ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「……どこだここ」
「ごめん、起こしちゃった?」
「!!?」
目覚めると知らない天井。
いや、それ自体は良い。
この一週間はそれぞれ違う村や町で寝泊まりをした。
日ごと天井が違うのは慣れた。
けれど宿に入った記憶がない。
そして声がしてその方向に目を向けると美の結晶のような女の人がいた。
声だけで異常に気づかずその姿を見て初めて異常に気づいたのは寝起きだからか。
「あ、ああ……思い……出した」
ぼんやりと昨夜の記憶が復活する。
どうしてここにいるのかは知らないがその女の人ができれば近づかまいと思っていたクアークということは思い出した。
「ん? ……ふぁッ!?」
違和感。
ハラリと落ちた布団と直後の肌寒さ。
ふと視線を下に向けると上半身は何も纏っていない。
咄嗟に布団をめくって確認するがちゃんとズボンは履いていて途轍もない安堵が襲い掛かって来る。
「よかったぁ」
「あの、ワリと本気で傷つくからそういうのやめて?」
「あ、ご、ごめん……」
「仕方ないとはいえそういうの何回もすると
「ひぇッ!? 以後気をつけるます!」
確かに今のはかなり失礼だ。
事前情報だけで相手を決めつけて、多分宿に泊まらせてくれたのに一方的に恐怖して。
はっきり言って人間として論外だ。
クズ極まりない。
「えっと。わざわざ俺を運んでくれたんだよ、な? それに泊めて貰って……ありがとう」
「気にしないで。記憶がないみたいだけどヒイラギは自分で歩いてここまで来たの。ただ少し意識が朧気でそのままにしたら危なそうだったから連れてきただけ」
「マジか。ホント助かった」
「別に良いわ。そのベッドは二人で寝ても余裕あるから」
「……ん?」
お、や?
そういえばこの部屋、ベッドが一つしかないなぁ。
いや、いやいやいや。
どう考えてもヤバいわ、コレ。
可能性は二つ。
一つ、クアークを床で寝させてしまった。
二つ、クアークと同衾(やらしいことはせず)してしまった。
「大変申し訳ない!」
「別に気にしないで良いよ。いびきが掻いてなかったから」
「そういうことじゃねえ……。好きでもない男と一緒のベッドでってことだよ」
「ああ、そういうこと。ホントにヒイラギは初心ね。開拓兵として旅してたらそういう関係じゃなくても一緒に寝るのも裸見られるのも珍しくないから」
「…………よしッ、もうそっちが気にしないなら俺も気にしねえッ。ホントに良いんだな!?」
「うん、アタシは一切気にしてないから」
せっかく忠告してもらってなんだが、自分の目で見て確かめるとしよう。
自分の中の不躾さを追い払うために両手で自分の頬を叩く。
「改めてよろしく頼む」
「アタシこそ、よろしくね」
こうして相対してみると三メートルは大きい。
圧倒的な実力差でもない限りは基本的に大きい=強いとなる。
自分よりも一メートル以上大きく、質量も強度も圧倒的に上な相手を見ると本能的に臆してしまう。
ここまでガッツリ大きな相手と戦うのは初めてだ。
「流石に実力把握せずに一緒は危ないから、頑張ってね」
「はあ、まだ来るつもりはなかったんだけどなぁ」
まだ早いんじゃないか。
それが俺の素直な感想だ。
ゴーレム系は動きこそ大したことがないものの決め手に欠ければ苦戦し、敗北もありえるという評価である。
つまり
「ま、ここまで来たんだ。やるしかねえよな」
ガントレットをつけた拳を構え、短剣を構える。
「おっ」
何か、少し興味深そうにクアークが反応を見せた。
そんなにやる気を見せたのがおかしかったのだろうか。
情けない俺だってやる時はやる。
伊達に一般まで昇格してないのを理解してほしい。
「とりあえず先手はもらうぞ!」
踏み込み、正面から殴りやすい位置を狙って殴りつける。
場所は股間だ。
とはいってもただの人の形をした鉱物となんら変わらない。
生殖器なんて欠片もついてない。
「かったッ!?」
昨日と同じように魔力を練って殴った。
けれど強烈な反発力に押されて拳は弾かれ、右半身が後ろに仰け反る。
「助言はしないからね~」
「元よりいらんわッ」
弾かれた衝撃に従って後ろに跳ぶと、その少し後に俺がいた場所にゴーレムの拳が降った。
アレはなんだと。
地面が割れているではないか。
そう言いたくなる気持ちを抑えて仰け反った状態から前傾姿勢に切り替えてゴーレムの周囲を動く。
額に『emeth』の文字が書かれた羊皮紙はないから一文字消して死なせることはできない。
「せやぁッ!」
背後に回り、膝裏を殴りつけて機動力を奪えないかと試すが威力が足りず、手の爪ほどの石片が剥がれるだけ。
魔力を込めた一撃がまったくと言っていいほど通用しない。
これはなんの悪い冗談だ、と。
周囲から土を吸収して肉体は再生する。
連続攻撃で削ろうにも時間を掛けたら隕石のような拳が降って来る。
どの手段も、斬撃も、飛翔斬撃も、魔術もほとんど意味を成さない。
「なるほど。期待したんだけどね……。お~い! 大体わかったから諦めて良いよ~!」
諦める?
