ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

7 / 183
 あけましておめでとうございます
 今年もよろしくお願いします


第七話 固有存在の証明

「お、ちゃんと薬草と魔石がおいてある」

 

 この世界に来て二日目、一度目の朝。

 見られたり取られたりしないように早い時間に来ていた俺は昨日ゴブリンと遭遇した場所までやってきていた。

 あのゴブリンは生きているらしく、指定の場所には朝露の降りた薬草の束といくつかの魔石が積み上げられている。

 

「貯蓄とかも考えるともっと欲しいな……増やすか。とはいえ場所を重ねると量でバレるから分散(バラ)した方が良いな」

 

 ゴブリンから魔石や薬草を得ているのがバレるとモンスターの仲間だと思われかねない、さらに言えばモンスターを従えているとして【洗脳】の力が悟られかねないと考えた俺は昨日調べたこの辺りの地形を思い出しながら人が通らなそうではあるが行きやすそうな地点を考えてそのあたりに向かった。

 外から来るには平坦だが森の奥に向かうには勾配が激しい場所。

 気配を発さないように慎重に動きつつゴブリンの居場所を知る手掛かりがないかと探す。

 窪んだ地面が目に入る。

 鬱蒼とした森の中、陽が当たらず、ジメジメとしたこの場所では蒸発し辛かったのかそこには水たまりがあり、そこの地面は酷くぬかるんでいた。

 

 足跡発見。

 向こうに続いてるな。

 

 乾いていないコンクリートを通った跡のようにはっきりと残っているゴブリンの足跡。

 途中までは足跡で、その後は泥で痕跡が辿れる。

 

 数、五。

 周囲に開拓兵はいないッ。

 

「[以降永続命令]俺に対する危害の禁止、これと同じ薬草を見つけたら毎朝ここまで持ってこい、魔石を見つけた場合薬草同様に持ってこい、以上」

 

 そう終えるとゴブリンたちは命令によって俺への危害を禁止されているから俺を気にすることなく元の作業に戻った。

 それは握りやすそうな棒の収集。

 恐らく武器にするのだろう。

 

 ゴブリンは自分で武器を作ってたのか……。

 持って生まれるとか想像してたけど流石にそれはゲーム脳すぎるな。

 

 ありえない。

 俺はそう判断してその場を離れた。

 少し違和感、というか何か見落としているような、そんなむず痒さがあったが周囲に開拓兵はいない。

 そんな勘が働くほど経験を積んではいない。

 気のせいだと一蹴した。

 

 

 

「よぉベアトリクス。こんな時間から酒かよ」

「うっせえよ、酒飲んだところでお前の相手なんて余裕ってことだ」

「はい、その通りです。一切の反論の余地がありません」

 

 酔っぱらっているからといって勝てると思えるほど楽観的ではない。

 てかベアトリクスなら寝てても余裕で対処されそう。

 そんな妙な信頼感はある。

 

 雰囲気(オーラ)を感じ取れるほど強くなってはないが、それでも数えきれない投げられの経験によってその佇まいから少しでも妙なことをすればあっと言う間に打ちのめされる。

 それだけは理解できていた。

 

「けどな、酔っぱらった拍子に間違ったこと教えたりすんなよな? 教わってる分際だから言い辛いけど変にミスって死にたかねーぞ」

「いちいち言わんでもわかってらぁ。つーかワイン二本程度で酔うほど弱かねーっての」

「それもそうか」

 

 というか、ステイタスって毒物耐性身につくのかね?

 関係あるとしたら生命力?

 それとも防御力?

