黙祷集。(最新話『ドラゴンメイド』更新2024.11.19)   作:神の筍

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第55話

 

 

 

「ルシフェルによるダメージ計算時、伏せていた罠を発動——《ガード・ブロック》」

 

 攻撃は当たることなく、突如出現した剣と盾を持つ戦士に吸い込まれた。その効果は戦闘のダメージ無効化とデッキから一枚ドロー出来るというもの。人によっては《聖なるバリア -ミラーフォース-》を入れてモンスターを破壊したほうが良いと言うかもしれないが、自分はドローによって打破することを選んだ。

 《堕天使イシュタム》の戦闘ダメージは喰らってしまうが。

 

【一月竜胤のLP:4200→1700】

 

「ただでは終わらんか。ターンエンドだ」

 

【アレクサンドル・ラカトゥシュの手札:一枚】

 

「自分のターン——ドロー……スタンバイ。《魔導書院ラメイソン》の効果により、墓地から《セフェルの魔導書》をデッキの一番下に戻してドローする。さらに《強欲な壺》を発動」

 

「手札補充……お前は超えて行くつもりか、黎明を……!」

 

 《魔導書廊エトワール》に計五枚の魔力カウンターが乗り、手札は五枚にまで回復した。

 相手の場には堕天使モンスターの対象を取れなくさせる《堕天使ルシフェル》と墓地の堕天使魔法・罠を使用出来る《堕天使イシュタム》だ。墓地にある魔法・罠は《背徳の堕天使》と《堕天使の叛逆》。内一枚は先ほど自分のモンスターが破壊された除去カードだが、相手も一枚モンスターを墓地に送らなければならないため、発動はこちらの有利にもなる。

 

「《死者転生》を発動。手札を一枚捨て、《時花の賢者—フルール・ド・サージュ》を回収」

 

「互いのモンスターを対価に特殊召喚出来るモンスターのようだが、俺の堕天使たちは対象を取れないぞ」

 

「ああ。もちろん理解している。故に——《ネクロの魔導書》を発動。墓地の《マジシャンズ・ソウル》を除外し、手札の《アルマの魔導書》を見せる」

 

 見慣れない、いや、見たことのないカードが使われたためか、アレクサンドルはすぐにデュエルディスクを操作して効果を確認した。

 

「蘇生カードか……だが、お前の墓地には——」

 

「蘇生するのは《死者転生》の効果によって墓地に捨てた《魔導天士 トールモンド》だ」

 

 四大元素の象徴。

 神判の具現化。

 魔導士としての最終極致。

 最も強く、最も賢く、最も貴い存在。

 それが——《魔導天士 トールモンド》。

 

「召喚されたとき、効果を発動。墓地から魔導書魔法カードを二枚手札に加える」

 

 代わりに他のモンスターを特殊召喚出来なくなるが、それをして余りある効果をもう一つ持っている。

 

「手札の《アルマの魔導書》、《ヒュグロの魔導書》、《グリモの魔導書》、《ゲーテの魔導書》を見せ————自身を除く他のカード全てを破壊する。『ANATHEMA LE MONDE( ア ナ テ マ ・ ル ・ モ ン ド )』」

 

「——ッ!?」

 

 二体の堕天使から四色光が噴出し、弾けるように消えていった。

 

「この効果は自分の場のカードも破壊するが、それによって《魔導書廊エトワール》の効果が発動される」

 

 《魔導書院ラメイソン》は特殊召喚効果のため、発動されない。

 

「魔力カウンターが五つ乗っているため《魔導教士 システィ》を加える。そして、通常召喚」

 

 その後《グリモの魔導書》からもはや馴染み深い《セフェルの魔導書》へ繋げ、《ルドラの魔導書》を手札に加えた。

 

「バトルフェイズだ。《魔導天士 トールモンド》と《魔導教士 システィ》でダイレクトアタック」

 

【アレクサンドル・ラカトゥシュのLP:6100→3200→1600】

 

「カードを二枚伏せ、エンドフェイズ時に《魔導教士 システィ》を除外。デッキから《ウィッチクラフトゴーレム・アルル》と《セフェルの魔導書》を手札に加えてターンエンド」

 

【一月竜胤の手札:四枚】

 

