ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第八三話 石器時代でも賢い奴はいる

「よ」

「ヒイラギ。どうかしたか?」

「見かけたから声をかけた。開拓兵同士仲良くしといた方が良いのかなって」

「あ~、そういう」

「ヒイラギ……お前がヒイラギか。一緒に飯でもどうだ?」

「良いんスか。ならぜひ」

 

 とりあえずプライぺーとで話したことのある数少ない中でやりやすそうな相手を選んだとはいえこういうコミュ力がないからどうやって流れをつくろうかと悩んでいたのだが、向こうから声をかけてくれた。

 ありがたくはあるのだが、意気込んでいた分少し拍子抜けである。

 

「せっかくだ、奢ってやろう。何が良い?」

「マジすか。ならおすすめの料理とかあります?」

「そうだな……オルトロスとかが美味いぞ」

「オルトロス……犬?」

「おう」

 

 犬、食うの?

 たしかにそういう文化はあるけど。

 いや、別に犬とか飼ったことないし好きってわけでもないから別に拒絶感とかあまりないけどさ。

 家畜の類じゃないの?

 街で普通に見かけたぞ。

 

「ペットとして飼ってる犬とは完全に別カテゴリなんスか?」

「あの種類の犬でも殺す時は殺すぞ。人間と同じだ、敵に回れば躊躇の理由はない」

「なるほど」

 

 流石シビアな世界。

 ワリと好きだな、その感覚。

 種で判断せず個で判断する。

 まあそれが完全じゃないから差別があるんだろうけど。

 とはいえ感情があって知能がそれなり以上の生物が完全に合理的な判断を下せるワケがないから普通のことだろうな。

 

「ならそれを食べます」

「酒は飲むか?」

「え~、甘口のロカリー酒で」

「なんだ、酒は苦手か?」

「というか経験が少ないんスよね。俺のいた国じゃ俺ってまだ酒飲んで良い年じゃなかったんで」

「てこたぁ異界人か」

「そうっス」

 

 俺がそういうと納得してくれたようで、普通にそのまま頼んでくれてお金も払ってくれた。

 

「そういえばヒイラギはどんな世界から来たんだ?」

「……つーことは世界って色々あるのか、やっぱ」

「ああ。話によると来た奴によって地味に話が違うらしい」

「へ~。ちなみに俺は魔術がなくてモンスターもいない世界の、機械技術が発達した時代の日本って国から来た。……つってもこれだけじゃわからんか」

「おう、全くわからん」

「そもそも俺らって異世界のこと詳しいワケじゃないしなっ」

「聞いた意味とは」

「ノリだな」

「オーケー、ノリね」

 

  真面目にやらない方がいいやつなのかね?

 でも誠実さに欠けるよなぁ。

 

「そっちの世界で何やってたんだ?」

「学生っスね。適当にやりつつ好きに本読んだり……まあそこまで頭良くないんですけど」

「それはお前の世界での感覚でじゃないのか?」

「や~、この世界でも俺は頭良くないぞ? それに分野によっちゃこの国の人間の方が賢い。この国って政治とか経済とかの教育が平均的に高いじゃん、けど俺含めて俺のいた国じゃそういう教育ができてなかったからそこに関しちゃ完全に負けてるし」

「政治経済がわからないって……何やってるんだよ」

 

 ホントそれな。

 なぜ重要な事なのに教えないのか……。

 ん?

 今のってツッコミじゃなくて普通に質問か?

 

「なんかよくわからない興味もない昔の小説読まされたり、外国語学ばされたり、それ使い道あるか? ってレベルの計算教えられたり、多少の歴史とかっスね」

「なんつーか。世代を重ねるにつれてどんどん頭悪くなりそうだな」

「それは……その通りだと思いますね」

 

 あの時代は賢い奴が生まれる教育をしてるんじゃなくて、それを反面教師にしたごく一部の賢い奴、を数の暴力でかき集めてただけ。

 人間の強さの一つは数だからそれを否定はしないけどもう少しちゃんとして欲しいと思ったことは多かった。

 いきなり方針を変えたら世代での認識差が大きすぎて社会が成り立たなくなるかもしれないから変革を慎重にするのも理解できるにはできるのだが、それの犠牲になった人間を知ってる身としては学ぶところが反面教師としての面しかない教育方針である。

 

「もしかしてダメな感じの独裁政治?」

「いやぁ、一応は間接民主主義だったんですけどねぇ」

「お前……クソみたいな世界から来たんだな」

「そんなに?!」

 

 心底かわいそうな奴を見る目で見られてしまった。

 たしかにダメだってのは俺も思うがそこまでとは思わなかったから少しショック。

 

「民主制ってことは国民全員が政治の有権者、つまり国民全員が国の手綱を握る主人ってことだ。判断に必要な知識、効率的かつ多角的に思考をできる知恵、それがないバカが群れを率いれるワケがない。んなこたぁ仮にも間接民主制で代表になった奴がわからないワケがねぇ。それを理解のうえで国民に教育をしないってことは要するに詐欺師ってことだろ」

「なるほど。全体的な知能を引き下げて相対的に自分を上げることで上の人間だけが甘い蜜を吸う。……言っちゃなんすけど頭良いんスね」

「おうよ」

「全部昔講習会で習ったことだけどな」

「言うなって、バラすなよ」

 

