ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第八八話 天然な衛兵とザフィーア

「ご機嫌いかが~? って、良くはないか」

「おお、来たか。待ってたぞ」

 

 日にちだけじゃなくて時間も決めておけばよかったな。

 人を待たせるのは好きじゃないから早めに来たけどそれでも待たせたっぽいね。

 

「待たせてすみませんね、お兄さんがそこそこの地位の知り合いっスかね?」

「そうだね、僕はそこそこの地位だね。仕事上の付き合いで色々あって親しくさせてもらってるよ」

 

 別にどういう関係性かは興味ないっス。

 さっさと本題に入ろうぜ?

 

「大まかなことはペトラさんから聞いている。そして問題解決にあたって僕たちがしなければならないことがいくつかあって、一番大事なのは信用できる上官に話を通すこと」

「ふむ、それは貴様では無理なのか? 僕はてっきり貴様にその権力があると思っていたのだがな」

「あ、それは俺も思った。てっきりこの人に話を通して証拠を集めれば解決できるとばかり」

 

 そこそこ偉いのになぜダメなのだろうか。

 瞬時に思いついた可能性は『大本の命令がないから』というモノ。

 A・B・Cの指揮官がいて、その偉さはAから順に偉いとする。

 AはBに『街の警備』の命令を出し、BはCに『特定地区の警備』を命令するとして、Cはその部下たちの警備ルートを決める。

 つまりCの権力行使権はBに命を受けて初めて生まれ、Bもまた同様ではないのか。

 指となるCがいても腕となるBがいなければ指は動けないし、胴体となるAがいなければ腕も身体には生えることができない。

 

「僕が現状できるのは君たちに衛兵組織の知識を貸すことだけ。そして今必要なのは究極的にいえば組織のトップのザフィーア様に話を通さないと大々的には動けないんですよ。僕一人なら力を貸せますけど相手の抵抗や規模を考えると僕程度では微々たる力ですし、やはり一斉検挙にはそれが必要だと思います」

「ん~、面倒っスね」

「そう言うなヒイラギ。組織とは多少面倒にしなくては成り立たないのだ」

「や、わかるけどさ」

 

 それは客観的に考えれば普通にわかる。

 が、いざ自分がそれに関わるとなると面倒と思うのは当然だ。

 

「僕の方でどうにか接触して話ができないか試してみるけど君たちも試してみて欲しい」

「そうスか。つっても俺らの中にそのザフィーアって人との接点ないっスけどね」

「知り合いを辿れば……」

「……いる?」

「この街の知り合いはこの場で完結している」

「ボ、ボクは大人の知り合いいないし……」

「アタシも開拓兵くらいね」

「あるにはあるが会おうと思って会えるような間柄じゃないな」

 

 恐らくは仕事の関係で辛うじて接点があるペトラでさえもその程度。

 つまり全滅。

 

「ま、まあ可能性は広がるはずだから試してみて欲しいんだ」

「頭に入れとく」

 

 多分無理っぽいけど。

 

「ねえ、なんで一番大事なのが偉い人に話すことなの? 証拠見つけて捕まえるんじゃ?」

「それはだな――」

「そうしないと進まないからなんだ。たしかに証拠も大切だね。でも最悪証拠なんて確保してなくても証拠隠滅をされる前に攻め入って捕まえてしまえば真偽を確認する能力者に頼んで二択の質問を続けるだけで自白させることができるんだ」

「……たしかに?」

「だけど話を通せてなかったら何もできないんだ。例えば、ザフィーア様に話を通すのが険しい土地を整えることだとしたら捕まえることは整えた土地に石畳の道を敷くこと。危険な場所だと歩くのすら危ないけど、ある程度整っていたら道がなくても歩きづらいだけで歩けるでしょ?」

「そっか。わかった」

 

 説明しようと思ったら説明役とられたぁ。

 別に良いけど。

 

「ザフィーア様に話をするときの説得力が違うからできることなら証拠は欲しいんだけどね」

「具体的にはどういうのが欲しいんだ?」

「そうだね……契約書(ギアスロール)とかがあればわかりやすいね。ただそういう大事なモノは確保しにくくもあるけど」

「了解、書類っスね。……こっちもどうにかなるよう頑張りますか」

 

 いっそメンバーのリストでも作ってやろうか。

 ……無理だな。

 写真技術がねえ。

 手書きで顔写真描きますってか、バカヤロー。

 そんな絵心ないわ。

 普通に調べて普通にやるしかないな。

 リスト作れたとして精々それぞれの見た目の特徴を纏める程度だし。

 

