ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「なあ、やっぱ部屋分けないか? 寝起きの心臓に悪いんだけど」
「面白かったわね。起きてアタシの顔が横にあるって理解した時の驚き様」
「単純に辛い。ただただ辛い」
「はいはい。そんなこと話してる暇あるの?」
「え? うわホントだ」
クアーク、俺の順に敵を感知する。
俺も意識をしていたのだが鈍っていた。
「話しながらでもできるように意識してって言ったでしょ~」
「流石に集中が必要な範囲拡張を話しながらは辛いって」
「無理じゃないわよ。アタシはあくまでできる範囲で設定してあげてるわよ~」
「無茶ぶりぃぃぃぃッ!」
場所は上。
つまり相手はバット系だ。
「坑道は頑丈だけどだからって壊さないようにね」
「……魔術ロクに使えなくない?」
「加減を間違えなかったら平気よ」
「キッツ」
デバフバラ撒く系の敵相手に縛り戦闘は難易度ヤベーわ。
剣が当たる程度なら問題ないよな?
「気づかれるぞ」
「ちょっと集中させろよ」
指輪に魔力を流し、生み出したナイフを魔力で宙に待機させ、それを魔力感知頼りに一気に射出する。
二〇ほどいたバットは半分が地面に落ち、残る半分がふらふらと宙を必死に飛んでいた。
デバフをまき散らす相手は速攻で片づけるのが基本。
踏み込み、手の届く範囲はそのまま倒し、届かなければ飛翔斬撃で切り落とす。
「油断しないように」
終わったと油断しかけた時、クアークが地面に落ちた奴らを順に踏みつぶした。
そして俺の頭は後ろへと揺れ、倒れそうになる。
落としたことで問題ないと判断してしまったが死んでいないから相手は妨害を行う。
当然のこと。
相手の死を確認するまで油断してはならないのは知っていたはずなのにその学びが実を結べていない。
「助かった」
「魔力での感知は上達すればある程度までなら相手の状態も把握できる。戦いで重要な情報って要素、疎かにしないようにね」
「なるほど、わかった」
戦いで情報はかなり重要だ。
相手の位置、動き、武器、癖、知れば知るほど相手との実力差を埋められるし、有利になる。
手を抜く理由がない。
「今はまだいいけど、いつまでも成長しないと坑道の一番奥に置き去りにしちゃうからね?」
「ヤメテッ」
「なら強くならないと。成長できるうちにしておくものよ?」
「できるなら俺もしたいっての」
強くなれるなら強くなりたいに決まってる。
「ちなみに今日は何と戦いたい? それによって道が変わるんだけど」
「……ゴーレムで」
「ゴーレムね、オッケー。ならちょっと先で横に入ろうか」
「坑道でゴーレムいるのかよ」
「場所によってはいるわよ?」
魔術で補強されているとはいえ鉱山。
地面を砕く一撃が振り下ろされたら崩落の可能性だってある。
「ここ。まずはアタシが戦い方を見せるからちゃんと見ててね」
「はいよ」
徐々に広がる坑道。
高さと幅に少しゆとりが生まれる。
「廃坑とはいえ再利用することもあるからレールとか壊さないようにね」
「了解」
錆びたレールを見ているとクアークから静止が掛かり、俺はそこで待機することに。
クアークは荷物を降ろすと予備だと思っていた長剣を持ち、両手に構える。
通常、二刀流は左右で長さの違うものを持つ。
単純に力が必要だし、聞き手じゃない方で同じように扱う技量が普通なら足りないからだ。
けれどクアークは当然のように同じ剣を両手に持ち、奥のゴーレムに向かっていく。
「ゴーレムは正面に立つと垂直に攻撃をしてくる。そうすると地面に影響が出るからこうやって閉じた場所で戦う時は常に立ち位置に気をつけること。普通のモンスターでも同じだけど壁に近づきすぎないこと。そして恐ろしく見えるゴーレムの攻撃も絶対ではないと理解するように!」
技術も、容姿も。
全てが合わさって天女の舞のように思えた。
この場は戦いのはず。
なのに静かだった。
クアークから発される音はほとんどない。
足音も呼吸の音も。
あったのはゴーレムの足音だけ。
そして斜めに振るわれた拳をクアークは片手の剣で受け流し、もう片手の剣で腕ごと切り落とす。
腕は再生し、再び殴りつけるが完全に見切ったクアークはそれを最小限の動きだけで何度も避けていた。
いくつもの技を俺に見せてくれ、最後にはスッと音もなく胸を突き刺してゴーレムを殺す。
「……次元が違うわ、これ」
「弱音?」
「なワケ。むしろ燃えるわ」
自分もそうなれるかもしれない。
その『かもしれない』だけで動く理由としては充分だ。
「先に二体、前後に並んでいるよな? 片方頼む」
「お、探知範囲ギリギリだけどちゃんとわかったね。良いわよ、奥の方引き受けてあげる」
「助かる」
ちょうどよく相手もいる。
相手はストーンゴーレム。
昨日と比べて全然硬さが違うけど、コイツを倒せるようになってこそだ。
「でもその
「いや、自分の武器でやってみる」
「そう。なら頑張れ」
重い足音。
剣身に魔力を流して構える。
「ふッ」
クアークと同じ、相手よりも早く動く。
相手の出方を窺うんじゃなくて、相手が反応するよりも早く攻撃する。
もちろんそれは相手の動きを知っている、もしくは相手を上回っているからこそできるのだろうけれども俺のテンションはンなコト知らんとばかりに急かしていた。
硬いッ。
けど切れはするッ!
