ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! 作:名無しのクズ
「意外と優しいのね」
「なワケ」
俺程度で優しい認定だったら大体の人間が優しいじゃねえか。
「てかどっちに対してだよ」
「どっちも、よ。アタシだったらあの状況で口出しも何もしないもの」
「仮に俺が優しいとして、だったらクアークの方がよっぽどだろ」
「あら、アタシは自分が気に入った、つまり自分の得になる相手にしか優しくしないわよ」
「だったら俺は方向性が違うだけだ。俺は後々のことを踏まえて将来俺が暮らす時、国がまともに機能できるように労力を使っているだけだ」
問題なく暮らすためにまず問題を排除する。
単純明快な理由だ。
だからそこに優しさなんてものはなく、起こっているのはただの誤解だろう。
「素直ではないのね」
「バーカ、俺はいつだって自分に正直だぜ? 正直すぎてデリカシーの所在を問われるまである」
「たしかにデリカシーはないわね」
「だろ?」
だからってデリカシーを身に着ける気もない。
俺はなんだかんだ今の
こんな性格だからこそこれまでやって来れた節があるし、こんなんだからこそマユゲやクアークと出会えて仲良くなれたのかもしれない。
今の人間関係が俺は気に入っているし、だからこそそれを築いたこの性格を部分否定こそすれ完全否定はしない。
特に人格形成に大きく関わる嫌な思い出。
嫌な思い出ほど今となっては良い思い出だ。
もし俺の人間関係の中で俺にデリカシーを求めるのなら、もしかしたら身に着けるかもしれないが。
「別に優しさは恥ずかしいことでも弱さでもないんだから認めればいいのに」
「……どうでもよしっ。じゃあ、はい、俺は優しいですよー。……優しさって自分から言うモンじゃねえから俺が俺をどう考えようが関係ないわ」
「そうね」
何が悲しくてそんなことしなきゃいけないんだ。
んなことしたら冷めた目で見られて悲しくなるだけ。
優しさは他者評価で、優しさを自称したらそれはもう詐欺師も同然。
俺が優しさを自称するとしたらそれはもう嫌味目的だろう。
「……なあ」
「言わなくてもわかってるわ。どっちも目を向けちゃダメ、このままゆっくり歩いて通りに出るわよ」
「わかった」
地面に血の臭いが僅かに染みついている。
そして少し離れた位置から気配を感じた。
視線はない。
恐らくは上手く意識の外に外しているか、もしくは隠すのが上手いか。
だが気配がある――正確には全くない。
周囲に漂う魔の感覚。
流れは不自然に乱れて、同時に穴が開いたように魔が感じ取れない。
気色悪ッ!?
魔を感じないってこんなに気持ち悪かったっけ?!
一度感じるようになったからこそここまでハッキリ感じないようになったら背筋が凍るぞ。
なんつーか……焦点が合わない目で見られてる気分っていうか、伽藍堂の目がひたすら何をするでもなくジッと向いてる感じがする。
「……さっ、帰りましょっ。お腹空いちゃった」
「え……」
普段よりもわずかに高い声音。
声量もさっきと違って聞かせるように大きく。
それに戸惑っていると不意に手が掴まれ、そのまま引っ張られた。
「おいおい、こんな時間から飯かよっ?」
「ダメ?」
「ダメじゃねえよっ、全然平気さぁっ!」
流石にわざとらしかったのだろう。
握る手が強くなり、ダメ出しを受けた。
ダメか。
いっそ素のノリで……って流石にそれは落差が激しいし。
ゆっくりテンションを落とす感じで――。
「……もう大丈夫そうね」
「あ、ホントだ」
「演技下手すぎ」
「咄嗟に
「ホントビックリよ」
俺、こういうアドリブホント苦手。
咄嗟の嘘ってどうやるのさ。
「別に誰かを参考にしなくても良いと思うわよ?」
「でもそれじゃあどうやって演じるのさ」
「演じる、というよりは組みかえるって方が正しいと思うわね」
「組み……かえる?」
意味が解らず、思わずそのままオウム返しにしてしまった。
演技と組みかえるは合わない言葉な気がする。
「人間っていうのは知ってることしか知らない生き物なの」
「お、おう?」
「見たことのないモンスターの生態は想像もできないし、見たことのない土地の環境は全くわからない。想像っていうのはその人間が知っている情報を組むことでしか生み出せない。普段の自分以外の自分を表現したいなら自分をジッと見つめて、表現したいモノに入っていない要素を一度外すの」
「あ~……そういうね。はいはい。理解した」
当然のことを言われて困惑したが、ちゃんと聞くと別の方向で当然のことだった。
俺のモデルが思い浮かばなかったっていうのだって合致する相手を知らないからだろう。
