黙祷集。(最新話『ドラゴンメイド』更新2024.11.19)   作:神の筍

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『巡り合い 染む紫の 雲の上』(原作:『真剣で私に恋しなさい!』
第2話


 中学三年の頃、祖父が亡くなった。

 

 死因は病死。肝臓癌だった。医者によれば肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、他の部分と比べて病気になっても初期症状が少なく、早期発見が難しいようだ。防ぐためには定期健診など些細なことを記録して医者に報告することだが、それでも肝臓癌を適切に処理出来ることは現代に至っても極めて稀なことらしい。当然祖父もそんな奇跡はなく、余命半年も無いという宣告と共に終活をしなければならなかった。

 祖父は笑っていた。

 何となく自身の身体の不調か死期を悟っていたのか「天寿癌だ」と、死ぬその日まで好きな清酒を吞んでいた。自分が初めて呑んだ酒もそのときだ。正直不味かった。舌に合わないにも関わらず、毎晩祖父の隣にいたかったがために無理をして呑んでいた。

 死に際、家の布団で死ぬことを選んだ祖父は自分に言った。

 

『もっと色んなものを見て、色んなことをしろ。色んな人を関り、色んな人と知り合え。いつか好い人が出来たら、自分の所に報告しに来い』

 

 物心つく前に両親を亡くし、親戚もいない自分はその日正しく一人になった。幸い祖父と暮らしていた家は自分でも改修が出来るほど知り尽くしているし、人一人食べて行くには十分な家庭菜園もあった。肉も山に行けば手に入るが、米や生活雑貨は金がかかる。祖父は余命宣告のあとすぐに自分名義の通帳や役所でやらなければならないことを教えてくれており、その通帳にも高校に入学して卒業するまでは十分な額が入っているため苦労しないだろう。このまま地元の高校に行き、実家を守るように就職しても良いと思ったが、祖父の遺言に反するだろうと関東の高校へ進学することにした。その学校は生徒の自主性を重んじ、またバイトなども特に規制しているわけではないので自分には丁度良いのではないかと中学校の担任教師が進めてくれた。

 

 神奈川県川神市――川神学園

 

 東北の片田舎でも音に聞く、度々話題になる学園である。 

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 その日、川神学園にかつてない激震が走っていた。 

 いつものように武神が多摩大橋で変態どもを宙に飛ばしていたなど、九鬼の従者部隊が颯爽と現れて変質者を簀巻きにしていったなど、誰かが馬で登校したなど、明らかに高性能な人工知能が搭載された紫色のロボットが目撃されたなどではなく――。

もはや大事に慣れた学園生徒ですら声を上げて驚いたのは今朝の新聞記事やニュースの表を掻っ攫った、

 

『九鬼のクローン技術により、古の英雄が復活!』

 

 という、歴史的一文だった。

 そもそもクローン技術というものは国家間では半ばタブー化しており、それがヒトに纏わるものであればなおさらだ。生み出された命の人権はどうなるのか、非人道的行為ではないのか、宗教的な問題など挙げればきりが無い。その諸々を無視して世界三大財閥と呼ばれる九鬼は大々的に過去の英雄をクローンとして蘇らせたことを発表した。

 

 “源義経”

 “武蔵坊弁慶”

 “那須与一”

 

 そして、三人の一つ上に“葉桜清楚”という正体不明の英雄がいる。

 なぜ九鬼がこの三人を選んだのかはわからないが、海外の英雄であった場合一応日本企業である九鬼財閥に面倒くさいやっかみが来ると考えたのかもしれない。殆どテレビ局は朝から殺人や事故の報道を一旦取りやめ、急遽拵えたスタジオでクローン人間について徹底討論の特集を組んでいる。見たことも無い分野の教授や研究所の博士が呼ばれ、偉大な進歩だと述べる者もいれば非人道的だと批判する者もいる。中には九鬼がなぜこんなことをしたのか考察する評論家も存在し、さらなる続報を世界は待っている状態だった。

 

「――お客さん。立ち読みは別にかまわないが、川神の生徒じゃないかい? あんまりのんびりしてると遅刻しちまうよ」

 

