ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第五七話 かつてのフェードロヴァ

「……本当にこんな、って言うと店に失礼か。えっと、こういう大衆的な酒場で良かったのか? もう少し高い店でも良いんだぞ?」

「良いの良いの」

 

 一般的な店に比べたら確かに高いもののそれでも全体でいえば安い部類の価格帯。

 高いのを想定していた身としては少し拍子抜けで。

 どう反応すれば良いのやら。

 

「高い店に行きたかったら自分のお金で行けるし」

「……あ~」

 

 まあ、そりゃあそうか。

 俺の何十倍、もしかしたら何百倍もの貯金がありそうだし。

 そんな店選ぶ必要もないか。

 

「それにしてもノースミナスかぁ……」

「どうしたんだ? もしかして昔はそこにいたとか?」

「まあ、うん。一時期はそこのいたかにゃ~。半年くらいだけど」

「結構いるのな」

「仕事には困らにゃいし、色んにゃ装備を試せるから」

 

 流石は眠れない街というだけはある、といったところか。

 開拓兵としては快適だろう。

 

「それだけじゃない、って顔してるな」

「ん~。ちょっと複雑にゃ気分ににゃるというか。ちょっと恨みのある知り合いがいるというか」

「え、物騒な話? 行くの怖くなってきたんだが?」

「多分……ヒイラギには関係にゃいと思うけど……。簡単に言えば私がモテにゃかった理由の一つっていうか」

 

 ほう?

 少し興味が湧いたな。

 けどその人のせいでフェーニャンがモテないってのはどういうことだってばよ。

 

「物凄い美人とか?」

「まあ、美人には違いにゃいけど……男の趣味がちょっと特殊というか」

「あ~……あ? 男の趣味が特殊で、その影響でフェーニャンがモテないってどういう繋がり? もしかして一緒のパーティを組んでてフェーニャンも同じ趣味だと思われたとか?」

 

 偏見を持たれたのか……。

 でも嫌がられる趣味ってなんだ?

 あれか?

 寝取られとかその辺か?

 俺はあれ嫌だなぁ、そりゃ無理だわ。

 

「そうじゃにゃくて。パーティは組んでたけど。……自分以外の女に好意を持ってる男にしか興味を持てにゃいというか。独占願望が強いというか」

 

 違ったけど近かった。

 というか……。

 

「ようするに浮気性ってこと?」

「え~っと。一応趣味はあるしそれにゃりに分別もあるんだけど……。モテな、一人の人には手を出さにゃいし。とりあえず簡単に言うとハーレム適性のある男を狙って引っ掻き回す奴にゃの」

「引っ掻き回すってことは……」

「目的達成したらポイ、だにゃ」

 

 ……とりあえず今度デューベに会ったらノースミナスには行かないように注意しよ。

 

「って、さっき俺には関係ないって……」

「特定の相手いにゃいよね?」

「失礼だな!? 確かにいないけどさっ」

 

 誰とも結婚も交際もしてませんとも。

 決めつけるなんて酷いや。

 そんなに俺って非モテのオーラ出てる?

 

「他人の趣味にどうこういう気はねーが……恐ろしいねぇ」

「おかげで私にゃんてちょっといい雰囲気になったところで掠め取られたことがにゃん回もあるしッ」

「……お疲れ様ですッ」

 

 心で敬礼をしていた。

 俺がそんなことされたら立ち直れる自信があまりない。

 数週間か、数か月か。

 もしかしたら年単位で引きずるかもしれない。

 そんな状態で何度も挑んだというのだから本当、尊敬の念しか湧かない。

 

「世の中には色んな奴もいるんだなぁ」

「多分もういにゃいだろうけど、気をつけてね」

「お、おう。てかフェーニャンとパーティ組んでたんなら強さ的にほぼ接点なくね?」

「強くにゃれる素質はあったけど不真面目にゃ奴だったから多分まだ一般開拓兵だと思うの」

「もったいねぇ。まあ自分の人生どうしようと本人の自由だけど」

 

 でもそうか、接点が生まれる可能性もあるのか。

 まだノースミナスにいればの話だけど。

 

「名前はクアーク」

「憶えとく」

 

 短くて助かる。

 言いやすいし……いや、呼ぶ機会がなければ言いやすいのは関係ないか。

 

「まあそんなちょっと恨みがあって関係のない人の話はしないで、別の楽しいことを話そうぜ」

「そうだにゃ。でも、う~ん?」

「あ、じゃあフェーニャンが開拓兵だった時代の話聞きたい」

「にゃるほど……じゃあ一番最後の(はにゃし)。唯一の遠征のこと」

 

 適当に、話の種になればと振った内容だったのだが、想像よりも俺の今後に影響を及ぼしそうな語り出しに俺は無意識にマジメな状態になっていた。

 聞けば、今は役に立たずともいつかは役に立つかもしれない。

 

