ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「結局全部俺かよ……」
「お疲れ様」
「ホントお疲れよ……体感一〇分は戦ったぞ、オイ」
最後まで支援はなかった。
疲れたのは精神的な面で体力はまだ余裕があるから平気なのだが気が付けばモンスターが全て自分の手で殺されていたと気づいた時の悲しさは異常。
戦闘に熱中するあまり周囲の把握を忘れたこともだし、それほどまでに熱中するバトルジャンキー的精神性も悲しくなった。
「それで、どうだったの?」
「楽しかったよ。ええ楽しかったですともッ、チクショー!」
今の一戦で結構感覚は掴めた感じがする。
モンスターは個体ごとに硬さとかが違うワケだが、モンスターから伝わってくる雰囲気が個性みたいな感じで感じ取れるようになってそれぞれに加減を微調節できるようになった。
個体による硬さの違いがわかるほど感覚が鋭くなかったが今ならなんとなくでならわかる。
「さてヒイラギ」
「なんだ?」
「さっきの戦いで何か気づいたことはないか?」
「気づいたことって……刹那的判断に集中するのにワリと手いっぱいだったんだが?」
「なら助言をやろう」
「助言……スか?」
「モンスターの動きを思い出せ」
「期待した俺が馬鹿だったよ!」
戦いなんだからそりゃ基本はモンスターの動きでしょうがッ。
チクショー……どれだけ俺を嘗めてやがる……。
「気づいたこと、気づいたこと……う~ん……一体一体は弱かった、とか?」
「相手の強さ、確かに重要だ。他は?」
「他……やたら数が多かった?」
「ああ、戦ってるときに言ってたな。他」
「……アンデッドって種族争い的なことせずに一緒にいても平気なんだなぁって」
「なるほど縄張りと仲間意識と敵対関係、重要だ。違う系統のモンスターが一緒にいるのは珍しい方だからな。なら次だ」
「次ぃ? ええ、他にも何か? あ~? ん~? ……なんとなくだけど向こう側の方に数が偏ってたような……いや、空間の広さ的な問題とか気のせいかもしれないけど」
「ほう……具体的には?」
「あ、なんか掠った?」
続きを求められた、という事実に正解ではないにしても近しいところまで行っていたのではないかという手ごたえを感じ少し嬉しくなる。
「ええ、でもなんとなくの感覚に具体的ぃ? ……向こう側にコープスとスケルトンが多くて、あっち側がレイス多い?」
「正解。んじゃ行くぞ」
「……どこに? どっちかもしくは両方に行くとしたって範囲が広大過ぎるんじゃ……」
「問題ないない。ちゃんと策はあるから」
「マジスか……歴が違うだけあって持ってる武器の数が違いすぎる……」
思春期特有の思い上がりというか、はっきりいえば中二病心。
自分は何かしら特別な人間で、最強ではないにしてもそこそこ賢くて強くなれると思っていた。
というか実際、高校じゃ適当な勉強でそこそこの順位を維持できていたからそれを確信すらしていたと思う。
けど、現実を突きつけられた。
俺は他人より多少初期パラメーターが高いだけで成長率が低く、自分を賢いと思っていても自分を見誤る程度の程度の低い知能じゃ三人には勝てない。
三人が強く、経験に基づく賢さを持っているのはわかっていたが、わかっているつもりだけだった。
趣味がおかしかったり、粗野で昼から酒を飲んでいるイメージが強すぎて認識が勝手に下方修正されていて。
よりはっきり、一部分に限って言えば見下していたかもしれない。
「そのうち同じことができるようになるわよ」
「……なるか?」
「なるわよ。アタシたちの使ってる技術なんて所詮は誰かから学んだりして身に着けた技術ばかりで、一から一〇まで自分で作った動きなんて限られてるもの」
「俺、そういう何か技術を習得するのって要領悪いから苦手だし……」
「あ~もう、ウジウジとっ……。ヒイラギ、アンタアタシのこと好き?」
「……ぅえッ!?」
「そっちの二人でもいい、好き? 尊敬したり信じれたりしてる?」
「あ、ああ……それはもちろん。二人ともやっぱ俺よりよっぽど強いし、クアークの凄さは自分の目で観て知ってるから信じられるし尊敬してるし……優しいから好きだ」
「だったらそんな人間を信じ抜きなさいッ。技術や知識の一〇や二〇くらい教えてあげるわよ、学ばせてあげるわよ」
「あ、ありが――」
「アンタがアタシを信じるなら、アタシの教える腕もちゃんと信じなさい」
「――わかったッ」
根本的なことだ。
なのに忘れていた。
真似するしか能のない俺は一人で学ぶワケじゃない。
盗み見るのだって極論誰かに教えて貰っている。
だったら信じるべきは俺ではない。
信じるべきは俺に教えてくれる存在だ。
ベアトリクス、クアークだ。
学ぶ知識と経験に、俺の軟弱さなんて関係ない。
マユゲに習った魔術も、魔道具の理論も、全てマユゲのわかりやすい解説のお陰で今俺の中にある。
俺の理解力なんて関係なかった。
「よっしゃ、信じるぜ俺はッ。さっきの言葉も。技術も知識も教えて貰うからなッ」
「……厳しくしてあげるわ」
「や、やったるぞぉ」
お手柔らかにッ、お手柔らかに頼むッ。
辛いのは別に平気だけど痛いのだけは勘弁だ。
「大体……このへんか」
「そうだな、ここがわかりやすいんじゃないか?」
「?」
「さっきと同じようなことよ」
「なるほど?」
つまりは見て、何か情報を集めろってことね。
……何を見ろと?