 形勢は逆転した。

 ライフポイントの数値も。

 

「ふん……この程度の辛苦、何度だって経験したとも。俺のターン——ドロー!」

 

 だが、未だ油断は出来ない。

 するつもりも無い。

 

「《堕天使の追放》を発動! 《堕天使降臨》を手札に加える。カードを二枚伏せ、ターンエンド!」

 

【アレクサンドル・ラカトゥシュの手札:0枚】

 

「自分のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズ! 《堕天使降臨》を発動する!」

 

 アレクサンドルは伏せカードをオープンにする。

 

「ライフポイントを半分払い、お前の場の《魔導天士 トールモンド》と同じレベルの堕天使モンスターを二体まで、墓地から守備表示で特殊召喚する! 来い、《堕天使テスカトリポカ》!

 

【アレクサンドル・ラカトゥシュのLP:800】

 

 これで相手のライフポイントは1000を切った。

 堕天使モンスターの効果は使えない。

 

「速攻魔法《ゲーテの魔導書》。墓地の魔導書カードを三枚除外し、《堕天使テスカトリポカ》を除外」

 

 これで場は空いた。

 あとはバトルフェイズに移行するだけである。

 

「まだ……終わらん!」

 

 その瞳から闘志は消えず、アレクサンドルはもう一枚伏せていたカードを発動させた。

 

「《死魂融合(ネクロ・フュージョン)》ッ! 墓地の《堕天使ルシフェル》、《堕天使イシュタム》、《堕天使ディザイア》を融合!」

 

 ……三体融合。来るか。

 

「弑虐の徒。暁の光。黎明の狭間より現れし神殺しの天使(あまつか)。降誕せよ——《黎明の堕天使ルシフェル》!」

 

「(——ハスキー)」

 

『かしこまりました』

 

 デュエルモンスターズにおいてソリッドビジョンとは空想を具現化させる技術に過ぎない。所詮、漫画やテレビと同じで創りものであり、紛い物。だが、精霊という存在がいるように、場合によっては現実に影響を及ぼすモノもいる。

 格が高過ぎるが故、たとえ精霊としてカードに宿っていなくても、仮初で力の余波が漏れ出すのだ。

 ハスキーがメイとメイ父親をこのビルから出したことを確認し、アレクサンドルに視線を戻す。

 

「美しいと思わないか? このモンスター」

 

「そうだな」

 

「かつてルシフェルは神に叛逆した。それはどうしてなのか……俺には分からない。だが、この気高き存在が自分のためにやったとは思えない。きっと、何かを思いやり、慈しみ、その行動に至ったんだ」

 

 春の陽気のような空気が《黎明の堕天使ルシフェル》より漂って来る。

 まるで、悪しき空気が浄化されているかのようだ。

 

「だからこそ俺はこのカードを手に取った。このカードなら、この存在なら! あの忌々しい光(・)を討ち倒せると信じて!」

 

 レベル12。

 攻撃力、守備力共に4000。

 あの三幻神と同等たる強さ。

 

「召喚時効果発動。融合召喚に成功したとき、相手のカードを全て破壊する」

 

 《魔導天士 トールモンド》が闇に呑まれ、破壊された。

 

「さぁ、来い……一月竜胤! お前は明けの明星に手を伸ばすことが出来るかっ!」

 

「……」

 

 …………まったく。

 これならば《ゲーテの魔導書》を残しておけば良かった。あのカードは対象を取らずに除外出来るためこういった相手には最適カードなのだ。

 しかし、ああまで啖呵を切られて正面から挑まぬのもデュエリストが廃るというもの。

 ならば、自分も——あのモンスターに匹敵する存在を呼べば良い。

 

「《アルマの魔導書》により、除外された《グリモの魔導書》を回収する。そして、発動。《魔導書士 バテル》を加え、そのまま通常召喚。効果によりデッキから《魔導書の神判》を手札に」

 

 強力なカードだが、今回のデュエルで使うことはない。

 このデュエルに決着を付けるカードは既に握っているのだから。

 

「手札から——《円融魔術(マジカライズ・フュージョン)》を発動」

 

 フィールド・墓地の魔法使い族を除外し、エクストラデッキから魔法使い族融合モンスターを融合召喚出来る魔法カードだ。

 素材とするのは、

 

