ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第七三話 クリスタルゴーレム

「ようやく目的の相手を見つけたよ」

「え、マジ?」

 

 案内に従って向かうと俺の探知にもかかり、同時に寒気がした。

 これまでの相手とは圧倒的に存在度が違う。

 存在の強度が圧倒的で、濃厚な敗色を感じて一瞬足が竦んだ。

 

「ビビってないで行くよ」

「おう」

 

 探知を切って思考を切り替える。

 

「とりあえず一人で頑張ってみて。注意点としては他のよりも硬くて力があって早いことよ」

「あまり参考にならない助言をどうも。……流石に縛りはなくていいよな?」

「少しやってみて」

「了解でぇす」

 

 無理そうなら剣以外で戦っても良いって言うのはありがたい。

 いや、縛られている状態から解放されるのをありがたいと言っていいのかはわからないが。

 それでも楽だ。

 縛って難易度を上げたり行動を決められることで成長することもあるからありがたいと思おう。

 

「ふぅ……」

 

 落ち着け。

 落ち着け……。

 できる限りのことをやり尽くすつもりで、思いつく全てをやるくらいの気概で挑む。

 ……よし、覚悟は決まった。

 ビビるな。

 油断はしないまま勝てると自信を持て。

 

 再び探知をして、クリスタルゴーレムの存在感に圧を受ける。

 だがさっきと違って強いと認識して意識を切り替え身構えた状態で感じたからか圧は受けるが恐怖はなく、真っすぐ相手を見据えることができた。

 

「じゃ、行くわ」

 

 そう告げて距離を詰め、反応を見る。

 俺を見て攻撃されると認識したゴーレムは露骨なほど拳を構え、俺が攻撃範囲に入った瞬間に打ち出した。

 速い。

 他のゴーレムの動きがノロマに見えてしまいそうなほど速く。

 そして重い。

 受け流そうとした剣が一瞬で弾き飛ばされそうになった。

 コイツ相手では未熟な俺の技では相手の力を利用して楽に受け流すなどできそうもなく、俺に許された受け流しはただ一つで。

 それは力と力のぶつけ合いをして、一撃ごとに背中が攣りそうなほど受け流してなお力を受けなくてはいけないというもの。

 

「ッぇぃ」

 

 一気に掛かった負荷に情けない呻き声が漏れた。

 筋肉に痛みが走る。

 直接筋肉を引きちぎられたような気分だ。

 

 というか受け流しでわかるレベルで硬いッ。

 攻撃するつもりなかったとはいえ強化した状態で破片すら出ないのかよ。

 

 これまでは受け流す時の摩擦で欠片程度にはダメージを与えることができていた。

 なのに今の受け流しではそれがなく、鋼鉄を木刀で斬るイメージが脳裏を過ぎった。

 

「もうちょい様子見すっか……」

 

 斬撃を飛ばす。

 弾かれ、霧散し、傷ひとつない手が俺に無駄だと伝えてきた。

 その程度で勝てると思い上がるな、と。

 

 ウゼェな、こいつ。

 邪魔すんなよ、大人しくやられてろっての。

 

 切り替わった意識が恐怖を感じさせず、怒りが湧いてくる。

 理由としては単純かつ幼稚極まりなかった。

 俺の邪魔で、俺は力で捻じ伏せられるのが大嫌いである。

 これ自体は多くの人間が持っている感情だ。

 生物として物事が想定通りに進まない、つまり悪い方向に向かっているのは死を予感させる。

 はっきりいって、自殺志願者か自分は絶対死なないと思ってるアホでもない限りは持ってるであろう感情。

 自分に素直な性格だからか、それとも本能を増幅させる戦闘だからか、その感情が普段以上に、はっきりと自覚できるほど強い。

 

「どうすっかなぁ」

 

 かといってこの程度で怒りに呑まれるほど懦弱でもなく。

 もしそうなら日本にいた時点で吹っ切れて腐ってるかキレ散らかしてる。

 下に見られることには慣れているし、事実俺は世界のほとんどよりも下の存在だ。

 怒ること自体も幼少期に散々済ませて怒り慣れたから怒った状態での感情制御も可能。

 完璧ではないから多少のロスはあるが問題ない。

 

 試しに切ろうとして反撃喰らうのも嫌だしなぁ……。

 耐久性能が同じではないだろうけど試してみるか。

 

 ふとした思いつきで接近と離脱を繰り返す。

 ゴーレムの攻撃範囲内外側まで入って飛翔斬撃を飛ばしつつ拳をバックステップで躱し、位置を変えて軽めの攻撃をしつつ動きを観察。

 繰り返すこと四度。

 魔力の籠った叩きつけが地面に触れると同時に地面から無数の針が生えた。

 

「来たッ」

 

 拳の接地の直前、着地の直後に真っすぐ飛び上がり、針を避け、飛翔斬撃で針を破壊する。

 滞空時間での五度の斬撃は針を悉く破壊し、歪な足場を生み出した。

 