 酒を楽しみにしてる奴らには嫌な機能だな、毒物耐性あったら。

 

「とりあえず換金して来いよ」

「おーん、それもそうだな。ちょっと行ってくるぅ」

 

 微妙な時間だから受付は空いている。

 とはいえ書類仕事があるから奥の方では職員たちが働いている姿が見える。

 

「昨日はどうもね。今日はゴブリン魔石と薬草を持ってきた」

「いえ、仕事ですから。では査定いたします」

 

 営業スマイルを顔に張り付けながら受付嬢は俺が持ってきた魔石をよくわからない魔道具(きかい)に入れ、薬草を数え始めた。

 数字がパチパチと切り替わっているのを見る限り恐らくは魔石の大きさや罅の有無、含まれている魔力などを測定しているのだろう。

 

「魔石は質の高い物が多いのですが通常よりも魔力含有量が少ないということで三一二〇アスター。薬草は数が多いものの少々しなびて劣化しているという点から一〇五五アスター。合計四一七五アスターです」

「へぇ、意外と高いんだな」

「魔石は罅があると利用価値が低下しますから魔力含有量の低さを差し引いても高額に。薬草は食痕がなかったため高額になりました」

「解説ドーモ。なら今後倒す時はちゃんと気を付けねーとな」

 

 まあ、そもそも能力使わなかったら貧弱ボーイだから一度も倒せたことないんだけど。

 先生……!! バトルがしたいです……

 

「銀貨大体四二枚の稼ぎでしたよ、と」

「へぇ、初めてにしちゃやるじゃねーか」

「先生が良いもんで」

「おいおい、やめろよ。おだてても飯しか奢らねーぞ?」

「出るんか~い」

 

 随分気前が良いことで。

 好きッ(唐突な告白)。

 

「ロクに教えてねーから先生なんて立場じゃねーけど、新人が初めて依頼達成したんだ、奢るには十分だろ」

「わぁ、カッコいい」

 

 惚れてまうやろ。

 知り合ったばっかの相手にそんなことできるってホント、スゲエわ。

 そういう仲間意識? ってのが本気で羨ましい。

 仲間……この世界でだったらつくれるかねぇ?

 

「私も誰彼構わず奢るワケじゃねーけど、それでも気まぐれに誰かの面倒を見ることくらいはする。ヒイラギ、お前もそのうちちゃんと誰かの面倒見ろよ。こんな世界じゃ人間なんてすぐ死んじまう、人が死ねば社会が崩壊する、だからお前のためにも、な」

「……情けは人の為ならず、ってか」

「なんだ? それは」

「俺の世界、というか俺がいた国の言葉だ。意味は……ざっくり言えば誰かにした親切は巡り巡って自分に戻ってくる、ってことだな」

「ああ、そういうことか」

 

 納得した様子のベアトリクス。

 反応を見るに単に理解したというよりかは自分の認識と上手く合わさったという風。

 恐らくは似たような言葉がこの世界にもあるのか、もしくは持ち込まれていたのだろう。

 

 ま、そもそもこのテのことわざってどこにでもありそうだしな。

 

 そうしているとギルドへ見知った顔が訪れた。

 クラスメイトだった女生徒たちを一瞬視認した俺は絡まれないようにとすぐに視線を外してベアトリクスに視線を戻してすぐ意識からも外す。

 

「ねえアンタ、香月ちゃんと一緒に出歩ってたってホント?」

「んえ? あ~、なんだっけ……霜村?」

 

 用があったのか。

 香月に用事がある、と。

 今更探してるってことは金でも搾取しようって魂胆か?

 イジメとかクソメンドクセエ。

 

「ん~、別に出歩ったりはしてねーな」

 

 嘘は言ってない。

 出歩くの意味は家を出てうろうろすること。

 宿に向かうまでの道のりはその定義に入らんし、宿を仮の家としたらその後は一切外に出てないはずだ。

 少なくとも俺の知ってる範囲じゃ香月は部屋から出てない、今日は出てるだろうけど。

 ただ一緒の部屋で寝てるだけ。

 本当のことしか言ってない。

 

「女と一緒にいたのなんて昨日街の外で不審者と間違えられて騎士に話しかけられた時とここにいるベアトリクスと一緒にいた時と、今日くらいだ。ああ、あとは屋台のおばさんとかもだな。多分そのへんと勘違いしてるんじゃね?」