ああ、いや、視覚に頼る必要はないか。
例えば魔力……あ、無理。
情報量多すぎて気持ち悪いわ。
「向こうに魔力の流れが続いてるな」
「お、さっきより早く答えが出たな」
「あ、正解なんだ」
ただ手当たり次第に感覚を強化しただけなんだけど。
正解ならそれでいいや。
流石にマユゲみたいに魔力の可視化とか、
これはアレだな。
超能力じゃない普通にこの世界の人間に全般的に備わってる第六感的な……。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚に次ぐ……なんだろ、魔覚?
まあいいや。
「てかさ、こうして歩いてるとほとんどモンスターと出会わないのになんでさっきの場所はあんなに大量に居たんだ?」
「知らん。開拓兵だからといってモンスターのことをなんでも知ってると思うなッ」
「お、おう……」
「モンスターは普通の生物じゃないからな、ある程度の生態を把握できても理解しきることなど到底できないしそこに理屈を求めても無意味なことは多い」
「なるほど。そういう相手に会ったことが何度もあるんスか?」
「ああ」
……え、それだけ?
続きとかオチは?
どんな敵だったかという方向に話が膨らむのを期待していたから少しガッカリした。
別に今必要なことじゃないから話さないなら聞かないが。
「……?」
「どうしたの?」
「聞くけどさ、索敵で何か掛かってる?」
「アタシの範囲には何もいないけど?」
「俺もだ」
「俺も」
「……血の臭いしないか? 嗅覚強化してギリ感じるか感じないかの範囲だから俺の気のせいかもしれないんだけど」
「血の臭い? ……確かにするな」
僅かな鉄臭さ。
けど血の臭いにしては古ぼけているというか、まるでかさぶたのような臭い。
気のせい、剣に付着したさっきの臭い、坑道内の金属の臭い、そういえば片づけられそうなほどに微妙なレベルのモノ。
それは他者の肯定によって確定事項となった。
「魔力の流れと同じ方向じゃないのか?」
「そうっスね。……向こうになんかありましたっけ? パッと思いつくのだとこの坑道が稼働中に使われてた詰所とかっスか?」
「あ~、確かにそんなモンもあったな。てかよく憶えてるな」
「俺って実は若干方向音痴気味で初見の場所とか迷いやすいんで地図はある程度憶えてるんスよ」
「そうなのか」
坑道とか特にわかりにくい。
基本同じ光景だし。
レールのところどころに番号が彫られてなかったら現在位置の把握がすんなりできる自信がない。
分岐とかで把握もできるにはできるが分岐と分岐の間が長かったり、分岐の形状が似ているのがいくつかあるからそこじゃ決め手にならないし。
「臭いが強いな……」
「この辺でそういう敵っていたっけ?」
「コープス系は血の臭いよりは腐った臭いの方が強いし、一応血があるスコーピオンとかがいるにはいるが死ねば消えるし、もし仮に血が素材として残ったとしてもここまで酷くはない」
「……じゃあ一体何が?」
「臭いの強さからしてすぐそこだが、索敵に掛からん」
「俺も」
「アタシも」
「ヒイラギは?」
「俺スか? 俺も全然」
三人がダメなら俺もダメに決まってるでしょーが。
もしかして探知も向き不向きがある感じ?
それにしても俺には無理ですぜ。
「ヒイラギの想像通り詰所だったな」
「一体何が?」
「俺が開けるからお前は剣構えておいてくれ、ヒイラギとクアークは一応背後の警戒」
「おうよ」
「了解」
「わかったわ」
右ヨーシ、左ヨーシ、前は壁ヨーシ、上天井ヨーシ、下地面ヨーシ。
探知のうえ、光の球を送るがなんの姿も見えない。
背後で僅かな装備の点検音が聞こえるだけ。
さぁて、鬼が出るか蛇が出るか。
……鬼はともかくなんで蛇なんだろ。
類義語って吉と出るか凶と出るか、だよな?
鬼が凶で蛇が吉……マムシとかコブラとかだったらどっちも嫌だよ。
アレか、蛇は白蛇か?
というか開拓兵の仕事である以上あるのは血生臭いことくらい。
……集中しよ。
詰所は係員の待機場所で少し離れた位置に奴隷たちの寝場所があります
既に廃棄済みで開拓兵がたまに休憩所として利用するが稀にあるものの現在四人がいるのは坑道内でもあまり人の行き来が少ない坑道の、さらにかなりの奥地なので坑道稼働時にかけられた坑道の保護魔術以上のダメージが溜まってます
とはいえ坑道である以上は管理しなくてはいけないので定期的に保護の依頼が発注されています