私は休むのが下手   作:北部九州在住

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今回のネタは夏コミ用で『はるかリセット』と『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』のクロスオーバーです


夏コミ原稿用 ディープなネタまみれな豊原旅行記 後編

 さて、荷物を置いてとりあえず歓楽街へ。

 この時ケーカはファスナーがついてるポケットに入れるよう徹底される。

 もちろん、鞄なんて持たない。

 なお、PMCの護衛はさらに二人増えて三人体制である。

 

「どうぞ。ここが極東のソドムこと豊原地下都市歓楽街です」

 

 20世紀末期、核兵器のパイ投げを恐れた旧北日本政府は核シェルターとして大規模な地下都市を建設。

 東側崩壊に伴う人口急増はこの樺太という島に公称2200万、一説では2400万の人間を受け入れたが、東側権力者の逃亡資金に日本のバブルのお零れ、香港返還を前にかの地から逃げた怪しい資金を建設費用に日本のゼネコンの技術によって作られたこの街は最大2000万人の人間を収容していたという。

 なお、現在の樺太の人口は1000万ほどで、その八割がこの豊原都市圏に住んでいるのだとか。

 当時の豊原地下都市の生活環境は劣悪で、経済崩壊と大寒波に伴う食糧不足で凍死者餓死者は数知れず、そんな惨状下で最高権力者の死に伴うお家争いの果てに崩壊する事になる。

 

 マースレニツァ革命である。

 

「この街は、恋住政権の構造改革特区法を利用した歓楽街特区になっており、昨今のポリコレをもろともしない『飲む・打つ・買う』に特化した街になっているんですよ」

 

 本斗みしろさんの説明に私と宮武さんの顔は苦笑しかない。

 酒を飲む・博打を打つ・女を買うという三拍子は男のロマンではあるが、昨今のポリコレ勢力を跳ねのけているのが、ポケットに入っているケーカなのだという。

 ポリコレ勢力は決済手段のクレジットカードを用いて圧力をかけてくるのだが、身分証+銀行口座、さらにオプションで携帯電話がセットになっているケーカによる決済がこの樺太では一般的なのでクレジットカードを止められても生活ができるというのがある。

 今やネットによるエロ配信の一大拠点となり、あと、樺太は特区を利用してモザイクなしなのでその手の会社の本社がどんどんやってくる始末。

 

「『彼らの正義は正しい。だが、正義で私たちのお腹は膨れない』。

 ポリコレに対して真っ向から喧嘩を売ったのはこの豊原でした。

 欧米では極東のソドムの街なんて呼ばれますがそれを積極的にアピールすることで経済活性化を図っているんですよ」

 

 ここまで堂々と本斗みしろさんが説明できるのは、この樺太が血で国際貢献をしているからに他ならない。

 アフガニスタンでは現地政府の崩壊を防いでついに停戦合意が結ばれ、ウクライナでは数万の『レッドサムライ』ことPMCたちが血を流して、ポリコレの正義を押し切ったのである。

 やはり暴力‥‥!!暴力は全てを解決する‥‥!!

 これが国際社会である。

 まぁ、双方に縁があって、絶賛殲滅戦を行っているガザに関わりたくないからウクライナに全力しているとの影口も間違いではないのだろうが。

 

「しっかし、まー飾り窓の女性たちの凄い事と言ったら……」

 

 宮武さんが飾り窓の中にいる際どい衣装のロシア系娼婦たちからのアピールに日本人特有の笑顔で手を振りながらつぶやくと、本斗みしろさんが宮武さんと同じ笑みで説明を続ける。

 

「この歓楽街の特色は、少なくとも観光客が遊べるレベルの地区は全て樺太道管理、つまり彼女たち嘱託公務員扱いなんですよ」

 

 絶句する私に、本斗みしろさんは真顔で言い切った。

 

「マフィアをはじめとしたアンダーグラウンド勢力対策です。

 欧米のマフィアって最近はみかじめ料取らないんですよ。

 で、どうやって金を回収していると思います?」

 

 わかる訳がない私に宮武さんが頭に手を当ててうめく。

 想像を絶する回答に私も真顔になった。

 

「麻薬ね」

 

「ご名答。密航者を薬漬けにして働かせるんです。

 で、中毒だから密航者たちは当然麻薬をマフィアから買う訳で。

 もちろん長生きなんてできませんが、その補充は常に、東欧・南米・アフリカから供給され続けます」

 

 私もブラック企業で働いて文字通り使い捨てられたが、グローバルアンダーグラウンド経済は格が違った。

 

「暗い話もなんですので、名物のディストピア飯でも食べませんか?」

 

 その名前で名物なのか?と突っ込みたい所を我慢して、近くの食料配給所へ。

 ケーカは出さずに店員は機械を軽く私にかざして支払い完了。料金は観光客向けで500円。

 飾り窓のおねーさんたち嘱託の人たちは無料だという。

 出てきた給食のお盆にそのまま盛り付けられるご飯にボルシチに紙パックのウォッカ。お酒が駄目な人向けに、中華まんにウーロン茶があったりする。

 私がご飯にボルシチセット。宮武さんが中華まんにウーロン茶セット。二人ともウォッカつき。

 

「で、こっちが嘱託の人たち向けです」

 

 本斗みしろさんのやつは固形の総合栄養食品にビタミン剤、成型肉のサイコロステーキ。

 美味しそうに見えるが、旧北日本政府末期はこの肉はこの地下都市に大量発生していたネズミを使っていたとかなんとか。

 

「「「いただきます」」」

 

 それぞれ少しずついただく。

 観光客向けのディストピア飯はそれなりの味がしたが、嘱託の人たち向けは……うん。ダイエットが進むかなという感想にしておこう。

 

「あ。ウォッカは飲まないでください」

「どうして?」

「最近多いんですよ。女性の拉致行方不明事件。深部の違法歓楽街で薬漬けで見つかるならまだましな方でして」

「……あー。春河童先生なら高く売れそう」

 

 ここは怒るべきか喜ぶべきかと悩んだ私は、ピロシキを口にする事で返事とした。

 

 

 豊原地下都市。

 ここから人の欲が澱む町。

 それを誇るように地下で生きる人たちはたくましく、今日もまた生活している。

 




一応ここまで。
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