黙祷集。(最新話『ドラゴンメイド』更新2024.11.19) 作:神の筍
『——さぁ、始まりました。本日遂にUSAトーナメント優勝者が決まります! 予選から名だたる参加者を抑え、上がって来たのは四名のデュエリスト!』
時刻は深夜。
日本時間である。
普段は精霊たちと乱痴気騒ぎしている時間帯だが、本日はメイドたちの用意した軽い夜食をつまみながらソファに座ってテレビの前にいた。
''USAトーナメント''——プロデュエリストから一般デュエリストまでが参加可能なアメリカ五大大会の一つでもある。
『一戦目はこの二人! 闇と復讐。この二つを内包したダークヒーロー! ヴェンデットデッキを用いるプロデュエリスト! アンデット骨塚!』
どこか顔色の悪い、細身な男が出て来た。
アンデット骨塚は儀式モンスターを主力とするヴェンデットデッキの使い手で、その奇想天外なタクティクスにより全米で人気を持つデュエリストだった。見た目の悪さからアンデット族は忌避されたものの、何と一人で国内の使用率を上げるという快挙を成し遂げた人でもあるらしい。
『イギリスより渡米し、最年少でプロライセンスを取得した戦慄の貴公子! 使用するデッキは偶然か必然か……王道たるヒーロー! E・HERO(エレメンタル・ヒーロー)の使い手! エド・フェニックス!』
対するのは灰色の髪を持つ、未だ青年の域を出ていないほどのデュエリストだった。
エド・フェニックス。
アメリカのプロリーグで最年少ライセンスを取得して以来、連戦連勝無敗。アメコミ文化のおかげかE・HEROの使用は大手と共に受け入れられ、その名声は日本でも聞こえて来る。
実力のあるベテランと新進気鋭のデュエリストの対決。
そんな熱いデュエルが見られるのもこの大会が広く参加者を募集してくれたおかげだ。
「E・HEROといえば遊城十代を思い出す」
「ご主人様を追い掛けていらっしゃった、オシリスレッドの生徒ですね」
「アレならデュエルアカデミアから出てないみたいよ。少なくとも夏休み期間に会うことはないでしょうね」
「そうか……ティルル。紅茶の次は緑茶を淹れてくれ」
「はーい」
そう返事をして彼女は紅茶の入ったポットをキッチンへ持って行った。
「最近のE・HEROは新しい融合モンスターが増えたおかげかエドプロを始めとして、ヒーロー使いが増えているみたいだな」
「精霊界にはまだ多くのE・HEROがいます。ペガサス会長が精霊たちからインスピレーションを受けてカードを作っているなら、さらに強くなるでしょう」
「それはE・HEROだけじゃないわぁ。ご主人様のストレージボックスにもまたカードが増えてたもの」
「自分のことを観光案内所とでも思っているのか? あまり来られても使い道が無いんだがな……」
「ご主人様の気配は精霊たちにとって甘い蜜のようなもの。興味が無くても無意識に惹かれてしまうものなのよ?」
と、ナサリーが嬉しくない説明した。
「はい。緑茶」
「……うん。美味いな」
「そう? ふふ。でしょ?」
ハスキーが一つ隣に寄るとそこにティルルが座った。
眠くはないが、横になりたい気分だ。そのまま彼女の膝を枕に寝転ぶ。
「魔法・罠・モンスターを一度無効にするヴェンデットモンスターと壁モンスターが一体ずつ。伏せカードも一枚か。初ターンとしては十分な出だしだ」
エドプロのターンはまず《融合》から始まった。だが、アンデット骨塚は予め相手のデッキを調べていたのだろう。しっかりそこは止めるものの、エドプロも二枚目の融合を駆使して《E・HERO フェニックス・ガイ》を召喚。次ターンに備えて《融合回収(フュージョン・リカバリー》を発動し、様子を見ていた。
「《E・HERO フェニックス・ガイ》は戦闘で破壊されない。ヴェンデットには少ないモンスター除去カードをどれだけ積んでいるかだが……」
アンデット骨塚は言っている側から伏せていた《サンダーブレイク》で撃破した。
手札一枚を捨てる必要はあるが、アンデットにとってはむしろアドとなる。
