ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第六二話 旅中砂漠で一本の針を見つけたそんな心境

「お疲れ様です」

「ああ。ちなみに参考までに聞きたいんだがこれは時間換算で多い方か少ない方か」

「適性、ペースなどがありますから単純な比較にしかならず実力把握には不充分ですが……多いですね。比較的簡単な部類とはいえ場合によっては成り立ての一般開拓兵には荷が重い相手、初めてということを加味すれば平均の倍は倒しているかと」

「そうか。わかった」

 

 やっぱ【凍壊(フリーズ)】と【マジカルパンチ(仮)】は強いな。

 とはいえ偶然上手くいっただけ、まだ油断はできない。

 

「ちなみに今から宿って泊まれると思う?」

「雑魚寝であれば可能かと」

「個室は?」

「難しいのでは? この街といえど宿は宿ですから」

「そっかぁ……」

「ギルドの酒場であれば常時営業してますから最悪そこで夜を明かすことも視野に入れてはいかがでしょう」

「見に行ってみる」

 

 まあ夜だしそうだよな。

 浮かれてないで先に宿見に行ってりゃ可能性あったのに……。

 

 軽く後悔だ。

 とはいえ酒場か雑魚寝程度なら許容範囲内。

 ダメージは軽微だ。

 

「いらっしゃいッ。注文は決まってるかい?」

「あれば酒はツィッタのミード、なければ適当に甘いの。飯は店でおすすめのがっつり系肉料理」

「あいよ!」

 

 ……そういえば人混みにも大分慣れたな。

 前だったらこんな騒がしいところ絶対無理だっただろうに。

 なんならうるさいとも感じなくなってる。

 てかなんで前はうるさいのが苦手なんだったっけ?

 単純に耳が痛いって以上に無意味にやかましくて鬱陶しかったんだったか。

 

「おまちどお!」

「ん。これ代金ね」

「また注文が合ったら呼んでおくれ!」

「ほいほい」

 

 ステーキか。

 ざっくり四〇〇グラム。

 動くから腹にいっぱい入るようにもなったな。

 入るようになったっつーか、入れなきゃもたないっつーか。

 

 ほとんど運動しないタイプだったから食事量なんて普通くらいだったが、この三週間で日本にいた時代以上の運動をしたんじゃないかと思えるレベルで動きまくったから空腹になるのが早く感じる。

 正直これまでのような一日三食じゃ足りない気すらしてくる。

 

「熱ッ、熱ッ、チキショー、舌が火傷するわッ」

 

 舌が火傷する、というか実際火傷した。

 ヒリヒリする。

 

「あ、でも美味い」

 

 舌を治癒し、軽く温度を下げてから再び口に運ぶとその美味さがはっきりとわかった。

 味付けは塩とスパイスのみのシンプルなモノながら確かな満足感がある。

 落ち着きながらも平坦ではない、飽きにくい味だ。

 

「ふぁぁ……ねみぃ」

 

 興奮で一時的に疲労を忘れていたが探索を終えて酒を飲んで脳の一部が麻痺したからだろうか。

 一気に疲労感が襲い掛かってきている。

 これまでの疲労が全て積もり、全身から活力が失われ、もはや動く気にすらなれない。

 

「流石にメシ食い切らねえと明日持たん……」

 

 元々午前中は休むつもりだったのだが、このままでは全休になりかねない。

 もうここで眠ってしまいそうだ。

 一人でいるからテンションもすぐ下がるし食べるだけ。

 

「あっ、ごめん。大丈夫?」

 

 突然背後から衝撃を受けた。

 頭がくらくらしていた俺はその衝撃に対する抵抗力を持たず、口をつけていたジョッキにまず衝突して口付近が濡れ、そのまま机に倒れ、口及び鼻の付け根辺りを強打のうえ酒で濡らす。

 

「……」

 

 しばらくの間状況が理解できず、ジョッキを支えにして机を眺めていた。

 俺はいったい何をしていたのか、何がしたかったのか。

 そして身体を揺さぶられる感覚に反応してゆっくり身体を起こす。

 