 コンビニの雑誌コーナー。一番手前に並べられた新聞を広げていた白い制服を着た男子生徒が丸渕眼鏡のコンビニ制服を着た初老の男性に声を掛けられる。その声音は決して咎めるものではなく、どちらかと言うと心配そうな、地域にいる子供を気に掛ける老人といった風だ。男子生徒は時間を気にしていなかったのか、黒を基調としつつも地毛なのか微妙に紫色の髪を持つ頭を横に向けて時計を見た。時刻は八時五分を過ぎた頃。普段ならば既に学園についている時間だ。

 

「すみません。ありがとうございます」

 

「いや、かまわないよ。最近は新聞を読む子供も減ったから、立ち読みしてるだけ偉いさ」

 

「……買ったほうが良いですか?」

 

「あー、本当に全然気にしなくて良いよ。個人商店ならともかく、コンビニだしね。自分も最近入ったばかりだからそこまで言わないよ」

 

「そうなんですか。わかりました。教えていただきありがとうございます。では――」

 

 男子生徒は軽く会釈をして小走りで学園へ急ぐ。

 コンビニから学園までは徒歩二十分。走って十分といったところだろう。このまま行けば予鈴の鳴る三十分までには辿り着けるが、そうはいかない。今日は水曜日、川神学園では毎週水曜日の朝には全体集会があり二十分までにはグラウンドか、雨の日には体育館へ並び終わっていなければならないのだ。そのため、必然的に予鈴まで入校すれば遅刻扱いにならない時間でも欠席確認のときいなければ遅刻扱いになる。今まで無遅刻無欠席である男子生徒にとってそれは避けたいことなのだ。

 

「鞄を持ったまま並ぶことになりそうだな」

 

 全力疾走すれば教室に寄る時間も確保出来そうだが、この時間は出勤するサラリーマンや子供を乗せた自転車も歩道を走っているため控えるべきだ。鞄を持って列に並んでも教師は特に何も言わないので、自身が恥を忍ぶかどうかの違いだろう。

 いつもの時間なら何らかの騒動がある多摩大橋を越え、学園に繋がる最後の坂を男子生徒は走っていく。そのとき、何となくコンクリートに不自然な影が出来たため上空へ視線を上げた。

 

「……飛んでるな」

 

 屋根から屋根へ、はたまたマンションの屋上から屋上へ、時に電線にあたらないように電柱の先を踏み台に学園へ急いでいる女子生徒がいた。

 

「自分も川神先輩みたいに行ければ余裕で間に合うのだが」

 

 あんなスーパーヒーローみたいな移動が出来る者は武神と呼ばれる川神百代や学園にもいる一部の実力者だけだろう。九鬼の従者も可能だろうが、必要以上に目立つことはしない。そのうち赤いタイツを着て手首から糸を出す蜘蛛男が現れても容易く受け入れられる。それが、川神という場所だった。

 

「――と、見てる場合じゃないな」

 

 いつの間にか歩いていた男子生徒は再びを走り出す。決してひらひらとしたスカートに目が惹かれていたわけじゃない。不埒な視線を向けていれば機敏な武神が既に制裁を下していただろうからだ。

 少ししてようやく校門が見えてくる。どうやらグラウンドには生徒たちが整列していないものの集まっているようだ。

 

「これはコンビニの店員に感謝だな」

 

 遅れていればきっとクラスから揶揄されていただろう。それで済めば良いが、男子生徒のクラスメイトには酷く口うるさい女子生徒もいる。彼女は男子生徒が嫌いなのかと問われればそうではなく、他クラスの隙になるようなことはするなと注意するのだ。時折行き過ぎた言動もあるが、クラスメイトも彼女がそういう性格だと概ね受け入れていた。

 季節は葉桜が目立ち始めた四月初めの週。

 英雄のクローン。源義経と武蔵坊弁慶、そして那須与一が所属することになる二年Sクラスの山紫 水明(さんし すいめい)は今年も無遅刻無欠席を達成すべく川神学園へ到着したのであった。

 

 

 

 

 

二、

 

 

 

 

 

 鞄を持って走って来た水明を迎えたのは眩しい頭を持つ男子生徒だった。

 