切れるが硬い。
その絶妙なバランスが俺の技のレベルを教えてくれた。
身体の動かし方も、武器の扱い方も、全然まだまだなっていない。
少し引っかかるたびに切っ先が動いて切った線が真っすぐに伸びない。
これではダメだ。
もっと無駄なく、正確に、鋭く。
「くッ」
武器強化の魔力を増やし、剣身を覆う魔力を肥大化させる。
疑似的に拡張した剣身の形を整えて長剣状に変え、そのリーチを使ってゴーレムの拳を受け流した。
重ッ!?
確かにゴーレムの攻撃も絶対じゃないけど連続じゃできないじゃんッ。
なんとか受け流せたものの今の俺の能力や身体強化の練度では辛うじて受け流せる程度。
少しでも力を抜けば身体が回転しそうな勢いがある。
「はぁッ!」
滑るように横に移動しながら攻撃を誘導し、攻撃してきたところを避けて腕の根元を上から下に剣を振り下ろして切っ先で切りつけ。
そして素早く返して二撃で腕を落とす。
攻撃手段を失った側に位置取りながらその断面を繰り返し傷つけることで再生を抑え、そうやって稼いだ時間で研ぎ澄ませた刃をもってして背後から魔石を砕いた。
「よしッ、勝ったッ」
短剣を下ろしつつも残心を心掛け、索敵範囲にモンスターがいないことを確認してようやくホッと息を吐く。
「お疲れ様。ちゃんと倒した後の警戒もできてたみたいだし感心感心」
「クアークからしてみりゃ全然なんだろうけど、達成感あったし言わせろ。……どんなもんだ!」
「……何を言うかと思えば。普通によかったわよ。そりゃあところどころに小さなミスはあったけど全体的には危なげなく戦えてたの」
「そ、そうか? 嘘じゃないのか?」
「本当よ。上出来」
すごく嬉しい。
自覚できてないミスが多すぎてダメ出しの嵐が来ると思ってたからその高低差もあってクアークの言葉を普通よりも素直に受け止められる。
勝てた。
一対一でならストーンゴーレムに勝てる。
本来の予定だったら最後に回す予定だっただろうから……達成感が。
心の底から嬉しいとこんな風に、叫びたくなるものなのかよ。
この場所に誰もいなかったら全力で叫んでるかもしれない。
飛び跳ねてるかもしれない。
そんな気がした。
「勝てる可能性は充分あるとは思っていたけど、予想以上よ、ヒイラギ」
「ああッ。ありがとうッ、クアーク!!」
「別にお礼を言われるほどじゃないわ」
「そうなのか? でも俺は本当に感謝してるんだ。だから、ありがとう!」
「……わかった。どういたしまして」
なんの経験もないただの高校生に我流なんて無理だ。
こうやって誰かに教えて貰った方が成長できる。
パーティっていつまで組んでくれるのかな?
言って一ヶ月組んでくれたら嬉しいけど。
「なあ……」
「どうしたの?」
「俺がこっちにいる一ヶ月の間、一緒にパーティ組んでくれって言ったら組んでくれるか? ……そりゃクアークになんの利点もない話してるって自覚はあるけどさ、俺が強くなるために利用されてくれって言ってるようなもんだって自覚はあるけどさ、パーティを組んでくれないか?」
「別にいいよ?」
「え」
「最近暇だもん。だからこそちょっかいかけたワケだしね」
初めからそういうつもりだったってことか。
まあそのお陰で成長できるっていうなら別に気にしなくていっか。
「じゃあ、これからもどんどん教えてくれよな」
「良いわよ」
一ヶ月でクアークから得れるモノは全部得よう。
全てモノにできるとは思わないけど、最低限それを覚えさえすればあとは努力次第ってところまでは全部得れるように頑張ろう。
せっかく実力者と同じパーティになって教えて貰えるって幸運を得たんだ、ちゃんと活用しないと。
流石にハンマーを武器強化で剣にするのは難易度が高いです
無理ではないですけど術者がよほどの技量を持っていないとまあ、無理です
ちなみに『針』を『槍』として強化するのは人によっては充分可能な範囲
武器に対する認識がそれぞれで固定してますからね