はっきりいって、俺は対応力自体はそこまで低くないはずだ。
戦闘でいえば咄嗟の反応もできる。
ならどうして戦闘でできる対応が演技になればできないかといえば。
その二つに対する認識に大きな差があるから。
戦闘における咄嗟とは身に着けた技術を状況に応じて出すことで。
演技における咄嗟とは知っている相手を状況に応じて模倣すること。
前提認識が間違っていたのだ。
「それはさておき、何かわかったの?」
「ん~。そうだな。……考えすぎかもしれないしなぁ」
「確かめるまで本当のことなんてわからないんだから、気にせず言ってみて」
「被害に遭った場所、不審人物の目撃位置。この辺りと……ここだ」
「そうね」
「曰く、スラムの中でもそこそこ人通りのある場所」
「ずっといるワケじゃないけどいつ通るかわからないしそのあたりで寝てる人もいるって言ってたわね」
「わざわざそんなところでやる理由はいくつか考えられるが、まあ高いのは拉致した相手を目的のために使いやすいってところだろう」
移動のしやすさといったところか。
いくら人の目を欺くとしても拉致した人間をそのまま移動させるとは考えづらく。
恐らくは一度別の場所まで連れて行き、拉致した人間をある程度集めてからまとめて坑道の奥まで運ぶのだ。
「…………ねえ、この場所って」
「気づいたか」
「どうして人気がないとはいえ坑道にあんな沢山の死体……人間を運べたのか、合点がいったわ」
「ホント、この街はどうなってんだよ?」
「……ごめんなさいね」
「オメーが謝んじゃねえよ……ったく、黒鉄の墓め。こりゃ本気で潰すしかねえな」
位置から考えてアジトに近い。
偶然じゃないとすると拉致殺人は黒鉄の墓による犯行の可能性が高く、そう考えると腑に落ちる要素がいくつかある。
はっきりと断定できるワケではないが、協力関係にあるのは非常に可能性が高い。
「他の人に任せようとは思わないのね」
「そりゃあ、な」
「危険が付きまとうのよ? 大人しくしかるべき相手に任せればいいのに」
「それをして何になる。この街で過ごして愛着のあるクアークには悪いが俺はこの街を信用してねえ。街の治安を維持する組織にそれを任せてたらこの現状だぞ、俺が動いた方がよっぽど信じられる。これはどっちが上手くことを運べるか、とかの話じゃァねェ。俺は俺で動く、それだけの話だ」
「……そう」
「衛兵なりに知らせたかったら好きにすりゃ良い。ペトラんとこであった奴にでも頼ればいいんじゃねえか?」
「……」
腹が立つ。
ロクに知らない相手を信じる、なんて俺には無理だ。
少なくとも今この状況では断言できるほどに無理な話。
任せて手遅れになるのなんて飽きている。
「俺のいる場所で不愉快極まることをしでかしたんだ、完膚なきまでにぶっ潰す。向こうが悪意を成すってんなら俺は俺の傲慢を成すまでだ」
「ホント、よくわからない……」
「なんか言った?」
「手が痛いからそんなに強く握らないで、って言ったの」
「え? ……あッ!? すっ、スマン!」
「興奮するのはベッドのうえだけにして」
「お、おう……。いや、おう、じゃねえ!? てか離せって言うならそっちも話してくれませんかねぇ?!」
「別に離して、なんて言ってないわよ。痛いから強く握らないでってだけ」
「ええ……」
あの、ちょっと恥ずかしいんですけど?
握った時は追われていることに夢中で、さっきまでは事件に意識を取られていたが、今ここでようやく意識に入った。
硬くも柔らかくもある掌。
そこから伝わってくる手の温かさ。
クアークが高体温なのか、俺が緊張しているからなのかはわからないが熱いと思えるほどに触れた手が温かい。
「恥ずかしいから離してぇ……」
「い、や。揶揄える時に揶揄いたいの」
「性格ワリィッ!」
「それに、暴走されてもイヤだし……」
「さっきからちょいちょいボソッと何か言うのやめてくんない? 人ごみだと聴覚強化したくないんよ」
「バァカ、って言ったの」
「ンだと? この……この? えっと~、なんだ?」
「バカにしたことないの?」
「あるよ? あるけど……クアークをバカにするとなると良心の呵責があるのと、そもそもバカにできるところがないってので何も言えんくなった」
「褒めてどうするのよ……」
それな。
バァカバァカ、クソ雑魚ナメクジのクズ童貞!
元々は「元型」とかで表現しようと思ったけどロクに理解をせずにそういうワードを使ったらどこかにいるかもしれないガチ勢に怒られそうなので止めました
演技をするには色々知ってないといけない
けど他者との交流が少なすぎて知識量が乏しい
はっ、これだからコミュ障は(特大ブーメラン)