ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

89 / 183
第八九話 不安定な城

「え、調査依頼?」

「おう。ちょっと手伝ってくれねえか?」

「……俺は良いが、クアークはどうだ?」

「いいわよ」

「ならよろこんで手伝うぞ」

 

 そこそこ接触のあるオッサン開拓兵が持つ依頼書。

 書いてある内容曰く坑道内にアンデッド系のモンスターが現れたらしい。

 出たのはコープス系やスケルトン系、レイス系とのこと。

 わざわざ依頼になるくらいだから察しはついていたが単に俺の勉強不足というワケではなく、アンデッドモンスターはノースミナスの辺りには出ないのだ。

 正確にはごく稀に出るが基本は一体か二体、期間もかなり長い。

 だが今回は坑道内に複数体かつ複数地区で発見、討伐報告が上がった。

 証拠品もあり嘘でもない。

 明らかな異常事態に依頼が出され。

 けれど目撃されたモンスターはどれも弱いから経験を積ませるためにと今回声をかけられた。

 

「よろしくなヒイラギ」

「俺の方こそよろしくっス」

 

 正直俺はアンデッドのことを良く知らない。

 名の通りなら不死。

 もしそうなら倒す手段が魔石くらいしか思い浮かばないが。

 

 そういえばフィクションのアンデッドって普通に死ぬよなぁ。

 首刎ねたら死んだり、真っ二つにしたら死んだり。

 生物だったら普通だけど不死なのにそれはどうなんだろ。

 ああいう死んだあと蘇って、ってヤツは最早ただ二つ命があってって感じがするからなぁ。

 デュアルライフとかに解明した方が良いんじゃないか?

 

「そうだ、アンデッドと戦う時は絶対に魔石を狙え。それ以外に攻撃しても意味ないからな」

「そうなのか?」

「肉体持ちの方は普通に再生するし、肉体ない奴は魔術以外効かん。ついでに言えば肉体ない奴は普通の剣で魔石狙っても魔石すら通り抜けるから調子に乗ってアホやらかすんじゃねえぞ」

「理解。肝に銘じるぜ……」

 

 名の通り不死でしたかぁ。

 モンスター共通の魔石破壊以外は通用しない、と。

 普通の剣、ってことは武器強化したり飛翔斬撃なら倒せるのか?

 ったく、ワクワクするじゃねえかチクショウ。

 

「なぁに嬉しそうにしてるのよっ」

「あでッ……だって……そんな面白い相手、ワクワクするなってのが無理だろ」

「ヤバい」

「アブねぇ」

「頭おかしい」

「ちくせう」

 

 味方はいないのか!?

 戦うの楽しいじゃん。

 殺されかけた時の恐怖と勝った時のあの興奮の搾座が最高に気持ちいいのに……。

 わかるだろ? わかってくれよ……。

 

「さて、おしゃべりは終いだ。戦うぞ」

「うひゃ~、探知の時点でわかってはいたけどこうして見るとエグイ数だぁ」

「よし、ヒイラギ、突っ込んで良し!」

「うぇッ!? マジスか?!」

「そのままやられてきなさい」

「ワァイ、先輩たちによるパワハラだヤッター」

 

 経験を積ませるためにしてももう少し優しくしてほしい。

 そんな甘やかされた現代社会の思考を持ちながら短剣を両手に構える。

 行く先には腐臭漂わせるコープスや、カチャカチャと骨を鳴らすスケルトンたちの群れ。

 奥の方にはレイスも控えている。

 

 とりあえずは軽く様子見ッ!

