ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第八二話 採掘量のゴシップ

 さて、どうしたものか。

 クアークに話すか話さないか。

 裏と繋がっているという心配はあまりしていないのだが、普通に情報を持っていない可能性があるし。

 何よりも、知り合いの多いであろうクアークはポロッと漏らしてしまいそうな気もする。

 

「どうしたの?」

「あ……あ~……ん~。クアークって黒鉄の墓っての知ってる?」

「知らないわね」

「ならいいや」

 

 知らないならはいここで終了。

 聞くことなし。

 

「ちょっと、気になるじゃない。教えて」

「うえぇぇぇぇぇ……誰にも言うなよ?」

「わかったわ」

「実は――」

 

 これは黙ったら逆に面倒なことになるだろうと考え、話すことにした。

 不安要素はいくつかあるがそこはクアークを信じる他ない。

 

「――というワケよ」

「なるほどね。さっきも言ったけどその黒鉄の墓って組織のことをアタシは知らないわ。そもそもそんな組織があること自体初めて知ったから」

「そうなのか?」

「正確には聞いたことはあるだろうけど思い出せない、ってとこ」

「なるほど」

 

 やはり言ったところで得るモノはない。

 

「ならそれが終わるまでしばらく探索やめる?」

「いや、それはない。さっき言ったように黒鉄の墓による人為的資源不足とはいえ資源不足には違いない。モンスター素材の納品をきっちりこなして開拓兵(・・・)が活動しているって認識を一般人に持ってもらわないと不安と経済崩壊が加速する」

 

 開拓兵への不信感はそのまま経済に影響が出かねない。

 あくまでも俺の考えすぎならそれでいいのだが、もしそうじゃなかったとすれば手遅れになる前にやるべきことをやっておくべきだ。

 それが多少辛くてもそれをせずに全てを無駄にするよりかは何百億倍もマシというもの。

 

「俺一人、もしくは俺たち二人だけなら、じゃあねえ。俺たちで人知れずこの街を救う、くらいの気概でやるべきなんだよ、これは」

「ふぅん?」

 

 と、ちょっとカッコつけて言ったわいいものの。

 現実問題、どうするかなんだよなぁ。

 

「つまりは黒鉄の墓の目的を探りつつ開拓兵として活動して、その上で経済の混乱を防ぐ。ってこと?」

「うん。つか現状取れる手段がそれくらいなのよ」

「どうして?」

「目的がどうであれ俺たち個人に他の個人を裁く権利は一切ない。それをするのは国家や街組織なんかのその権力を持った存在だ。調査の時点で能力悪用の罪に問われかねないが、必要悪として貰うしかない。が、裁くのは必要悪にどう頑張っても含まれないからな」

「なるほどね。できるのは……最大限許されているのは調査だけ、か」

 

 断罪も復讐も、そんなものやった時点で大義名分関係なくルール違反だ。

 国家に属す、国で暮らすという選択肢を取った時点で『郷に入っては郷に従え』、その国の規則に従う必要があるワケで。

 それを理由の如何に関わらず破った時点で、国家反逆と同じ。

 社会的生物として生きたいのなら規則に則り、本能的生物として生きたいなら国家に属してはならない。

 

「それに信用できる相手しか頼れない。……厄介ね」

「ホントそれな」

「アタシに話すか悩んだのがムカつくわ」

「それは仕方ないでしょーが」

「……生意気なっ」

 

 イタイイタイ。

 軽くじゃれるノリでやってるけど力加減間違えてるよ~?

 頭蓋の骨が増える~、赤ちゃんの時のようにぃ。

 せ、せめて柔らかい胸部装甲で。

 ……ん?

 まあいい。

 

「クアークさ~ん。そろそろきついんでマジ勘弁」

「やれやれ」

 

 何に対するやれやれさ。

 帰り道とはいえ流石に油断しすぎじゃない?

 なんもいないのがわかってるからそうしてるんだろうけどさ。

 

「まあそういうことなら他の奴らにも聞いてみる?」

「怪しまれないか?」

「まったく……臆病ね。そんなこと誰も気にしないわよ。物価が上がってるって聞いたんだがなんでか知らないか? 程度で別に平気なんだから」

「そうか……」

 

 少し不安になるとどんどん思考が悪い方向に進むのが俺の悪癖。

 最悪の事態を想定すること自体は問題ないがそれを理由に歩みを止めているからどうにかしたいところだ。

 

「考えるのは良いけど、それがどういうモノなのかもちゃんと考えないとね。例えば今のだと物価の変動を聞くのはおかしなことじゃないわ。開拓兵としてよく使う装備や魔道具や回復薬なんかの値段について気になるのは料理人が食材の値段を気にするのと同じなんだから」

「そうだな。……ありがとう」

 

 ただむやみやたらに考えれば良いというワケじゃない。

 そんな当然のことを忘れていた。

 

「見せてあげるわ」

 