『ひぇひぇひぇ。ガラ空きとなったエド・フェニックスにダイレクトアタック』
エドプロのライフポイントが半分近く削られた。
『ボクのターン、ドロー!』
しかし、彼に慌てた様子はなく至って平静だ。
ヴェンデットの展開はそう早いものではないが、融合デッキもサーチを駆使しなければ途中で動きが止まってしまう。手札詰まりを起こせばそれこそ逆転の目は皆無。
『——《E・HERO グランドマン》で《ヴェンデット・キマイラ》を攻撃!』
『甘いわっ……速攻魔法! 《ヴェンデット・チャージ》!』
アンデット骨塚はモンスターを倒されそうになりつつも、しっかりとフィールド上のモンスターを切らさないよう立ち回っている。
儀式モンスターの代わりにデッキ圧縮とリクルート出来るモンスターを召喚したのだ。
「こうやって夜中の番組を見られるのも休みの特権だな」
「そんなこと言って、ご主人様はデュエルモンスターズの番組以外見ないでしょ?」
「まぁ、そうだが」
テレビ離れが進んだ自分でも数年に一度の世界スポーツ大会くらいのときはテレビを付けている。詳細なルールは知らないが、流行で楽しむのもまた良いものだ。
『——《ヴェンデット・バスタード》、《スカー・ヴェンデット》の二体で攻撃!』
『罠カードオープン《ヒーロー・シグナル》! デッキから《E・HERO スパークマン》を特殊召喚!』
熟練の攻防に対処するエドプロはさすが若手筆頭格といったところだ。
恐らく幼少期からデュエルに触れていたのだろう。
「エド・フェニックスはプロデュエリスト——DDと養子縁組をしているようです。DDは三度出場した世界大会で殿堂入りデュエリストのキース・ハワード、ダイナソー竜崎、レベッカ・ホプキンスを下した世界チャンピオン。ご主人様が思われたように幼少の頃からデュエルとは密接に関わって来たのでしょう」
そんな自分の考えを読んだのか、ハスキーが補足する。
「アメリカの最前線にいながら十年間無敗のデュエリスト。殿堂入りデュエリストこそ日本人は多いが、平均的な実力はアメリカのほうが高いと聞く。そんな国で黒星が無いんだ。相当強いだろうな」
DDのデュエルは動画サイトに上がっている分は全て目を通している。
デッキ構築はもちろん、何より注目すべき点はコンボの巧さ。何通りも計算して勝ち筋に繋げている部分は自分も見習わなければならないところだ。
『《E・HERO ガイア》の効果で《リヴェンデット・エグゼクター》の攻撃力を半分にして、自身の攻撃力をその数値分アップする!』
デュエルは佳境に入っている。
アンデット骨塚の優勢と思われたが、いつの間にかエドプロが逆転していた。
『《E・HERO ノヴァマスター》の効果により一枚ドロー! ——フッ。そのまま手札から速攻魔法《才呼粉身》を発動!』
選択したモンスターの攻撃力分のダメージを喰らってしまうが、そのモンスターの攻撃力を倍にする魔法だ。
エドプロのライフポイントは既に半分削れている。もはや虫の息まで下がったが、このターンで勝負は決まる。
『——決まったぁぁぁ! アンデット骨塚を見事なデュエルで倒し、決勝に進むのはエド・フェニックス!』
その後も視聴を続け、決勝は《天空の聖域》を利用した天使族デッキ対エドプロだった。
堅実な攻めと守り。それでいて奇抜な魔法・罠に翻弄されるもエドプロは見事に掻い潜り、最後はライフポイントを削ってみせる。
アメリカ五大大会の優勝者なので、彼の名声は鰻登りだろう。
仮眠を取らずに見ていたのでさすがに眠くなって来た。
「ご主人様。寝床の準備は出来ておりますが?」
「今日はこのまま寝る」
「かしこまりました。タオルケットをお持ちします」
夢とうつつの狭間で思い出す。
デュエルアカデミアはデュエルモンスターズ特化の学園だが、一般教科の宿題もあったのだ。量は大したことないが終わらせるのは早いほうが良い。
そんなことを考えながら、ティルルの暖かい腿を枕に眠りへつくのだった。
二、
