バロン王国飛空挺師団『あかいつばさ』を動員したファブール攻撃はバロンの思惑通りにおおよそ進んだ
飛空挺による爆撃により、ファブールの残存していたモンク僧部隊に痛撃を与え、ファブール側に篭城を強いた
加えて、以前より潜ませていた
今なお、ベイガンやゴルベーザはてはバロン国王に不審を抱いていた彼等を同じくバロンに不審を持つセシル達にぶつける事で王国内の反国王派とでもいえる潜在的脅威を排除する事に成功する
実は海兵隊指揮官自体既に国王への反逆の咎により処刑しており、順次隊長クラスについては魔物へとすげ替えていたりしていた
それでも一般兵の中には現在のバロンの方針に不満を持つ者が多く、下手に彼等を始末した場合、表立ってこそ恭順している者達からの反発が予想されていた為にこの様な回りくどい手段を用いたのである
加えて、バロン最高戦力である『あかいつばさ』についてはさしもの
何せ、前指揮官であるセシルに反逆者の汚名を着せたとて、彼等のセシルへの信頼は揺らぐ事などなく、主任技師であるシドを投獄した事やセシルの恋人であるローザがバロンを出た事もまた彼等隊員が現体制に危機感を覚えるに十分な理由となってしまったのはベイガン達からすると悪夢でしかなかった
セシルの親友であるカイン・ハイウィンドをゴルベーザの副官とし、『あかいつばさ』の掌握に取り掛かろうとしたこともまたベイガン達の思惑と真逆の効果を出してしまった
その為、カインが座乗する飛空挺師団はゴルベーザ直属の兵により何とか運用出来ている有様であったりする
なお、ファブール爆撃に際してセシルを信奉する古参兵を中心とした者達は爆撃こそしたものの、全てファブール城より外れたとの報告もあるのだが『あかいつばさ』の主任務は敵地に赴いての武力制圧である事からその不手際を謗る事も難しかった
何せ、バロンの財政最高責任者である大臣は爆撃演習にかける予算の供出を拒否しており、近衛兵長と言っても一武官に過ぎないベイガンや新参者であり
国王よりの王命として一度発したものの
我がバロンは軍事国家なれど、いつから騎士の誇りすら投げ出したのですか?
と王命をも一蹴している
この結果として抗命の咎で彼は殆どの権限を剥奪されていたが、飛空挺師団付き筆頭技師シドと彼の反発はあかいつばさの運用に影を落としていた
そんな中でのファブール攻略であったが為に、ベイガン達は何とかして実働部隊であるバロン海兵隊だけでも無力化するべく動いたのである
バロン王国内における反国王派の実質的トップである大臣は現在殆どの権限を奪い、軟禁中
本来なら、即刻処刑するのが望ましいのだが、相手はバロンをここまで育て上げた実績を持つ人物であり、国王が信を置いているとされる程である
迂闊に始末は出来なかった
だが、ベイガン達にとって良い意味での誤算もあった
セシルの恋人であるローザ・ファレルをゴルベーザが確保したのである
これにより、セシル達は間違いなく此処バロンに来ることが確定した
となれば、後は簡単だろう
バロンに誘い込んで、不意をつけば容易に処分できるだろう
風のクリスタルも手に入った
ベイガンとしては、早々に最後のクリスタルを保有するトロイアに手を出す事も視野に入れたかったが、肝心のトロイアの情報がベイガンの元にはなかった
当然だろう
彼はバロン王国軍近衛兵長であり、いわば国王の身を護る最後の盾である
対外的な権限などあるはずもない
加えて文官の殆どは大臣派であり、大臣はダムシアン爆撃が決定されて直ぐに彼等文官を城から出している
故に対外的情報を持つのは他ならぬ大臣のみというベイガンやゴルベーザ、国王からすれば好ましくない状態となっていた訳だ
とはいえ、海兵隊とあかいつばさのセシル派の者が大臣の身を護る数少ないものであり、その片翼がもがれた以上大臣に対する処刑が早まるのも時間の問題といえるのだが
