ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「行方不明?」
「スラムで見てない?」
「ん~、ボクあまり顔広くないし……」
「も、もうちょい悩もうぜ?」
ボッチ族なのはわかるがもう少し考えて欲しいものである。
知り合いじゃなくても周囲でよく見る奴とかがいるはずなのに。
「だって皆がその日のうちに帰って来るとは限らないし、ボクも決まった寝床があるワケじゃないし、探そうとしない限りは昨日会った相手と会うことなんてないし」
「お、おう……」
俺の尺度で語り過ぎた。
孤児の生活が普段俺の目に映ってるものとは違うのは当然だし、そもそもこの世界の普通の生活すらマトモに知らない俺にはどう足掻いても語ることなんて出来ない。
この世界はルートヴィヒくらいしか知らないし、ノースミナスはルートヴィヒとは明らかに違う。
根本から違うワケじゃないがノースミナスについては無知に近しい。
「じゃあ代役を立ててくれないか?」
「代役?」
「あ~っと、スマン、つまりは他に顔の広い奴を教えてくれってことだ」
「ただ知ってるだけで仲が良いワケじゃないから話聞いてくれるかわからないよ?」
「構わん構わん。内容的にヤベーこと聞くワケじゃねーし、適当に金でも出しゃ話すだろ」
そんなに上手くいくかな、と少し怪しむように首を傾げるアイヴィに先導されつつスラムの中を進む。
外の人間がわざわざ入って来るのが珍しいのかそれなりの数の視線が降りかかってきていた。
「ちなみにアイヴィって普段どうやって暮らしてるんだ?」
「どう、って……」
「着るモン食うモン住むトコ、そのあたりどうやってんのかって」
「ゴミを漁ったり、どうにかして働かせてもらったり……」
孤児も孤児で大変だなぁ。
命の危険ありまくりな開拓兵とどっちが辛いんだろ。
それなりの覚悟と身体能力と引き際を見極めるちょっとの能力さえあれば開拓兵は日銭を稼ぐ分にはイケるだろうけど……死の恐怖は少なからずあるだろうし。
街でのゴミ拾いとか仕事は多分安全な分実入りがかなり少ないから……。
それに単純に食うモノがなさすぎて力が湧かないだろうし。
「この街って孤児院的なのないのか?」
「知らない」
「たしかあるはずよ。ただ余裕があまりないからかなり若い子どもじゃないと無理らしいわよ。頼れば最低限仕事の斡旋とかはしてもらえるって聞いたわね」
「へ~。……そこ頼れば?」
「怖い……詳しくは知らないけど身体を売らなきゃいけないんでしょ? ボク、そういうのヤダ」
「……そうなの?」
「まあ……何もできない子どもじゃあまり仕事を与えられないとは聞いたことあるわね」
ん~……マジか。
それどうなの?
いや、アイヴィが年齢的に考えてこの世界だとほぼ大人だし地域差があるとしたら大人扱いかもだから法律的に問題ないかもしんないけど……。
こんなガリガリの子どもを?
そういう趣味向けってことなの?
それとも育てる感じ?
えぇ……。
「あ、もしかして俺距離開けた方が良い? 気が使えなくてスマン……」
「あ、や……ヒイラギは別に平気。その……大人が怖くて」
「……」
つまり俺は大人じゃない、と。
……ハハッ、泣くぞチクショー。
でもまあわかりますとも。
アレだろ?
それは、大人というには、あまりに幼すぎた。
幼稚で、短絡的で、刹那的で、空気が読めな過ぎた。
それは、正に、アホだった。
ってことだろ?
……ちゃんとしねーと。
「あ、あ~……ところで紹介してくれるのはどんな子なの?」
「ヤな奴」
「えっと、どんな風に?」
「他人より頭が回るからって偉そうにしてて、何かやってるなって思うと絡んできて命令してくる」
それは妬みかい?
賢いのは認めつつも自分よりも圧倒的に上だっては認めたくないから少しでも自分に近づけようと悪く言ってる的な。
もしくはアイヴィに気があるとかじゃねえの?
あの子が好きッ。
でも素直に言えなくてつい上から言っちゃうのッ。
的な感じの……男だとしたらメンドクセエな。
女の子だとしたらまあ、自分に関係ない分背景に百合を咲かせて楽しめるけど。
「決まった場所にいる変な奴だから多分スラムにいるならこの辺りだと思う」
決まった場所にいると変なのか。
それはスラムの常識的な感じなのか?