「この時間に慌てて来るなんて珍しいな、山紫」

 

「おはよう、井上。コンビニで新聞を立ち読みしていたらギリギリになった」

 

 井上準――禿げた頭は幼少の頃に患った病気が……というわけではなく、幼馴染の一人でありクラスメイトの榊原小雪によって就寝中に毛根ごと毟られたという悲しい過去を持つ男である。

 

「新聞? 普通立ち読みするな雑誌だろ」

 

「自分もそのつもりだったんだが、一面に書いてあった『クローン英雄』の文字に引っかかってな。まんまと遅刻させられるところだった」

 

「なんだそれ。自業自得だろ」

 

「違いない」

 

 特別水明が井上と仲が良いというわけではなく、井上がクラスの殆どと仲が良かった。見た目に反して物腰も柔らかく、特技が料理という井上はごくたまに和菓子などを作ってクラスメイトに分けたりする。その社交性は秀でたものだが、別に自分から身に付けたわけではなく、ひと際持てるもう一人の幼馴染である葵冬馬がいたからであった。川神学園イケメン四天王にも入る葵は幼少期の頃から両親が病院経営ということもあり、非常にモテた。何十人もの女子が葵と付き合うために奔走し、その間に強制的に橋渡しの意を持って入れられたのが井上だったのだ。当初は自分がモテていると勘違いしたようだが、いつの日かまったくそんなことじゃないと気付き、性癖が犯罪方向へ捩じれいつからか悟りを開くに至ったのだがその詳細はまた別の機会とする。語ることもないだろう。

 

「それより聞いてくれ。何か今日、天使が降臨する気がするんだ」

 

「天使……?」

 

「ああ。天使だ」

 

 水明は首を傾げた。

 

「メイメイ、この禿げがまた発病してるだけだから気にしなくて良いのだー」

 

 ぱちーん、と小気味の良い音を立てて井上の頭を叩いたのは左の女子列にいた榊原だった。

 

「発病って言うなユキ! これは愛だ! 人間が持ちし純然たる感情だ!」

 

「なるほど、効く薬は無さそうだな」

 

「山紫も納得するなよ! 人の信仰にケチを付けたら中世では処刑モンだぞ!」

 

 現代である。何なら無宗教の国である。

 

「良いか、俺は偉大なる母国ロリコニアから渡来した宣教師――」

 

「――何がロリコニアだこのハゲ! もう点呼取るんだから臭い口閉じろや!」

 

「ぐぁしびーびーえー」

 

「気持ち悪い断末魔なのだー」

 

 何かを語る前に井上はメイド服を着た一応女子生徒扱いである忍足あずみに吹っ飛ばされ、今度は胸倉を掴まれ足首まで埋まる勢いで無理やり起立させられた。

 

「あずみ! 後ろの確認は出来たのか!」

 

「はいっ、英雄様! このあずみただいま終わりまして向かっております!」

 

「フハハッ! 焦らずとも良いわ!」

 

 前方で黄金色のスーツを着るのはあの九鬼財閥の御曹司、九鬼英雄だ。忍足は英雄の専属従者であり、外出時の護衛も兼ねた腕利きとなっている。序列は一位となっているが、それは若手育成の一環であり、今後容易く二桁台、最悪三桁台に落ちることを留意して日々の務めを熟さなければならない。そうなれば忍足の慕う英雄の従者は到底出来なくなってしまうためよほどのことがない限りは今後継続的にその序列に守っていくことになるだろう。

 

「井上のことを信じれば、英雄組以外の転校生が来ると言うわけだろう?」

 

「ジュンのロリコンセンサーは気持ち悪いことに意外と当たるのだ」

 

「宝の持ち腐れだな」

 

 水明は榊原と小声で話しながら時間を潰す。点呼は既に終えたので、あとは学園長が正面の朝礼台に上るのを待つだけだ。いつの間にか復活していた井上も挟みつつ待っていると前の方が騒がしくなる。

 

「お、あれは義経だな」

 