暗黒の剣では真なる邪悪には打ち勝てぬ
セシルはファブール王の言葉を思い返していた
バロンによるファブール襲撃により多大な犠牲を出し、その上親友のカインがその指揮をとっていた
その事実はセシルを打ちのめしている
加えて恋人であるローザもゴルベーザの手中に落ちてしまっている
状況はファブールの支援があると言っても余りにも良くないだろう
現在、ファブール王とヤンの口添えもありファブールから船を出してもらい海路にてバロン近海まで侵攻している
確かにセシルが自身で言った通り、飛空挺師団を有するバロンは海上戦力は『比較的』手薄
だが、セシルは親友のカインの豹変ぶりといざと言う時、カインと戦えるのかについて迷っていた
状況は待ってはくれない
だが、それでもバロン王国で共に過ごしたカインが敵であるという事実。そして祖国であるバロンに剣を向けねばならない事はセシルに大きくのしかかっていたのだ
セシル
ああ、ギルバートか
そんな苦悩するセシルにダムシアンの王族唯一の生き残りであるギルバートは声をかけた
やっぱり祖国に剣を向けるのは辛い、だろうね
そう、だな
セシルはそう返答したが、ギルバートの気持ちを考えると更に気持ちが落ち込んでしまう
ダムシアンはバロンにより、その平和を砕かれた。更に軍民問わずバロン兵により虐殺されダムシアン城にいる市民は僅か十数名という有様だった
更に目の前にいるギルバートの恋人でテラの娘でもあるアンナを喪い、ダムシアンが代々守護してきた火のクリスタルも奪われたのである
バロンが来なければ私達は幸せに暮らせていたのに!!
バロン襲撃の数日後、ファブールを後にしようとしたセシルにぶつけられた言葉だった
儂等はお主を恨まぬよ
とはいえ、これからどうやって生きていくのやら。こんな老いぼれが生き残って若い者達が沢山死んてもうた
ダムシアンの回復のツボのそばまで避難できた老人はそう嘆いていた
セシル自身もまたあかいつばさの隊長として、ミシディアで数多くの魔道士達を捕らえ、水のクリスタルを奪っている
あの頃自分にもう少し勇気があれば
今となっては悔やんでも悔やみきれない
セシル
考える事も悩む事もあると思う。だけど今はやめた方がいい
そんなセシルの苦悩を見てとったのか、ギルバートはセシルにそう声をかける
確かに僕の祖国ダムシアンやリディアの故郷、ヤンの祖国ファブールもバロンによって被害を受けた
けれど、だからと言って君が全てを背負い込む必要はないんだ
バロンの暗黒騎士は確かに君だ
だけど、君はバロンそのものではない
王族として、人を見る目は養われてきたギルバートからすれば今のセシルはとても危ういバランスの上に立っていると見えた
・・・そうだな。ありがとうギルバート
この漆黒の鎧を纏う友人にせめてもの安息を
力なく笑おうとするセシルを見てギルバートは内心神に祈った
だが、そんなセシル達を嘲笑うかのように
な、なんだあれは!?
船の前方を見ていた船員が大声で叫ぶ
まさか!?
本当にいたってのか!
大海原の主!!
大海原を征く船の前方に大渦が出来ていた
そして、その底から出てきたのは紫色の巨躯を持つモノ
大海原を征く船人達が古くから言い伝えてきた災い
あれが
リヴァイアサンだ!!
船長が大きな声をあげた
リヴァイアサン
それは海原を根城とする者達が何より畏れるもの
その身はどんな船より大きく、リヴァイアサンに出会った者は余程の幸運がなければ生きていない
この時代の船の動力は風と人力であり、そうであるからリヴァイアサンの引き起こす大渦から逃れる
生きていられるとすれば、遥か遠くからリヴァイアサンを見た者のみ
そんな脅威が現実のものとして、目の前に現れたのだ
船員達の動揺も無理なかった
おめーら、落ち着きやがれ!!
