ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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 昨日の【UA】が100を超えました
 一八時に至っては50
 最近一八時の最高値が20とか30だったのでびっくりしました
 読んでくださりありがとうございます


第六四話 概念と実態

「具体的には何がダメだって言うんだ?」

「うん、まずヒイラギは武器強化の本質を正しく理解できていないよね?」

「……俺の認識では魔力を纏わせることによって武器を強化する、って技だけど」

 

 俺が読んだ本にはそんな感じに書いてあった。

 多少古くてボロボロではあったけど文字は同じだから理解できたし。

 

「そのやり方は基礎の基礎だね。それで強くできるのは力のゴリ押しのようなものであまり綺麗とは言えないわ」

「魔力を纏わせるのが……基礎? 纏い方を変えるとかじゃなくてそもそもが発展するのか?」

「ええ。武器強化っていうのはもっとも単純で根源的な、起源に最も近いと言われている魔術なの」

「魔術? でも構築してないぞ」

 

 武器強化が魔術とは本には一切書いていなかった。

 ただ武器の性能を引き出すと。

 それだけだった。

 

「そう。構築しない魔術。ただ少しやり方を変えるだけで効果は劇的よ」

「へぇ……」

「試しにまずヒイラギの短剣を何もせずそのゴーレムの残骸に突き立ててみて。ああ、軽くで良いわ」

 

 カンッ、と弾かれる。

 言われた通り本当に軽くやっただけだから一切の傷がない。

 

「じゃあ次は普段通りのやり方で武器強化をしながら同じように突き立ててみて」

 

 同じ音で弾かれる。

 僅かに削れたような気がする。

 恐らくゴーレムが死んだことで僅かにではあるが防御力が下がったのだ。

 

「最後。ちょっと触れるわよ」

「えっ」

 

 後ろから抱きつくように俺の右手にクアークの右手が添えられる。

 柔らかくも少し硬く感じる手の感触と、背中に当たる胸。

 

 何をするんだ?

 実はゴーレムがまだ生きてて一緒に剣を振って七回殺すのか?

 こんな短剣で何をしようっていうんだ。

 

 胸に意識をとられるとそれを感じ取られてしまうから俺は決して動じない。

 そもそも好きじゃない相手だと多少戸惑うくらいで性欲対象にはならないのだ。

 

「少し魔力を減らしてくれる? ……そう、それくらいで大丈夫」

「お、おう」

 

 流していたのを一〇〇として九〇まで減らすとストップがかかる。

 九〇を維持しているとクアークの手から俺を伝って短剣に魔力が流れた。

 その量は恐らく一〇。

 つまり合計で一〇〇だ。

 

「今アタシは武器に触れてないわ。込めた魔力も普段のヒイラギの感覚と変わらない」

「そうだな」

「つまり攻撃力はそのままヒイラギのモノで、違うのは武器強化のやり方だけ」

「やり方を変えるって言っても俺はやり方わからんぞ?」

「大丈夫。アタシがもう既に変えてるから」

「え? ――うおっ!?」

 

 言っている意味がわからなくて思わず振り返ろうとした時、クアークの手に引っ張られて俺の手が動き、反射的に目が手に向く。

 倒れるようにして切っ先がゴーレムに向かい、砂山に枝を差し込むような簡単さで短剣が根元まで深々と突き刺さった。

 

 え、は、え?

 死んで多少変わったとはいえ硬いよな?

 硬かったよな?!

 そもそもそうじゃない。

 相手は石、というか岩だ。

 短剣を落としたのと変わらない勢いで突き刺さるワケが。

 

「ヒイラギがこれをすぐできるかと言われたら絶対無理、ってなるけど。それでも普通のモンスターを相手に剣を振るのと変わらない程度には切れるようになるわ」

「スゲェ……スゲェ!!」

 

 学園で三人に教えた時と同じだ。

 再現可能な高み。

 ステイタスなどは関係なく、鍛えさえすればそれ以外が変わらずとも強くなれる。

 途端に楽しくなってきた。

 

「どうっ、どうやるんだ!?」

「そんな新しい遊びを教えて貰った子どもみたいな顔して……。これはそもそも概念の強化なの。今したのは切断力(・・・)の強化よ」

「概念? 切断力?」

「ふふっ、難しく考えなくて大丈夫。大切なのは思い込むこと。ヒイラギの手にあるのは何ものをも切り裂く最強の一振り」

「思い込み……」

 

 よくわからない。

 なぜ思い込んで強くなる?

 まあいい、試すだけならタダだ。

 

「つまりはイメージだな。『最強とイメージする』のが強さに繋がる……」

「ッ! ……」

 

 意識改変。

 ゆっくりと思考がクリアになる。

 一つ一つ雑念が消え。

 普段複数のことに割かれている意識が排除されてごくわずかな項目だけが残された。

 最も強い剣身を覆うイメージ。

 次に強いゴーレムの残骸を切り裂くイメージ。

 思考(イメージ)が固定され、無意識に引っ張られて身体がゴーレムに向かう。

 

「なるほど。こうか」

 

 クアークのようにスパッと、とはいかず。

 切っ先はザリッ、ザリザリッ、ザッとところどころに引っかかりながら表面に一センチから二センチほどの深さの傷をつけた。

 

