ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第九八話 魔のフォアグラ

「オボロロロロロッ」

「オボボボッ」

 

 あ゙~。

 どこが気持ち悪いとかじゃなくて純粋に吐き気がする。

 あえていうなら気持ち悪くないのに吐くって行為が気持ち悪い……。

 

「ずっげぇ゙吐げる゙……な゙んづ~か、胃の中で魔力使っでゲロ゙生成してる気分」

「ヒイラギ、君も僕の辛さがわかったみたいで何より……ゔっ」

「二人とも大丈夫?」

「これ゙見て……ぞう思うなら、どうかじてるぞ……ガフッ」

 

 壁付近で吐いてる男二人にそれを見てる女一人。

 光景を想像したらシュールだが、正直それを想像する余裕すらあまりない。

 

「なんで君はそんなに平気そうなんだッ」

「ごういう環境には男は弱いどか、そうい゙うのあるのが?」

「いや、ない。種族差は知らんが少なくとも男女差はないはずだ。少なくとも環境変化による体調変化の男女差は魔術種(エルフ)にはなかった」

「チクショヴ……」

「辛いなら魔術で治せば?」

「え゙……効くの゙?」

「効くとも」

「……早く言って欲しかったな゙ぁ」

 

 言われて使ってみると少しではあるが状態が改善された。

 ついでに水で口元や口を洗い、臭いを風で飛ばすとそれが要因の一つだったのか僅かに吐き気が引く。

 

「僕にも頼めるかね?」

「いいけど……自分でやらんのか?」

「……僕は治癒系の魔術が苦手なのだよ」

「ほ~ん、そういうモンか。……これで良いか?」

「ありがとう、感謝するよ」

「どいたま」

 

 魔術の得手不得手もあるのか……。

 ぶっちゃけ俺そういうの実感したことないからなぁ。

 ま、手を出した魔術が少なすぎて壁があるない以前にスタート直後ってだけなんだろうけど。

 ああ、でも凍結魔術は現状俺の知る範囲じゃ俺だけの魔術か。

 俺って実はスゴイ?

 ……やめよ、無駄に自分をよいしょするのは。

 虚しくなってくる。

 

「たしかになんか変な感じはするけど……そんなになるほどなの?」

「なんつーか……気分的には飽食状態なのに無理やり食わされてる気分」

 

 ふとフォアグラを思い出した。

 食べたことはないが存在や製法は知っている世界三大珍味の一つ。

 たしかその製法はガチョウなんかにこれでもかというほどに飯を食わせて生活習慣病を強いる、という以前の世界が誇っていた脂肪肝。

 気分的にはそんなもので、ちょっと複雑だ。

 

「あ~、結構楽になった」

「……少し君の感覚を貸してくれないか?」

「それで解決するなら良いぞぉ」

 

 許可を出して手を触れあうとどんどんヘルベルトの顔色が良くなっていく。

 どんどん、というほど劇的ではないがそれでも目に見える程度には良くなっている。

 

「いや、すまないな。助かったよ、本当に」

「良いよォ? 別に俺は何もしてないし」

「普通こういう自分の何かを他人に知らせるというのは躊躇するモノなのだよ」

「健康状態くらい平気っしょ」

「たとえ僕がそう説明しても他のことまで知られるのではないかと不安になるのだよ、普通は」

「え~、別に知られて困ることってあるか? あれか、家族のこと知られて人質に、みたいな?」

「物騒すぎるのではないかね?」

「そういう話の流れにしたのはそっちじゃん。ヘルベルトに対して嘘吐いてない現状バレて困ることないし、こっちに家族はいないし、友達は大体俺より強そうな奴らだし」

 

 自分のことを勝手に知られる不快感、とかか?

