ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
ここがあの男たちのハウスね。
「……普通にデカい鍛冶屋だ、コレ」
確かに悪を実行するにあたって露骨なアジトというのはないだろう。
そんなのは捕まえてくださいと言っているも同然。
この街に来て初めての鍛冶屋がこれというのが釈然としないぞ。
普通に楽しみたかった……。
「何をお求めで?」
「ん、これが欲しいってのはないんだが合いそうなのがあれば買おうかと思ってる。この店はどういうのを造ってるんだ?」
「当店は武器防具はもちろん、ヌーヴェル・ヴァンからエルドエーベルまで幅広く取り扱っております」
まるでA~Zまで、のような言い回しだが、確か実際意味としてはそういう意味だったはずだ。
軽さと手数を良しとするヌーヴェル・ヴァン派と、重さと一撃必殺を良しとするエルドエーベル派は鍛冶派閥の中でも特に意見の違いが大きく口論が度々起こるという。
「普段は一体どのような装備を?」
「あ~、基本はこの短剣二本だな。最近は長剣の練習として魔術で造ったのを振ったりしてるけど」
「なるほど。こちらは
「そのヨルガネってなんだ?」
「名前の通り夜のような色の金属で単体なら簡単に砕けるほど脆いのですが割金として他の素材と混ぜることでその合金は硬くしなやかになるんですよ。知名度は低いので知らずとも無理はありません」
そうなのか。
まあ知ったかといって使える知識じゃないだろうけど。
「詳しいんだな。ただ売るだけの店員じゃなくて鍛冶師なのか?」
「鍛冶師ではありませんが。まあ、そうですね。職業柄そういった知識は持ち合わせております」
この規模の店だし売るためだけの店員かと思ったけど流石にある程度知識がないと無理か。
褒められたことを照れるように首筋を掻く男性定員。
その手に持ち上げられた白髪。
隠されていた首の部分に何かの傷跡が見えた。
爪跡のように平行な二本の線と、その間のモノ。
線の間の部分は見えたのが一瞬だったから正確な形はわからない。
「首のそれ、怪我? 古傷は
「ああ、これはただの刺青です。それと、自然治癒で治してそのまましばらく放置した傷跡は
「そうか。すまないな」
古傷は治らないのか。
普通の傷跡と同じで一度そうなったら治らないってことは
つまり再生のメカニズムは違うはず。
どういうことだ?
……うん、わからん。
いいや。
「商品の説明はいりますか?」
「あ~、今はいい。気になったらその時聞く」
「わかりました」
今はそんなことより調査だ。
とはいっても正直得られる情報はほとんどないらしい。
中に入れたのは良いものの客が入れるのは限られた範囲だけ。
部屋があるのか、それとも通じる通路があるのかはわからないが見える範囲にないだろう。
規模がデカいから範囲が限られてても行ける範囲は多いんだけど。
それでもよくわからんな。
適当に武器見るフリしつつ人間を観察するしかないか。
それが非常に厄介である。
視線は容易く感じ取られてしまうから視界端に映った、程度の視覚から情報を集めなければならない。
「それにしても……多くて困る」
人が多い。
制服という便利な判断方法がないからどの人間が店員で、どの人間が客なのかがイマイチわからないのだ。
よく観察すれば客の動きだと判断できるのだが、注視を制限されたこの状況ではそれも中々難しい。
そういえば明日以降どうするか。
場合によっては一ヶ月を超過するし、てか実質あと三週間くらいしかないし。
早く終わらせたいけど急ぐと失敗する可能性高まるから慎重に行くけど……やっぱさっさと戻りたいな。
この街が居心地悪いということはないのだが、王都の方が居心地良かった。
それはさておきどうしたものかと。
とりあえずの感覚で調査を選んだが、調査の手がかりが一切なくては鉱脈を知らずに手当たり次第に採掘するも同然。
最低限下調べは必要だった。
つかホント広いな。
別の売り場に行くのに……いや、そもそも売り場が複数ある時点で規模が大きすぎてヤバいけど。
「あれ? また会った」
「私のことはお構いなく」
「ふ~ん」
移動した先にはさっきの白髪の男性店員がいた。
さっき話してからそこまで時間は経ってないのだがそこにいる。
「ここはどういうのが置いてあるんだ?」
「この辺りはヌーヴェル・ヴァン派の武器を使う方向けの防具が置いてあります」
「あ、ヌーヴェル・ヴァンって武器だけじゃないのか」
「ええ、素早さで勝負するためそれを補助する軽装防具は派閥の者たちによって多数製作されております。もちろん武器が派閥のモノではなくとも単体で充分実用性がありますよ」
そうなのか。
確かに防具が大量にあるな。