船長は自身の責務、つまりファブールの要人であるヤンやその友人達をバロン近くまで送り届ける事を思い出し、何とか事態を収めようと声を張り上げた
しかし悲しいかな。海に親しんだ者ほど海への畏敬の念は強く、まさに海の伝説と言っても過言でないリヴァイアサンを前にしている。その事実は船長から負担の落ち着きを奪い去っていた
そうであるからこそ、彼の声もいつもの威厳ある声とはなり得なかった
それでも彼等は熟達した海の男たち
どれだけ揺れようが、海に落ちる下手はしない
だが、この船には海に慣れていない者たちが不幸にもいたのである
きゃあっ!
激しい揺れにバランスを崩したリディアは船の外縁に転がってしまう
無理もない
リディアの生家は山間部にあるミストの村。海に行くためにはカイポ周辺の砂漠を経由せねばならず、幼い彼女にはその様な機会は訪れなかった
加えてこの船に乗り込んでいる者達の中で一番幼い事も悪い方へと作用した
リディアッッ!
ギルバートはリディアを助けようと慣れない揺れに翻弄されながらも、彼女の所へと駆けつけようとした
そう
リディアのいる
そしてその時は無慈悲に訪れた
うわぁっ!
!ギルバート!
リディアを助けようとしたギルバートは突如として起こった横揺れに翻弄され、転倒した
更に
きゃあっっ!!
急な揺れにリディアが荒れ狂う海へと落ちてしまったのだ
リディア殿っ!
リディアを助け起こそうとしていたヤンは迷わず海に飛び込んだ
ヤンッ!
ギルバートッ!
セシルもまた転倒し、意識を失ったギルバートの元へと辿り着いた
だが、それが限界だった
船を支える竜骨が折れ、船底も抜けてしまった事によりセシル達を乗せていた船は大海原に沈んでしまったのである
うっ
セシルは頭の鈍い痛みを覚えて目を醒ました
一方その頃、ようやくファブール周辺にたどり着いたゴブリンは困惑していた
どう言う事だよ?
バロンに襲撃され、残存する兵力などないと思っていたファブール
彼はその近辺で魔物を討伐していたのだが目の前で壮年の男性が無双していたのだから
いやいや、おかしいだろ!
これ
声ならぬ声を内心あげているゴブリンであった
ふぅ、やはり身体が余り動かぬか
やれやれ長い国王生活で私も鈍ったという訳か
明らかに魔物をあっさり駆逐していた男がいたのである
しかも、まだ所々に包帯を巻いているのに、だ
男はファブール国王
彼とて、国王の地位に就く前はモンク僧長をしており、いわばヤンの先達にあたる人物である
ファブールとエブラーナは距離こそ離れているが、共に武を重視する国家であった
ファブールは修行というものを経て精神面での鍛錬に重きを置き、エブラーナは敵に察知されぬ隠密性に重きを置いた
というのも、ファブールは風のクリスタルを守護し尚且つ同盟国であるダムシアンの火のクリスタルをも時によっては守護してきたという背景があった
クリスタルというものは世界の象徴としてファブールには伝わっており、いわばファブールの戦士達は世界を守っているという考えがあったとしても不思議ではない
そうであるからこそ、その責に恥じぬ精神を鍛えようとし結果として成立したのがモンク僧という職業だった
元々武僧というものであったのだが、時の国王自らホブスの山に向かい修行した結果後に続くものが現れ始めた
一方のエブラーナでは常に強力な魔物の脅威に晒されており、尚且つエブラーナの洞窟より地下世界からの魔物が頻繁に現れていた事が理由であった
如何に実力が高かろうとも、ほのおのけものやおになどと常に戦い続ければ、どんな凄腕の者であっても不覚を取ることはあり得た
エブラーナでは良質な鉱物資源は希少であり、かの有名な
更に言えば、エブラーナの民の避難場所として機能させていたエブラーナの洞窟もまた危険であった