 

 少し重めの斬撃を飛ばす。

 腐り、脆いからか肉は容易く断ち切れ、肉の腐敗どころか骨の壊死すらしていたのか一体に対する斬撃の有効性を測るつもりだったにもかかわらずその斬撃はコープスを貫通して後ろに控えていた二体にも影響が及んだ。

 魔石が砕け、手前二体の肉体が霧散する。

 だがそもそも攻撃の予定がなかった三体目は攻撃が魔石から逸れ、断面から魔石が見えるものの砕けていない状態で上半身が両断されていた。

 揺らぎ、倒れる二つの肉体。

 魔石を持たぬ頭を含む上半身がズルリと蠢き、下半身を含む上半身が独りでに起き上がって蠢いた半身と一体化する。

 

「ワォ、スゴイねその再生能力。思わず顎が外れて開いた口が塞がらなくなって、目を丸くしてそのまま目が飛び出そうだよ」

 

 なるほど、凄まじい。

 モンスターの名に恥じぬ怪物的再生能力。

 恐らく腕を灰にすれば腕が新たに生えるだろうし魔石をそのまま残して全身を消滅させれば魔石から全てを復活させるだろう。

 通常ならありえないと思うほどの再生能力だが、目の当たりにしてしまっては想像ですら現実味を帯びる。

 

「良いぜ良いぜ、良いなぁオイ! 出力調整に付き合えモンスターどもッ!」

 

 消費の効率化。

 脆く数が多いこいつらは実に相手として明確だ。

 相手に合わせてどれだけ攻撃の威力を調整できるか。

 それは魔力の効率化になる。

 多数を相手にどう立ち回るか。

 それは体力の効率化になる。

 

「やっぱヤベエな」

「うん、やっぱアブねぇ」

「どう見ても表情が獰猛過ぎる」

 

 三人からそんな評価を下されていることを知らないまま俺は剣を振るう。

 

 にしても臭いッ。

 鼻が麻痺するまでマトモに集中できねえッ。

 

 ドブとチーズと公衆トイレの臭いを適当に混ぜたような強烈な臭いに意識が割かれる。

 下水掃除の時の色々を持っていたことにかつての自分に感謝しながらコープスを両断するとその胴体から何かが生えてきた。

 

「ぬぉッ!?」

 

 反射的に放った【凍壊(フリーズ)】。

 これまでの慣れで発動はできたが構築時間がほぼゼロだったため威力はほとんどない。

 せいぜい半径ニ〇センチの表面を凍らせる程度。

 

「レイスか……」

 

 パラと凍結した表面が崩れ落ち、不定形の霊体がさらに形を揺らがせて再生を行う。

 さっきのコープスのように残った霊体を再利用しないのは魔術で凍結させられたことによってその部分の霊体が別の物体として変質し、認識されたからだろうか。

 もしそうだとしたら周囲から鉱物を吸収して再生するゴーレムとて周囲の鉱物全てを魔術で操作してしまえばその再生の特性を使えないのと同じ。

 少しではあるが法則性が見えた。

 と思いたいが、相手が不死となるとその法則性は無意味。

 結局無限に再生されてしまう。

 

「魔術に対する防御力地味に高いなオイ」

 

 放った時の感触――魔力消費と存在力からして半径二〇センチほどの威力だったのだが、範囲はそれよりも小さく面積は半分以下、半径は一五センチもない。

 さらにいえば深さも想像よりずっと浅く、漫画ほどの厚さだけ。

 凍結そのものも甘く、踏めば簡単に砕けてしまう。

 

「ま、そんなん関係ねえけど、なっ」

 

 ほんの数瞬に絞った探知の精度向上。

 敵の位置、そしてその奥の魔石の正確な位置。

 僅かな時間でそれを把握し、咄嗟の直感的判断で【凍壊(フリーズ)】を伝播させる。

 一体の魔石を冷気が貫き、そこから雷のように、宙に白い冷気のリヒテンベルク図形を描きながら一帯の魔石ことごとくを凍て尽くした。

 

「……多っ」

 

 一気にかなりの数を倒したのだが、異常なほどにモンスターで溢れている。

 なんというかゲームの無限湧きするモンスターハウスにいる気分だ。

 

「アンデッドは多く湧くってのはなんとなく知ってるけど、こんなに多いワケェッ!?」

「普通はこれほどじゃない!」

「ならなんで!?」

「その調査に来てるんだろうが!」

「なるほど! たしかに! ……てか普通じゃない状況で一人戦わされてる俺は一体!?」

「……頑張れッ!」

 

