ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第八四話 プロミネンスの力

 ここか。

 プロミネンス工房……王都のと似てるな。

 同じとこから派生したならそりゃそうなるか。

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

 

 で、ずっと聞こえてるこの笑い声は一体……。

 てかみんなスルースキル高くなぁい?!

 何?

 聞こえてるの俺だけとかそういうヤツ?

 この店に用事がある人間にしか聞こえないとか?

 何その意識外の亡霊(クラロンラウ)みたいなの。

 

「しっ、失礼しやーす」

「アイツ、あの状態のあそこに入ったぞ」

「勇者か?」

「見ない顔だな」

「知らないんじゃないの?」

「知らなくても入らないだろ、普通」

「それもそうね」

「オイオイオイ」

「死ぬわアイツ」

 

 聞こえてるんかい。

 つまり奇声は日常と。

 ヤベエな。

 ……帰ろっかな?

 

「誰だ!」

「きゃ、客で~す……」

「そうか! 今は取り込み中だ! 帰れ!」

「うえッ!?」

 

 帰れ?

 今帰れって言った?

 お、おう……スゲエな。

 自分を貫いてるっていうか……清々しい。

 てかこれホントに返されるヤツ?

 

「何やってるんだアンタは!」

「痛ぁッ!?」

 

 どうしようかと悩んでいると店の奥の方から初老の女性が勢いよくやって来て、俺を追い返そうとした目つきが悪く背の高い女の人を蹴り飛ばした。

 女性のキック力は想像よりも強く、女の人は勢いよく壁に衝突する。

 

「娘がすまないねぇ」

「あ、いえ……都合が悪い時にいきなり来たのは僕ですし」

「そんなの商売じゃ普通のことだよ。お兄さんが気にすることじゃないからドーンと構えてうちのバカを叩いてやれば良いのさ」

「え、ええぇぇぇ……」

 

 初対面の相手叩くってダメだろ。

 てかそれを推奨するのも親としてどうなのさ?

 教育のためなら問題なしとかそういう価値観なの、この世界?

 まさかな。

 

「ちッ、それでなんの目的だよ」

「目的……」

「あ゙? まさか目的なしに来たんじゃねーだろぉな?」

「その前に、この店って他に誰かいる?」

「は? まさかこんな堂々と強盗か?」

「チゲーよ。んで、答えは?」

「……いない」

 

 そりゃこんな聞き方というかこんな質問をすれば疑われるか。

 怪しすぎるもん。

 

「単刀直入に言えば、物価上昇について調べに来た感じだ」

「……オイ、どぉいうこった」

「そのまんまの意味だ」

「ごめんなさいねぇ。この子は伝えるのが苦手なの。つまり何が言いたいかというと――物価上昇は人為的な要因によるモノなのか、ということが聞きたいのよ」

 

 ゾッと、底冷えするかのような抑揚のない平坦な声。

 表情とのミスマッチで恐怖が増幅される。

 

「詳しく聞かせろ。お前に拒否権はねぇ」

「ワォ、暴君だ。……まあいい。何の証拠もない無理やり吐き出させただけの話だが、現在進行形で起こっている物価上昇は黒鉄の墓という組織に採掘された鉱石が横流しされてるのが原因だ」

「信用できねえな」

「別に信じろっていうつもりはない。知ってることを教えて貰おうってのが目的だ。あと可能なら信用できる兵士系の奴を紹介して欲しいってくらいだ」

「……」

 

 この二人が加担していないのは主観交じりだがなんとなく察せる。

 演技である可能性は拭いきれないが鉱石の値上がりによってその影響を受けて怒っているという話を聞き、黒鉄の墓に加担してもメリットがないと判断した。

 そして大いに主観だが、プロミネンスのところというかポーラの親戚がそういうことをしているという感じがしない。

 とはいえこれは判断基準にはしていない。

 今のやりとりで判断材料も増えた。

 視線などに含まれる敵意なんかの感情はよほどじゃないと誤魔化せないらしい。

 意識を相手に向けなければ回避はできるが今の一瞬二つの感情は強く伝わってきた。

 そしてそれは真相を知りたいという意思と、怒り。

 二人揃って感情偽装の達人でもなければ少なくとも一人は信用できる。

 

「……ペトラ、店番は私がやっておくからその子と話をしてきなさい」

「……わかった。ほら、ついて来いッ」

「腕と肩ッ。力強くね?」

「鍛冶師が弱くて務まるかよ」

 

 ごもっとも。

 掌はガッチガチだし、見えてる範囲の筋肉半端ねーもん。

 

「詳しく教えろ」

「どうやって聞いたかは伏せる。ただ黒鉄の墓の人間からやってることを聞き出した。その時裏取引の書類も見た」

「なんでその時衛兵に突き出さなかった」

「それをやっても根本的な問題解決にはならない。その書類は手下の名義で契約されていた、そいつらだけを突き出してもトカゲの尻尾切りになるだけだ。なら証拠掴んで準備して先手を打って逃げの時間をなくした方が良い」

「そういうことか。ならなんであッチを頼った?」

「知り合いの開拓兵から聞いた人物像と自分で見て感じた印象。あとは危険性に対する利益の釣り合いのとれなさ。そしてポーラと同じで純粋に装備を造るのが好きなんだってわかったから」

「ポーラ……」

「あ、流石に親戚とはいえ知らんか」

「ポーラ、ポーラ……ポーラ…………王都のちまいのか?」

「そうそう。パッと見はアンタを小柄にして髪を短くして髪の色を赤銅色にした感じの同じようにがっしりした体格の女の子」

 

 思い出せる程度には知ってるのか。

 ポーラは昔こっちに来た?