ただ、洞窟である事から身を隠す場所に事欠くことはなく、自然と隠密行動ができる様になっていった
結果として一撃離脱と隠密行動を得意とするスタイルがエブラーナにおいて確立され、更に物資があまり多くないエブラーナの事情と相まった結果と『忍者』もしくは『忍び』というものが成立した訳である
ファブール国王視点
しかしおかしなものよ
国王は内心首を傾げていた
ファブール城下は大打撃を受けており、主力であるモンク僧部隊も壊滅した。
その結果、常に欠かさず実施していた城下周辺の魔物の間引きも行なうことが不可能となってしまう
であれば、今までの経験から言えば魔物が大挙してファブールへと襲撃している筈
にも関わらず、その兆候が見られないのだ
国王自身も襲撃により負傷していたが、なんだかんだ言っても元モンク僧の長であった身
鍛錬自体にかかる時間こそ減ったものの、現モンク僧長であるヤンとの組手などでその密度は高かった
その為、動けない者達よりもリカバリーは早かったのである
もっとも、侍従長はかなり難色を示していた為に代わりに政務の代行を命令していたりする
若い頃は横紙破りばかりしていた彼であった故、それを知る者達は
嗚呼、またか
程度で済ませていたりする
若き頃の王を知らぬ者は顔色を変えて止めようとするが、年長者から国王の
なお
帰ったら覚えておいてくださいよぉぉぉっっ!!
と侍従長の声が響き渡っていたのだが、それこそファブールにおける日常の一部ともいえるやり取りなので悲しいかな、誰一人として気にも留めていなかったりする
その国王は実力こそ確かに現役時に比べると明らかに衰えはしたが、それでも精兵揃いのファブールの中で今なお上位に位置していた
でなければ、ファブール周辺とはいえ城から出る事を認められるはずもないのだが
だが、国王やファブールの人間が予想する程に魔物は多くない
それがかえって国王である彼に違和感を強く感じさせていたのである
む?
ゴブリンだと
そんな国王の眼に異質なものが映った
ゴブリンである
多少一般的なゴブリンに比べると違和感は拭えないが、少なくともファブール周辺に生息しているドモボーイとは見かけこそ似ているものの異なる
ドモボーイはゴブリン族の一種であり、ゴブリンの纏う装飾品は緑で統一されているのに対してドモボーイは赤で統一されている特徴がある
少し遠くにいるゴブリンは纏う服などはくすんだ赤色。いや最早あれは紅色といってもおかしくはないだろう
更に言えば、全身ではなく一部にはゴブリンの証である紅色に染まっていない緑の部分が残っているから彼はゴブリンであるとの推測が出来たのである
だが、それでも
いや、そうであるからこそその異質さが一層際立つ
ゴブリンは側近から聞くところによると、ファブールから遠く離れたバロン近辺やカイポの南西にある山間部のミストの村周辺にしか生息しない
魔物は本能に忠実である
それ故に、己が生息域を出る事など彼が知り得る限りあり得ない
ゴブリン族の場合だと、装備している棍棒や粗末なものであり当然だが格上の相手をした場合だとへし折れるだろう
そもそもゴブリン族の上位種であるドモボーイが雑魚扱いされているファブール周辺にそれ以下の実力しかもたない
しかも、その周りにはガトリンガやコカトリスの亡骸が転がっている
その亡骸には明らかな殴られた跡があり、ゴブリンの持っている棍棒ではなく石の棒、あえて石棒とでもいうものには鮮血がついていた
つまりあのゴブリンはガトリンガやコカトリスを独力で制したということになる
国王とて、40年ほどファブールで過ごしている
その中においてこの様な事態は一度として起きたことはない
故に彼は即断した
え、なんかあの人こっちに来るんですけど?