扱いが若干雑で木箱に入れられてる辺り別に上等なヤツじゃないのか……ああ、でもそれでもセットで買うと金貨単位で金が持って行かれる。
そもそもバラ売りはされていなさそうだ。
どれも個別の値段表記はなく、装備は明らかに全身統一されたデザインをしている。
俺のようにとりあえずそれなりの性能の装備を寄せ集めました、みたいな雑さがない。
「一式統一されてるのはデザイン的なアレ? それともセット効果?」
ジョークを交えたが多分普通に滑ってるな、これ。
そもそもセット効果ってゲームだし。
それわかるワケないこの国の人間に言ってもアホかと思われるだけだ。
「おっしゃる通り、こういった装備は各部位が魔術的相互作用で魔術的接続状態にあるためそのように組み合わせることで真価を発揮します」
と思ったらホントにセット効果だった。
でかどっちかっていえば一つのアイテムで複数の装備欄を使うタイプの装備だ、これ。
変身アイテム一つで全身が一気に切り替わる戦隊ものとかの日曜朝枠の。
「じゃあ、例えばこれは?」
「そちらは確か――炎などの熱に対する耐性、ですね。その特性をより強化した装備が昔の遠征開拓兵の一人に使われていて灼熱地帯で他の者たちよりも普段に近い条件で戦えたと聞いたことがあります」
「普通の熱にもあるのか……」
そうなると熱耐性じゃなくて温度調整の特性じゃないのだろうか。
だがそれは俺の感覚で、俺の物理法則で考えた時の話。
魔術という物理の存在するこの世界の物理法則で考えたら普通にそういう類の『熱耐性』も存在するかもしれない。
「冷気に対する耐性はないのか?」
「聞いたことは……。ただ熱といっても真夏に装備してもその暑さに耐え切れなかったと聞きますし、特性も何かしらの発動条件があるのかもしれませんね」
何それ怖い。
よくわからないで使ってるのかよ。
それ効果発動ギャンブルだったりしない?
装着者ダイスロールしてない?
肝心な時に効果発動しないとかなったらクソじゃねえか。
大丈夫だから売ってるんだろうけどさ。
……今度マユゲに聞こ。
ああ、帰りたい。
「てか普通に商品説明書いてあるわ。わざわざ説明させてスマンね」
「いえ、これも仕事ですから」
よく見れば木箱のところにプレートがあった。
値段表記が大きくそっちに意識が向いていたがそこには商品説明も。
こういうので手間をかけさせるのは相手も仕事なのだと理解していてもなんとなく嫌だ。
「にしても高い。買えなくはないけどっ、高いっ」
経済的に考えてダメなのは理解してるけど金はあまり使えないタイプだ。
金はあるけど使えないとかいう貧乏人気質。
それ考えたら年金ってシステムは便利だったんだな。
定額払えば受け取れるようになってから死ぬまで受給できるから貯蓄とかあまり考えずにお金使えるし。
……ここだと脅威のモンスターをどうにかしないと平和を勝ち取れないから貯蓄して金を出し渋るよりも使った方が普通に生存確率上げれるな。
ふとした拍子になぜ年金というモノがあったのかをぼんやりと理解し。
それに準じて金は使った方が良いのではないかと考える。
勿論将来に備えてある程度の貯蓄は必要だ。
けれど貯め過ぎては生きるための準備で破滅してしまいかねない。
「ああっ、でもっ。やめとこ……」
貧乏人根性は中々やめられないらしい。
金を使わないと景気が悪化する
ヒイラギ、金持ってるなら安全域残してそれ以外は使えよ……
ちなみに前回の後書きで誤解されそうな気がしたので一応補足
どれだけ善政を行っても一定数はバカがいるものです
必要以上に金を貯め込むバカがいて、そのせいで地域によってデフレが起こったり
王宮や領地持ちの貴族たちによってそれぞれ対応が成されているものの国家による保護を理解しようとせずに自分だけ良ければそれでいいって思考のバカによって金の流れが滞り、減税で財布の紐を緩めようとするもののバカは結局バカっていうね
他には『マクロ経済なら金は減らないんだから国家が金をバンバン生み出してたら経済ダメにならない?』と思われるかもしれませんが
国内の総資産が二億、ありとあらゆる資源を含めて資源値一億として、モンスターの出現によって新たに生まれる資源というモノがあってそれが一億だとすると総資産二億は変わらないままに資源値が二億になるってしまうワケで
お金と資源のレートが二対一だったのが二対二に、つまり価値が半減
これは極論ですけど、実際新たに入って来る資源に応じてお金を払わないと経済が破綻してしまうワケです
そういう理由もあってギルドという組織は国営なんですね
つまり何が言いたいかといえば……馬鹿ヒイラギ、金使えこの野郎。です
市民権買ってなくて国民扱いじゃなかったとしても国内で過ごす以上最低限するべきことはしやがれって話ですね
金を使わずに締まる首には自分の首も含まれてることを自覚しろよヒイラギこの野郎