特に予定も無く、ドラゴンメイドたちが給仕をするリビングで一般教科の宿題をしているとインターホンが鳴った。宅配や近所の人ならば彼女たちに応対を任せるのだが、ハスキーは「ご来客です」と言う。どうやら、自分の知り合いであり、彼女たちが見られて不都合な相手というわけだ。
カメラ付きのインターホンの受話ボタンを押す。
「どちらさまでしょうか?」
『——あぁ! その声! 庶民の竜胤ですわね! メイ喜多嬉です!』
と、姿を確認するよりも早く音声でその正体が分かった。
夏の日差しの反射で見難いが、自宅の前にいるのは間違いなくデュエルアカデミアの友人、メイ喜多嬉である。
「今開けよう……茶と請け物を頼む」
「あの娘の好きな物を用意しておくわね」
ティルル以外は姿を消していた。
掃除も終わらせているようだ。
「——久しぶりだな。メイ。何か用事でも?」
服装こそ涼しげな白のワンピースだが、彼女の額には汗が流れている。どうやって来たのか不明だが、聞いた彼女の家とはかなり距離がある。快晴の中、最寄駅から歩いてくるのも一苦労だ。
「冷たい茶を用意している。まずは一息吐いて、話をしよう」
「助かりますわ」
玄関から廊下へ、そしてリビングに通す。
庶民の家が——と言っても、竜胤の家も中流階級以上——珍しいのか、キョロキョロと首を振っていた。
昨夜……もはや今朝になるが、自分が寝ていたソファに彼女を座らせ、用意されていた茶と茶請けを取りに行く。
柑橘系の香りのするジャムのようなものが掛かった一口サイズのケーキと冷えた紅茶を差し出した。
「…………ふぁ〜。美味しいですわ。冷やすことを前提にしてるからか、敢えて薄めに煎じてますわね。紅茶は温度で渋みが変わりますから、相当精通してないと出せない味ですわ。こちらのケーキも……もぐもぐ」
やはりティルルの仕事は上流階級のメイから見ても満足いくようで、あっという間にケーキは無くなってしまった。『おかわりもあるわよ』と言われたが、満足そうに残りの茶を飲む姿を見て要らないと判断する。
ガラスピッチャーから再びメイのグラスを満たした頃、彼女は静かに口を開いた。
「実は今日、竜胤の手を貸していただきたく訪ねたのですわ」
自宅の場所はメイと幸子の二人には教えていた。互いの実家の話をするうちに自然とそうなっただけなのだが。
「自分の手を?」
「私の家が日本でも、いえ、世界でも有数な資産家だということは知っていますでしょう? 元々宝飾関係の仕事をしていた父はアフリカで取れる宝石を欧州に売り、一代で今の喜多嬉家を作りましたの」
その話は聞いたことがある。
何でもメイの祖父は元々オーストラリアでパール産業を営んでいたらしいが、息子……つまりメイの父親はその事業を継がず新しく自分で宝飾関係の会社を立ち上げた。当初はデザインのみに絞っていたが原石にも拘るようになり、結果的に今のアフリカから原石を採掘して欧州で加工、世界に流通させるに至った。
「ですが最近、父の体調が思わしくなく——」
医者からは働き過ぎと言われているようだが、メイ父親は二週間ほど入院しているらしい。メイ母親もそれに付き添っていたが、弱い気でも移ったのか彼女も体調が悪くなり、倒れて点滴を打ったとのこと。
「父が養生することは幹部に伝えました。しかし、誰から漏れたのか父の弟までもが海外から日本に来たのです。私から見て叔父にあたりますの」
その叔父が厄介な存在であり、放蕩してメイ父親に金の無心を繰り返していた。最初は弟可愛さから貸していたようだが、メイが生まれてからも続けたためメイ父親は捨て金を渡して縁切りを宣言した。
「どうやら叔父はその立場を利用して本社に入ったようです。おそらく『兄に任された』とでも言ったのでしょう。殆どの幹部は訝しんだはずですが、少数は巻かれてしまった。現在本社はその幹部と叔父がどこからか連れて来たチンピラデュエリストたちに占領されてしまったのです」
「中の社員たちは大丈夫なのか?」