「西の方に、龍壁山脈を超える遠征で。『霧深き鋼森』に行った時のこと、モンスターはほとんどいにゃくて私たちは調査のために奥まで進んだの」

「その霧深き鋼森ってなんだ?」

「その(にゃ)の通り常に霧に覆われた森のこと。見た目は灰色の木だけど異常に硬くて重いからそう呼ばれたの。ハッキリと見えるのは一〇メートルくらいまで、それ以上はほとんどわからにゃい」

「モンスターに襲われたら大変だな」

 

 相手も目は使えないだろうけど視覚以外で探知するようなモンスターがいたら苦戦は必至だろう。

 しかも場所は相手のテリトリーだから包囲される可能性もあるし。

 

「続ける。……奥深く、あとの調査で森の中心部だとわかった場所に私たちは辿り着いて、そこで巨大な、周囲と(おにゃ)じ木だけどバカデカい木を見つけたの。そして確認のためにその巨木を一周して元の位置で待機してたメンバーと合流した時、森が騒めいたの」

「森が騒めく……やっぱモンスターが隠れてたか」

「森そのものが巨大なモンスターの群れだった。正確には全てではにゃいけど、全てと思うほどに大量のトレントが一斉に襲い掛かってきた」

 

 トレントは確か植物擬態系モンスターの総称だ。

 俺の認識的には木のモンスターか精霊なんだけども、この世界だとそういう括りだ。

 その中でも特徴的なのは『マンドラゴラ』とかになるらしい、『アルラウネ』は人間カテゴリーになっている。

 さらにいえばキノコなどの菌類や藻類なんかもトレントらしい。

 生物の本をちょっと読んでいた俺としては菌類が分類として菌界で植物は植物界だと知っているし、藻類は扱いが複雑と読んだ記憶もある。

 確かマイヤーの生物学的種概念だったか。

 でもそれが言われたのは一九四二年だし、そもそも世界が違うからおかしいと思うことがおかしいのかもしれない。

 

「木にまとわりついていたツタが一斉に行く手を阻んで、そして鞭みたいに襲い掛かってきて。死者は出にゃかったけど遠征部隊は壊滅的状態だったの」

「倒せなかった……のか?」

「倒せはしたけど、数が多すぎて戦闘の持続ができにゃかったの。私も頑張ったけど全体の戦線維持ができにゃくて結局勝ちを諦めて一点突破で逃げて……(にゃさ)けにゃいにゃぁ」

「戦って、情けないはねぇよ。そんなん言ったら戦えてすらいない俺は、俺達は死にたいレベルだろうが。……素直にスゲえよ。尊敬する」

 

 追いつける日はいつだろうか。

 来るのだろうか。

 わからないが、尊敬に値することなのは確かだろう。

 勝った負けたは関係なく、前に進んだことにこそ価値があると俺は思う。

 

「ありがと」

「?」

「実は引退した理由に……ちょっとこれもあったんだよね」

「そっか」

「今まで自信がにゃくにゃってたから。でも復帰する気にゃいけど」

「自由にしろしろ〜。引退した時点で開拓兵になった理由とは決別したんだろうし、だったら好きに生きりゃいいさ。モテたいから受付続けるってのも良いんだから」

 

 本来人は自由で、生き延びる確率を上げるためにルールを創って自分たちを縛った。

 つまりルールは集団を生かすため、集団の不利益を排除するモノ。

 誰にも迷惑をかけていないフェーニャンが責められるいわれはない。

 

「私が、目指した理由……決別した……」

「今のその生き方だって立派だと思うぜ。俺は非常に助かってます」

 

 普段の感謝。

 しばらくいなくなるこの機会にちょうど良いと考え、ちゃんと心を込めてお礼を口にした。

 

「そっか……」

「おう」

「これからはもっと前向きでいられると思う!」

「俺が言うことじゃないかもしれないけど、頑張れよ」

「あ、うん! お互いににゃ!」

 

 いい話が聞けたと思う。

 遠征組の警戒をかいくぐる擬態能力。

 それはきっと俺が戦うであろう相手にも同じことがいえるはずだ。

 力量は全然違うが、問題なしと自分の警戒を過信してはいけない。

 その学びはきっとすぐに役立つ。




 おう、出会うフラグビンビンじゃねえか
 まあウチのヒイラギは彼女も嫁もいないし、なんなら好意自体よく理解してないから変な勘違いでも起こらない限りへーきへーき


 霧深き鋼森での一斉攻勢はFF9の魔の森脱出時のムービーをイメージしてます
 まあFF9を見たことなくても別に読む分には問題ないです
 木自体の位置は動かず枝で叩き潰しに掛かってくるのと、ツタや茨が一気に襲い掛かってきたり行く手を塞いだりする感じです

 ちなみにやたら硬い木だからモンスターってのはないです
 この世界には金属樹がありますし宝石樹もありますし、簡単に見分けがつくほどちゃちな擬態もしてません
 魔力による探知もパーペキ
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