黙祷集。(最新話『ドラゴンメイド』更新2024.11.19)   作:神の筍

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第46話

 

「——ちょ、兄貴待って下さいよ! 廃寮に行くんじゃないんすか!」

 

「翔も見ただろ? 今の流れ星! 絶対この近くに落ちたぜ!」

 

「待つんだな、十代! 流れ星なんて流れてなかったぞ!」

 

 竜胤と明日香と同じように廃寮を目指していた十代、翔、そして彼らと同じ部屋の前田隼人は山の中を疾走していた。

 「流れ星が落ちた」と叫んで十代が走り出したからだ。

 

「あれぇ、おかしいなぁ。この辺だと思ったのに」

 

「はぁはぁ……兄貴。そもそも流れ星って何のことすか。ボクも隼人君もそんなものは見てないっすよ……うぅ、いきなり走ったから苦しい」

 

「いや、絶対落ちたって! あんなはっきりしてたのに見てなかったのかよ!」

 

「三人いる中で二人見てないなら、十代の勘違いなんだな……もう、走れない」

 

 ぐったりとする二人を尻目に十代は辺りを見渡す。しかし、流れ星が落ちたにしては静かで、光の一つも無かった。

 

「見たんだけどなぁ」

 

 少しすると十代も諦めたのか、休憩も取れた二人を伴って廃寮に向かう。結局十代が見た流れ星が何だったのか、本当に存在していたのか、誰も分からなかった。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 扉の先にあったのは地下へと続く石階段だった。ここに来る前に歩いていた廊下には蜘蛛の巣が張ってあったにも関わらず、この場所は埃が落ちているだけで生き物の気配がしない。

 灯代わりにティルルが火を灯している。 

 螺旋状の階段を三十段降りると今度は鉄棒式の扉が現れた。まるで檻のようだ。

 鍵穴があるものの鍵は持っていない。

 

『えいっ』

 

 何か言うよりも早くティルルが蹴飛ばすと大きくひしゃげて吹き飛ばされた。

 

『まぁ、趣味の良い部屋だわぁ』

 

『趣味の悪い部屋ねぇ』

 

 中にあったのは剣や盾、箱に仕舞われた金貨、木の棒? 石像のようなものや、誰かの衣服など一貫していないものばかりだ。

 誰かの部屋ではない。

 どちらかと言うと貯蔵庫のような、各地から集めて来たものを詰め込んでいたのだろう。

 

『この人形、持って帰ろうかしらぁ』

 

『ちょっと辞めてよ。そんな変なの部屋に置いてかないでよね』

 

『ねぇ、ご主人様さまぁ。持って帰っても良いでしょう?』

 

 廃棄された場所にある放置された物だ。

 

「一つだけだぞ」

 

『やったぁ。さすがご主人様だわぁ……あ、こっちのハサミも良いわねぇ』

 

 見境なく集められたように見えるが、何となく並べられている物から心当たりがあった。

 

「曰く付きの物、だろうな」

 

 特にチェイムが抱きしめている人形などは分かりやすい。髪が伸びるのか動き出すのか、西洋人形にはあるあるの曰くだろう。剣や盾も所持していた者が悲惨な死を遂げたか。絵は火事が起こるとかだろう。

 

「仮面は取り付けると性格が豹変するとかか」

 

 壁に飾られた仮面を見る。

 日本の翁面から中国の鬼面、部族の迫力満載な仮面。

 

「これは宗教関係か?」

 

 金で淵取られた白い仮面を手に取る——取ろうとして、その腕を掴まれる。

 ハスキーかと思い横を見ると、珍しい人物が立っていた。

 

「主よ。それには触れない方が良い」

 

 身軽そうな胸当てに青い袴着。頭に被った笠は角が出ている。以前、幸子とのデュエルでも召喚した《妖眼の相剣士》——アヤメが立っていた。

 

「妙な気配がするか?」

 

「ここにある物の幾つかは魔を帯びていますが、主に害を及ぼすほどではありません。ですが、それには万が一がある。

 ハスキー。貴様は何をしている?」

 

