ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「ヒイラギは開拓兵として何がしたい?」
「どした? いきなり」
「ヒイラギは進んで厄介事に首を突っ込んでそうな気がしたから何したいのかなって」
「煽りかよ……別に特別な目標とかはねーよ。人並みの目標……いつか世界を見て回りたい、んで叶うなら幸せな家庭でも築いて死にたいってだけだ」
「たしかに人並みで、欲張りな目標ね」
欲張り。
たしかにそうだろう。
幸せなんて簡単に手に入るモノじゃない。
仮に人間が皆人生を幸福に過ごせたとしたらそれはよほどの楽園か、もしくは人生の目標が極端に低いかだ。
望みが高いほどにその成就は困難に。
それが世の常というモノ。
「別に良いだろ」
「悪いとは言ってないわよ。ただ素直な目標だと思っただけ」
「バカにしてるだろ」
「してない」
「いーや、絶対バカにしてるね」
「してないわよっ」
まぁったく信じられん。
バカにしてなかったら俺に対して『素直』なんて言葉使わないだろッ。
欲望には素直だけど根性はひん曲がってるを自称してるのが俺だろ?
ありえないわ。
「酔ってるでしょ?」
「酔ってないっ」
「それは良ってる人の常套句よ!」
「だったら酔ってない奴はどうやっても言葉じゃ証明できないだろうがっ」
「見たらわかるわよっ。顔が赤いものっ」
「それは……明かりのせいだ」
「そんなワケあるかッ」
やっぱバカにしてるだろ。
うん、バカにしてる。
そうだ、そうに違いない。
「そういうクアークの目標はなんだよ……」
「アタシ? 気になる?」
「俺に聞いたんだ、そっちだって言えよぉ」
「真実の愛を見つけるためよ」
「……ダッハッハッハッハッ! なんだよその幼女みたいな話! いくつだよ!?」
「二〇……いくつ? 多分二一ね」
「意外と若かった」
「てか人の目標笑うなんて酷いじゃないのッ」
「ご、ごめん……ンヘッ」
「また笑ったッ!」
だってそりゃそうなるだろうが。
将来の夢はお嫁さんです! っていう子どもみたいなこと言いやがって。
これで笑うなって方が無理な話だろ。
「てか他人の男奪う奴が真実の愛ってどういう」
「それは……そうなんだけどぉ。アタシにだってやりたいことがあんのッ」
「ほぉん? てかちょいちょい思ってたんだけどよ。そのキャラ疲れない? たまに素が出てるし」
「うっさいわね。演技なんて続けてたら素になるし混ざりもするわよ」
「そういう理由か。なるほど、俺も経験あるわ」
嘘から出た真とは少し違うかもだけど、そういうことは現実としてあるし俺も経験したことはある。
少しでも楽に、無難に生きられるようにと悪意から逃げるために演じて、そしてその役が今の人格に大きな影響を及ぼしているのだ。
他人事ではない。
「んじゃそこには触れないわ。で、やりたいことって?」
「そこは……秘密よ」
「うぇ~い、りょ~か~い」
まあ踏み込み過ぎは良くないわな。
それにどうせ俺には関係ないだろうし。
「強いて言うなら強い男に会いたいかな?」
「あ~はいはい、強い男を従えたいってね。やっぱ怖いわー」
前といいその『女が英雄を好むのは~』な思考、男としては恐怖でしかないわ。
ま、俺って標的になるほど強くない雑魚開拓兵だから狙われる可能性なくて安心だけど。
「ならちゃんとした話、明日はどうする?」
「どうって、探索するだろ常考」
「そうじゃなくて、開拓兵が仕事をしてるってアピールのために依頼を受けるんでしょ? それのことよ」
「あ~……同時並行で進められそうなの選んで? お願~い」
「はぁ……今は仕方ないけど状況が落ち着いたらちゃんと自分で依頼を見極められるようにしてもらうんだからね?」
「それはもちろん」
俺だってサボる気ないですよ~だ。
堕落しても楽になるだけで良いことないし。
だったら労力は惜しみませんとも、ええ。
「討伐関連もしくは軽めの調査系で良い?」
「ああ。ついでにいえば依頼主的には個人を認識できるような依頼……つまり受けるのが普通じゃない、受けて貰えてありがたいって感じの依頼がいい」
「わかった。あまり多くないだろうけど仕方ないから探してあげる」
「ワリィな……稼ぎが減っちまうし戦ってて楽しくないだろ」
「気にしない気にしない。前も言ったかもだけど、お金なんて大して興味ないのよ。それに案外ヒイラギと一緒にいるのは嫌いじゃないわ」
「そうか……ありがとうな」
前もこんなやりとりをしたな。
「……クアークってホント良い奴だよな」
「どうしたのよ、急に」
「優しくて面倒見良くて、強くて賢くてさ……完璧すぎない?」
「だからどうしたのよ……」
「これで趣味がもうちょい安全だったら惚れてたわぁッ」
「一言余計」
できるできないを無視して実際にそういう関係になったら劣等感が強すぎて耐えきれる自信あまりないけど。
「アナタって酔うと面倒なのね……はぁ、聞かなかったことにしてあげるから」
「んぉ? ……良くわからんがありがとう?」
「はぁ……」
ため息多いね、疲れてる?