 あ~、でも俺の場合【洗脳】のことは知られたらちょっとマズいかもなぁ。

 今はあまり使ってないけど初期は関係ない普通の奴に使ったりしたし、香月とか。

 やっぱ、今のなし。

 

「まあ僕も友人は失いたくないからな、そんなことをするつもりは毛頭ないとも」

「左様で。まあ、また困れば言いたまえよ~」

「……二人ともこんな状況で気を抜きすぎじゃないのか?」

「僕はこの中で一番索敵できるだろうからね」

「俺はそれをなんとなく反応で察してた」

「二人もそういうのは早く言って欲しいんだけど?」

「メンゴ!」

 

 気分を沈めすぎても仕方がないと軽い調子で奥へ進む。

 前情報通りモンスターの数はいつも以上に多く、頻度も高い。

 クアークの「アタシも普段とどれくらい違うか確かめてみる」という言葉で何度か戦闘のメインをクアークに譲りはしたもののやはり普段通り戦闘の多くを俺がやることになった。

 

「ヒイラギ、外さなくて構わんから一度その指輪を見せてくれないかね?」

「どれ?」

「どれ……かはわからないのだが」

「?」

「さっきから……君の戦いが気になっていたのだよ」

「はて? そんなおかしなことしてた?」

「通常モンスターを倒せばモンスターを構成していたモノが魔素となって周囲に拡散する。だがどういうワケかその魔素の一部が君の手元に吸収されている」

「……」

 

 一体なんのことやら。

 全くわからない。

 指輪はマユゲに借りたモノだからよくわかっていないし。

 

「よくわからんが……ステイタスに頼りすぎると良くないってことでこの指輪にはレベルアップ阻害の効果があるってのは聞いた」

「なんと!? これは驚いた……いや、里ではレベルアップなどできないに等しいゆえそのことに関する研究はほとんど未開拓だったのだが既に行っている者がいたとは」

「お、おう?」

「しかも素晴らしいッ。圧縮合成魔石を使用のうえに内部に魔術陣が刻まれているッ。初めから魔術陣が刻まれた魔石などあるワケがないし、一体どのようにして内部に……もしや合成時に並行して定着を? しかし合成の際には高濃度の魔によって乱魔が起こるはず……それすら計算に入れて生成を行ったというのか?! 一体どのような賢者がどのような手法で……いやしかし、それは自ら解き明かしたい……」

「お~い、落ち着け~」

「はッ!? す、すまないな。芸術的な魔道具の、その素晴らしさの一端を垣間見てしまって気が動転してしまった」

「お、おう……?」

 

 一端を、垣間見る?

 ……それってスッゲーごく一部だな。

 なんつーか、オタクだ。

 わかるけど……その気持ち、ちょっとはわかるけど。

 やっぱ極めし者(オタク)って感じが強い。

 

「そうか、確かに――しかし……そんなことが……。いや、目の前で実際に起こっているのだからそれは紛れもない事実ではあるのだろうが……幻を見ているかのようだ」

「よし、放置だ」

「具合が良くなったのは良いけど今度はうるさくなったわね」

「全くだ」

「アンタもよ」

「そりゃスマン。気を抜きすぎてた……つってももう流石に、抜けねえけどよ」

 

 さっきまでの感覚ともまた違った重圧。

 それは肉体的なモノではない。

 魔という俺にとっては生まれた時からあったワケではない感覚を直接刺激されているからか、まるで存在そのものに圧力をかけて破壊されるような感覚がある。

 

「ヘルベルト、流石に正気に戻ったか?」

「大丈夫だ……僕は正気に戻った」

「……」

「どうかしたのかね?」

「いや、なんでもない」

 

 さて、真面目にいこう。

 現状この環境下ゆえに魔術は普段よりも使い辛く、距離の攻撃も不可能に近い。

 そして索敵ができないゆえに正確な敵数を把握することができず、けれど索敵に掛からずともわかるレベルで危険極まりない敵が進んだ先にいる。

 

「クアークは近接戦がメインだから影響はあまりない、と」

「そうね。武器強化、身体強化は使えるし……とはいっても全く使わないワケじゃなかったから少しやり辛いわね」

「ああ……ああ? え、ちょっと待って? 強化使える?」

「使えるわよ」

「俺、すっげーやり辛かったんだけど? なんで?」

「雑だからね」

「雑だからだな」

「おっふ……」

 

