ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を越え究極へ至る―0章 テイマーズ編― 作:竜羽
年明けということで、記念小説として「ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る」の前日談に当たる0章テイマーズ編を投稿します。
プロローグは本篇と同じですが、次話はプロローグのすぐ後のお話となります。
タカト達デジモンテイマーズのキャラががっつり出てくるので、お楽しみに。
南雲ハジメはどこにでもいる少年だった。
ゲーム会社を経営する父南雲 愁(しゅう)と人気少女漫画家の母南雲 菫(すみれ)との間に生まれ、サブカルチャーが他の家庭より身近にある暮らしを送りながら、普通の少し気弱な性格をした小学五年生だった。
朝起きて、学校に行き、休み時間や放課後には友人の松田啓人(タカト)、塩田 博和(ヒロカズ)、北川 健太(ケンタ)らと大好きなデジモンカードバトルに興じる。そんな日常を送り続けるはずだった。
だが、そんなハジメの日常は大きく変わる。
タカトがギルモンという本物のデジモンと出会い、デジモンテイマーになったことで──。
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春が終わり、夏の熱気が出てくる頃。ハジメは夜道を自転車に乗りながら家路に着いていた。
「タカト、かっこよかったな~」
夜道を自転車で走りながらハジメは呟く。思わず漏れた独り言。そこには隠し切れない憧れが込められていた。
数日前、ハジメはヒロカズとケンタと一緒にタカトから本物のデジモンを見せてもらった。
ギルモンという、赤い体に子供とほとんど同じ大きさの恐竜のような見た目のウイルス種デジモン。
ヒロカズとケンタはギルモンの鳴き声を聞いて驚いて逃げてしまったが、ハジメは逃げずに留まった。恐怖よりも好奇心が勝ったのだった。
そしてハジメはギルモンと、本物のデジモンと出会った。
タカトが考えたオリジナルデジモンだというギルモンは、言葉を覚えたばかりの幼子のようなしゃべり方をするがとても人懐っこく、ハジメはすぐに慣れ、日が暮れるまで二人と一匹で遊び続けた。
それからタカトと少し距離ができたヒロカズとケンタの間を取り持とうとしたり、放課後はギルモンと遊んだり、タカトと同じテイマーで、テリアモンをパートナーに持つ李健良(リー ジェンリャ)と知り合った。
そして、今日の夜。突如東京上空に出現した謎の空間にデジモンたちが吸い込まれ始める場面にタカトたちと遭遇。現場に到着すると、デジモンを吸い込むのを止め、逆に何かを吐き出した。
そこからは怒涛の展開だった。
屋上に現れた謎のデジモン。
遅れながらも到着したジェンリャとテリアモン、そして二人と同じテイマーである女の子、牧野 留姫(ルキ)とそのパートナーのレナモン。
デジモンカードをデジヴァイスにスラッシュすることで、パートナーデジモンを進化・強化させるタカト達三人のテイマー。
謎のデジモンに挑んでいくが、レナモンとテリアモンは返り討ちに遭い、残るはタカトとギルモンが進化したグラウモンだけ。
先に倒された二人の助言から一矢報いた二人だったが、正体を現したデジモン──完全体のミヒラモンに窮地に追い込まれる。
だが、諦めないグラウモンと、その思いに応えようとするタカトの心が一つになり、完全体のメガログラウモンに進化。ミヒラモンを倒した。
それを見たハジメは、近くに来ていたヒロカズとケンタ、クラスメイト達と歓声を上げたのだった。
「僕もなりたい。デジモンテイマーに……」
さっきまでの出来事を思い出しながら自転車で家路を急ぐハジメは、何度も呟く。憧れ、自分もそうなりたいという願いを。
もうすぐ家の近くに差し掛かったその時、住宅街の小道から光が見えた。
「何?」
それは小さな光で、昼間なら気づかず、夜であっても見逃してしまいそうな頼りない光。だがハジメはなぜかその光が気になった。
自転車から降り、その小道へ入り、進んでいくハジメ。
ゴミが転がり、エアコンの室外機が並ぶその先にハジメは見つけた。
「これ……卵? まさかデジタマ!?」
普段食べる卵よりもずっと大きく、テレビで見たダチョウの卵よりも一回りも大きい。柄も四角や三角の模様があるそれにハジメは見覚えがあった。
デジモンの卵、デジタマ。カードに書かれているイラストにそっくりだった。
「こんなところになんで?」
ハジメは知らないことだが、先ほど東京上空に現れた謎の空間──リアライズしたデジモンを消し去る人口ブラックホール「シャッガイ」と、それを逆に利用して開かれたデジタルワールドへの道、デジタルゲート。それにより東京の空間が不安定になってしまっていた。その余波でデジタルワールドからデータ容量の小さいデジタマが流れ着いてしまったのだ。
「……持って帰ろう」
少し迷ったがハジメはそのデジタマを持ち帰ることにする。
それはこんなところにデジタマを置いておいたらまずいだとか、デジタマから孵ったデジモンが暴れたら危ないという理由もあるが、一番はタカト達みたいにデジモンテイマーになれるかもしれないという願望からだった。
近くに捨てられていた段ボールを組み立て、そこに卵を入れて隠すハジメ。そのまま自転車の籠に入れ家に向かった。
ほどなくして家に着いたハジメだが、家に入ろうとした時にふと気が付いた。
(あ、このまま帰ってもいいのかな?)