「……ダレ?」

「怪我は……ああ、顔を打ったのね。ごめんなさい、アタシの不注意だったわ」

「あぁ……ああ?」

 

 俺に当たったらしい女は触診するかのように両手で俺の顔を挟んで俺の顔をジッと見つめると水を魔術で生み出して俺の顔を洗い、タオルで拭いてから治癒魔術を掛けた。

 水の冷たさで僅かに意識が回復する。

 

「加減を間違えた……?」

「んぉ? 何か言ったか?」

「いえ、なんでもないわ」

 

 あまり意味のあるモノではないが、会話という行為によって回復した意識。

 酔いを軽減させるため水を飲みつつ軽く魔術を掛ける。

 麻痺した頭で魔術を使っているせいで頭痛がする。

 

「他に痛いところはない?」

「平気だ」

 

 薄い灰色の肌、くすんだ淡い赤紫色の髪。

 それは言うなれば灰青色と紅藤色で。

 表情や容姿も相まって独特な雰囲気を醸し出していてどことなく立ち入り辛い。

 恐らく本人はそういうつもりはないだろう。

 口調からは人を遠ざける要素は感じられないし、周囲も彼女に対して容姿や雰囲気から拒絶感を持つ者はほとんどいないはずだ。

 けれど少し、違和感がある。

 嫌悪感は一切ない。

 その容姿ゆえか『嫌い』『苦手』に類する感情一切がなく。

 むしろ親近感さえあり。

 ただ一点、勘が無条件信用を拒んでいた。

 

「上等そうな装備……もしかして結構経歴長い感じスか?」

「そうね、詳しくは教えないけど年単位で開拓兵をやってる。遠征開拓兵にはなってないけどね」

「それはそれは大変失礼をば。これといった損害はありませんのでどうかお気になさらず」

「……」

 

 勘を信じ『格上とは知らず生意気な口を利いたが相手のことを知り委縮した、気に留める必要すらない三下』を演じる。

 が、女はニコニコと俺を見つめて立ち去ろうとしない。

 

「……どうかしました?」

「……ううん。なんでもないよ。ところでキミ、名前は? それと敬語はいらないよ」

「わかった。……ヒイラギだ」

「そっか。ところでアタシ、ヒイラギに興味あるな~」

 

 さて、何が目的だ?

 明確に敵意はないけど隠すのが上手いだけかもしれないし。

 それにさっきから引っかかるこの感覚……。

 

「へ、へぇー……」

「ふふっ、冗談。揶揄っただけよ」

「な、なんだ……」

 

 ヤベー奴に目をつけられたのかと思ってビビった。 

 まあそりゃそうだよな。

 俺に目をつける理由なんてほぼない。

 

 あるとしたら新顔という点。

 そしてそこから派生して勧誘という点。

 カモろうとしているという可能性。

 その他文化感的認識差による予測不可能な可能性と純粋に頭が回らず見落としている可能性。

 

「まあどうせだし一緒に飲まない?」

「別に良いけど」

 

 若干怖いけどここで断るとちょっと不審かもだし、断る理由もあまりないから良いだろう。

 年単位の歴ならちょっとの話からでも得られるモノも多いかもしれないし。

 

「じゃあ質問なんだけど良い?」

「まあ、答えられない質問は基本ないし嫌な質問だったら黙秘するから会話の対人距離(パーソナルスペース)とか考えずずけずけ質問して良いよ。気にしねーし」

「ズバリ。童貞?」

「んぐぇッ!?」

 

 酒が変なとこ行った!

 鼻と耳が変な感じするッ。

 

「お、やっぱりなのね」

「普通に童貞非童貞とか関係なくいきなりその質問されたらこういう反応すると思うぞ? ちなみに答えだがまあ予想通り童貞だ。ついでに言えば現在一七歳な」

「その歳でまだ童貞なのね~」

「……」

 

 え?

 この国の人間ってそんなに早いの?!