「把握していますよ。ただ、何があっても問題はありません」

 

「主はお前たちと違って純粋な竜ではない。それを分かって言っているのか?」

 

「ええ。それでも何も問題はありませんので」

 

「ふん。相も変わらずドラゴンらしい傲慢な考えだ。だが、お前が言うなら大丈夫なのだろう」

 

 いや、そもそも生半可な竜でも無いのだが。これ触ったら不味いヤツなのか? なら触りたく無いのだが……。

 

「これが何か知っているのか? アヤメ」

 

「はい。これは……これは神徒(ハッシャーシーン)と呼ばれる者たちが付ける仮面です。この仮面を付けた者たちは信仰に従わぬ者たちを傷付け、無理やり思想を捻じ曲げるのです。そしていつまでも変わらない者は……」

 

「なるほど。精霊界由来の物ということか」

 

「主から見るとそうなります」

 

「ここにある物の殆どは精霊界由来の物です。恐らくですが、以前ここに住んでいた住人か、それよりも前の住人が何らかの方法で収集していたのでしょう。物質で残っているということは、その者は精霊界を出入り出来るほどの力を持っていた可能性もあります」

 

「だが、効力は消えているんだろう?」

 

「人に害を及ぼすものはありません。精々、ここで寝泊まりすると体調を崩すくらいです」

 

 今直ぐにヤバいものは無いということだ。

 

「ですが、ここにあることで精霊界と縁が出来ています。何の因果か、あちらから誘われて来る可能性が——」

 

 ハスキーがそう言うや否や、彼女は尻尾を振るう。

 同時、自分の視界は彼女から遠ざかり、アヤメに抱き締められていることに気付いた。

 他のドラゴンメイドたちも同じ方向を見ており、そこにはハスキーの一撃により壁に叩き付けられた——緑の服? を纏う、まるで詩人のようなナニかがいた。

 

「このように時たまに訪問者がいたのでしょう。ですが、門を通って来たわけではないので本来は直ぐに戻されます」

 

「今回はそうではないということだな?」

 

「ご主人様のお力は精霊を顕界せしめます。お近くにいるだけでコレは戻らないでしょう」

 

 人ではない。何故なら、下半身が肉切り包丁のようになっているからだ。旋律符に似た何かには鉄錠がぶら下がっており、ただ成らぬ気配を感じる。

 

『消滅させるわねぇ』

 

 チェイムが力を振るおうとするのを止める。

 

「いや、その必要は無い。どうやらこちらのご所望のようだ」

 

 痛みを感じていないのかソレは立ち上がると、デュエルモンスターズのデッキの入った檻のような中心部を見せて来た。

 ならば、一先ずやってみるのも状況把握に役立つだろう。

 自分はデュエルディスクを構えるとデッキをセットした。

 

「——デュエル」

 

『——ラノチチトトチミ、カチコイカチミラ』

 

 言語は分からない。

 だがどこか、物悲しい声音だった。

 

 

 

 

 

二、

 

 

 

 

 

「自分のターン、ドロー。《魔導召喚士テンペル》を召喚。そして、《グリモの魔導書》を発動。デッキから《セフェルの魔導書》を加え、手札の《ヒュグロの魔導書》を見せて再び魔導書カードを加える」

 

 加えたのは《ゲーテの魔導書》だ。

 

「そして《魔導召喚士テンペル》の効果発動。このモンスターをリリースすることでデッキから《妖眼の相剣士》を特殊召喚」

 

『任せてくれ。主よ』

 

「カードを二枚伏せてターンエンド」

 

 さて、一体何が出て来るのか。

 

【竜胤の手札:三枚】

 

『カチコイカチノナミチニカカイニカカチミラ』

 

 どうやってカードをドローするのかと思っていたが、手札も含めて浮いている。精霊パワーだろうか。

 相手はディスク代わりの鉄錠へカードを置いた。

 

『シイモラツイカナコラナテラノチミマニスナミニクチトラスイキチニカニコチミシチカカイ』

 

 これは罵られているのか? それとも伝えたいことがあるのか?