 ……いや、なんかの用事でペトラが王都に行ったって考える方が自然だな。

 

「んなこたぁ良いんだ。話を戻すが、そういうことならもう少し慎重に動くべきなんじゃないのか」

「ん~。俺が物価上昇のことを調べに来たって言った段階じゃまだ誤魔化しようはあったし、逆にそっちにも同じように誤魔化しようはあった。けどアンタらは素直に自分の思考を離したし、そこから伝わってくる感情も信じられるモノだった」

「なるほどな。試してたワケか」

「不快か?」

「平気だ。そうやって動くのは正しい。その行動に腹は立てねえよ。バカにされたワケでも不利益被ったワケでもねえからな」

 

 やりやすくて助かる。

 

「それで目的……はさっき言ってたな。情報は何もない。あとで知ってること全部言ってもいいが多分もう既に入手してると思うぞ。で、人脈に関しては任せろ。伊達に鍛冶でのし上がった鍛冶貴族の末裔をやってない、こう見えてそっち方面に顔が利く。都合が良い時はいつだ?」

「え~っと、みっ……二日後だ」

「明後日か。わかった、そこそこ地位があるヤツで予定の合うヤツに声をかけておく」

「助かる」

 

 王都じゃないし流石にプロミネンスとしての効力は薄いんじゃないかって覚悟してたがノースミナスでもプロミネンスのネームヴァリューは友好らしい。

 こういうのがいつ役に立つのかわからない、コネを作っておくのもいいかもしれない。

 

「ちなみにどこのバカが横流ししてたんだ?」

「え~っとなんだっけ。ミナスじゃなくて……ララリマン鉱業だッ。そうララリマン、そこが流してる」

「なんだとッ!?」

「ひぇッ」

 

 ペトラの表情が険しくなった。

 元々鋭い目つきと合わさって威圧感が途轍もない。

 さらに言えば俺で言えば白目にあたる結膜部分が黒く、俺で言えば黒目にあたる角膜や虹彩部分が紫と以前の感覚を完全には捨てきれていない俺としては人外とも思える特徴のせいで威圧感が増している。

 

 落ち着け。

 そういう意図はない。

 見た目で判断しちゃダメだ。

 バカに成り下がりたくはない。

 正しく判断しろ。

 よく見て……。

 眼は神と同じ色で綺麗だし鋭い目つきだって慣れればただの凛々しさでしかないし、筋肉質な身体だって健康的で好ましい。

 うん、平気だ。

 

「悪い、ビビらせちまったな」

 

 そう謝るペトラの表情は慣れと諦観で作られていた。

 聞いていた話然り、今の俺然り、畏れられることには慣れているのだろう。

 

「ちげぇよ。いきなり叫ぶなってことだ。てか横流しに怒んなら犯人に向けろよ、俺に向けんな、思いっきり怒り向けられてビビったわ」

「あ……」

「無自覚に殺気出すなバカ。ヘッドロック極めるぞ」

「スマン」

「つか綺麗な顔で怖い顔されると普通の奴より威圧感あるってホントなのな……」

 

 こりゃ確かに怖いわ。

 

「……ハァ」

「うえッ!? そんなに憂鬱そうな表情するくらい嫌なの? 特大逆鱗だった? ごめん」

「違うけど……まあいいや」

 

 ごめんて。

 アデルといい美人はあまり誉め言葉じゃないっていうか、むしろ嫌になる言葉なのか?

 ……でも聞けないし。

 ……今度帰ったらマユゲに聞いてみよっと。

 

「でも、そうか……ララリマンが関わってるってことはその上のミナス鉱業やらその系列は信用できねえな。それ以外のところであッチも聞いてみっけどアテにすんなよ」

「助かる。けど慎重にな」

「ああ。そこは全力で気をつける」

「巻き込んですまないな」

「むしろ巻き込んでくれてよかったぞ。遠慮されて被害が拡大する方が何百倍も嫌だからな」

「そうか」

 

 よし、人脈ゲット。

 これで情報収集が楽になった。

 

「それはそうと、お前、プロミネンスの装備使ってんのか?」

「ん? ああ、これとこれだな。それと俺はヒイラギだ」

「そぉか……」

 

 興味ナッシング。

 もう興味が武器に向いてらぁ。

 

「……場合によっちゃ黒鉄の墓と戦うことになるだろうからコイツをくれてやる」

「黒い……短剣? いいのか?」

「コイツはただの短剣じゃねえ。形状記憶合金を使ってっから柄頭に魔力を流せば瞬時に長剣に切り替えられて、もう一回流せば元に戻る。これで間合いを騙して相手を倒せばいい。普通のモンスター相手にも使えるだろうしな」

「スゲー」

 

 この世界の形状記憶合金って能力半端ねー。

 魔力使うとそのレベルまでできんのかよ。

 

「コイツは礼と先行投資だ」

「お、おう」

 

 その二つって同時に成り立つのか。

 

「お、おおっ。スゲエな。本当に伸び縮みする。手に馴染むし……ありがとうな」

「礼に礼すんなよ」




黒の短剣:銘は『黒鍵・(アジャラ)』 特殊な金属を長年の経験に基づく勘によって配合されたペトラ作の一品 試作のため無骨そのものだが生み手の技術によってヒイラギには過ぎた逸品である 形状は切っ先諸刃造りの短直剣 
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