 ひでぇ。

 ああもう、死ぬ気でやってやんよチクショー。

 

 鼻の慣れと諦めによる吹っ切れ。

 意識が一段階切り替わる。

 

「っか~、集中すんのおっせーなアイツ」

「まあ流石にそこは、な」

「洞窟と違って坑道だからまだ楽だけどそれでも動き辛い足場に底の見えない敵、初めてで慣れない臭い。それを踏まえたら充分だと思うわよ?」

「集中してねーのはマズいだろ」

 

 俺の戦いを見つつ話し合う三人。

 その内容はおろか声すら今の俺には届いておらず、視線もあまり感じなくなったためにそんな適当とも思える状況がむしろやりやすい。

 

「それは経験によるんじゃないか?」

「そうね。聞くけどアナタは開拓兵になって一ヶ月の頃何してたのよ」

「見習いでゴブリンとか倒してたなッ」

「時期だけ考えればヒイラギよりも弱いじゃないの……」

「アイツはアイツ、俺は俺だ! それに今の俺はアイツよりも強いッ」

「……オメェ、それは二〇年来の友ながら流石に情けねえよ」

「ふっ、何を今更」

「それもそうだな」

「はいはい、馬鹿やってないの」

 

 ノリの軽い男二人を冷めた目で見つつ軽く窘めるクアーク。

 はぁ、とため息を吐くクアークに二人は笑いつつ俺に目を戻した。

 

「それで、率直に――どう?」

「いや~、恐ろしいなぁオイ。あれで一ヶ月だって?」

「俺らからしてみればまだまだ全然だ。だがそれはあくまでも俺らレベルでの話。……経験を踏まえると過ぎるほどに充分だ」

「動きはまさに一ヶ月の素人。身体能力(ステイタス)も決して高くはねえ。なのに特定の動きに関しちゃ異常なくれぇ洗練されてる。……キモイくれぇに真似が巧いな」

「ざっと三人か?」

「いや、一個は多分海悪魔(サハギン)だ」

「ああ、確かにそうだな」

「んで残り二個は二人。一人はクアーク、オメェだな」

「ちょっと前に軽く戦ってあげたから」

「もう一人は……知らねえが剛剣だが荒くありつつも歴戦で洗練されてやがる」

「気持ち悪いな」

「ああ、気持ち悪い」

 

 軽く戦い方を見ただけで俺の中の参考(パーツ)を正確に把握する三人。

 気持ち悪い、は散々だが、実際普通の感性ならそうだろう。

 正規の成長を遂げていない俺の動きは歪そのもの。

 不安定な足場の上に建てられた見た目だけは立派な張りぼての城。

 はっきりいってみてる側としてはいつ死ぬ(くずれる)か気が気でない。

 

「動きを見せたら簡単に真似しそうだな」

「実際それしてるだろうしな」

「でも楽しみでもあるわよね」

「……まあ、な」

「死ななきゃ、な」

「欠点が多いが利点もデカい。もしヒイラギが今後生き延びて、経験を積んで真似した動きの中の理をちゃんとわかったら……」

「ああ、得た動きを分解してその中から多くを吸収できる」

 

 三人の総評は『不安定』。

 上手く倒れることができれば生き延びられ、間違えば容易く死ぬ。

 

「ま、俺らには知ったこっちゃねーけどな!」

「先輩として経験は積ませてやるがそこまで甘くねえよな!」

「本当の意味で開拓兵になれるか。大事なのは多分そこね」

 




 総評はオブラートに包んだ結果、率直に言えば『きめぇ(笑)』
 ゲームで言えば上位プレイヤーの動きをマクロ組んで再現してるだけですからね、戦略と戦術のレベルがあまりにもアンバランスすぎて普通の開拓兵からすれば『は?』ってなるレベルのお話

「そこまで甘くねえよな!」は我々からすれば多分かなり甘いんだよなぁ
 経験は積ませるけど――は理由で言えば『答えを言えば思考力が鍛えられない』だから完全に善意の塊だし……
 先輩ッ、甘やかしすぎです!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。