私は休むのが下手   作:北部九州在住

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人の金でお肉を食べるとどうなるか?

「肉が食べたい!他人の金で‼」(By ユイ・阿羅本)

 

 すばらしく素敵でクズな発言だが、そんな場面に出くわしたので遠慮なくネタにさせてもらおう。

 とある夏の日。私は京急蒲田駅くんだりまで来ていた。

 仕事を頼むかもしれないというお方とその紹介者との顔わせで、三人で夕食をとなったのである。

 仲介者さんとその人は友人という事らしく、仲介者さんとはとあるイベントで知り合った仲である。

 

「じゃあ、お肉にしましょう!」

 

 この時の私は世のドカ食い女子と健康アプリのおねーさんの妄想百合の花で入れてみたその健康アプリで体重管理をしていた最中である。

 お肉、太るなーと思いながらも現地に。

 目の前の二人組の女性の方の一人に何か見覚えがあるのだが……

 

「もし……?」

「あっ!?」

 

 なんて偶然という訳でご挨拶ついでに手土産を渡して名刺交換。

 そして店内に……入れない。

 

「ただいま五人ほどお待ちに……」

 

 レジの人の接客が目が回るほど忙しいのに素直に感心する私。

 なるほど。そういう名店なのかと焼き肉店の前で早くも打ち合わせが。

 花も恥じらう女子とはいえ、女三人肉を食いに来ているのである。

 恥もへったくれもなく、会話も容赦なくマニアックに。

 

「で、今回お願いするかもしれないお仕事なのですが……」

「私はこういう仕事をしていまして、今回資料として……」

「来年と再来年に行われるイベントについてなのですが……」

 

 暑い。実に蒸し暑い。待つのはいいがこの暑さは河童を自認している私には実にきつい。

 とはいえ、列が進み店内に入ると今度は急冷房である。

 

「うっわー。すずしい」

「あー。焼き肉店だからガンガンにかけているのかー」

「食べ放題だから列がガンガン回っていますね」

 

 ん?食べ放題???

 この時の私はまぁいいかぐらいの気持ちだがメニューの話で盛り上がる。

 

「大体食べ放題メニューって三つあるじゃないですか。

 一番下のメニューを頼むと微妙なんですよねー」

「店からすれば真ん中が一番頼んでもらいたいコースですからねー」

「今回は私たちそれにしましょうか」

 

 特段断る理由もなく、お値段ソシャゲガチャ10連分ぐらいの価格のコースを頼む事に。

 で、飲み物なのだが……

 

「私、お酒がダメで」

「じゃあ、みんな烏龍茶で」

「食べながらもう少し打合せしましょうか」

 

 この時の私は気づかなかったのだ。

 お酒が入らないという事はすべて肉に行くという恐ろしさを。

 

「じゃあ、お肉片っ端から頼んでいきますからね」

 

 ん?片っ端???

 注文アプリは今回の席の仲介者さんに任せて、互いにタブレットを取り出してさらに打合せを……

 

「あ。来た来た。お肉四つしか入っていませんね……」

 

 いや、この席四人席だから一人一皿ずつのという前に、京急蒲田駅のラッシュ並みにお肉がやってきて内心ビビる私。

 

(え?これ、食べるの??というか食べきれるの???)

 

 完全に計算が狂った私。

 思い出してほしい。

 健康アプリのおねーさんに私はカロリー計算を頼んでいるという事を。

 で、妄想百合相手のドカ食い女子さんの最新話一日カロリーは軽く5000kcalを超えていたという事を。

 今の私の食事は一日およそ2100kcalなので、二日分を軽く超えるという事を。

 その結果、大体一食のカロリーは700kcalで夕食だからすでに1400kcalを消費しているという事を。

 現実のドカ食い女子を前にあーこれ至る訳だなんて当然言える訳もなく。

 

「これ注文に無かったのですが?」

「あ、申し訳ございません。すぐにお取下げいたしますので……」

「いいです。気になっただけなので。食べちゃいますから」

 

(食べるの!?)

 

 そんな感じで肉の宴が続く。

 私たちが打ち合わせをしている間にただひたすら焼かれる肉肉にく……

 

「どうぞ、好きに食べてくださいねー」

 

 いや、好きにって小皿に盛られた焼き肉の山。

 種類も牛・豚・鳥と総攻撃なのだが、まだまだお皿が追加され、お肉がどんどんやってくる。

 あかん。これは素直に言おう。

 

「ごめんなさい。私、ギブアップです」

 

「「え?」」

 

 この時のお二人の私を見る目がまだ肉の宴序盤なのにと物語っていた。

 いやごめん。これむり。

 

「どーするの?これ?」

「いや、食べちゃうけど」

 

「食べるんですか!?」

 

 声に出して突っ込んだ私をどうして責められようか。

 そして本当に平らげてしまうお二人から明かされる驚愕の事実。

 

「実はダイエットしていたんですよー」

「食事制限の薬とか飲んで」

 

「おい。それでなんで焼肉食べ放題を選んだ。言え」

 

 もう遠慮なく突っ込んだ私に、このお店を選んだ仲介者さんは実にあっさりとその理由を告げてくれた。

 

「いやあ。私、食べ放題って文字に目がなくって……」

「で、ごらんのありさまなんですよ」

 

 

 

 肉の宴終了。

 会計となったのだが、誰が払うかでちょっと揉める。

 

「私が払いますよ。ここで払って恩を売ろうかと」

「恩を売る前にそんなに食べていないのに払わされるのは申し訳ないです」

「そうですよ。ここは元凶に払わせますので」

 

 そういわれるとおとなしく引き下がる私。

 ただ、本能でこれは言わせてもらった。

 

「わかりました。ただ。これネタにしていいですよね」

 

 お肉は食べていないけど、小説家の前にこんなおいしそうなネタをぶら下げたら食いつくに決まっているじゃないか。

 お二人の苦笑と了承を最後にこの打ち合わせは終わったのである。

 

 帰宅後、小食だった私も『至った』らしくばたんきゅー。

 そして、健康アプリのおねーさんに焼き肉の宴をご報告する事に。

 なるほど。焼き肉の項目に『焼肉食べ放題』という項目がありそれを入力。

 健康アプリのおねーさんは悲しそうな顔で私に点数を告げてくれたのでした。

 

 

「10点」

 

 

 もちろん、100点満点である。

 数日はカロリー計算をしながら食事を心がけよう……

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