「《魔導天士 トールモンド》、《魔導弓士 ラムール》、《魔導冥士 ラモール》、《魔導術士 ラパンデ》、《魔導書士 バテル》を除外——」

 

「五体融合だと……!」

 

 五つの魔法陣が浮かんだ。

 余剰魔力が燐光となって輝き、やがて一つの大きな魔法陣を造る。

 その中心には人影があった。

 感じ取れる威風は《黎明の堕天使ルシフェル》に十分負けていない。

 

「《神判》、《調和》、《可能性》、《努力》、《智慧》。全てを束ね。今、円環の扉は開かれた——《クインテット・マジシャン》を融合召喚」

 

 最上級モンスターの中でもレベル12に当たるモンスターはただ存在するだけではなく、均衡を保つ側の存在だという。

 精霊界では崇拝の対象であり、モンスターによっては奇跡や災害とも呼ばれる……らしい。すべてドラゴンメイドやアヤメからの又聞きだが。

 

「《クインテット・マジシャン》の効果発動。このカードが召喚に成功したとき、相手フィールドのカード全てを破壊する。もちろん、この効果は対象を取る効果ではない」

 

 《魔導天士 トールモンド》から続き、全体除去の応酬である。

 

「バトルフェイズに入る」

 

 《クインテット・マジシャン》の攻撃力は4500。たとえ《黎明の堕天使ルシフェル》がいようとも、《ヒュグロの魔導書》を発動して決着だった。

 

「《クインテット・マジシャン》でダイレクトアタック」

 

 杖先から繰り出された光線によってアレクサンドルを貫く。

 手札も無く、伏せも無く、墓地効果を持つカードも無い。抵抗無く彼のライフポイントは0になった。

 

【アレクサンドル・ラカトゥシュのLP:800→—3700】

 

「……ぅ」

 

 前のめりに倒れそうになったが、自負心が彼を支え膝を着かせる。

 

「まさか……こんなところで、負けるとは……」

 

 息荒く、言葉を紡ぐ。

 そして、

 

 

 

「——『よもやこのような場所で負けるとは予想外である』」

 

 

 

 アレクサンドルであるにも関わらず、全く異なる声音が発された。

 

「『緊急時の端末だったが、こうも弱いとは。やはり、本体の計画が正しい運命か』」

 

「……?」

 

 計画とは、当然メイ父親の会社を乗っ取ることではないだろう。

 

「『一月竜胤。運命に抗う者よ。その名前は記録しておこう。この遥かなる宇宙の片隅に』」

 

 そう言うと、アレクサンドル・ラカトゥシュは背後から突き出た黒紫の剣によって刺された。

 その剣の持ち主は《黎明の堕天使ルシフェル》である。

 気付くのが遅くなったが、自分の傍にはソリッドビジョンではなく明らかに精霊としての《クインテット・マジシャン》が立っていた。

 

「『……っ! ……デュエルモンスターズの精霊め……我は所詮、端末。本体とは繋がっていない。眈々と召喚される気を窺っていたようだが、そんなものは意味が無い』」

 

 よく見るとアレクサンドルの身体は貫かれているものの、血の一滴も出ていない。

 

「『たとえ何をしようとも遅い。既に——運命は定められているのだから』」

 

 ずるりと、剣から抜けていくようにアレクサンドルは意識を失い、倒れた。

 《黎明の堕天使ルシフェル》と《クインテット・マジシャン》の姿が薄くなっていく

 

『——人の仔よ』

 

 正面に立つ叛逆の堕天使が話し掛けてきた。

 

『正義の反対に位置するものは悪ではなく、また別の正義だ』

 

「お前はアレの正体を知っていてアレクサンドルの側にいたのか?」

 

『迷える仔羊を導くのも我々の仕事。遠方より飛来した白き光の前では私が動くのも致し方無し。されど、次は無い』

 

 つまり、もう精霊界に戻るということか。

 自分の《クインテット・マジシャン》もメイドたちのように常にいる存在ではなく、デュエルモンスターズを通じて異変を察知したのだろう。

 

『闇は必ず冷たいものではなく、触れる者にとってそれは暖かな場合もある。努々忘れぬよう、道を歩め』

 

