ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「そういうヒイラギは最近どうにゃのさ?」
「俺か。俺は……まだ二週間だからなぁ。こっちに来てすぐの頃から一週間くらいベアトリクスに鍛えてもらって、そこからゼーフルスに行って、戻ってきて。なんか凄いことしたっけかなぁ?」
「だったらゼーフルスの
「オッケー」
正直話すことは
「試験で死にかけたのは話したっけ?」
「う~ん、聞いたようにゃ聞いてにゃいようにゃ……死ぬのにゃんてよくあることだからにゃぁ」
「んじゃ言ってない前提で話すけど。海辺の洞窟で二日戦ったんだけど、その初日に五〇弱倒して帰ろうとした時に潮の満ち引きとか
「今生きてるし無事だったんだろうけど、どうやって切り抜けたのさ。はっきり言ってヒイラギの実力的に前後挟まれて生き残れる確率って結構低いと思うんだけど」
「……まあ、フェーニャンの言う通りあのままだと死んでただろうな」
俺の戦っている姿を見たことがないだろうにそこまで正確に理解できるのは流石だ。
それは開拓兵としての経験か、受付としての経験か、両方かだろう。
「デューベって一つ下の男の子に助けられちゃってさ。純粋に凄いと思うと同時にその何倍もの恥ずかしさと情けなさがあったよ……」
「にゃんとなくわかるよ。私もアデル様の強さを目の当たりにした時は自分が雑魚だったことを思い知ったから」
「そうなのか……」
「さっきの話の森で、殿を務めて一人でほぼ全てを対処してたから」
「それは……ヤベーな」
鮮明に想像すれば、嫌な気持ちになった。
自分は何もできずに一方的に守られるだけ。
そんな思いはできればしたくない。
「
「そうだな。それで次の日はうっかり狩りすぎたって体を装って追加で一〇〇ちょい倒して試験は終了」
「ん? 初日に五〇倒せにゃかったのに次の日はその倍以上? おかしくにゃい?」
「それは思い付きで新しい魔術を創ったからだ」
「凄くにゃい!?」
今までで一番の驚きを見せるフェーニャン。
一瞬驚きすぎじゃないかと思ったが新しい魔術を創ったなんて誤解を招く言い方をすればオーバーリアクションにもなると苦笑が漏れた。
「多分既存だけど俺は知らないからそういう言い方しただけだけどな」
「知らにゃいことを思いつくのが凄いよ。そういう発想力は大切で、にゃくしちゃダメ、だからね?」
「おう。もちろん」
似たようなことをデューベにも言われた。
やはり社交辞令的な嘘ではなく、二人とも本心で、ホッとする。
「流石にそのまま使うのは無理だけどモノとしては……こんな感じだ」
魔術で水球を創って、それを凍らせてウィスキーの丸氷のように酒の中に入れる。
「珍しいにゃ」
「面白いっしょ」
「うん。見たことにゃいから新鮮。凍らせる魔道具はあるけど魔術で使える人は初めて」
「なんでだろうな?」
「さあ?」
多少の適性はあっても完全に使えないということはないはずなのに凍結魔術は使用者がほとんどいない。
熱という概念に対する理解の違いだろうか?
それとも凍結魔術を戦闘には役に立たない魔術と考えているのだろうか。
わからないが開拓者のいない分野を好き勝手に歩き回るようなこの感覚は楽しいから問題ない。
「まあ、だからこの魔術で
「……その時ってさ、普段以上の実力を出せてる感じがした?」
「そう、だな。うん」
「戦ってて答えが見える感じがした?」
「したな。どう動けばいいか、最適解がわかる感じだ」
言われてわかるあの時の感覚。
意識と無意識が統一して、身体が勝手に動くような感覚すらあった。
そんなことはないのだけども、普段よりも思考が身体へダイレクトに伝わっているような動きができてそんな感じがしていた憶えがある。
やはり開拓兵をやっていただけあってフェーニャンも憶えがあるのだろう。
「戦ってたらたまにその感覚がある。積み重ねてきたモノが一気に形ににゃるような、そんにゃ感覚」
「気のせいじゃなかったんだな」
たまにあの時のことを思い出しては『偶然の思いつきをそう感じてるだけの自意識過剰なんじゃ』と考えたりしたことがあった。
少しホッとする。
「もしまたそうにゃったら、その時は自分を疑わにゃいで。普段はそういう考えで戦ったら死ぬけど、その時だけは自分の感覚に身を委ねて」
「お、おう?」
「簡単に、成長してるときに雑念はいらにゃいから」
「オーケー、理解した」
詳しい説明はいらない。
成長の邪魔はしない方が良いだろう。
多分心理学でいうところのフロー的なヤツだ。
「フェーニャンがそうなったときはやっぱかなり苦戦してるときとかだったのか?」