「そう……」

 

 なんだアイツら、聞くだけ聞いて終わりかよ。

 てことはやっぱ同郷の奴らを心配してるんじゃないな。

 

「知り合いか」

「同じ空間で勉強してただけの関係だ」

「何故彼女たちは髪色がお前と違うんだ? 昨日見た奴らはお前と同じ髪色だった」

「染めてんだよ、アイツらは」

 

 金髪や茶髪を見たベアトリクスは俺の頭をジッと見つめながら不思議そうに訪ねてきた。

 俺としてはこの世界の赤だの青だののカラフルな髪色の方が不思議なんだが。

 

「ま、どうせ日が経てば黒くなるだろ」

「? ああ、知らないのか?」

「何をだ?」

「異世界人でも髪色は変わるぞ」

「?!」

 

 文脈的に染めてたのが落ちるとかじゃねえよな。

 流れで考えりゃそのまんまの意味だろうし。

 

「早けりゃ一週間、遅くても一か月くらいで変わるらしい」

「ん~? 普通に考えりゃありえないんだけど世界が違うからそういうこともあり得るのか?」

 

 普通、つまり常識。

 常識とは18歳までに身に着けた偏見のコレクション、と言ったのはかの有名なアルベルト・アインシュタインである。

 異なる世界を偏見の目で見ても正しく理解できないのは当然だ。

 

「ま、精々どんな色になるのか楽しみにするこった」

「そうだな、精々楽しみにするか」

 

 やっぱ銀髪とか白髪とかだとカッコいいよなぁ。

 でも俺に似合うかっていったら多分似合わんだろうし。

 灰色? それでもちょっと……。

 赤は派手……いや、ベアトリクスは似合ってるけど……。

 青だと……どうなんだ?

 ……?

 そもそも俺に黒髪は似合ってるのか?

 日本人イコール黒髪ってイメージだったし皆そうだったから似合う似合わない以前にそういうものとして暮らしてたけど、黒髪が珍しいこの世界だとどう思われてるんだ?!

 笑われてねえよな?!

 どうなの!?

 

「な、なあベアトリクス……ベアトリクスから見て俺ってどうだ?」

「あ? なんだいきなり。ナンパのアドバイスとか無理だぞ」

「チゲえよッ!? 髪の色が変わるって言われて今更だけどこの黒髪自体俺にはどうなんだろって思ったんだよッ」

「変なこと気にするのはそういう文化か? 別に何色でも良いんじゃねえの? 世の中には虹色の髪の奴とかもいるんだからよ」

「……そ、そうか」

 

 お、おう……マジすか。

 虹色ってスゲェな。

 アニメとかだと前髪だけ金髪のキャラとか白菜みたいなキャラとか左右で白と黒のキャラとかいるけどあんな風にもなるのかね?

 ちょっと楽しみになってきたな。




 この世界では髪色は色素に依存しません
 さらに言えば髪色が赤から朱へと変化したり赤に青が混じったりと大人になってからも変化します
 黒髪も存在しますが日本人の黒髪とは全く異なります
 簡単にいえば日本人の髪を光に透かして見れば茶色に見えますよね?
 要するにあれって茶色の明度を暗くしたってイメージなワケで、彩度は存在するわけです
 なのでこの世界の明度なし彩度なしの黒髪とはモノが違うんですよね

 ついでに言えばこの世界では髪型もかなりスゴイことになってるので武藤遊戯みたいなスゴイ髪型の人間が存在する可能性はありますし、髪型に留まらず髭も自由なのでONEPIECEのキャラみたいなのもあり得ます
 物理法則に反してる?
 バカ言っちゃいけねぇ、それは我々の世界の法則であってこの世界の法則じゃありません
 月に行けば重力が変わるように、世界が変われば物理法則すら変わるモンです
 なのでそのあたりもご理解のほどよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。