 今はさておき、モンスターが召喚された。そのモンスターは今デュエルしている相手と全く同じ姿をしていた。

 

「《悲劇のデスピアン》……聞いたことないな」

 

 ハスキーを見るが彼女も首を振った。フィールドに立つアヤメも同じような反応だ。

 一体どのようなデッキなのかと構えていると、ディスクには自分のターンを示す赤いランプが点いた。

 

【???の手札:五枚】

 

 伏せカードも無い。

 攻撃力・守備力共に400の最下級モンスターだ。

 墓地効果はあるが……今は関係無い。

 

「自分のターン」

 

 不気味ではあるが臆していれば何も始まらない。

 

「《マジシャンズ・ソウル》の効果によりデッキから《混沌の黒魔術師》を送り、特殊召喚。そして速攻魔法《ディメンション・マジック》。《マジシャンズ・ソウル》をリリースし、《ウィッチクラフト・ハイネ》を特殊召喚。その後、《悲劇のデスピアン》を破壊」

 

 これで相手の場はガラ空きになった。

 

「手札から《ネクロの魔導書》も発動する。《マジシャンズ・ソウル》を除外して《混沌の黒魔術師》を特殊召喚」

 

 自分のフィールドには《妖眼の相剣士》、《ウィッチクラフト・ハイネ》、《混沌の黒魔術師》だ。

 

「全てのモンスターでダイレクトアタック」

 

【???のLP:8000→5500→3100→300】

 

 手札誘発も特に無し、か。

 

【竜胤の手札:〇枚】

 

『ノナスナトニニ』

 

 モンスターが召喚された。

 

「今度は《喜劇のデスピアン》か」

 

 守備力は2000とか高いが攻撃力は〇。それを攻撃表示で出している。

 

『ノチミチトニニ』

 

 そして、ターンエンド。先ほどと変わらない。

 

「自分のターン、ドロー。メイン、このままバトルフェイズに入る。《妖眼の相剣士》でモンスターを攻撃」

 

『——「天断螺軼(テトラス)』

 

【???のLP:300→-2200】

 

 勝利した、が。本当に何をしたかったのだろう。

 

「ご主人様。こちらを」

 

 ディスクを閉まった自分にハスキーがあの白い仮面を渡して来る。

 アヤメの表情は笠で隠れて伺えないが、何も言わないということは問題無いのだろう。

 

「ふむ……」

 

 受け取り、戦った相手を見る。目のようなものがコレに向いている気がした。

 

「ほら」

 

 フリスビーのように投げる。

 てっきり受け取るものだと予想したが、アレ——《悲劇のデスピアン》は叩き落とし、踏み、砕き、およそ仮面だったと分からないレベルにまで粉々にした。

 

『チスニキチカラナ』

 

 霧が薄まっていくようにその姿が消えた。

 

「精霊界に帰ったのでしょう」

 

「何だったと思う?」

 

「詳しくは。ただ、悪い意味であの仮面に固執しているように思えました」

 

「アヤメ。神徒(ハッシャーシーン)とは何だ?」

 

「…………主よ。私を拾って貰ったことには感謝しています。しかし、今少し時間を戴きたい。私が知っていることはいずれお話致しますので」

 

「そうか。分かった。別にどこかに行くとかではないんだろう?」

 

「お側に」

 

「そのときになったらまた教えてくれ」

 

「必ずや」

 

 アヤメの様子からあの白い仮面は碌な物ではないのだろう。精霊たちから話を聞くに、精霊界もファンシーさで売っているわけじゃないらしい。人間界のように種族間戦争があれば信仰的な軋轢もあるとのこと。

 

「チェイム。やはりここの物は全部貰っても良いぞ」

 

『本当ぉ? やったわぁ!』

 

 チェイムの足元から黒い靄が漂い始める。ゆっくりと部屋の中の物が沈んでいくと、ただの小汚い倉庫となった。

 

「さすがに眠いな。もう帰ろう」

 

「ナサリーはどうしますか?」

 

「適当に気を見て帰って来るように伝えてくれ。パルラは……」

 

