ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!!   作:名無しのクズ

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第九九話 制約内容は理解すべし

「色んなプレッシャーで吐きそう……」

「確かに奥ヤツらだけ存在感が全く違うわね」

「ぼやけて良く見えんが他のヤツに比べたら色も違うな」

 

 周囲に比べて特別存在感を放っている奥のゴーレム。

 それは俺の知らない色をしていた。

 苔生したような鮮やかな緑。

 星月光を浴びたように輝く灰。

 深海から天を仰いだような青。

 どれもが見たことなく、戦わずとも強いことがわかる。

 

「とりあえずクアーク、ヤバそうなヤツら頼んだ。俺はなんとかクソ強雑魚を相手すっから」

「ま、それくらいは仕方ないか。うん、とりあえずアタシが様子見をしてあげる」

「僕は……そうだな、戦況を見極めつつ両方の支援をしよう」

「じゃ、そういうことでやりますか」

 

 それぞれ武器を構え、二人は俺を見る。

 俺は魔術を構築し、練度を上げ、二人に合図をしてから一番先に飛び出した。

 そして魔術を剣に封じ込め、強く踏み込む。

 

「はぁッ!!」

 

 正面。

 中心の三種までの直線範囲をこじ開けるために範囲上のゴーレムたちを連鎖的に魔石を凍らせた。

 探知で魔石の位置はわからずとも何度も戦った相手であるため経験で魔石の位置はわかる。

 魔の押し合いで魔術が使い辛いが剣による魔術構築(イメージ)補助(アシスト)によって魔術の範囲を狭小にすることができ、そこに魔力のゴリ押しを行えば道を切り拓く程度はできた。

 

「よくやった!」

 

 一斉に崩れ落ちるゴーレムたち。

 そこをクアークは一気に突き進む。

 弾丸のように直進するクアークは様子見として切りやすく装甲が比較的弱い腹部に対して攻撃した。

 刃は二センチほどで止まり、阻まれてしまう。

 アレではすぐに再生されてしまうだろう。

 

「ヒイラギッ。彼女は僕が援護するんだ! 君は君の戦いに集中したまえ!!」

「ッ! スマン、任せた!」

 

 そうだ、他のことにかまけている暇はない。

 俺も俺のことに集中しなくては。

 

 ヘルベルトの言葉で我に返った俺は雑魚というには強すぎる大勢をここで殲滅し尽くすくらいの気概で挑むことにした。

 雑魚を引き受けた俺がまずすること。

 それは雑魚たちの意識を惹くことだ。

 そのために俺は体内で圧縮した魔力を衝撃波のようにそのまま解き放ってゴーレムたちに当てる。

 魔力を浴びたゴーレムたちの意識(ヘイト)は俺に向き、軍勢が全て俺に向かってきて戦場は大多数を占める十把一絡げのゴーレムたちを惹きつける俺側と、強力な三体の意識(ヘイト)を常に受け続けるクアーク側の二つに分かれた。

 

 身体が軽い……。

 胸が重い……。

 酸欠か?

 ……まあいい、身体は問題なく動く。

 

 不意に感じた胸の苦しさ。

 けれど苦しいという他異常は何もない。

 普段ならこんなことはないから十中八九この環境によるモノだろう。

 それを証明するかのように胸の苦しみはすぐ治まった。

 

「くそッ。(かて)ェ……」

 

 相手の連携もあって攻撃がし辛く、基本が後手。

 その状態で威力のある攻撃をするのは難しく、攻撃してもすぐに再生してしまうから一体に掛かる時間はおよそ一分ほど。

 引き受けたくせにロクに役に立てないのは申し訳なく、恥ずかしい。

 

「ヒイラギ、普段には役立たないが今は仕方あるまい。剣を捨てて先ほどの魔術で戦え」

 

 攻めあぐね、回避に専念しているとヘルベルトからそんな指示が飛んでくる。

 普段なら問題のない指示だが、魔術がロクにつかえないこの状況では自殺行為そのもの。

 流石に即了承というワケにはいかない。

 

「何故に!?」

「君の剣の腕はハッキリ言って未熟だ」

 

 おおう、言ってくれやがりますね。

 長命種の熟達って多分バケモンレベルだろ。

 

「ゆえに、君の中では最も熟達している体術に焦点を当てるのだ」

「そこまでは理解した。が、魔術が使えないこの状態でどうしろと?」

「体術を用いて戦場を巧みに駆け回り、敵に触れた状態で魔術を使うのだ」

「だからなんで?!」

「君は本当に頭が弱いな! さっきも言っただろう、起きているのは大気中の魔との反発だと」

「なるほど。つまり接触状態なら関係ないと。……相手が強化されてるからいつも以上に魔術弾かれるんだが!?」

「さっき君がそれをできるのは君自身で証明しただろう。いつまでも言い訳を並べるものではない、君のそれは出来ない理由ではなくやらない理由を並べているに過ぎんぞ!」

「……わぁったよ! やったろうじゃねえの!!」

「フッ、馬鹿と根性なしは君の欠点だがその素直さは僕は好きだぞ」

「そりゃど~もッ」

 

 貶しやがって。

 けど悪い気はしねえな!

