ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ふぅん、依頼を受けたい、ね」
「その方が強くなれると思ったから」
「そのうち、ね。アタシも意地悪で言ってるワケじゃないわよ? 頑張ろうって気持ちは評価するし、けどヒイラギの実力を考えたうえで言うと
準備をしながらふと昨日のことを思い出して相談してみるとそれは呆気なく否定された。
「でも絶対に無理ってことはないし。辛くても逃げ出さないなら手伝うけど……どうする?」
「決まってるだろ?」
「そう。なら良さそうなのを見てくるわ」
「ありがとうな」
そう言ってしばらくして帰ってきたクアークが持ってきた依頼はクリスタルゴーレムの素材納品。
ごく限られた坑道にしか出現しないクリスタル系モンスターの、さらにごく僅かしか入手できない素材の納品となると相手の強さを知らずとも緊張する。
「コイツは硬く、切り辛く、そして何よりも坑道を自分の領域にしてしまう厄介な相手よ」
「自分の領域?」
「ゴーレムの中でも特に能力の秀でたクリスタルゴーレムは周囲を操って、強い個体にもなると地形すら操るの。つまり上も下も右も左も全てから攻撃が出てくる」
「わぁ」
なんつーえげつなさ。
けど全力でやれば勝てるって思えるからやる気も出るな。
「それ以外は他のゴーレムと同じ?」
「そうね、やることは変わらず能力が強化された感じよ」
クリスタルゴーレムのことを聞きつつ今日の活動場所である第三八坑道一一分岐右へと足を運ぶ。
空気の流れの乏しい坑道の奥ではなんというか、空気が不味くて息がし辛い。
気分的な問題だろうけれども身体も少し重く。
全体的にイヤな感じだ。
「珍しいってのは知ってるけどさ、実際どれくらい珍しいの?」
「一時間探して見つかるかも、二時間探して見つかったらいいな、三時間探してまあ見つかるだろ。そんな感じ」
「お、おう。そうなのか」
言い方はともかく見つけにくいのは理解できた。
てかそれは達成できるの?
「だから基本は数日に分けて進めるの。依頼での要求量的に大体一週間だね」
「結構かかるのな」
「うん。ヒイラギって一日で終わる依頼くらいしか受けたことないんじゃない? やったとして昇格試験」
「ははっ、正解。よくわかったな」
「初めはみんなそんな感じだからね」
どうやらそれが普通で、それが正解らしい。
弱いうちは変に冒険をして死ぬよりは簡単で確実な依頼を選んで少しずつ実力をつけるんだと。
けど長期の依頼を受けた経験というのは早いうちに積んでおく方が良いとも。
なるほど、だから弱者の域を未だ脱せない俺には良いということだろう。
一瞬でも『しばらく依頼を受けさせないための嫌がらせ的遅延行為』だと考えてしまった俺がなんとも礼儀知らずで恥ずかしい。
「と、敵か」
「アタシが右の二体受けるからそっちは一体頑張ってね。あ、剣でね」
「りょ、あ、了解」
短剣で戦うつもりだったから直前で条件を指定されて微妙に勢いをそがれたがなんとかすぐに持ち直して剣を出しつつ自分が担当するゴーレムに突撃する。
扱いになれていないから剣は両手で握り、普段手で発動するイメージでやっているから魔術が使い辛い。
できなくはないのだがいつもに比べてワンテンポ遅れる感じだ。
こんなところで弱点発見するとは。
けど魔力の操作的に肉体に依存させた方が圧倒的に難易度が違うんだよなぁ。
「はぁッ!」
ゴーレムの拳の起こりに合わせて武器強化重量増加で跳ね上げ、そのまま首を刎ねる。
当然、ゴーレムに脳などなく魔石を除けば全身土や石などの鉱物だから頭部がなくなったところで影響は皆無で『メインカメラがやられただけだ!』とすらもならない。
ただ完全な状態に戻ろうとリソースを割くせいか動きは鈍る。
「ぬぉらッ!」
鈍った拳を避け、外よりも比較的柔らかい首の断面から真っすぐ剣を突き刺して魔石を破壊。
霧散を確認しながら着地し、即座に周囲の警戒を行い。
周囲に敵がいないことを確認してからゆっくりと剣を下ろす。
流石クアーク。
俺が戦い終えるころには既に二体片づけてたか。
悔しがること自体がおこがましいんだろうけど……やっぱ悔しい。
ホント、同じ一般開拓兵だからって一緒にしたらダメだな。
……くっそ燃えるわ。
「意外と早かったな」
「慣れた」
「まさか……昨日隠れて戦ったりしてないわよね?」
「ナイナイナイ!」
クアークの顔が一瞬凄く怖く見えた。
表情はいつも通りなのだが、見てるようで見てなくて、けど見えてる。
感情にダイレクトに伝わってくるような、そんな
「そりゃ変える前にちょっとイメージトレーニングとかしたけど、流石にそういうくだらないところで約束は破りたくないし!」
「本当に?」
「うん」
「そう……。疑ってごめんなさい」
「別に良いよ、数日しか戦ってないのにンなこと言ったら俺だって驚くし」
これは俺のチートありきだから仕方ない。
【洗脳】によって主観偏見を一切交えずに脳にはあるが思い出すことのできない細かな記憶すらも完全に参照して再現して思い込みだけで戦うことができる。
幸い俺は弱く戦闘が長期化することもあったし、主観だけじゃなく客観での戦闘情報も得られたから動きの情報は数日とはいえ大量にあった。
正直この固有能力は強くなる気とこれを思いつく多少の発想力、自分に【洗脳】を掛けるほんの僅かな度胸さえあれば誰でもできるってのがズルすぎる。
「なるほど。これはそそるわ」
「? どゆこと?」
なんか面白いこと言った?