多分定住してるとカモられるってことだろう。
「いた」
「どいつ?」
「あの蛇女」
「蛇て……ホントに蛇だ」
指さす先にいたのは毛先の赤い白髪の少女。
それは言葉に、一言で言い表すのなら『ラミア』という言葉がもっともふさわしいだろう。
体高は恐らく俺よりも二〇センチほど低いが全長はかなり長く、その半分以上を占める下半身はラミアと表現したように、アイヴィが蛇女と言ったように蛇の特徴を有していた。
ただイメージしていたラミアと大きく違う点が二つ。
一つは耳。
ラミアを神話の通りに表現すれば人間の女の頭と胸を有し、蛇の下半身を有する存在。
だが目に映る少女は顔つきが普人種とそう大差ないが耳はない。
もちろん獣人のようなフサフサとした耳もない。
蛇という特徴を表すように耳がない。
だが蛇からも普人種からも逸れるようにして頭部に艶やかな角が生えていた。
それは三種どれにも当てはまらない特徴である。
「ああ? なんだいテメェらは?」
「……あれってこの距離で聞こえてたってこと?」
「うん。耳が良いらしい」
「その声も聞こえてっからね?」
「ウプス」
集音装置になってる部分がないだけで耳はあるのか?
でもそれだとこの距離のさっきの声量じゃ聞こえないだろうし。
角か。
アレで音を集めて骨伝導かなんかで聞いてるのか。
「たく……ホント、ムカつくね」
少女は忌々し気に俺たちを見つめると口を開き、何かを飛ばしてきた。
クアーク、俺、アイヴィと順に飛んでくる何かを俺たちは避けるもアイヴィは避けられない。
そもそも見えてすらいない。
何を飛ばされたのかはわからないがアイヴィを傷つけさせるワケにもいかないから俺は咄嗟に飛んで来た何かを握り掴んだ。
バリアで弾けば良かった……。
「ちッ、逃げ――」
「できると思う?」
失敗と理解するなりすぐ逃げようとする少女だったが、それよりも早く少女の下に辿り着いたクアークが冷たい笑みを向けながらそっと手を首筋に当てる。
「用事があるから殺さないけど、次嘗めたことしたら殺すわよ?」
「……わかった」
「じゃあとりあえず……」
「わッ――!?」
明確な敵意を向けてきたうえに攻撃をしてきたからだろう。
クアークは相手が子どもで、ステイタス差の大きい一般人であることを一切考慮せず一瞬で俺たちの下へとやってきた。
「あ~、悪いようにはしないから……とりあえずそうやって周囲を取り囲むのはやめようぜ? 俺らは全く効かねぇし、お前らが疲れるだけだぞ」
「優しいわね。こういうのは放置しておけばいいのよ、害がないんだし向こうが悪いんだから」
「や、鬱陶しいじゃん?」
「開拓兵を続けてたらよくあることよ、早く慣れなさい」
「なるほど」
この国では敵対した弱者はそういう扱いなのだろうか。
もう少し慈悲を、と思うのはアレが多分甘いのだろう。
というより敵という概念に対する認識が弱いのだ。
「じゃあもう話すか」
「……」
とりあえずざっくり昨日寝る前に考えた流れ通りにやってみっか。
「この辺で行方不明になってる奴がいるはずなんだけど、なんか知らない?」
「ッ……」
「子どもでも、大人でも」
「……」
「角がある奴がいなくなってるはずなんだけどさぁ?」
「ッ! どうせテメェらがやってるんだろうが! わっしの仲間を返せッッ!!」
地雷だった。
知り合いが犠牲になったらしい少女は怒りを一切隠すことなく俺の胸倉を掴み、そのまま持ち上げる。
おいおい、そりゃ鍛えてもそこまで体重は増えないしレベルアップで体重は一切変わらんがだからって子どもが簡単に持ち上げんのかよ。
「知らねえな」
「テメェッ!!」
「本当に知らないわよ」
「だったら証拠を見せろ!」
「それ言うなら俺らが犯人だって証拠自体ないだろうが……」
「怪しい奴のいうことなんて信じられるかよ!」
ダメだこりゃ。
これだから子どもは……いや、これは子どもだからじゃないか。
怒りで理性を欠けば誰だってこうなる。
機会がなかっただけで多分俺だってこうなることはあるだろうし。
別に孤児院がヤバい組織ってワケじゃないです
王都の方だとちゃんと子供の面倒を見てます
ノースミナスの孤児院が孤児にとってそういうイメージがあるのは、単に資金および人員不足というものや、孤児の中で広まっているヤバい感じの噂が原因です
クアークの『何もできない子どもじゃ――』というのは単純に身体が弱すぎて労働力にならないという理由で、長期間の労働を契約すればその期間内の衣食住はある程度保障されます
さらに言えばクアークが聞いたことがあるのは孤児の中で広がっている噂の方で、真偽は不明
人間は悪い印象を一度も持つとそれに引っ張られやすいので孤児の中に流れ込む悪い噂は拡散される一方
孤児たちも辛うじてとはいえ毎日生きられているから無理に動いて悪化するよりは、という認識があります