「ちなみにそのザフィーアってのはどんな人っスか?」

「開拓兵から衛兵になった人で遠征開拓兵だったから当時から強かったんだけど、今はその強さに磨きがかかってノースミナス最強って言われるくらい強い人で大盾と細身の長剣での連携は一切の隙がないと言われているね」

「や、そういうことじゃなくて、見た目の話で」

「……ああっ!」

 

 天然かこの野郎。

 可能なら接触しろって言ったのアンタでしょうが。

 なんでその情報出さずに人物解説やってるのよ。

 

 呆れたくなるその行動に、本当にこの人に任せて大丈夫なのかとそう思ってしまう。

 これでそこそこ昇進できているというのだから不思議なのだが、一度仕事モードになると凄い活躍をするのかもしれないから現状の印象で全てを決めるのはやめた。

 

「えっと、青毛の獣人で、六一歳で、だけど全然元気だし、体格も全然若い感じで……身長は大体これくらいだね」

 

 手を持ち上げ、横に振った高さはおおよそ一八五センチといったところ。

 もっと大きい人と何度か会っているから今となってはそこまでプレッシャーを感じないだろうが、もしその経験なしにその人と遭遇していたらかなりのプレッシャーはあっただろう。

 

「青ってのは濃いめ?」

「そうだね。……結構深い青かな、君よりももっと濃いね」

「なるほど」

 

 俺のは青っていっても空色。

 どっちかといえば水色だしそりゃあ大体の青に濃さで負けるわな。

 

「とりあえずその特徴を頭の片隅に置いときますか」

「頼んだよ。じゃあ僕はそろそろ仕事に戻るよ」

「……結局あれで良かったのか?」

「ん? おお。話聞いてあの人にできることって少ないってわかったし、長話する理由ないだろ」

「そうか」

 

 ペトラはこういう話し合いを何か別のと勘違いしてるのか?

 正直劇的なことはないし楽しいこともないのが普通だし。

 

「あ、そうそう。貰った武器、かなり使いやすかったぞ」

「だろ?」

「自信満々だな」

「そりゃあ自分の作品、つまり自分の行いに自信を持てずに何に自信を持つんだよ。鍛冶はあッチが一番熱を入れてることだぞ」

「なるほど。正論だ」

 

 重心を置いている場所をしっかり認識しなかったら身体が揺らぐ。

 それはつまり価値観や人生でいえば危機的なこと。

 一瞬はペトラの自信過剰に思えたが、ワケを聞いたらなるほど納得だ。

 

「それはさておき、今から――」

「すまないが今日も前回のように敵地の様子を窺うのなら早めに終わらせてくれ」

「む? 用事か? それなら無理に引き留めないが」

「そういうワケではない。ただやけに具合が悪いのだよ」

「……青魔の月?」

「違うな。原因はそれ以外だ。以前にも言ったがこの街はやけに魔力が淀んでいるのだよ。魔力に敏感な我々魔術種(エルフ)にとってそれは辛い話でね」

「あ~、感覚はわからんが状況は理解した。じゃあ今日はやめとくか」

「い、いや……そういうワケにはいかん。僕のせいで計画が滞るなどッ、断じて許せんッッ」

 

 プライド、だろうか。

 共感はともかく理解はできる。

 

「別にいいんだよ。そもそも具体的な方針が一切固まってない状態でなんとなく(・・・・・)のまま調べても得られる情報に大した違いはねえんだから」

「だが……」

「あのな、だがじゃねえよ。協力するつもりがあるなら休んでもらった方が良いの。ここで下手に使い潰して肝心な時に動けません、が俺としても困るし、第一魔術種(ヘルベルト)が無理する理由がどこにあるよ? てめえにとって一番大事なことはこれじゃねえだろうが」

「すまない」

「謝んな、バーカ。こんなん俺のためだっつーの」




 ただひたすらに剣と盾の理を詰めていった男ザフィーア
 彼は初め非常に弱気な少年で、ゴブリンを平地で相手にしても簡単に吹き飛ばされるほど弱かったものの生まれ育った街が大規模なモンスターの襲撃によって危機に瀕した時に固有能力【我その痛み一切を忘れず(ザ・ヴェンジェンス)】が覚醒し、街を救ったことをきっかけに強者への道を歩み始めました
 その人生はワリと波乱万丈
 妻は五人いて、息子は七人娘は一〇人(ザフィーアと五人の妻は全員同じ屋敷で暮らしていて全員仲が良いです)

 今のところ頻出キャラになる予定はないものの機会があれば色々情報を出したいと思います
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