 井上がそう言った。

 朝礼台の横に一番最初に出てきたのは義経だった。高級絹本生地でも垂らしているんじゃないかというほどの艶やかな髪をポニーテールに結っており、左腰には日本刀を提げている。国家資格に等しい試験と相応の実力を示せば帯刀許可書を貰えるので彼女もそれを乗り越えたのだろう。小柄な体からは想像出来ないが、春休みにあった川神学園対天神館の二年戦時に上空を飛ぶヘリコプターから降り、廃墟の壁を伝って西方十勇士大将を斬り捨てたのは彼女である。その一刀は同じ刀を持った大将と比にならないほど速く、正確であり、無常だった。素人でもわかるほど鮮烈だったのだ。

 

「次はおっぱいがデカいむぐぐ」」

 

「こら、ユキ。そんなこと言っちゃいけません」

 

 そんな義経の後ろを歩いて来たのは榊原が言いかけた通りの女子生徒だった。髪はストレートの義経と違って波打っており、日本刀の代わりに錫杖を持っている。水明にはあの錫杖がどんな素材で出来ているのかわからなかったが、もし鉄で出来ているならば相当重いだろうなと容姿でバカ騒ぎする一部を尻目に考えていた。

 最後に出てきたのはどことなく威を感じさせる義経と弁慶とは違い、普通の文学少女。図書館が似合いそうな女子生徒だった。

 

「むう、那須与一はどこへ行った?」

 

「すみません。学園長。与一は川神学園には来ているですけど着いた途端どこかに行ってしまって……義経が主としてしっかりしてないから……」

 

「あのバカは次会ったら源氏式バックブリーカーの刑に処す」

 

「なるほどのぉ――ルー。学園の敷地内にはおるようじゃから義経ちゃんたちが自己紹介しとる間に連れて来てくれぬか」

 

「分かりましタ!」

 

 緑ジャージの体育教師――ルーが姿を消した。彼は川神学園の教師をするとともに世界最強の一人とされる百代も属する川神流師範代の一人であり、間違いなく強さの壁を越えた人間だ。武の聖地川神ということもあり、水明もここに来てそれなりに実力者を見てきた。最たるは多摩大橋で人間テトリスに興じる百代だったりするのだが、何となくそういう人たちは気配を察することにも長けていると気付いていた。対天神館戦では作戦本部と戦地を情報伝達係として走り回っていた水明は同じクラスのマルギッテ・エーベルバッハやFクラスの椎名京といった武士娘の戦いを直接見ることもあり、姿も見えていないのにトンファーを壁にぶち込み、遠くの敵を矢でハチノスにしていたことを思い出した。

 

「――うおっほん! ……では、全校集会を始める。もう全員わかっておるじゃろうが、今年度より転入生が六名おる」

 

 学園長の言葉に生徒たちは違和感を覚えた。朝礼台の横にいるのは義経、弁慶、そして文学少女の三人。あと一人は今朝のニュースや新聞でも話題になった与一であり、自然と転校生は四人だと考えていた。与一は先ほどの問答を聞いている限り後から来るようなので、どうやら彼女たち以外にも二人転校生がいるようだ。

 

「前置きの話など聞いても面白くないじゃろ。早速義経ちゃんから自己紹介をしてもらおうかの」

 

 義経はもう少し後だと思ったのか、小さく肩を上げた。そのまま見てわかるくらいに緊張しながら学園長の降りた朝礼台へ上がった。

 Fクラスの担任、小島が下からマイクの高さを調整すると彼女は頭を下げて口を開いた。

 

「よっ――義経は、源義経と言う。義経のことはみんなも知っていると思うが、義経はあの義経のクローンとした生まれた。義経と生まれたからには義経も義経であるべく日々を邁進しながら川神学園のみんなと過ごせたら良いと思っている。二年生からの転入にはなるけど、よろしくお願いします」

 

 義経という単語がいくつ出たのか把握出来なかったが、水明は義経が非常に真面目な性格をしているのだと理解した。義経という名前の人間が義経を目指すのも変な感じがしたが、実直に旋毛が見えるほどに頭を下げて挨拶をする姿に好感を覚えたのは事実だった。

 