ゴブリンは戦慄した
かなり離れた所にいる人物が魔物を蹴散らしながら、こちらへと一直線に向かってくるのである
その圧たるや尋常なものではない
確かに彼もこの辺の魔物を倒す事は容易に出来よう
だが、路肩の石を蹴るが如く対処出来ている此方に迫ろうとする
というか、かの者からすれば遠目にしか見えない位には距離を置いていたのに、明らかにあちらはゴブリンの存在を認識している動きであった
脳内会議
ゴブリン1
さて、どうしようか?
ゴブリン2
自殺志願者や破滅願望持ちでもない限り、撤退一択では?
ゴブリン3
あんなバグキャラ相手にしていられるか!
俺はホブスの山にかえらせてもらう!
いや、ホブスの山はゴブリンの家じゃない!
とツッコむ余裕もない脳内会議である
逃げるか
当然のように彼は逃げを選択した
逃げた、だと?
国王はゴブリンの動きを見て衝撃を受けた
確かに高位の魔物ともなると、明確な意思を持つと聞いた事がある
だが、ファブール周辺にある魔物にそんなものがいたという記憶や記録も少なくとも国王である彼の知る限りでは存在しなかった
ゴブリンはここら辺の魔物に比べたなら、圧倒的に格下である
そのゴブリンが理性的な行動をとったのであるからして、国王である彼の受けた衝撃は途轍もないものとなった
だが、幸か不幸かこの情報がセシル達に齎されるのにはセシル達がゾットの塔にてローザを救出し、親友であるカインと再び合流した時までの時間を要する事になる
なんだあれは、たまげたなぁ
内心では混乱しながらもゴブリンは只管ホブスの山に向かっていた
なお、その道中において遭遇した魔物たちは例外なく彼の
メタ的な事になるが、彼がこの地域に留まり続ける限りセシル達との差は開く一方だろう
セシルはこれから試験の山、トロイアから磁力の洞窟。更にローザを助けるべくゾットの塔。その後、地底世界へと降りてバブイルの塔へ至る
それから漸く地上最後の城であるエブラーナに向かい、同地の洞窟を経て再度バブイルの塔。そして月へと至る事になろう
物語的にはそれこそファブールは序盤に過ぎず、敢えて言えば地底世界位から中盤と言ってもいいだろう
なお、最終パーティが揃うのはモロ終盤というとんでも仕様なのが
そして何よりもゴブリンからすると困るのが、
いうまでもないが、此処はゴブリンやセシル達にとって現実である
となれば、レベルリセットされたとしてもそれまでの経験は無くならないだろう
とはいえ、推測ではあるが身体能力の一時的低下や今まで培ってきたスキルなどが使用不能となる事でセシルの戦闘能力は明らかに低下するだろう
それに適応するために試練の山で鍛える事になるだろうことはほぼ間違いないだろう
時間を費やせば費やす程にセシルの余裕は失われる
となれば、バロンに戻ってからのセシルに精神的余裕は恐らくなくなるだろうし、カインやゴルベーザもそう誘導するはず
バロンに、戻る?