「……覚えが早いわね」

「まあ、得意分野ではある」

「とはいってもこれは一般開拓兵ならなりたてじゃない限り大体が使えるんだけど」

「え、あの背景みたいな飲んだくれのおっさんたちも?」

「あのね、ずっと生き残ってる人をなんだと思ってるのよ。たとえそれが前進意欲のない同じ生活続きの男だとしても開拓兵としてはそれだけでも凄いのよ? 死ぬのがありふれた世界でずっと生きてる、少なくともアンタより経験値が違いすぎるよ」

「……すまない」

 

 正直衝撃的だった。

 はっきり言おう、俺はそいつら――その人たちを嘗めていた、嘗め腐っていた。

 この世界がシビアな現実なんて思い知っていたはずなのに。

 先輩開拓兵たちのことを『新人にやられるかませ犬』程度にしか認識していなかった。

 いつ見ても酒を飲んでいるだけのみっともないオッサン、というのが素直な認識。

 けれどクアークの言葉は脳天を破城槌でぶっ叩かれた気分だった。

 

「この国を知らない異世界人で、開拓兵になって間もないなら仕方ないかもだけど。一般開拓兵になったからってそこに並んだ(・・・)と勘違いしちゃダメだよ?」

「う、うッス」

 

 や、やべえ。

 目が笑ってねぇ!?

 確かにそうですよねぇ?!

 おいたが過ぎましたよねぇ。

 クアークたちにとって『あ゙ン゙? 雑魚のくせに何粋がってんだ?』って話だよね。

 マジ、ごめんなさい。

 

「その……大変失礼を――」

「ああ、別に気にしないで良いわよ。アタシたちにとってはよくあることだし、実害はなかったから」

 

 実害あったら俺どうなってたんだろ……。

 気になるけど知りたくねえ。

 

「ちなみに結局これってどういう理屈?」

「……さあ? 思い込みで強くなる魔術ってみんな考えてるわね。正直理屈を知らなくても使えるから」

「ああ……魔道具の理論は知らんでも魔道具は使うみたいな」

 

 ぶっちゃけ俺も魔道具の仕組みは初歩的なヤツくらいしかまだわからん。

 ずっと使ってたスマホもパソコンも理屈なんてほとんど説明できない、てかあれを全パーツに関して完全に理解してて説明できる人っているのか?

 ……そういえばこっちの世界に来て三日くらいでスマホ壊れたんだよなぁ、充電は半分以上残ってたしモバイルバッテリーもあったのに。ついでにソーラーチャージャーも。

 使い道ほとんどなかったし別に良いんだけど。

 

「そっか。思い込みで強化か」

「うん。だから別名武想強化」

「武想強化……ドストレートだな、わかりやすくて良いけど」

 

 わかりにくいよりは良い。

 

「でも本当に初めてにしては上手いと思うわよ」

「そうやって褒めて油断してる隙に突き落とす気だろ」

「どれだけ人間不信なのよ。……別にそういう意図はないから」

「ホントォ?」

 

 教える側が手放しに褒めるってのは信じられない。

 

 俺はやけに褒めてくるクアークを警戒しながら【洗脳】を切って、ザクザクとゴーレムに短剣を突き刺す。

 流石にさっきほどの切れ味はないがそれでも結構効果は高い。

 

「普通の人は信じきれなかったり想像しきれなかったりで使えるようになるまで少し掛かるのよ」

「あ~。まあ……意識の切り替えは訓練したから素でできるな。思い込みの強さに関しては……この世界なら何でもありだろってくらいだな。この世界のことほとんど知らんからこの世界の限界とかわからんし」

「そうなの。それは都合が良いわね」

 

 利点だけではないのだが、まあそれはクアークも理解しているだろう。

 一長一短というヤツだ。

 

「ところで後ろに倒したあと、どうやって地面に固定したの?」

「ああ、あれ? 普通にゴーレムと地面の境界を弄っただけだぞ」

「? 土魔術で地面を操作しても壊されちゃうわよね?」

「だから地面との境界を弄っただけだって。入手したゴーレム石片に魔力を同調させてそのゴーレム石片と同質の素材を生成、ゴーレムにとってそれは肉体も同然だから増えても異常なしだし伸ばした部分に地面の成分を少しずつ伸ばして地面全体を強化すれば問題なし」

「……つまり?」

「……壁を作るからダメなのであって混ぜてやれば壊されにくい」

「なるほど。わかったわ」

 

 物質的な壁を創っても壊されるのは凍結で理解した。

 だったら壁の概念を少し変えればいいだけの話。

 

「単純だろ?」

「それを咄嗟に思いつくのが凄いわ」

「誉め言葉か。ありがたく受け取っておこう」

 

 ……ああ、なるほど。

 戦いにおいて大事なのはこういう『イメージ』なんだな。




 昔ラノベでよく見かけた『新人冒険者の主人公が先輩冒険者に絡まれて実力差を見せつける』ってシチュ、確かにアピールには良いですけど普通に考えて説得力が薄いですよね
 多分ああいうシチュで出てくる先輩冒険者って見せかけだけ整えた活動歴は主人公と大して変わらない奴って捉えるしか説明がつかない気がします
 もしくはモンスターと戦わない安全仕事専門
 過酷な生存競争を繰り広げてるゴブリン相手に勝てるタマじゃないだろうし……

 才能なんてなくても『一万時間の法則』で継続は力なり、ですよ
 ベテランに新人(しかも大体がロクに戦ったことのない主人公)が勝てるワケねえだろ、というね

 ホント、ヒイラギはその道の大先輩を嘗め腐り過ぎですよ
 ヴァカめ!
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