。
内部を人が入れるような環境に設定しないことで消費魔力を減らして実用化した感じか?
いや、それ……商人が持ったら最強じゃん。
「頼ンだぜ、ヒイラギ」
「……ごめん。もう一回言って」
「あ?」
「エネルギーをくれ」
「……はァ。……頼んだぜ、ヒイラギ」
「頼まれた」
なんでもできる気がしてくるから不思議。
あれ?
これって貢ぎ男の思考なんじゃ……。
ま、いっか。
幸せなら……OKってモンよ。
もっと嫌なことを身をもって理解しているから多少の痛みじゃ止まらないヒイラギ
けど流石に少し後悔はした
ちなみにヒイラギの防衛機制にはいくつかあって、一つは苦痛を楽しむこと
そしてもう一つ、辛い時はいつにも増してふざけるということ
辛いときに必ずふざけるワケではありませんが自分は余裕だと思い込むためにふざける時がたまにあります