ゴブリンの中で一つの考えが生まれた
賢者テラは試練の山にいた
愛娘アンナの仇討ちの為にバロンへと乗り込もうとしたものの、既にバロン兵は人ならざる者へと多くの者が変質していた
残念ながら、衰えが見えていたテラでは如何に賢者という肩書きがあったとしてもその状況を一変させることは叶わなかった
そこで、嘗て魔法の修行にて足を運んだことのあるミシディアの言い伝えを思い出して此処試練の山に来ていたのである
テラは既に高齢であり、魔法。特に相手を攻撃する高位の黒魔法を使うには余りにも負担が大きすぎたのである
確かに若き頃のテラは最上位魔法であるファイガ、ブリザガ、サンダガをも操ることが出来ていた
だが、黒魔法とは相手を傷つけるものである
高い知性や理性を以て攻撃的衝動を抑え込み、それを魔力と併せ形とする事で初めて魔法として相手に作用する
逆に白魔法は高い精神と慈愛の心を併せ持つ事により、殆どの白魔法を行使することが出来るのである
如何にテラの技量が優れていようとも、若い頃から高位の黒魔法を行使し続けていた結果、他者よりも精神的摩耗は非常に早かったともいえる
加えて現在のテラはバロンのゴルベーザに対する明確な殺意を持っておりその感情、いや激情は凄まじいまでの攻撃的衝動としてテラの精神に強く根ざしていた
黒魔法とはその衝動を如何にコントロールするかこそが肝要であり、テラはその激情を最早抑え込もうともしていない
元々衰えの見えているテラの精神にとってそれは激毒でしかなく、如何に優れた知性を持っていたとしても理性の面においてテラは非常に危ういバランスの上に立っているといえた
であるからこそ、テラの無意識は彼に
そうでなくば、テラの精神が保たないのだから
だが、テラにとって愛娘であるアンナの仇であるゴルベーザを倒す事は何よりも優先すべきことであり、それこそ我が身を惜しむ理由にはなり得なかった
試練の山の試練とは
当然の事だが、それは若ければ若い程良い訳であり、テラの様な高齢の人物にとってはハイリスク極まるものである
だが、それでもテラはゴルベーザを倒す手段を求めていた
嘗て己が壊した生活のツケをセシルはミシディアで支払う事となっていた
街中で魔道士達に話しかければ、返ってくるのは憎悪や怨嗟に満ちたものばかり
勿論、セシルとしては当然の事であると受け入れていたが、それがまたミシディアの者達の憎悪を燃やしてしまう
あかいつばさの指揮官としてセシルはミシディアにある水のクリスタルを手に入れるべくこの町を襲撃した
魔道士達は魔法で抗う事も出来たのに、彼等は魔法を使う事なくあかいつばさの者たちにより次々と捕縛されていった
中には激しい抵抗を見せる者もいたが、それはその場で処断する他なかった
結果として水のクリスタルを手に入れた訳だが、当然ミシディアの民には深い傷をつけることになる
であるからこそ、彼等彼女達はセシルに対して負の感情をぶつけずにはいられないのだ
バロンに連行された魔道士達はバロン王国の法により裁かれる
だが、バロン王国の法においてミシディアの魔道士たちは魔法を行使していなければ『市民』として扱われる事になっている
それはミシディアの長老であるミンウも理解しており、バロン側もひと月程の勾留の後にミシディアへ送還すると通達していた
ところが、ひと月以上経つ今になってすら誰一人としてミシディアに送還されていないのである
つまり、バロンは約束を破ったという事だ
因みにこの件は本来、大臣扱いの件であった筈が地下牢に繋いでいる時に魔道士の魔物化という悍しい実験の材料とされていた
勿論、大臣にはなんの報告もなく
当然その様な報告がなされない以上、書面上はミシディアの魔道士達は地下牢にいる事になっている訳であり、それを確認する事は大臣の職務として間違っては決していなかったのである
とはいえ、その様な事が発覚する事を恐れたベイガンは大臣を偽りの罪状にて拘束するしかなかった
その頃にはバロン城内に不穏な空気が漂いつつある事を朧気ながらに察知した大臣により、王国の政務に携わる者達の大部分が城から出されていたのだが
