ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
ストックは(ないです)
「ねぇ、アンタ、よくも嘘を吐いたわね」
「はい? ……あ~……なんだっけ? え~っと、あッ、そう、霜村! んで、なんの用?」
夜、食事を終えて人心地ついていると聞き覚えのある声で話しかけられた。
それは昼頃ギルドで声を掛けてきた霜村で、背後には他の女子たちを引き連れている。
「香月と一緒にいるじゃないの!」
「はははっ、だから? それがどうかした? 第一嘘吐き呼ばわりは酷いなぁ、俺は一切嘘を吐いてないぜ?」
「嘘をッ――」
「現にッ、キミの【虚偽看破】には一切引っかかっていないだろう?」
霜村の固有能力【虚偽看破】。
文字通り嘘の情報を
厄介ではあるけどその能力ゆえに対処を間違えなければ騙すのは簡単だろう。
特に、能力を得たばかりでそれに依存するような初期の頃は。
「それは……そうだけど……」
「まあ、それは本題じゃないだろ?」
「そうよ! 本題は香月のこと!!」
「まあまあ、落ち着いて」
そう言った直後、指を鳴らす。
「……ここじゃ他のお客さんに迷惑だし……『俺の部屋に来てくれ』ないか?」
「ええ、わかったわ」
少し時間を空けてからゆっくり言葉を紡ぐ。
流石に人目のある所で能力を使うのだ、指パッチンを能力のトリガーとしてではなく相手を落ち着かせる不意を打つ一手として周囲に認識させておくべきだ。
【洗脳】の対象は
話の前後的にも霜村が断る理由はないだろうから周囲から怪しまれる可能性も低いはず。
「オヤジィ、すまねーな」
「……迷惑料にしちゃ多くねーか?」
「話が長引くかもだからな、一応だ。すぐ終わったらそんときゃ貰ってくれ」
「……はいはい」
投げ渡した銀貨を確認した宿のオヤジはさっさと行っちまえとばかりに手をひらひらと振ってきた。
「さて、一体何の用で来たのか、『言ってくれ』るか?」
「それは――」
全員に喋られても面倒だから能力の対象は霜村だけでいい。
けれどそうなると指パッチンを怪しまれかねないから
「――これからどうするかを決め終えた時に香月がいなかったから連れ戻しに来た」
「ふぅん?」
てことは別にイジメとかではないのか。
まあ香月の性格とかできる仕事的に女子の中でイジメられる未来は充分あり得るけど。
【洗脳】で話したこと、ということで嘘は吐いていない。
他四人が霜村があっさりと理由を話したことに驚いていないのを見る限りは事前に言うと決めていたことも読み取れる。
「香月! こっちに来て! どうせコイツに脅されてるんでしょ!」
「え、ええ!? そんなことはないです!」
……間違ってはないけど断定されるとムカつくな。間違ってはないけど!?
確かに【洗脳】で本人の意思とは関係なく連れてきて利用してるけどさぁ、前の世界だと精々が性格の悪い奴ってだけで誰かを脅すほどクズじゃなかったじゃん?
酷くね?
「あのさ、話がまとまった後に気づいたってことは忘れてたってことだろ? それなのに偉そうに言うってどういうことよ?」
「アンタはッ――」
「そ・れ・にッ!
黙っていろ、というつもりだっただろう霜村の言葉に大きくはないが存在感のある低めの声で被せる。
悪意と棘のある言い方に想うところはあるのだろうが、俺が間違ったことを言っているワケではないということを理解してか霜村は自分に落ち着けと言い聞かせるように大きく深呼吸を繰り返した。
「……女子は一部の男子と協力して生活基盤を築くことに決めた。男子は三人、
表情を歪めながら説明する霜村。
真鍋というのは俺の記憶が確かならアホ陽キャか。
他二人もアホ陽キャと一緒にいるアホ陽キャBとCだったはず。
色々笑えるわ。
「要するに、
「アンタッ!!」
心底、バカバカしい。
人間の
方向性が明らかにおかしいのは実に呆れる。
「図星かぁ? 図星だろぉ?」
「な、永井くんッ……や、やめてくださいッ! 永井くんの目には愚かに映るかもしれませんけど霜村さんたちは精いっぱいやってるんですよ!? な、永井くんの言っていることが本当だとしたらそれこそ自分たちを犠牲にしてまでッ!!」
「その考えが気に食わんと言ってるのがわからないか?」
普段、ギャイギャイと吠えるようにうるさかったのはかなりストレスだった。
休み時間だから仕方ないと思っていたし、そのうるささ、活力には一種の誇りのようなものが垣間見えたから苦手ではあったが嫌いではなかった。
