ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「忘れてた……そういえば寝る場所……てかそもそも昨日金払ってねえ……」
「あ、大丈夫よ。先にしばらく分払っておいたから」
「……いくら?」
「別に気にしなくて良いわよ? 今日の活動でもほとんどヒイラギが倒したのにお金貰っちゃってるし」
「それは色々教えて貰ったからなのだが?」
「それにお金が欲しいワケじゃないの」
街を歩いていて、どこへ行っているのか、帰っているのかという考えから繋がって思い出したこと。
お金を渡そうとするが止められ、手は行き場をなくす。
「なんのため……やっぱいいわ、なんとなくわかる」
「そんなの男を喰うために決まってるでしょ」
「俺、いいっつったよね……」
なぜ話したし。
いらねえよ、そんなクソほど価値のない話。
「……どうせだ、そっから話広げるか。……目的がそれならなんで開拓兵になったんだ?」
「強い男を揶揄うためよ」
「何その、女が英雄を好むのは、英雄に征服されようとしているのではない。英雄を征服しようとしているのだ。的思想、こえーよ」
「良い言葉ね。でも人間ってそういうものでしょ? 周囲よりも優れているという自覚が人間の原動力になるんだから」
「確かにな。俺も強いモンスターに勝つのは楽しいし嬉しい」
「ね? 人間がそうやって進歩してきた以上抗いようのないコト。アタシはそれに対して他人より正直なだけ」
「それで捨てられる側が不憫でならねえ。まあ騙されるのが悪いんだろうけどさ」
正直その男たちに対して強い感情は湧かない。
精々がテレビで見た貧困地域の子どもを見る程度、いやそれよりはまだ少し強いか。
その男たちというのは以前の俺にとっての日本人という概念。
同じ国だからそこそこ近いし自分にも関係があって、貧困地域は国自体が異なるほとんど無関係な存在。
だからといってどうということはないが、少なからず自分に関係が近い分そのお子達に対する同情心は強くなっている。
「とりあえず、なるほどね。強い男を夢中にさせたいだけなら娼婦でもできるが他の奴のじゃねえと満足できねえって趣味と両立させるには開拓兵が楽だわな」
「そうね」
「てかクアークのこと考えたらやっぱ俺いない方が良くね?」
「別に毎日そうってワケじゃないわよ。仕込みでしばらくしない時もあるし、単純に気分じゃない時もあるから」
「男落とすこと仕込みって言うのやめーや」
普通に怖いわ。
なんでそんな当然のような顔で言えるんだよ。
息をするように発された言葉に背筋が僅かに冷えた。
個人の趣味だし俺は俺自身を正当侵して健常者だと言い張る異常者じゃないから強くいう気はないが億が一にでもその矛先が自分に向いたら、と思うと少し恐ろしい。
「言っとくが俺は好意を一切向けられてないし、そもそも俺は他者に向ける好意がどういったものなのか理解すらマトモにできてねーからな?」
「またまたぁ」
「いや、マジで」
「……自覚なしなの?」
「うん。普通なら幼少期にするはずの初恋がなかったから、そういうのわからん」
「いや、そういう……うん……」
マジか、って感じの目だね。
まあ俺も普通の感覚だったらそうなるんだろうけど。
「異世界人はみんなそう……なワケないわよね。
「正解。人類全部
「ならヒイラギもいつかは理解できる時が来る可能性があるってことよね?」
「可能性はな」
人間、理解する気さえあれば理解はできる。
俺は別に恋だの愛だのをバカにしてはいない。
それをバカにしたらそれを使ってきた人間という存在を否定することになり、
そういうのを俺は尊いと思ってるし、だからこそ理解したくもある。
「なら頑張りなさいよね」
「言われんでも」
「なんでもそうだけど、人間何かを好きになった方が強いんだから」
「そうだな。その通りだ」
好きこそものの上手なれ。
興味関心が強ければそれだけ憶えられるし、好きだからこそそれが活力にもなる。
「やべえと思うかもしんないけど、俺は戦うのが好きだし、だからこそ頑張れるからな」