 

 我ながら単純。

 けれどやはり実力者からの保証というのはやる気も勇気も湧いて来る。

 

 にしても魔術オンリーか。

 仕方ないとはいえ剣がないのはちょっと怖いな。

 ……こういうのが理由で根性なしって言われるのか?

 

 そんな不名誉な呼ばれ方をしないため反発するように体内で構築した魔術を両腕に貯め、ゴーレムたちの動きを観察する。

 まずは見る対象を正面の一体に限定し、攻撃を見て回避、そのまま胸に手を触れて魔石を凍らせ、倒した。

 何度かそれを繰り返し、相手との間合いを測る。

 この距離なら回避できるという距離。

 それを見極め、体勢を崩し過ぎないことを心掛けながら探知範囲を圧縮する。

 範囲が狭まった代わりに精度を向上させ、制空(マヌーバ)を組み上げた。

 見ずともこの範囲に入れば即座に反応して回避ができるという領域。

 戦闘の中でそれを確立させ、回避に割く意識を減らしたことで空いた思考力を用いて魔術を構築する。

 

「ふぅぅぅぅぅぅ……」

 

 激しく動く中、呼吸は一定に保って乱さない。

 そうすれば時折やって来る胸の痛みもなくなる。

 そうすれば体力の消費も少なく、長時間の戦闘ができるのだ。

 

 よし、一体に掛かる時間が少しずつ減ってきてる。

 あとはもっと早く、無駄なく動くのと。

 構築(リロード)を素早く済ませること。

 多分まだ一割も倒せてないがこのまま順調に進めば日は跨がないはず。

 

 背後から襲い掛かって来る腕を右に避け、そのまま左手で凍らせる。

 そして続けざまに踏み込んで他のゴーレムを右手で凍らせ、足場にして周囲のゴーレムたちの一斉攻撃を避け、そのままゴーレムの肩に乗ってそいつも凍らせた。

 

「ヒイラギ、もっとだ! やるなら全力でやるのだよ。戦況を見極めろ、瞬時に判断し、刹那的直感で一連の動作を定め、その通りに動いてるんだ。危機的状況は僕が救ってやる、自身に対して一切の嘘を吐かず戦況を君の手中に収めてみせろ!」

「無茶言いやがって!? けどやってやるよチクショー!」

 

 俺の実力を考えると無茶もいいところである。

 そういう戦況を思い描いて実現するというのは膨大な経験を積んだ者か、一部の思考力に優れた者だけ。

 荷が重すぎだ。

 

「さてどうやるか……。いや、どうやるか、じゃねえな。刹那的直感だし……」

 

 指示をそのまま実行するとしたら端的に【勘】だ。

 あまり優れているとはいえないが、もうこうなったら自分自身を信じるしかないだろう。

 

 よし、やったるぞぉ。

 

「よッ、ほッ、とぉッ」

 

 ノンストップ。

 身構え、足元を爆発させんばかりに踏み込んで一気に加速。

 最短距離のために胸元を、という思考は捨てて多少のロスを覚悟で身体の一部に触れる。

 加速し、駆け抜け、蛇行するようにゴーレムたちの間を縫って走り、凍らせ、そしてゴーレムの脚を掴む。

 自分では回避できない攻撃や軌道をゴーレムの脚を掴んで手を中心に回転することで無理矢理実現させてゴーレムには予測できない動きをし、翻弄することで戦況を俺の思い描くモノへ。

 想像を実現させた。

 

「……できた。できたぁッ!! アハハハハッ!」

 

 ああ、マジか。

 スッゲー、気持ちいい。

 全てを裏で操る黒幕ってこんな気分なのか。

 最ッ高じゃねえの。

 

「くふっ。ンフッフッフッフッ……良いぜ良いぜ良いなぁオイ!」

 

 テンションが上がり、今ならなんでもできるという気すらしてくる。

 戦況は全て意のままに操れるという思い込み。

 最強という素晴らしき勘違い。

 力に溺れる気はないが、今この瞬間だけはこの快楽に身を委ねる。

 

 次は――。

 

 興奮による思い込みの恩恵か魔術も強化されていてそれが思い込みを加速させる。

 

「二人ともッ、撤退ッッ!!」

「ッ。わかった!」

「了解した」

 

 一瞬にして理性を取り戻させるクアークの声。

 理由は一切問わず、クアークの指示に従って逃げる。

 その姿は普段と違って僅かに乱れていて、頬には擦り傷がついていた。




 モンスターと大気魔の反発の違い

 モンスターはモンスターと魔術行使者の魔力同士の反発です
 魔力と魔力操作での戦いで、イメージ的には手押し相撲
 押し合ってお互いを倒すのが魔力のぶつけ合いで、押された時に倒れないようにバランスを取るのが魔力操作です

 大気魔は大気魔による魔術行使者への妨害です
 大気魔との反発は縛りプレイみたいなイメージ
 足枷手枷を付けて、パワードレインされる感じで
 我々がイメージできる表現だと風邪引いて辛い時に走る感じです
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