俺が強くなったら戦ってみたいとかそういうこと?
……それはそそるな、確かに。
「もう少し難易度上げてもよさそうね」
「少しならな?」
いきなり地獄に放り込まれて生き延びろ、とかは死ぬ。
流石にそこまではないだろう。
クアークとて常識はある……よね?
あってくれ、頼む。
「じゃあ次、行こっか?」
「おう」
「ちなみに二〇〇メートル先ね」
「見つけんの早くない? 探知範囲広くない?」
「慣れとコツよ。ヒイラギも成長したらできるわ、よほど下手じゃない限りね」
左様で。
俺、まだ探知限界五〇メートルなんだけど?
しかも探知時間を少しの時間に絞ることで距離を伸ばしてるだけだし。
遠いわ。
超遠いわ。
これ背中見えてますか?
ってレベルで果てしないわぁ。
クアークって一般開拓兵の皮を被ったただの達人だったりしない?
一般開拓兵の上位はこんなのばっかの魔窟とか言われたら泣けるぞチキショー。
「数は四体。二体任せるわ」
「うわマジで? ……頑張りまーす」
種類はわからないが二体を同時に相手取るのは骨が折れそうだ。
クアークに敵意が向かないように二体の意識を常に集め続け、その上で相手の手数は単純に考えたら二倍になるから上手く立ち回らないと死にかねない。
なるほど、パーティを組むとはこういうことかと納得した。
単純に敵を分散させるだけじゃない。
常に戦況を把握しつつ相手のことも念頭に置いて迷惑をかけないようにしないと戦犯になる。
「てかゴーレムがなんで集団行動してんだよ、離れて行動しろよ」
「さあ? 好物でもあるんじゃないの?」
「え、ゴーレムってメシ食うの?」
「知らな~い。でも口みたいなのはあるから食べれはするんじゃないの? 普通に周囲から土とか石とか吸収することもできるんだから」
「好物は鉱物……」
「え?」
「なんでもないです、はい」
異世界語でダジャレが通じるワケがなかった。
しかもクッソ荒いダジャレ。
あれ? 昨日のお酒まだ残ってる?
ンなワケ。
……悲しくなってきた。
よし、この悲しみゴーレムにぶつけてしまえ。
「この感覚、ストーン二体にクレイ二体だね。どうする? どれを相手にしたい?」
「……その質問意味あるの? どうせそれぞれ一体ずつ相手させようと思ってるんだろ」
「普通に好きな相手と戦わせてあげるつもりだったんだけど……自信があるならそうしようか」
「やべ、墓穴った!?」
ここにぃ、盛大に墓穴掘り散らかしたアホがいるらしいっすよぉ?
……。
よし、この恨みゴーレムにぶつけてしまえ。
「分断技術ないからそれはクアークがお願い。俺が動かなきゃならないなら指示頂戴」
「なら……そうね。ゴーレムがこっちを認識して動いたら一一時方向に走る、そしてあと七歩ってくらいの距離で一二時方向に切り替えてそのままゴーレム二体の足を軽く攻撃しながら減速せずに間を駆け抜けて」
「その後は?」
「ある程度安全な距離取った状態で反転して、そうなったら既に分断してるわ」
「オーケー。任せろ、任せた」
歩いて近づき、少しして俺の探知範囲に入る。
そこからさらに近づいてゴーレムたちも俺たちを認識し、クアークの合図と同時に指示の通りに動き二体の間を通り抜けた。
先陣を切ったのは俺。
素早く剣を切り返して二体を連続で切り、一〇メートルほど離れた位置で即座に身体を反転させて俺が相手取る二体の姿を目に入れる。
言ってた通りもう分断してる……。
早すぎるだろ。
俺が相手する二体は真ん中の二体だった。
つまりクアークが相手するのは両端。
先陣を切って背後にまで回った俺が一番意識を向けられるはずなのにどちらとも俺を見ておらず、クアークの方へと向かっている。
何かをしたのだろうけどもその何かがわからない。
……考えるのは後だ、今は目の前のこいつらを倒すッ。
主観を一切交えずにイメージトレーニングできるのってチートだと思います
思いますというか絶対チートです
扱いきれない強力な力を与えられるわけではなくただ純粋に努力のみで強くなれる
しかもノーリスク
コイツぁズルいな
認識・意識操作の能力だから発想次第で色々できますし
色々制約はあるとはいえ……まあ扱いづらさでバランスを取ってるつもりです