「アレも勝手に帰って来るでしょう」

 

「なら、大丈夫だな」

 

 欠伸を噛み殺しながら階段を上がる。

 妙な部屋を見つけたことはともかく、結局アレは何だったのか。白い仮面のことやアヤメの様子も気になるが、それらを考えるのはまた後日でも良いだろうと帰宅を急ぐのであった。

 

 

 

 

 

三、

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 深く息を吐いた。

 水垢やカビの一つ無い風呂場は湯煙に包まれ、湯船は足を広げて浸かれる十分な広さがある。

 オベリスクブルーで良かったと思うのはやはり寮の充実さだろう。食堂はプロの料理人が腕を振るい、隅々まで行き届いた掃除は清潔感を維持している。ある程度時間にルーズでも許されてしまうのだから、特権階級と自惚れてしまうの仕方ないだろう。

 まぁ、自分の口に入る殆どはティルルの手が入っており、うちのメイドたちによれば掃除もまだまだ未熟らしいが。

 

「……っ、……っ」

 

 ラドリーが気持ち良さそうに泳いでいる。

 本来、ドラゴンメイドたちが風呂に入る必要は無いのだが、それでも雰囲気が好きなのか一緒に入ることも多い。大体は日替わりで、今日はラドリーだったのだ。

 最も、ラドリーだけではないのだが。

 

「……」

 

 ローズクォーツのような瞳が自分の顔を覗いている。

 腿には柔らかい感触があった。

 腕は首に回され、いつもは青い魔術服に隠された豊満な肉体が自分の上半身に押し付けられている。

 

「……」

 

 沈黙の名に相応しい口数の少なさは時折何を伝えたいのか分からないが、それでもこの時間に満足していることは分かった。というか、満足して貰った後の余韻を湯船で楽しんでいるだけなのだが。

 暫く動きそうにないサイレント・マジシャンの頭を撫でていると浴室の扉がノックされる。

 

「——ご主人様。PDAにアカデミアから全体連絡が来ております」

 

 ハスキーだ。

 

「読み上げてくれ」

 

「畏まりました——『オシリスレッド所属の遊城十代と丸藤翔の制裁デュエルが来週に決定した。制裁理由は以下の通りである』と、廃寮への侵入が記されております」

 

「あの二人も来ていたのか。天上院の名前は書かれていないのか?」

 

「どうやらナサリーが気を利かせたようで、監視カメラには映らなかったようです」

 

「そうか。ちなみにあの不審者はどうなった?」

 

「戻って来ていたパルラが見ていました。その後、やって来たオシリスレッドの生徒とデュエル。敗北してクロノス教諭とやりとりをするとアカデミアから立ち去ったようです」

 

「なるほど。遊城はクロノス教諭に目の敵にされているらしいからな。大方、教諭が嵌めたんだろう」

 

「それについてですが、天上院様からも連絡が入っております」

 

「減刑の嘆願か?」

 

「はい」

 

「気の障らないように『男ならデュエルで乗り越える』と返信しておいてくれ。絶対にハスキーが書くんだぞ。他のメイドにやらせてはならないからな」

 

「もちろんでございます。以上になりますが、ご主人様の方から何かございますか?」

 

「飲み物を頼む。もう少し長風呂になる」

 

 山を見つけたら人は登りたくなるものである。おかしいな。浴室だと言うのに富士山以外の三千メートル級の山が四つもある。

 

「ごゆっくりお愉しみ下さいませ」

 

 フィールド魔法《山》でも発動しているのだろうか?