 そう言い残して消えていった。

 もはやこの場で立っているのは自分だけだ。

 

「やれやれ、とんだ一日だったな」

 

 そんな呟きを拾う者もいないのだが。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 どこからか小鳥の囀り声がする。

 目元には朝陽が掛かり、贅沢な朝なのか惰眠を貪りたかったと文句を言えば良いのか迷う時間だ。

 起きようか、このまま二度目に興じようか迷っていると隣で衣擦れ音がする。

 

「……もう朝ですの?」

 

 場所は自宅だった。

 当然、自分の自宅である。

 それにも関わらず、隣では一糸纏わぬ金髪の美少女——メイ喜多嬉の姿があった。

 

「おはよう」

 

 と、挨拶をする。

 

「あら、起きていらしたの。竜胤。おはようですわ」

 

 と、返された。

 いつもならドラゴンメイドたちが朝支度をしてくれるところだが、今日はいない……というよりも、必要無いと伝えたからだ。

 彼女たちはあくまで自分に仕えているメイドだ。しかし、メイドとは言うが、竜種でもある。強者としての矜持を持ちながら、メイドなのだ。

 ご主人様の奥方候補——幸子ともまだ結婚はしていない——としては認めているし歓迎もしているが、それで自分たちが仕えるかというと別の話。客人扱いとして食の準備や茶の準備、風呂の準備さえするが、朝の身支度まではやらない。そんな立ち位置なのである。

 正式に結婚すると奥方候補ではなく奥方として扱うと言っていたが、幸子もメイも特殊なメイドだと理解しているため文句は出ていない。それどころか、意外とチェイムやパルラと相性が良いという始末だ。

 ともかく、自分が朝支度をされているのにメイはされていないという微妙な空気になるのを避け、取り敢えず今日は要らないと伝えたのである。

 

「もう少しこうしていようかと思うがどうする?」

 

「良い考えですわね」

 

 まぁ、メイが答えるよりも早く抱き寄せたのだが。

 ——事の顛末は自分とアレクサンドルのデュエルが終わってからは随分と早かった。

 デュエルが終了後、メイとメイ父親の様子を窺う問題無く、メイ父親もナサリーが見てくれたおかげか明日には目を覚ますだろうということだった。元々疲労が原因だったが、それにも関わらず働こうとしたせいでずるずると療養期間が伸びたらしい。

 メイとメイ父親はメイ母親も心配しているということで即帰院。ハスキーにビルから出された時点で連絡し、メイ母親も通じて地元警察に通報が入った。

 そのため、自分がビルから出た瞬間には運転手役だったメイ父親の部下が警察と協力してメイ叔父と『ウルス・キマイラ』のメンバーたちをまずは不法侵入で逮捕。今後は海外の捜査機関と連携して余罪を洗い出していくらしい。

 裏デュエリスト界がどういう界隈なのか知らないが、何となくとんでもない組織だったんだろうなぁと思った。

 コナミ過ぎる感想はともかく、両親と会社が無事だったものの、自宅で帰りを待つのも寂しいということでメイが自分の家に暫く世話になることとなった。

 そして、昨日が初日で、今日が二日目の朝。

 とんでもない早さで今の状況にいるのである。

 

「ま、まぁ……あんなにシたのに、もう……? こんなに……」

 

 我ながらとんでもない息子に育ったものだ。

 これも主にメイドたちに甘やかされた結果だろう。

 

「ぅー……し、シますの?」

 

 照れがちに、彼女はそう言った。

 今は髪を下ろしているのでどこか新鮮だ。

 自分が口を開くよりも先にメイに覆い被さり、結局惰眠ではなく女体を貪ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……こりぇは考える必要がありましゅわ……」

 

「……幸子と同じで、そこまでなのか?」

 

『結局あの後も私たち全員とやったんだから、人間からすればそうに決まってるじゃない』

 

「そんなものか……」

 

 

 

 

 

二、

 

 

 

 

 

 メイと婚約者になったことについて報告したのは幸子と両親だけである。

 あくまで婚約者であり、この先何があるか分からない。下手すれば死別もある上に、言いふらしてアカデミアや上流階級から注目を浴びるのは面倒だという自分の意見に賛同してくれた。一応、明確にそうなのか(・)と聞かれた場合は誤魔化すつもりはないが、正直元から一緒にいたため変わりはしないだろう。

 強いて言えば、アカデミアに戻ると二人が自分の部屋を訪ねることが多くなるくらいだろうか? 