「ええ。父に付き従う幹部が殆どですから。一部を除き、追い出されたときに上手く逃がしたようです」
「なるほど……」
「父と母が退院して、会社に戻ったら乗っ取られていたなんて事態絶対避けなければなりませんの。だから竜胤! 私と本社に行って叔父を倒す手伝いをしてください! どうか、この通り……っ」
「頭を上げてくれ、メイ」
「……」
「友人が困っているなら助けるのは当たり前だ。もちろん手は貸す」
「竜胤……」
「ただ、相手が多数なら作戦は必要だ。叔父がいる場所は分かっているのか?」
「姪の私から見ても自己顕示欲が強い人でしたの。一時の富裕に酔って本来父がいるはずの社長室に違いないですわ」
メイは斜め掛けに提げていた鞄の中から丸まった紙を取り出した。
どうやら本社ビルの断面図のようだ。
「エレベーターは低層階、中層階、高層階で必要なキーカードが変わります。私の全階層用キーカードがあるのですけど、信頼の出来る幹部によれば低層階と中層階のキーカード設定は叔父が変えてしまったらしくて」
「高層階は変えなかったのか?」
「高層階は権限を持つ父でなければ変えられません。低・中階層は外部の人間も出入りするため、警備室で定期的に変えているのですわ」
「防犯のためなら仕方ないか」
「内部に残っている者の情報によれば各階層に数人のチンピラデュエリストが配置されているみたいです。その中のどれかに階層を行きき出来るキーカードを持つ者がいるはずです」
「片っ端からデュエルするのが一番か」
「分かりやすく首にでもぶら下げてくれれば良いのですけど」
それは楽そうだ。
「迅速果敢が肝になるだろうが、決行はいつにする?」
「今から行ったとしてもかなり遅くなります。なので、明日の朝から向かって会社を取り戻しますわ」
「なら、今日は泊まっていくと良い。汗も掻いているだろう? 湯も沸かす」
「助かりますの。もう、暑くて暑くて」
着替えは母親のジャージでも渡せば良いだろう。下着は勝手に漁るわけにもいかないので、自分の買い置きの新品、シャツも量販店で買った未開封品があるのでそれで良いはずだ。
「早めに風呂と夕食を済ませて、その後にまた作戦とデッキを見直そう」
メイからすれば実家を奪われたようなものだ。表面上は落ち着いているが、心中穏やかではないはず。
自分は夕食の準備を出前にするかティルルに任せるかを悩み、給湯器へ向かったのであった。
三、
作戦に大幅な変更は無かった。
まず、メイに協力してくれる幹部が車を会社近くまで寄せ、そこからは徒歩で行く。どうやらビルの外周にまでチンピラデュエリストは配置されているようで、少し遠くから様子を見ると如何にもといったデュエルディスクを持った男たちがいた。全員巡回しているようなので、タイミングさえ合えば隙を見て社内に突っ走れるだろう。
ロビーに入った後は受付にあるエントランス用シャッターを閉めて、外で躱したチンピラデュエリストが入って来れないようにする。
自分たちも出られなくなるが、内側に入ればどの階層からでも非常用扉が開くそうなのでいざというときはそこから脱出する予定だ。
「では、メイお嬢様。これ以上車で近付けばあの男の配下に気付かれてしまいます。南側で隠れていますので、もし何かあったら」
「分かりましたわ。ご苦労でした」
「ご健闘を」
車の運転を頼んだ男はメイ父親の直属の部下だった。
当初、彼も自分たちについて行こうとしていたのだが、残念ながらデュエルはあまり得意ではないようでここまでの力添えとなった。
「一月殿もお気を付けて。それと、どうかメイお嬢様を……」
「もちろんです」
大きく頷いた。
車を降り、ビル周辺の花壇に身を隠しながら出入り口を目指す。
「待て。人がいる」
小声でメイを止め、身を屈める。
慎重な行動のおかげで出入り口はもう直ぐだ。
「あそこの広場に出たら一気に走り抜けるぞ。見つかったら自分が相手をするから、メイは受付を頼む」
「受付のボタンを押せばシャッターは直ぐに閉まります。竜胤も遅れないようにしてください」