「うむ。川神学園は切磋琢磨するには頼りになる生徒が多く揃っておる。きっと義経ちゃんにも良い影響をくれる生徒もおるはずじゃ」

 

「は、はい!」

 

『――――っ!?』

 

 きぃーーーんと、マイクが付いたまま大きな声で返事したおかげでグラウンド中にハウリング音が響いた。

 

「あわわわ、す、すまないっ」

 

「もう少し落ち着かねばのぅ」

 

 慌ててマイクのスイッチを切った義経は恥ずかしそうにその場を後にした。

 続いて上がって来たのは弁慶だ。義経のときも可愛らしい容姿から歓声が上がっていたが彼女のときは野太い声が多く上がっていた。特に2Fがうるさいようで小島がどこからともなく出した鞭を振るっている。ごく少数喜んでいる者もいるようだが。

 

「えー……武蔵坊弁慶です。主と同じ英雄のクローンで、弁慶やってます。よろしく」

 

『死にざまをしったときから好きでしたー!』

 

『頼むから結婚してくれ!』

 

『上だけでも良い! 数字を教えてくれ!』

 

『――やかましいっ!』

 

『……あふんっ!』

 

 たしかに好まれる理由がわかる容姿だが……水明はそんなことよりも先ほどから浴びるように注いでは呑む何かを凝視していた。

 

「ぷはぁ~」

 

『なんか弁慶、呑んでないか?』

 

『明らかに花金の夜の親父顔なんだが』

 

「弁慶っ、今はみんなの前なんだから控えろっ」

 

「んー、でも今のうちに本当の姿を見せておかないと後から幻滅されるほうがダメージでかいよ」

 

「た、たしかにそうかもしれないが……っ」

 

「ということで皆さん。私が呑んでるのは別にお酒じゃなくて川神水なので非行に走ってるとかじゃないので悪しからず」

 

『じゃあ、良いのか……?』

 

『水中毒になるんじゃない?』

 

「すまない、みんな。義経も弁慶には呑む量を減らそうと言ってるんだが、弁慶は一定量吞まないと手が震えてしまうんだ」

 

『えぇ……』

 

『あれじゃん、それもうあれじゃん……』

 

「武蔵坊弁慶の川神水については儂からも話しておこう。弁慶は川神水の常飲を認める代わりに定期試験学年四位以下で退学を申し出ておる」

 

『てことは弁慶はSクラスに転入か?』

 

『ちょっと待て、義経と与一、他二人はどうなんだ?』

 

「義経と与一についても転入試験でSクラスに入れる点数を十分取っておる。つまり、二年Sクラスは今年いきなり三人の降格者が出るというわけじゃな」

 

『にょほほほ、良いではないか。凡百の人間よりこなたのような高貴な者がおるクラスにこそ英雄は相応しい』

 

「これに関しては残り三人も同じ。葉桜清楚は三年Sクラス。まだ来ておらんが一年Sクラスにも二人の転入生がおる」

 

 新学年早々、Sクラスから何人もの降格者が出るという事態になってしまった。三学期の期末テストで無事Sクラスに残留出来たと油断したSクラス下位者は悲嘆に暮れているだろう。水明は特別頭が良いわけじゃないが、いつも十位前後に位置しているため問題はなかった。

 その後、何人かが悔しさを滲ませる結果となったが川神学園の新しい仲間の紹介は続いていく。清楚は名前の見た目通りの性格をしており、はやくもファンクラブが出来そうな勢いであちこちから歓声が上がっていた。もしすると弁慶よりも多かったかもしれない。

 ――しかし。

 彼女たち二人よりも歓声が上がったのは転入生最後の一人……頭に巻いた鉢巻と紋付き袴が眩しい九鬼家末妹、九鬼紋白だった。どうやらこの学園にはロリコニア国民がそれなりいたようで、そして九鬼特有のカリスマで多くが喝采するように声を上げていた。登場の仕方も校門から真っすぐ朝礼台へレッドカーペットを引いていたので演出効果もあったのかもしれない。逆に何より落差があったのが一年生のヒューム君なのだが……ともかく、またもや騒がしい一年を想起させる濃い面子が川神に集まったのだった。

 

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