「あ、ロカリー酒の甘いのおかわりぃッ!」
「は~い」
ロカリー酒なら無限に飲める気がする。
……流石に糖尿病になるか。
「ずっとそれ飲んでるけど好きなの?」
「うん、大好きさ!」
「というかむしろそれ以外に飲めない?」
「の、飲めるし! ……ミードとか」
「甘くないと飲めないってことね」
あれま、バレちった。
「だって飲んだことなかったし」
「そういえばそうだっけ。別に無理して飲まなくても良いのよ?」
「まだ若干苦手ではあるが無理はしてないっ」
「本当に? ダメそうだったらちゃんと魔術で治癒しなさいよ?」
「お~ん」
そうだな。
不安だし軽く毒分解しとこ。
……あ~、魔術が構築しづらい。
やっぱ脳が麻痺るとこうなるのか……。
むしろこの難易度を逆手にとって修行に、ってダメだな。
変なクセでも着いたら逆に弱体化する。
「ちなみに、なんで苦手なの?」
「なんで、って……そもそもこの
「この歳って、何歳だっけ?」
「一七。苦みを美味く感じるにはもうちょい時間がいりますよ、と」
「そういうこと。でもたしかに初めてお酒を飲むと美味しくは感じないわよね」
とりあえず経験せずに否定ってのも気持ち悪いし、やってみはするけどやっぱりぬぼっとした感じが強い。
果たしてこれが美味く感じる時が来るのか。
もしかしたら一生美味く感じないかも。
極端に酒に弱いってことはないけど単純に好きに慣れてないし。
ロカリー酒なら飲めはするけど後味のアルコール感のせいでだったらジュースのが良い、ってなる。
「クアークが初めて酒飲んだのって、いつ?」
「大体……一〇年くらい前? 一〇歳から一二歳の間ね」
「うへぇ、マジかよ」
「ヒイラギのいた世界じゃ何歳から飲んでも良いの?」
「俺のいた国じゃ二十歳からだな。国によっては違法な場所もあったな」
「そうなの?!」
「ああ。依存性が強いからじゃねえかな? あと思考力が落ちるし」
一部の麻薬よりも依存性が高いって言うのはなかなか愉快な話だ。
俺には関係がなかったから他人事だし、こっちの世界に来たからもう完全に他人事だからどうでもいいのだが。
「あとは飲み過ぎて死ぬしな」
「魔術がない世界は大変ね」
「文明的には進んでるんだけどな。だからこっちの世界じゃできないことも向こうじゃできるし、けどこっちの世界でできることが向こうじゃできないっていう。一長一短だ」
「……この国は好き?」
「まだ全然見れてないからはっきりは言えないし、今の面倒事があるから大変だけど。なんだかんだ言ってそれ含めて前より良い」
「そう……でしょうね。戦ってるときのヒイラギは特に楽しそうだもの」
「え゙、マジで? そんなに?」
つまりはバトルジャンキー確定ってことじゃん。
前から疑惑はあったけど……。
ついに確定しちゃったかぁ。
「自覚なかったの? さっきだって戦ってて楽しくないだろ、って言った時点で自覚あるとばかり」
「……はッ! たしかに」
普通の感覚なら戦いって苦手なはずだし……。
そっかぁ、俺ってバトルジャンキーだったんだな。
戦闘で狂っちゃう?
……俺は戦闘狂、了解。
「でも、良いんじゃない? アタシだってそれなりに戦いを楽しんでるワケだし、他の皆もそうよ」
「そうなの?」
「経験の長い先輩が断言するから信じていいわよ」
「あいよ、信じるわ」
そもそも戦いで平和を造ろうとしてる国だ。
戦いを憎んでしまったら今現在、進行形でやっていることを否定することになる。
一つの生命体として、他の生物たちの上に立ってる自覚。
人間含めたありとあらゆる生物の血と肉の上に君臨しているという前提条件を理解してるのか。
……意外と俺って普通な感じ?
長らく少数派だったゆえに生まれた自分に対する異常者の認識。
けれどそれもこの国では普通かもしれない。
その認識で気が楽になる。
親しい人間には受け入れてもらえるからと気が楽になっていたのが、この国では普通なのだという認識がより気を楽にした。
結構大人びてる感じで書いてるけど実は二一のクアーク
まあこの時代じゃ軽く行き遅れには違いないですね
一〇代前半で結婚して子どもを産む女の子もいますからね、クアーク=行き遅れは確実
ヒイラギは酔うとテンションバグるし話の脈絡がなくなったりで面倒なタイプですね
お前……これ以上めんどくさくなってどうするのさ