「分かった——よし、行け」
自分とメイは一気に駆け抜ける。どうやら足音で気づかれることはなさそうだ。
「竜胤!」
周りを見渡しているとメイに名前を呼ばれる。
「——侵入者か!」
ちょうどビルの出入り口から出て来たチンピラデュエリストと目があった。
男は一瞬動揺したものの、すぐにデュエルディスクを構えると声高らかに叫んだ。
「お前ら! ビルに入ろうとしてる奴がいるぞ!」
「先に行け、メイ」
「任せましたの!」
「あっ、ちょっ、二人とも行かせるわけ——」
「——おい。デュエルしろよ」
男を拒むようにメイとの間に入り、デュエルディスクを向ける。
「っち、なら先にお前からだ!」
「「デュエル/デュエル!」」
どうやら先行は自分のようだ。
「ドロー」
メイが言ったように出来るだけ早く終わらさなければならないだろう。
「裏側守備表示でモンスターをセット。ターンエンド」
【一月竜胤の手札:五枚】
「弱腰な野郎だぜ……オレのターンドロー! オレは《ゴブリン切り込み部隊》を通常召喚! そのままバトルフェイズに入り、裏側モンスターを攻撃!」
「《魔導書士 バテル》のリバース効果発動。デッキから《ネクロの魔導書》を手札に加える」
「はっ。だが、てめぇのモンスターは墓地に行ってもらうぜ。メイン2に《破邪の魔法壁》を発動してターンエンド」
【《ゴブリン切り込み部隊》DEF0→300】
【チンピラデュエリストAの手札:四枚】
《ゴブリン切り込み部隊》は攻撃したバトルフェイズ終了時、守備表示となって次の相手ターン終了時まで表示形式を変更出来なくなる。《破邪の魔法壁》により守備力が300上がるが、元々0なので問題は無い。
「自分のターン、ドロー。手札三枚の魔導書カードを見せ、《魔導法士 ジュノン》を特殊召喚」
「いきなり攻撃力2500!?」
「デッキから《混沌の黒魔術師》を墓地に送り、《マジシャンズ・ソウルズ》を特殊召喚。そして、手札の《グリモの魔導書》を見せ、墓地の《魔導書士 バテル》を除外して《ネクロの魔導書》を発動。《混沌の黒魔術師》を復活させる」
悪いが、手早く片付けさせてもらう。
「《マジシャンズ・ソウルズ》と《ゴブリン切り込み部隊》を対象に発動。《時花の賢者—フルール・ド・サージュ》を特殊召喚。その後、対象にした二体を破壊する」
「くっ」
「《ヒュグロの魔導書》で《魔導法士 ジュノン》の攻撃力を1000上げる」
【《魔導法士 ジュノン》ATK2500→3500】
「バトルフェイズ。全てのモンスターで攻撃」
【チンピラデュエリストAのLP:8000→4500→2900→—1200】
「ぐわあぁぁ」
男は吹き飛んでいった。
「——おい! 出入り口前にいるぞ!」
「——早く行け!」
「——二人組らしいぞ。もう一人はどこだ!」
しかし、今のデュエルの音により他のチンピラデュエリストの注目を集めてしまったようだ。
「竜胤! もう閉まりますわ! 早く!」
自動扉が開いてメイの声が響く。上手くやったようだ。
倒れた男の服を漁り、メイが持っていたキーカードと色は違うが同じ形のものを取る。下がり始めたシャッターに身を滑らすよう身体を入れ、ビル一階のロビーに侵入した。
「低層階用のキーカードはこれであっているか?」
「ええ。低層階は青。中層階は赤。高層階は私も持っている金色のカードですわ」
二人で中央エレベーターの前に立つ。
「十五階までは青色のキーカードで行けます。ただ、そこからは赤色のキーカードが必要なので、また見つける必要がありますわ」
ロビーにはチンピラデュエリストがいないようだ。つまり、二階から十五階まで虱潰しに探す必要がある。
「三階の警備室に行けば人感センサーで人のいる階と部屋が分かるはずです。情報によれば、叔父は間違っても社内を荒らされないよう中にいる人員を絞ってるようですし」
「なら、まずは三階か」
チェイムに外に残っているチンピラデュエリストたちを気絶させるように言い、自分とメイはエレベーターに乗り込んだ。