 それでも説明できるってことは理解ができているということ。

 開拓兵だから、ってそこまで賢くないと思ってたけど……いよいよ本当に俺よりも知能レベルが高い気がしてきた。

 

 どうせそこまで賢くないだろとか侮ってすみませんでしたーっ。

 この国で勝てる可能性がある数学と科学知識だってそこからの発展能力ないし。

 その二つどっちも昔の凄い人たちが築いた知識の山を模倣してるだけだし。

 勝てねえ。

 ダメだこりゃ。

 

「けど、こういっちゃなんだがよ……案外こっちの世界に来て良かったんじゃねーの? 来たくて来たワケじゃない奴にいうことじゃねーかもだけど」

「うん、ぶっちゃけ俺も前の世界よりこっちの国の方が合ってると思うわ。前は知り合いがほとんどいなかったし惰性の娯楽しかなかったから、今がスッゲー楽しい」

「だろ? そりゃヒイラギのいた世界に比べりゃ物騒かもしれねーけどよ、不幸だって感じることはあんまないからよ」

「そうっスね。……痛かったり苦しかったりはしても、嫌ではないっス」

 

 前は他人の優しさなんて信じられなかったが、この世界、この国に来て優しさの理由を知って、優しさの意味がわかって、人を信じられるようになってきた。

 そして時には理由のない無償の優しさがあることも。

 そこに込められた意味も。

 

「あ~、やめやめ。こんな話性に合わん! 他の話題だ他の話題ッ。何かないか?!」

「うえぇえぇぇ、いきなりぃ。……じゃあ最近物価が上がってるって聞いたんスけどそのあたりについて知ってたら詳しいこと教えて欲しいっス」

 

 いきなりすぎて驚いた。

 こういう真面目、というか説教じみた雰囲気は嫌いらしく少し居心地が悪そうにしている。

 が、そのお陰で脈絡はないが本題に入れた。

 

「物価? ああ、物価ね……なんかあったっけ?」

「あったろ。ホラ、武器を新調しようかと思ったらやけに高かったって話」

「そういやそんなこと言ってたな……なんだっけ? 探索に必要なモンは全部高くなってんだっけ?」

「全部じゃねーな。確か回復薬系は変わってねーはずだ」

「てことは魔道具も高く……ああ、鉱石の値上がりか!」

「そこわかってなかったのかよ」

 

 この人はそういうことには無頓着なのか?

 

「そういえばプロミネンスのとこでンなこと聞いたっけな」

 

 ポーラ?

 いや、違うか。

 たしかノースミナスにもプロミネンス家の店があるって……地図にプロミネンスって書いてあったような覚えがある。

 え~と、地図地図……うん、書いてあるな。

 それも結構近場。

 流石に知名度あるし大通りの辺りに店を構えてるのか。

 

「試作ができねーじゃねーかッ! って不機嫌だった」

「うわぁ、見てないのにハッキリわかる」

「結構怒りっぽいんスね」

「つーかアイツはそれで生きてんだよ」

「?」

「流石にこれじゃわからんわな。アイツは趣味で武器を造って、それに値が付いてる。つまり売りたくて売ってるんじゃなくて造ったら売れた、って感じなんだよ。アイツにとって」

「それ、製作者としては超絶最強じゃねーか」

 

 プロミネンスって知名度はあるとはいえ広告せずとも売れるというのは天国じゃないのか?

 本人がどう思ってるのかは知らないがクリエイターの多くが求める領域な気がする。

 

「ただ性格に難があるというか、鍛冶第一というか。別に他のことに興味がないワケじゃないんだぜ? 誘えば酒も飲む。ただアイツは自分の決めてる量になったら一切飲まなくなるし話してる内容に区切りが付いたらそのまま帰っちまうし……ホント鍛冶中心の思考で」

「ついでに言えば製作が滞ったりしたら機嫌がスゲー悪くなるから仲の良い奴ほどその被害に遭う」

「おおぅ……なんともまぁ……」

 

 ぶっちゃけそういう吹っ切れたような人間は嫌いじゃないしむしろ好き。

 機嫌が悪いと被害に遭う可能性があるってのが懸念点ではあるが、少し興味がある。

 

「……見に行ってみようかな」

「マジか」

「ええ。ちょうど武器がプロミネンスのモンなんで、なんとなく」

「そうか」

 

 ちょっと心配そうだな。

 別に平気じゃないのか?

 普通に何も知らずに入る客もいるだろうし。

 

「アイツ、目つき悪いんだが別に不機嫌ってワケじゃねーから誤解しないでやってくれよ?」

「お、おう。ハナからそんなつもりないけど」

「そうか。なら良いんだ」




 ダメな感じの独裁……作者は別に独裁を悪と断定する気はないです
 スターリンとかヒトラーとかのいめーいが強いので独裁=悪ってイメージが強いですけど、問題があったのは運営する側であってシステムではないはずなんですよね
 独裁だろうときっちり国政を行って、自国にも他国にも不満を抱かせない手法があればそれは善政で、問題はないはずです
 個人の自由を抑制するのではなく総括してそれぞれに利益を示せばそれは悪じゃないですから

 まあ、理屈としてそれが可能だと仮定しても国民がそこに対する合理的理解を示せなければどんなに優れたシステムも役に立たない
 ワールドトリガーのセリフを借りるなら『結果だけ見て戦術を語るのは意味ないぞ』です

 これは独裁だけでなく共産もしかりですね
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