けれど今のこいつらからは、こいつからは、それに類するモノが一切感じ取れない。
「男の庇護がなければ私たちは生きられませんとでも言うつもりか? この世界を見ろ、女だろうと上級騎士になった奴がいるぞ、女だろうと強く気高く凛と立っている女がいるぞ。女は強くなれないと思っているのならその認識を改めろ。お前らが今やっている自己犠牲は強さでもなんでもない、それはただの逃げだ。強くならない言い訳をしているだけに過ぎない」
強くなることができるのは既に知っている。
俺たちが異世界人だろうと関係ないのはもうわかっている。
世界を越えたことで俺たちは以前までの
変われないワケがない。
「こっちのこともロクに知らないでッ!」
「ああ、知らないさ。お前ら全員のことは知らん。だが少なくともお前のことは少しではあるが理解した。その上で理解ができん。なぜ自分を犠牲にできる精神力がありながらそれを歩むことに回さない? 苦難に、恥辱に耐える気があるのならなりふり構わず力を求めればいい」
「私たちだけじゃ無理なのよッ」
牙を折られた獣にでもなったつもりなのか? こいつらは。
そんなモンじゃないだろうに。
獣のように獰猛な本能があるワケでなく、かといって誇り高き理性の塊というワケでもない。
呆れ果てる。
「はぁ……そういえばこんな言葉があったか……。飢えた者に魚を与えるのではなく魚を釣る術を教えろ、って」
「それがどうしたのよ」
「俺さ、この言葉を聞くたびに思うのよ。飢えて飢えて、死にそうな奴にこいつは釣り方を教えて去るのかよ、ってさ。与えるのは釣り方だけ、釣竿を与えない。釣竿の作り方も教えないし、棒も糸も針も与えない。餌の取り方も教えない。時としては魚を与えることも大事だと思うんだよなぁ。釣り方を教えるのは腹を満たした後だと思うワケ」
時としてその場しのぎの方が最適解の時だってある。
急を要する状態でのんびりとやるってのはおかしな話だ。
どんな時だって、時と場合によるもんだ。
話がわからない。
そんな風に六人が俺を見つめている。
老子の格言を知らないのだろうか。
「わかんねえならわかんねえって素直に言えよ」
「ワケわかんないこと言ってんじゃないわよ!」
「テメェ、アルコール並みに沸点低いな……。ここに銀貨四〇枚ある、女がクラスの半分だとして二〇人、銀貨一枚で一週間食と住には困らん、値引きすりゃ銀貨二枚で三週間はイケる」
「……」
「ここまで言ってもわからんのかい……。元々の金と合わせて約四週間、ひとまず俺が期間を設けてやる、その時間使ってこの世界で生きる術を身に着けろ」
「そ、それって……」
あ~もう、鬱陶しい。
露骨に嬉しそうな顔すんじゃねえよ。
この面倒ごとをさっさとどうにかしたいって俺の切実な思いを察しやがれ、日本人だろ。
察する能力がない俺と違ってお前らコミュ力お化けじゃん、察しろ。
「そこらの店で働くでも、なんでもいい、とにかく探しやがれ。それから、開拓兵になっても良いって覚悟のある奴らは明日の昼にギルドに来るように言っとけ。……とりあえず半分の銀貨二〇枚、くれてやっからさっさと帰りやがれ」
「あ、ありがとう!」
「るっせえ……」
いい加減にしろ、メンドクサイ。
もう九時なんだよ、もう眠いの、わからない?
能力があるとはいえ不意打ちされたら余裕で死ねるから森の中でも精神疲労が半端ないし、ベアトリクスとの訓練で肉体疲労も半端ないんだよ。
辛いんだよ。
切実に。
「本気で嫌なこと我慢してまでやってんじゃねえ。嫌ならそれを回避するために考えやがれっての」
「永井……ホント、ありがとうッ」
帰れよ、もう……。
「悪いな、香月。本はもうちょい待て」
「い、いえ……それよりも私はなんだかんだ言っても助けてくれたその優しさがそれ以上に嬉しいです」
「ンなんじゃねーよ……」
「耳真っ赤にするくらい照れないでください」
「るっせっ、さっさと灯り消して寝るぞッ」
「はいっ」
なんだかんだ世話焼きな主人公柊くん
小学校に入るまではマトモだったからね、三つ子の魂百まで、仕方ないね
……にしてもヒロインどうしましょうかね?
決めてないんですよ
登場している女キャラは香月、受付嬢、アデル、ベアトリクス、霜村
受付嬢が入ってる時点でね、もうね?
多分クズ度を加速させないとしばらくヒロインはナシ
かといってクズ度の加速は作者の性に合わない、と……
ままなりませんね、ホント