 

 

 

 

 

四、

 

 

 

 

 

 制裁デュエル当日。自分は遊城たちが戦っている会場ではなく、湖の畔にて魔導書デッキを見直していた。

 きっかけはメイとの一戦だが、それ以上に廃寮で会った《悲劇のデスピアン》にある。アヤメの反応からして恐らくアレらには関わることになるだろう。そのため、例え相手が誰であっても勝ちを拾えるようなデッキでなければならない。それこそ、魔法カードを制約されるようなデッキが相手でも、だ。

 

「コーヒー。ここに置いておくわよ」

 

「助かる」

 

 ドラゴンメイドたちは全員が実体化して、各々暇な時間を楽しんでいる。

 ハスキーは隣にいるが、ティルルは風呂敷を広げて茶受けを考え、チェイムはこの前手に入れた精霊界由来の物品を眺めている。パルラは風を起こして優雅に宙を泳いでおり、ナサリーは湖でラドリーと遊んでいた。

 

「やはり肝になりそうなのはウィッチクラフトか」

 

 ウィッチクラフトがいつから自分のところにあったのかは正直覚えていない。魔導書を拾い、暫くしてからいつの間にかカードプールの中にあったのだ。当然、そのときはI2社のホームページで検索してもヒットせず、直ぐに特殊なカードと理解した。

 よもやと思うが、魔導書を読みたいがために集まって来たとかでは……ないと、思うが。

 《ウィッチクラフトマスター・ヴェール》のカードを見ると「にひひ」と笑っているような気がする。隣に並べていた《ウィッチクラフト・ハイネ》は逆に申し訳無さそうな表情をしていた気がした。

 

「しかし、ウィッチクラフトを入れ過ぎるとバランスが悪くなるからな」

 

 ウィッチクラフトのカードを集めてみると初めて見つけた頃より増えている。

 最初は《ウィッチクラフトマスター・ヴェール》だけだったのが《ウィッチクラフト・ハイネ》に始まり、下級モンスター・上級モンスター複数に最上級モンスターすらある。魔法・罠はもちろんのこと、融合モンスターなんてどうやって来たのか……。

 

「これとこれは入れても良いだろう。となると、《ルドラの魔導書》は三積み……いや《天使の施し》の方がリソースは大きいか」

 

 自分の魔導書デッキは《魔導召喚士テンペル》や《黒魔術復活の棺》で最上級モンスターを呼んで戦うデッキだ。そのため、ドローカードで最上級モンスターが来過ぎると旨味は少ない。その点、《天使の施し》ならば引いたモンスターを墓地に落として《ネクロの魔導書》が使えるので相性が良い。

 本当にこのカードは強いな。

 こちらでもそのうち制限にされるのだろうか。

 

「——こんなところに居たのね」

 

 水鳥が飛び立つが如く、ドラゴンメイドたちの姿は消えている。

 自分よりも先に来客を察知していたのだろう。

 振り返ると、廃寮でも会った天上院が立っていた。

 

「十代たちは無事勝利したわ」

 

「そうか」

 

 と、言われてもあまり興味はない。

 そんな様子を悟ったのか、彼女はわざとらしく咳払いをして話を変えた。

 

「一月君。あなたは私と中等部の頃にデュエルをしたことを覚えてるかしら?」

 

 パルラが言っていたことだろう。

 

「ああ。覚えている」

 

「そう……なら、そのとき私が負けたことも覚えているわね?」

 

 さすがにこれを口に出して「覚えている」とは傲慢臭くて言えない。頷いて返す。

 

「あなたは実績こそ無いけれど、ブルー寮でも群を抜いた実力を持っていると思うわ。事実、海野さんや喜多嬉さんにも勝っている。でも強いと噂されないのはあなたが最低限のデュエルしかしていないから」

 

 妙に持ち上げられている。小っ恥ずかしくなるな。

 

「クロノス教諭から聞いたけど、進学試験のときに八雲プロを倒したようね。現在Aリーグで三連勝中の」

 

 そう、結構前に連絡が来たのだが八雲プロは無事Aリーグに上がれたらしいのだ。何か良いカードとの出会いがあったようで、デッキ補強を経てさらに強くなっているとのこと。夏休みに本島に帰ってくるなら、またデュエルをしたいと言われた。

 

「だからこそ借りの返し甲斐があるわ。期末試験のとき、私は中間試験の勝者特権としてあなたを指名したい。受けてくれるわよね?」

 

「了解した。受けよう」

 

「良かったわ……それと——あのときのデッキでデュエルして欲しいの」

 

 背後で精霊化したドラゴンメイドたちが盛り上がっているのを感じた。

 

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