デジタマを持ったまま家に入ったら当然両親に見つかる。普段は忙しく、帰るのも遅い二人だが今日は珍しく二人とも帰っているのだ。
(デジタマ見せたら流石のお父さんとお母さんでも……うーん……)
両親がこれを見たときのことを想像して不安になるハジメ。二人は職業柄デジモンのようなサブカルチャーには寛容、どころか大好きな人間だ。
でも、これが本当にデジタマなのかもわからない。それにテイマーであるタカト達は家族にはまだデジモンのことは話していないという。
普通の家ならそうする。南雲家も普通の一般庶民だし、そうしたほうがいいのかもしれない。
結局ハジメは卵を段ボールに隠したまま帰宅。なんとか両親の目を逃れて部屋に隠すことに成功したのだった。
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ハジメがデジタマらしき卵を家に持ち帰り、部屋の中で隠し始めて一週間がたった。その間、ハジメは学校に行くとき以外はなるべく部屋で過ごし、卵を見守り続けた。
しかし、一向に卵に変化は現れない。アニメのように卵を撫でてみるも何の反応も見せなかった。
そんなことをしている間、タカト達はギルモン達と過している。この間も地下鉄に現れた謎のデジモンを三人と三体で協力して倒したらしい。(ハジメは卵の世話をしていたため、後日学校で聞いた)
だんだん焦りを感じてきたハジメは、思い切ってタカトにテイマーになった理由を聞いてみた。
「テイマーになった理由? いきなりどうしたの?」
「ちょっと気になって。やっぱりかっこいいから?」
「うーん、そうだなぁ。なりたくてなったわけじゃないし……」
ハジメが真剣な顔で質問するのでタカトも真剣に考える。
タカトがテイマーになった経緯は、持っていたカードの中に混ざっていたブルーカードをカードリーダーに通し、デジヴァイスに変化したのが切っ掛けだ。そのデジヴァイスにタカトが書いたギルモンの絵や設定をリードしたことでデジタマが生まれ、そこからギルモンが出てきた。いわば明確な理由があってテイマーになったわけではない。でも、
「でも、もしもテイマーになった理由があるなら……」
「あるなら?」
「ギルモンに会うためかな」
「ギルモンに?」
「うん。あの時、デジヴァイスにギルモンを書いたメモをスラッシュしたのはギルモンに会いたいと思ったからなんだ。そうしたらギルモンは本当に僕の前に現れた。だからギルモンっていう友達に会うため。これが僕がテイマーになった理由だよ」
ハジメはタカトの話を聞き、ガツンと頭を殴られたような気がした。自分はかっこいいテイマーになりたくて、デジタマを拾い、孵るのを待っていた。
でも、それは生まれてくるデジモンのことを考えていないんじゃないか?
テイマーになるためにデジタマから生まれてくるデジモンを利用しようとしているんじゃないか?
だからデジタマのデジモンは自分の前に生まれてくるのを拒んでいるんじゃないか?
そこまで考えるとハジメは部屋に隠してあるデジタマにすごく申し訳ない気持ちになった。
タカトと別れて急いで帰宅したハジメは、急いでデジタマに向かい会う。
「ごめん。僕タカトみたいなかっこいいテイマーになるために君を利用しようとしてた。本当にごめん!!」
デジタマに向かって両手両膝を付いて頭を下げる、所謂土下座をするハジメ。両親から教わった最上級の謝罪だ。
「こんな僕だけど、今は君に会いたいと思っている。だから、もしも許してくれるなら僕に会ってほしい。そして──友達になって!!」
心の底から叫んだその時、机の上に置いてあったカードの束から光があふれ始めた。
「何これ?」
その光に気が付いたハジメが机の上を見てみると、置いてあったカードの一枚が光っていた。光っているカードはやがてその絵柄を全く違うものに変えていく。青い下地に黄色いDの文字とそこから飛び出してくるドット絵のドラゴンが描かれたそのカードをハジメは見たことがあった。
「タカトが使っていたブルーカード? もしかして……!」
急いで自身のカードリーダーに、ブルーカードをリードするハジメ。するとカードリーダーは光に包まれ、水色のカラーリングに銀色の縁取りをしたデジヴァイスになった。
「これが僕のデジヴァイス……「ピキッ」え!?」
ハジメが自分のデジヴァイスに感動していると、今度は何かが罅割れるような音がした。
バッと振り返ると、この一週間ピクリともしなかったデジタマに罅が入り、ビクビクッと動いていた。
やがて罅は卵全体に広がり、ついにデジタマは孵った。そこには生まれたばかりのデジモンがいた。
「君は?」
ハジメが話かけるとデジモンは目を開き、ハジメに目を向けた。
赤い色の体に手足のないスライムのような体をしたそのデジモンの名は──。
「おれ、プニモン。きみはだれ?」
「ハジメ。南雲ハジメ。プニモン、君のテイマーだ」
「テイマー?」
「そう。テイマー。──友達だよ」
ハジメは右手のデジヴァイスを握りしめ、左手をプニモンに差し出した。その手にプニモンはそっと寄り添ったのだった。
こうしてハジメはデジモンテイマーになった。この後、部屋でプニモンと話しているところを両親に見つかってしまい、騒がれてしまうがすぐに受け入れられ、プニモンは南雲家の新たな一員として迎え入れられた。
そしてプニモンはすぐにツノモンという手足の無い丸いからだに鋭い角のようなデジモンへと進化するのだが、そのツノモンの額にはXの文字のような形をした青いクリスタルが付いていた。
〇デジモン紹介
プニモン
レベル:幼年期Ⅰ
タイプ:スライム型
属性:なし
生まれたての新種デジモン。ゲル状の赤い体はプニプニしていて、頭部には3つの触手のようなものが生えている。戦うことができず、酸性の強い泡をだして敵を威嚇する。