 

「しかし、デュエルアカデミア一年目から中々濃い夏休みだったな」

 

 我が家の風呂もオベリスクブルー寮には負けるものの、旅館の内風呂くらいには広い。父親の好きに講じて広めに作ったらしく、足を伸ばせるのは嬉しかった。

 

「お湯加減はいかがですか?」

 

「ちょうど良い」

 

 湯船の縁に身を預けながら、メイド服姿のハスキーが肩を揉んでくれている。

 後頭部に伝わる柔らかさが気持ち良く、思わず寝入ってしまいそうだ。あと、何か良い匂いがする気がした。

 

「休暇をご堪能されたようで、何よりです。ただ、目下無視出来ない問題もあります」

 

「あの『遠方より飛来した白き光』というやつか」

 

「ええ……私たちドラゴンメイドは竜種として長く生きてきました。移動手段も翼があるため精霊界の各所にも訪れましたが……アレは、寡聞にして存じ上げておりません」

 

 知識としてアヤメの話していた''深淵''も知っていたハスキーだ。一体どれほど生きているのか、聞こうとしたら薄寒い気配が漂って来るので聞かないが、そんな彼女が聞いたことのない存在……しかし、

 

「《黎明の堕天使ルシフェル》と《クインテット・マジシャン》は知っているようだ。後者は何も言わなかったが、カードを通して精霊が来ていた」

 

「あの二体は精霊界でも伝説的な実力を持つ存在として、語り継がれる存在でもあります。そんな調停者であり、守護者でもある彼らだけは理解しているとなれば、それはご主人様が話した通り精霊界の存在ではなく——」

 

「——宇宙人来襲かもしれない」

 

「人間であるご主人様には珍しい話かもしれませんが、実のところ宇宙人自体はそう珍しくありません」

 

 ……何だと?

 

「過去、地球に飛来して精霊界に定住した宇宙人……宇宙からの来訪者/物は幾種族もいます。もちろん縄張り争いや侵略戦争は起こりましたが、それら全ては所詮生存競争の一種に過ぎず、高位存在が介入するほどのことではなかった」

 

 聞けば聞くほど精霊界とは文明的であり、野蛮的であり、未開的である。

 こちらの世界より科学が発展している国家もあれば、魔導書のようにファンタジーが発展している都市もある。

 一見面白そうにも感じるが、行けば騒動だらけで心休まらなさそうでもある。最も、精霊たちは自由に出入り出来るらしいが、人間が行くにはかなりの条件が揃わなければ無理とのことなので、行くことは無いだろうが。

 

「今回はそういう存在が介入しなければならないほど、影響力のある奴が来たというわけだな」

 

「さすがのご慧眼でございます」

 

「人に取り憑く宇宙から来訪者……」

 

 それも、アレは自身のこと『端末』と言っていた。ならばこの世界のどこかに『本体』がいるのだろう。『本体』も同じように誰かに取り憑き、日常生活を送っているのならば一体何が目的なのか。

 

「いや、考えても詮無きことか。なるようになる、が自分のモットーだからな」

 

「素晴らしき刹那主義でございます」

 

「それは褒めてるのか?」

 

「もちろんでございます」

 

 適当な気もするが、この手の問答でハスキーが嘘を吐いたことは無い。

 ハスキーたちドラゴンメイドも、アヤメも、サイレントマジシャンも、最近話すようになったウィッチクラフトたちも、そして勝手に居着いている精霊たちも……全てに共通した考えは——この世界は一枚のカードから生まれた。というものだ。

 だからこそ物事はデュエルで解決し、デュエルで決着とする。

 自分もそれと同じで、何かあればデュエルをするだけだ。

 

「……あぁ、ハスキー。もう少し強く頼む」

 

「かしこまりました」

 

 まぁ、今はメイドの奉仕を楽しむのだが。

 

 

 




 
 
 
 主人公が《強欲な壺》を使っているときは基本的に手札合わせとご了承ください。
  
 
 
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