 そりゃ俺のいた環境に比べて死の近い倫理観だからそうだろうけど。

 一七で童貞なの驚かれるレベルの話なの?

 てかそれってつまりデューベも……。

 ええ……。

 

「ねえ、どうして?」

「どうして、って……今まで女になんて大して興味なかったし接する機会もなかったから……。てか逆だな、接する機会がなかったからどうせ接さないならってことで興味失った感じだ」

「へえ……その言い方だと今は興味あるみたいに聞こえるけど……どうなの?」

「彼女とか嫁とかはいないけど……まあ、仲良くしてる奴は何人かいる、よ」

 

 てかなんであって間もない相手、しかも女にこんなこと話してるんだ?

 別に減るモンねえからいいけどさ。

 揶揄うのってなんなのさ、アンタの癖?

 

「ちなみにそういうアンタは? あ、酒おかわり!」

「あ、じゃあさっき迷惑かけたお詫びに奢るわ。アタシ? アタシは……まあ昔からいたりいなかったりね。長持ちしたことないのよ」

「そういうモンなのか、この国の感覚はわからんなぁ。んじゃゴチになりま~す」

 

 正直一度も付き合ったことのない俺には『いたりいなかったり』というのは全くもって未知の世界だ。

 ずっと『日本人』として生きてきたから『一人の相手を一生愛する』っていうのが倫理観にある。

 この世界に来てこの国がハーレム可能だと理解した時点で『相手を一生愛する』って変化してるのだが。

 結婚ではないにしろ恋人を平然と何度も変えるというのは少し認識的に着いて行きづらい。

 なんというか簡単に諦めているみたいで『好き』という概念が軽く思える。

 

「異世界人なのね。だからちょっと雰囲気違うんだ」

「そゆこと。三週間前に王都に転移してきました~、ってね」

「三週間前……へぇ……」

 

 あ、あれ?

 なんか目線が怖いですよ?

 や、やだなぁ。

 プルプル、ボク悪い異世界人じゃないよ。

 お姉さんが異世界人にどんな感情を抱いてるのか知らないし、恨みがあるのかもだけど。

 俺関係ないからッ。

 

「一般、なのよね?」

「おう、これが証明のタグだ」

「ホントね」

 

 もしかして嘘を言ってると思われたのだろうか?

 

「他に質問は?」

「前の世界でも戦ってたの?」

「うんにゃ。前の世界じゃロクにケンカもしたことのない貧弱少年でしたよ~。だから今もそこまで身体は太くないし、ホラ」

「そう? 結構鍛えられた身体だと思うけど?」

「まあ三週間、というか実質二週間は鍛えたし」

 

 結構体重も増えた。

 前は一七〇センチで日によって五〇キロを反復横跳びしてたけど今は筋肉で六〇強くらいに。

 素の身体能力も結構上がったよなあ。

 

「ソロなの?」

「そうだな。一緒に来た奴とは合わなかったし、こっちの方は常識に差がある間に組みたくなかったから」

「なんだ、パーティも童貞なのね」

「そうだけど言い方ぁッ」

 

 なんでそんなにそれを引っ張るし。

 良いじゃん童貞で。

 別に恥ずかしいことじゃないでしょうが。

 むしろ童貞の何が悪いのさ。

 

「なら明日試しにパーティ組まない?」

「うぇッ!? でも実力全然違うしぃ……」

「関係ないわよ。アタシ何回も色んな人とパーティ組んでるし」

「こっちの常識まだ中途半端だしぃ」

「異世界人って知らなかったら戸惑っちゃうけど知った今なら別に気にしないわよ。常識が違うんだなってくらいにしか思わないから」

「そうなのか?」

「他の人がどうかはわからないけどアタシはそれで怒るほど小さい器じゃないわ」

「おっふ」

 

 逃げ道が完全閉鎖。

 ええ……グイグイ来る人ちょっとやり辛い……。

 なんか騙そうとしてるんじゃないかって疑っちゃって怖いのよ。

 

「アタシと組むのは嫌?」

「大丈夫、です……」

 

 何もしてきてない人相手に面と向かって『NO』とは言えんよなぁ。

 あくまでこっちの選り好みだもん。

 それで何も悪くない相手傷つけるとかになったら嫌だし……。

 

「…………アンタ、名前は?」

「アタシはクアークよ。よろしくね」

「あ、ああ……よろしくッ!?」

 

 その名前ちょぉっと聞き覚えがあるなァ!