 そういうとクアークは周囲をキョロキョロと見回し、異なる坑道から出てきた同じように帰ろうとしている開拓兵の男を見つけ、そっちの方へ向かって行く。

 

「久しぶりね」

「ん? おお! クアークか、久しぶりだな。どうした?」

「いきなりで悪いけど、最近物価が上がってる理由って何か知ってるかしら?」

「珍しいな。お前がそんなこと気にするなんて」

「最近組んでる子がいてね。その子が物価が上がってることを知らなかったんだけど上がってるってことを教えたら気になったみたいで。けどアタシは知らないから」

「なるほど」

 

 チラリと俺を見た男に軽く会釈を返し、男はクアークに視線を戻した。

 開拓兵としての歴が長いだけあって知り合いは多いのだろう。

 かつてのパーティメンバーなのか、それとも飲み仲間か何かか、とても仲がよさそうだ。

 

「俺も詳しくはねーんだが、採掘量が減ってるだの現場監督が無能だの、最近入った鉱山奴隷がタチワリィだの、稼働中の坑道にモンスターが出ただの、鉱石の横流しがされてるだのってのは噂で聞いたな」

 

 お、正解。

 どいっても噂だから適当に流れたゴシップが偶然当たったってだけだろうな。

 けど当たってる分黒鉄の墓は……いや、まぐれ当たりってのは向こうもわかってるだろうから慌てはしないだろ。

 

「採掘量が減ってるってのは?」

「流通量が少ねーからな、真っ先に出回った噂だ」

「現場監督は?」

「一切前任者が残した書類を読んでねーのか見当違いなとこに運ばせて遠回りになって効率激減って」

「……ダメじゃないの」

「以前からのマトモな流れを知ってる奴隷が言っても聞かなかったりと。まあ現場監督より奴隷の方がちゃんとしてるってのは皮肉だよな」

「鉱山奴隷は?」

「数来たのは良いがリーダーの奴がうるさくて作業を滞らせるってよ」

「奴隷の魔術掛かってるのに?」

「鉱山奴隷ってのは一日のノルマがあるんだよ。それを達成しないと罰が下るってな。けどこれまでは報酬欲しさにノルマ以上の作業をやってたワケだが、そいつが馬鹿だが口は回る奴なせいで周囲を巻き込んで採掘量が下がってるって噂」

 

 想像以上に組織がダメだという事実に軽く絶望した。

 この規模だ、初期はマトモだったのだろうが、規模の拡大に伴って悪化している。

 

 組織としてそれはダメだろ……。

 そういう組織や経済は、基本の収入だけで安全域を確保しつつ計画を立てるべきで、奴隷の努力に依存した成果を計画に含めるのは個人ならともかく組織としてはアウトだ。

 一歩間違えれば足元から全てが瓦解する。

 俺だってそれを完璧にこなせるかって言われたらまず間違いなく無理だが、最低限それが間違ってることはわかる。

 

「モンスターは?」

「二メートルくらいの怪しい影を見たって。なんか他の坑道と繋がっちまったらしい」

「横流しは?」

「詳細不明。根拠なし」

「わかったわ。ありがとね」

「ところで今晩どうだ?」

「……遠慮しておくわ」

 

 やっぱ根拠なしの偶然か。

 ほんのちょっとだけ期待してたんだけど。

 

「こんな感じで軽く行けば大丈夫よ」

「それって初対面の相手でもイケる?」

「ん~。完全な初対面じゃ難しいかも。例えば軽く話したことある相手に声をかけて少し世間話とかしてから本題を振れば良いんじゃないかしら? その話したことある相手が他の人と話してたとしてその他の人にも効果があるわね」

「そうなの?」

「一対一での初対面だと警戒心が強いけど。知り合いの知り合い、ってなると初対面でも安心感があるから」

「なるほど」

 

 確かに仲が良い奴が仲良くしてるって考えるとある程度人柄が保障される感じがしてちょっとは信用できるかも。

 

「……ところでクアークって酒苦手だっけ?」

「好きだけど……どうしたの?」

「さっき誘われてたのに断ってたじゃん。金はあるし時間もあるはずなのに断ったってことはそういうことなのかな~って」

「……別にそういう理由じゃないわよ。ただ単純にさっきの誘いに対して気が乗らなかったってだけだから安心して」

「ふぅん……何を安心しろと?」

「何を、って。誘ってくれたら一緒に飲むわよってこと」

「んじゃそのうち飲むか」

「なら聞き終わった後、今晩静かな酒場で飲みましょうか」

「気分じゃないんじゃ?」

「ふふっ」

「あ、単にさっきの人と飲む気が起きないってだけか」




 さっさと成長してくれませんかねぇ?
 人生でいきなり成長するなんて生きてて経験ないですし見たこともないんですけどね
 そもそも劇的な成長なんて副作用の方が大きそうなんでしたくもないですしお寿司
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