「同じように誰かを好きだからこそ生まれる力もあるの。アタシはまだわからないんだけどね」
「そうなのか?」
意外だ。
愛だのなんだのに熱心だからそういうのが普通と思ったのに。
もしかしたら繰り返し過ぎてわからないとかだろうか。
「アタシが男にちょっかいかけるのは自分が上だって自覚する快楽のため、男を心の底から好きになれたことがないのよね」
「なんだよ、クアークも同じようなモンじゃねえか」
「あら、アタシはちゃんと好きって感情がわかってるわ。色んな人を見てきたからどういう風なのが好きってことかはちゃんとわかってて、アタシは好きになれたことがないだけ」
「よくわからん!」
なんで好きになったことがないのに好きがわかるんだよ。
「ヒイラギは好きって感情を理解しようとし過ぎなのよ。そういう感情は考えすぎてもわからないモノよ。例えるなら
「すまん、その例えがわからん。説明くれ」
「名前の通り見ようとしたら見えなくなるモンスターのこと。見ようとしなければ見える、意識しなくして始めて見ることのできるちょっと厄介なヤツなのよね」
「なるほどね。木を見て森を見ずってか」
にしても面白いモンスターがいるんだな。
というかそれってちょっとどころかかなり厄介だろ。
そんな軽い感じの相手じゃなくない?
「そのクラロンラウってのはどうやって倒すんだ?」
「別に特別なことはしないわよ? まず第一に間合い程度に感知性能を落とした状態で周囲を警戒して、感知したら意識が意識する前に一撃で殺す」
「それ、無意識にカウンターって達人の域じゃねえの?」
「次に視界にいれたらそのまま反射で殺す」
「え? 見たら見えないんじゃないのか?」
「意識して見る。つまり視るからダメなの。全体を眺めて、無意識に敵と判断した相手を攻撃するの」
「んんん、ハード。控えめに言ってキツそう」
それは達人のレベルじゃないんですか!?
ひょっとしてその域に達して初めて中級なの?
この国の『達人』って人の形をした化け物じゃねえのか?
「意外と簡単よ? 強く意識しなきゃ多少意識しても見えるし切れるから」
「ん?」
「さっき言ったように全体を意識しながらそのまま切ればイケるわよ」
「つまり視野を広く持てってことか、物理的にも」
「そう。それができないと簡単に死んじゃうから」
言い方としても、本当にこの世界の命はすぐ失われるってのを態度の至る所から窺い知れる。
怖いし、そういうのはなんかイヤだ。
別に命を安く見るなとかそういうのじゃない。
ぶっちゃけ命はただ同然だと思ってる。
そこに付加価値が付くだけで。
ただ、自分の大切なモノにそれを押し付けられたらと思うと少し不快だ。
「……嫌だねぇ」
「みんな死にたくないと思いながら死んでるんだろうね」
「そりゃ死にたいと本気で思ってる奴は人前に出ないだろ。思ったその場で死んでる。本気なんだから」
「あはは、その通りだね」
死にたいなんて他人に言ってる奴は死にたくなくて止めて欲しい奴だ。
生きてるのが嫌で、けど死ぬのが怖い。
だから周囲の倫理観を信じて死にたいと言えば止めてもらえると思って、そうやって自分に価値を見出そうとしている。
けど結局、経験なくして何かを語ることも理解することも出来ないから。
欲している本当の言葉は誰からも貰えない。
「……クアークって色々教えてくれるし、優しいよな。ちょっと好きになった!」
「好きがわからないくせに好きって言うのね」
「ならちょっとは一緒にいて楽しい、一緒にいたいって思えるようになったってことで」
「それは確かに好き、ね」
「じゃあクアークが好きだな」
そうか、これは好き、か。
これも好き、か。
なるほどなるほど。
書こうと思ってたけど機会がないからここに書くことにした設定
ここの暦は大体我々の世界と同じで三六五日ほどですが、分け方が少し違います
月は全部で13月まであり、それぞれの季節月に九一日(30+30+31)が割り振られてそれが春夏秋冬(91×4)で三六四日になり、そして残る一日が独立した月です
その月は『ルートヴィヒ建国の日』として最も大切な祝月で祝日です