「この程度なら破壊できるのか。てかこれアイツと同じ素材でできてるのか?」

 

 生えた針の材質は明らかに周囲の地面とは異なるモノ。

 正確に言えばクリスタルゴーレムが生まれるだけあって確かに周囲には結晶が存在する。

 けれどそれは生やされた針を構成するには圧倒的に少ない。

 

「ならッ」

 

 ゴーレムの残留魔力を上書きする形で破片を支配下に置き、形状を変化させて撃ち放つ。

 尖らせるイメージとともに速度と回転を溜め、放ち、そしてゴーレムの手を砕く。

 

「……よしッ」

 

 掌に当たった弾丸は圧縮が足りなかったのか弾け、指を破壊した。

 指は舞い、けれど数秒で再生されてしまう。

 

 同じ素材なら破壊もできる……いや、込めた魔力依存か。

 ただかなり集中しないと傷ひとつつけられない相手なのは変わらない。

 しかも一気に片をつけないと再生される。

 過ぎるくらい厄介だな。

 

 飛ばした指が消滅したのを尻目に剣を構えつつ魔力を研ぎ澄ませる。

 そして同時に探知範囲を絞り、引き換えに精度を上げた。

 クリスタルゴーレムは魔力を隠そうとしないからさっきのように地形操作をしようとしても感知ができる。

 けれど精度が低い通常状態と精度を上げた状態じゃ対処可能な時間が大きく違い。

 多少意識を割いてもやる価値はある。

 

「っ……頭イテェ」

 

 情報が一気に増加した。

 細かさも深さも、さっきとは段違い。

 例えるなら画像サイズは小さくしたが解像度もビット深度も上がった状態だ。

 データ容量が跳ね上がり、それを軽減させるために範囲を絞ったにもかかわらず普段処理している情報量以上の情報が脳に伝わり、処理の苦しさから頭痛が襲ってくる。

 

 けどお陰で見る以上に動きがわかる。

 いっそ目は閉じるか?

 いや、慣れてないやり方で視ようとしたらミスする。

 やるならそこの部分の魔力情報を遮断するべきか。

 

 視覚でできる部分の情報の感知を鈍くし、頭痛で分散した武器強化の意識を再び研ぎ澄ませる。

 頭痛を代償に動きの前感知を可能にした俺は回避に割いていた意識の一部を武器強化に回し、ゴーレムの胸元目掛けて突き立てた。

 ガッ、と当たる衝撃。

 切っ先が僅かに刺さり、けれど魔石までは届かない。

 踏みつけの気配を感じすぐ離脱し、ゴーレムの重い足が地面を揺らすと同時に飛び出して今度は腕に剣を振り下ろす。

 さっきよりは深く、半分ほどめり込み、剣を離して少しすると再生が始まって離脱を完了する頃には既に傷はなくなった。

 

「連撃か……苦手なんだっての……」

 

 攻撃と攻撃を繋げる。

 その技術に関して俺はヘタクソだ。

 運動音痴だからか一か月未満と経験不足だからか両方か、咄嗟のアドリブに弱い。

 無数とも思える動きの選択を瞬時にできない。

 

 こういう時相手が生身だったら焼いて再生を阻害するって古典的対処法が使えたんだけど……。

 間に何かを挟む?

 押し出されるのが目に見えてる。

 いや、貫通させたら……。

 防御を突破出来なくて困ってるのにそれじゃ本末転倒。

 やっぱ正攻法か。

 

 どうにかして効率的に対処できないかと考えるが相手の強さがそれを否定する。

 俺に許されているのは思いつく限りでは手数で押し切ることだけ。

 

「せいッはあッ!」

 

 踏み込み、一閃。

 振り下ろしで切っ先を使って半分ほど切り裂き。

 そして瞬時に手首を切り返し、右腕をその場に残したまま身体を反転させ、切り上げ、振り下ろす。

 前に回避しつつ後ろを振り返るとその最中に重い音が響き、足元を僅かに揺らした。

 ゴーレムの片腕はなくなっていた。

 

「よしッ!」

 

 思わず喜び、もう片側もと踏み込もうとし。

 足が止まった。

 片腕は瞬時とはではいかずとも、目に見えて再生していた。

 

「なるほど」

 

 忌々しく思いつつ、ため息を吐く。

 襲い掛かってきた拳を避け、針を避け、砕き、踏み潰した。

 

「ここから先は縛り解除だ」




 クリスタルゴーレムの魔術的攻撃には二種類あり、一つが周囲の土や石などをそのまま操作するモノ、もう一つが自分の身体を再現して生成する今回のようなモノ

 前者は基礎的なごく普通の魔術
 後者は再生能力を応用したモンスターだからこそ可能といっても良い特殊魔術

 ただその魔術力を上回る干渉力があれば今回みたいに生成された針を攻撃に利用したりできます
 まあクリスタルゴーレムにとっては使い捨ての針だからそこまで強い干渉力は必要ありません
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