 そんな二人して言わなくても良いじゃない……。

 

「アナタ……意外と馬鹿ね」

「う、うるさいやい」

「ヘルベルトの説明を聞いてなかったの? この魔術が乱される現象は体内の魔と大気中の魔が押し合うことによって起きているのよ? 魔を外に出さずに体内で済ませる身体強化は使えるわよ、アナタができないのは大雑把すぎて体内で完結する魔力が外に出てるから」

「……ここに来てまさかの新事実発覚だわ」

「そして大気という言葉に武器は含まれない以上本来ならば武器強化も問題なく行える」

「あ~、たしかに操作に意識を使って強化したら結構簡単にイケるわ」

 

 そういうことだったとは気づかなかった。

 理解した気になって全然わかっていなかったっていうのはなかなか恥ずかしい。

 

「え~と、じゃあ魔術の影響がデカいのはヘルベルト、次に俺って感じか」

「誇れるほどの腕ではないが武器も扱えるから護衛はいらんぞ。体調も回復した」

「ああ、そういえば剣と弓が使えるって言ってたな」

「憶えていたか」

「でも持ってねーじゃん」

「持っているとも」

 

 そういってヘルベルトはローブの中に手を入れ、二つのネックレスを首から外した。

 そしてそれぞれを左右に握り魔力を込める。

 するとネックレスは大きくなり、そして形を変えて剣と弓になった。

 

「魔力で成長する素材を用いて製造された携帯の簡単な装身具型の武器だ」

「スゲー」

「これは凄いわね」

「言っておくがこれは教えられんからな?」

「流石にそんな重要そうなモン情報くれとは言えんわ」

「そうか」

「ま、とにかく全員それなりに戦えるってことで……もしかしてこの中で最弱俺?」

「でしょうね」

「だろうな」

「……足引っ張らないように頑張ります、はい」

 

 使い辛いといっても魔術種(エルフ)が魔術で俺に劣るワケがないし。

 全力で気張らないと冗談抜きでお荷物になる。

 ホント、ちゃんとしないと。

 

「じゃあ、とりあえず様子見で近づいてマズいと思ったらすぐに退却。退却の判断はクアーク、頼む」

「仕方ないわね」

「スマンな。流石に今の俺じゃ二人の命預かるのは荷が重いや」

 

 これまでは俺に経験を積ませるためと色々判断を俺に任せてくれていたが、流石に今回ばかりはそうするワケにはいかない。

 多分俺が何も言わなかったらクアークは、二人は何も言わなかったんだろう。

 が、それが俺の判断ということでクアークは納得したように瞼を長く下ろし、俺を真っすぐ見つめて頷いた。

 

「アナタに任せるわ」

「……はッ?」

「頑張って」

「任せたぞ」

「ちょ、ちょっ、ちょッ!?」

「さ、行くわよ」

「準備しろヒイラギ」

「ま、マジかぁ……」

 

 不本意ながら俺は二人の命を預かることになってしまった。

 その重圧で俺のメンタルは押し潰されそうだ。

 

 マユゲ様、ああマユゲ様、マユゲ様。

 どうか、何卒、クズで馬鹿でアホで間抜けで脳足りんなわたくしめにお知恵をお貸しください……。

 マジで頼むッ!!




 実は超絶凄い技術で造られた指輪
 マユゲって実はスゴイ人なんですよ?
 ただの特徴的なマユゲしてるだけの引きこもりじゃないんですよ
 やろうと思えば一人で技術的ブレイクスルーを何度もできる人です
 経済が壊れちゃうのが目に見えているのでしませんが


 フォアグラって美味しいんですかね?
 脂っこいモノってあまり得意じゃないんで一生食べないでしょうけど、一口だけは食べてみたいです
 どうせ脂っこいだけでしょうけど

 サイドストーリー的なの作りましたって報告しておきますね、リンクは下
 サイドストーリー的なの
 今は一話だけですがそのうち気が向いたら追加するかもしれませんね、余裕とモチベがあればですが
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