何を?
戦いを?
勝利を?
諦めろと?
負けろと?
つまりは、死ねと?
「うるせぇ……黙ってろ」
勝って生きて、負けて死んで。
それに反してデューベに助けられて、堪らなく嫌だった。
冷静に。
相手は確かに強い。
硬く、無限に動く。
攻撃はほとんど通じなくて俺の攻撃を今のまま続けてても再生能力と隙のなさで一生勝ち目はない。
けれど決してチート性能ではない。
物理魔術に対する防御力が高いだけで無効属性を持ってるワケじゃないし、再生能力も即時再生というワケでもない。
「ちょっくら付き合え
魔術による攻撃は通用しなかったが妨害はできる。
背後に回って居場所を補足されるまでの間に魔術構築をし、一気にゴーレムの足元を氷結させる。
ゴーレムそのものに対する魔術的干渉は相手の防御力の強さで弾かれるが、その周囲に対しては干渉が可能だ。
足止めはできるはず。
「ッ。流石に無理か」
嘗めるなとばかりに一瞬の硬直の後、氷結は容易く破壊された。
そして近づいてきて。
俺は戦闘態勢の状態でゴーレムを待ち構える。
地面を揺らしながら向かってきたゴーレムはそのまま拳を振りかぶり、後ろに倒れた。
「魔力一気に持っていかれたぁッ!」
やったのは単純な話。
振りかぶった拳が前に進みだす前に拳の正面にバリアを張っただけ。
それはつまりゴーレムは壁に対して片腕押ししたも同然。
パンチのエネルギーはそのまま自分自身に帰って来て、ゴーレムは半回転して地面に倒れる。
「よッ、と」
うつ伏せ状態に倒れたゴーレムの各部位を同質の石で地面に固定しながらその背に飛び乗る。
魔石のちょうど上に手を当て、魔力を徐々にねじ込むとどんどん身体が崩れて魔石が露出した。
装甲となっている肉体が削られ魔術に対する抵抗力が低下した今の状態なら魔術も通用し、魔石は周囲の土ごと凍りつく。
「へ~、勝てるとは思わなかったよ」
「甘く見んなッ、って言いたいとこだけど結構ギリだった。やっぱゴーレムはまだ俺にははえーよ」
「そう……これまでヒイラギは一人で活動してきて師匠もいないのよね?」
「ソロではあるけど一応戦いを教えて貰いはしたぞ。一週間ひたすら戦って受け身を覚えるために」
「なるほどね。まあ口であれこれ説明するよりまずは見せた方が早いだろうから少し見ててね」
そう指を指す。
その方向、少し先には他のゴーレムが。
つまりはクアークが倒すということなのだろうと考えた瞬間には既にクアークはゴーレムの前まで移動していて、俺に動きを見せるためあえて速度を落としているであろう速さでゴーレムを両断した。
「うおぉ……マジか」
もう、全てが信じられない。
一瞬だけ目に映る全てを疑いかけた。
比喩ではなく事実として目にもとまらぬ速度で距離を詰め、極限まで無駄を省いた極地のような動きから繰り出される技が、あれだけ硬かったゴーレムを割らずに切り裂く。
俺の理解を超えた一撃はゴーレムを動かぬ土くれへと変えた。
「ヒイラギも一応武器強化ができるみたいだけど未熟ね」
「そりゃそうだろ、積み重ねてきた経験値が違う」
「そうじゃなくて、やるべきことができてないのよ。まあ教えてくれる人がいなかったなら仕方のないことだけど」
未熟だのやるべきことができてないだの、結局は馬鹿にしてるってこと?
いや、別に腹は立たんが。
わかりきったこと今更言うなってめんどくささはある。
「言っておくけど武器の性能でもないわよ?」
「それは……
「大体はね。正確には少しの
「
「魔力の通りが良い。それだけよ」
「……」
武器の違いでどうこうは言えない。
非常に硬く、また軽く、そして魔力に対する親和性が高い。
ただ元ネタと異なり灰色ではなく美しい水色。
錆びにくくて強度があるから高級な魔道具の回路部分に使われるとも聞く。
が、武装にするには値段と効果が釣り合わなさすぎると言われていて、
正直言えば武器としての性能は俺の装備の方が上な可能性がある。
「別に馬鹿にしてるワケじゃないの。ただ成長が早かったからこその欠点が目立って、それをどうにかしないかしらってこと」
「……俺はもうアンタを信じることにした。強くなる方法を知ってるって言うなら……強くなりたいので教えてください」
「うんうん、頭を下げれて偉いっ。いいわよ」
下げた頭を撫でられる。
子ども扱いをされているみたいで少し嫌だが、事実として俺の戦闘能力は総合的に稚拙。
甘んじて受け入れることにした。
硬くて再生する
控えめに言ってクソかな?
まあそのクソ性能がかつていた龍のデフォルト性能なんですけど
さらには種類によっては空を飛ぶし高度な魔術も使う
クアークはただの変態じゃないです
なろうと思えば遠征にも行ける人間
遠征開拓兵になったらたまに遠征に強制参加になるから現状なるつもりないんですけどね