結果、政務という最大の武器を手放した大臣を拘束するのにはなんの支障もなかったという訳でもある
勿論、あまりにも突然の事であった為にミシディア側への連絡は為されておらず、それがセシルに対する風当たりの強さにつながってしまうのであるが
その後セシルはミシディア長老ミンウに会い、試練の山の試練を受ける様に促される
ミシディアの民にとって、試練の山の試練を突破するというのは非常に大きなものでありセシルへの風当たりの強さを弱める事も出来るだろうというミンウなりの考えであった
セシルには
その頃、バロン王国あかいつばさ指揮官である筈のゴルベーザはバロンを離れとある場所へと来ていた
セシルめ。試練の山に挑むか
ゴルベーザは苦々しく呟いた
暗黒の剣を振るうセシルであればゴルベーザにはその剣は決して届かない
だが、セシルは試練の山に向かっているとの事
可能性は決して高くはないが、セシルがパラディンになる事もあり得よう
パラディンとは高潔な精神と挫けぬ心を持つ騎士
かつてのセシルであれば不可能であっただろうが、今のセシルであれば不可能とは言い難かった
となれば、危険である
ゴルベーザ様、セシルは私が
黙れ
ファブールでの失態を忘れたか?お前はローザの監視をしておれば良い
セシルに激しい対抗心を燃やしているカインはゴルベーザに申し出るも、ゴルベーザは一蹴した
ファブールにおいて、セシルは敵となってしまったカインに動揺していた為に大した抵抗が出来なかった
はっきり言おう。あれでカインが勝ちきれなかった事でゴルベーザはカインを見限ったのだ
そうカインが願うからこそ、態々ファブール攻略部隊の臨時指揮官に据えたにも関わらず
・・・・はっ
うむ
スカルミリョーネ!!
不承不承返事を返すカインを気にも留めずゴルベーザは配下の1人を呼んだ
は、土のスカルミリョーネここに
誰もいなかった筈の空間に赤いフードを纏った男がいた
スカルミリョーネよ
セシルめが試練の山に向かっている
試練の山?
では奴はパラディンになろうと?
スカルミリョーネは慎重な男であり、セシルの事を調べ上げていた
故にセシルの中にあるパラディンの可能性を彼もまた感じ取っていたのである
そうだ
だが今の奴であればお前のスカルナイト達には無力だろう
はっ
セシルめを我等が仕留めてご覧にいれましょう
吉報をお待ち下さい、ゴルベーザ様
任せる
スカルミリョーネは今でこそモンスターと化しているが、人間であった
だが、彼は凄腕の
そんな中で唯一彼に手を差し伸べたのがゴルベーザであり、人の身ではゴルベーザの役に立たぬと思った彼は自らの身をモンスターと化す事を決めたのである
ゴルベーザ配下にはスカルミリョーネを含めて4人のまとめ役がいる
残虐性を持つ者。ゴルベーザを想い慕う者。武人として更なる高みへと登ろうとする者
スカルミリョーネからすれば、敬愛するゴルベーザが仮に自身の事を捨て駒として見ていたとしても何の問題もなかった
彼はゴルベーザによって救われたのだ
であれば、その大恩に報いる為ならばモンスターとなろうが捨て駒となろうが
例えゴルベーザが間違った道を歩んだとしても、スカルミリョーネはその道を切り拓く為の
スカルミリョーネはゴルベーザよりも後に滅ぶ事など望んではいない
ただあのお方が生きてくだされば良い
あのお方に危害を加えようとする者がいるのであれば、スカルミリョーネはその全てを賭けてでも滅ぼすまでなのだから
どうも、ゴブリンです
今現在私は困っています
何でかというと
何でお前らついてきてんの!?
ゴブリンの後ろにはドモボーイやガトリンガ、ボムやペイニーボムにコカトリスやスピリット、スケルトンにガーゴイルがついてきているからであった
はじめはホブスの山近くでドモボーイとガトリンガの二匹?が何故か着いてきた
その後、ホブスの山の山頂でボムとペイニーボムが。ダムシアン側の入山口でコカトリス、スピリットにスケルトンとガーゴイルが後ろから追いかけてきたのである
これでは魔物による大名行列の様なものであり、百鬼夜行とも言えるだろう
とはいえ、ガーゴイルやコカトリスのお陰でダムシアン方面へと無事に移動できたのも事実なのではあるが
いや、どうすんのさこれ?