「ん~、多くはそうだね。追い詰められたときとか一対多数で戦ってるときとか。でもにゃんでもにゃい戦いの時もにゃる時はあったかにゃぁ」
「そっか。いやまあ、そっか。成長はちゃんと経験積んでたら常にし続けるモンだし」
「うん。たまに寝てる時にふと目が覚めて色々戦い方が思いついたりしたこともあるし!」
「……起きるのはちょっと嫌だな。イヤ、まあ成長はできるから良いけどさ」
睡眠くらいは普通にちゃんと取りたい。
こちとら高校生になっても早寝早起きの健康優良児だったんだ。
つーかむしろ徹夜とかがムリ。
だから受験の時とかテストの時とかも一夜漬けはしなかった。
まあ勉強なんて授業適当に聞いて教科書授業時間の暇つぶしに読んでりゃ必要ないから別にその辺は気にしてなかったけど。
でもこれから夜通し戦うことがあると考えたら徹夜の訓練はしておいた方が良いのか……。
心の健康も身体の健康も大事だ。
それをわかっているからこそ休息はちゃんと取りたいと思うのだが、開拓兵としての仕事を考えるとどうしても避けては通れない道な気もする。
この辺りはあの三人に教えたことと共通するモノがある。
天秤にかけて、選び取った結果を想定して動け。
……やはり避けては通れない。
「とりあえず、そうやっていきにゃり成長することもあるって憶えててね」
「はいよ。んでなんの話してたっけ?」
「え~、と……にゃんだっけ?」
はて、本当になんの話だったか。
今の話から連想ゲーム的に辿っていくと、成長、戦い、凍結魔術、
……本当にそうだっけ?
その前は……フェーニャンの知り合いの話をしてて、やめようってなって俺に……ああ、とりあえずなんか俺の話をすればよかったんだったな。
「最近調子どう? って感じだったな」
「そうだったにゃ」
「とりあえず強くなるため頑張ってるけどやっぱ二週間だと目立った出来事は特にないしいきなり強くなるなんてことも難しいんだよなぁ・最近受けた、というか今日の依頼だと頑張って教えてみようと思ったけど一般に上がりたてだから役立つアドバイスはほとんどできてないだろうし」
「確かに他人に対して教えるのって難しいよにゃ~」
フェーニャンも誰かに教えたことがあるのか。
まあ戦いって理屈より感覚の方が強いだろうから言語化が難しいし。
感覚派っぽいフェーニャンは俺以上に難しそうである。
「ちにゃみにどんにゃ感じに教えたの?」
「どんな……まずそれぞれと戦って、俺でもわかる範囲の問題点を指摘。その改善方法を軽く教えて、ついでにそいつらでもできる動きを教えて終わりって感じだな」
「にゃるほど。悪くはにゃいと思うよ。そもそも学園側としてはヒイラギたち開拓兵を基本は戦うための相手として呼んでるから、ちゃんと戦った時点で初めての相手と戦うことで得られる経験は積ませられたワケだし。物事を教えるのは教師の務め、ヒイラギに求めてるモノじゃにゃいけど成長の手伝いはできてるし」
「別に教えなくても戦ってりゃよかったのか……」
「あはは、ヒイラギみたいに教えても問題はにゃいよ。おかしな動きをすれば教師が指摘するからにゃ」
「そうか」
「それに改善方法を軽く教えただけ、全て教えて考える機会を奪ったワケじゃにゃい。教えた動きもその子たちにできる範囲の、分相応な動きだけにゃら問題にゃいし」
「そうなのか」
「技は一つの武器。過ぎたモノを与えたらその子たちは腐るけど、分相応にゃら問題にゃしッ」
「まあ、そこは一応気をつけてたから」
気をつけていた、といっても【洗脳】で身体を動かしてダメージがないかってことを考えてたんだけど。
そこまでは考えてなかったと思う。
一つ間違えれば俺はあの子たちをダメにしてたのか……。
やっぱり俺には他人に教える資格なんて……いや、そう考えるんじゃない。
教えることは悪じゃない、浅慮が悪なんだ。
次の機会があれば、その時はもっと注意しよう。
その子に合う動きかどうかはもちろん、その動きを教えたらその子がどう成長するかっていうのも。
流石にそこまでは無理かもしれないけどその子が自分を過信しないかどうかくらいはちゃんと考えよう。
「初めてにしてはちゃんと教えられてると思うから、そんにゃ顔しにゃい!」
「力強ッ!? ……わかったよ、わかりましたともっ、悪い方向には捉えませんよっ」
背に刻まれたモミジの痛みに影響されて語調が強まりつつも励まされたおかげで心は穏やか。
その痛みがなんだか嬉しく感じる。
向けられた優しい微笑みに俺は少し恥ずかしくなった。
張りきりすぎてヒイラギはやらなくて良いことにまで手を出していたという……
まあそれがマイナスに働くことはないでしょう。多分
その結果どうなるのかは、後のお話
少なくとも三〇話くらいは関係ない話でしょうね