 つい一週間くらい前聞いたなァ!

 気のせいだよねェ?

 総人口一万強の街に来て数時間で注意しろって言われてた人間に遭遇して目をつけられるとかどういう確率だよッ!!?

 確かに条件はそれ以上に狭いけども!

 開拓兵って条件が加わるだけで数パーセント、数百人程度まで絞られるけども!?

 アリエンアリエンアリエン。

 そう。

 きっとありふれた名前なんだよきっと。

 花子(クアーク)とか。

 その類だ、うん。

 

「……フェ、フェードロヴァって女獣人とパーティを組んだことは?」

「フェードロヴァ、フェードロヴァ……女獣人のフェードロヴァ……。もしかして言葉がところどころにゃってなる人のこと?」

「……よぉし! さっきの話なし! 俺ソロでやるから!」

 

 ビンゴォォォォォオオオオッ!!

 男癖の悪い他人に好意を持ってる男じゃないとダメなアレな趣味のクアークだッッ!!

 

「ああ、もしかしてアタシの話聞いた?」

「ヤバい女だって」

「ふふっ。流石に男なら誰でもいいワケじゃないわよ」

「……」

「ヒイラギを誘ったのは純粋な興味。短期間で成長した素人が気になっただけよ」

「……」

「誰に対しても好意を持ってないヒイラギに手は出さないわ。普通に開拓兵として活動だってするしね」

「……はぁ。わかった、信じるよ。それに万が一何かあっても俺が拒絶すれば良い話だし」

 

 ぶっちゃけ美人と思っても好意がないから欲情しないし。

 恐怖が強いし。

 

「面と向かって拒絶されると傷つくわね」

「す、すまん……って、日頃の行いだろうが」

「それもそうね」

 

 有り体に、恨むなら過去の自分を恨め、って話だ。

 

「ちなみにフェードロヴァからはなんて言われてたの?」

「ん? ざっくり、アンタのせいでモテなかったとか、気になってた男盗られたとか」

「自分が女として勝ってるって実感が気持ちいじゃないの」

「うわぁ、屈折してるぅ……。まあ、だから気をつけろって」

「初対面の子に怯えられるなんてフェードロヴァも酷いことするわ」

 

 だから恨むなら過去の自分をだな……。

 

「でもちょっと変……」

「何か変なのか?」

「気をつけろって言われたのよね?」

「ああ」

「私の趣味を知らないワケがないし…………ああ、そういう」

「おん? なんか言ったか?」

「悪いようにはしないから安心して。って言ったの」

「はいはい。まあ開拓兵としては悪く言ってなかったし、そっちの腕は信じさせてもらうよ」




 さぁて、ヒイラギは今後どうなるかなぁ(暗黒微笑(ダークネススマイリング)
 一つ言えるのは長い時間を共に過ごせば過ごすほどメンタルダメージが半端ないってことですね
 まあその分得られるモノもあるけど

 他人に好意を持ってる男じゃないとダメ、というのは完全ではなく、自分以外の女が好意を向けている男でも食指が動きます、動いちゃいます、うねうねって
 フェードロヴァが好意を向けていた男が盗られた理由の大体がそれ
 男からフェードロヴァに対する行為は『仲間』の域を出ず、フェードロヴァは『異性』として認識し始めていました
 クアークはそういう色恋系にかなり敏感で察しが良いので、ハイ

 ちなみになんでそんな性格かと言えば、まあ顔とかの生まれ持った能力が異性を惹きつけやすく、それに対してポジティブに捉えた結果がそういう趣味
 ただ狙われた男はこれまで全員クアークの期待していたような男ではなく、大体が少しして別れてます
 ヒドイネ
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