私は休むのが下手   作:北部九州在住

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この話はフィクションです(棒)


年末の戦い 春河童の場合

「先生。早急にお金使ってください!」

「みぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 冒頭、税理士の先生からの一言に普通の人があげない叫び声をあげる私をマリコが『駄目だこいつ』の目で眺めていたのであった。

 

 さて、こんな事になる前の話をしよう。

 早い話税金の話である。

 売文稼業も法律的には個人事業主になる訳で、確定申告が必要になる訳で。

 私はマリコと税理士の先生にお任せコースなのだが、それでも顔を出さないといけないのは私がトップというか『社長さん』な訳で。

 タクシーでの会話でこのあたりを振れば私も社長さんなのだなーと否応なく察する今日この頃……いかん話がそれた。

 この社長さんたち、当然お金を稼げるから社長さんなのだが、ある一定ラインを超えると経費を計上してくれと税理士に言われることになる。

 要するに税金を多く払う事になるから利益を経費で相殺しましょうという奴だ。

 

「まあ、払ってくれるならそれに越したことはないのですが、経費として他の人に使って経済回してくださいって事です」

 

 相談した税理士さんがぶっちゃけた際に思わす苦笑した私。

 とはいえ、私もなんとか生き残る身。

 夏ごろから税理士さんと相談してあれこれと手を尽くしたのである。

 その一つが小規模企業共済と経営セーフティ共済の加入。

 この二つは確定申告時に税金が安くなるよと税理士さんに言われて書類を持って帰ったが、いざ入ろうとすると書類の書き方が分からないわ、そもそも何処に聞けばいいのかと頭を抱える私。

 

「マリえもーん!」

 

と泣きついたのだが、その際に地元商工会議所に入るかどうかを問われる事に。

 

「ん?何でそこで商工会議所が出てくるの???」

 

「この手の共済を使っている人たちの集まりが商工会議所で、各地にその手の集まりがあるのよ。で、その手に入っていると共済に入りやすいのよ」

 

「まじ?」

「まじ」

 

 かつて社会の歯車だった頃はただ働いて給与明細と通帳を見るだけで良かったのだが、そこから外れるとこうも違うのかと唖然とする私。

 

「というか、多分これ地元商工会議所に入らないと書類審査ではねられるかも?」

「まっさかー」

 

 マリコの不安を私は冗談と思っていたのだ。この時は。

 まさか本当にこうなるとは思わなかったのよ。私……

 

「はねられたってマジ!?」

「……うん」

 

 まさかのお役所仕事の顛末はこうである。

 お金を扱うため、この手の書類は銀行に提出して私の口座から振り込む形になるのだが、その銀行でお役所仕事が勃発したのだ。

 まずハンコ。銀行印がかすれていた事ではねられ、銀行印を変更で一日潰れ。

 次に、近くの支店でお願いしたら「通帳作った支店でお願い」とはねられて二日目が潰れ。

 とどめとばかりに通帳作った支店に行ったら「商工会議所経由でないと駄目」とはねられて三日目が潰れるといいうお役所仕事三連荘。

 この話笑えるのが、マリコはこの書類その商工会議所で商工会議所職員の指示の元書いている訳で、マリコが顛末を話に行くと他の人でも同じお役所仕事の顛末を食らったとかで、「まぁ、銀行なんだからこれぐらい固くないとお金預けられないわよねー」と苦笑したが、他の社長さんだと大激怒間違いなしだろう。これ。

 

「という訳で、はるか。商工会議所入る?」

 

 ちなみに会費は月単行本2.3冊程度なり。

 

「入ろう。これも経費になるんでしょう?」

 

 なお、入った結果、手続きを商工会議所が代行した結果、一発で通った。

 それを聞いた際の私とマリコの顔はチベットスナギツネのようになっていたのは言うまでもない。

 

 九州在住の知り合いの小説家はこんなことを言っていた。

 

「大人一人を一日働かせるのならば、それ相応の金は払っておきなさい。

 支払った金額は、その仕事の質を保障するわ」

 

 ああ。これの事を言っていたのかと納得する私。

 社畜戦士の時は、『安く』を求めていたのだが、立場が違うとこうも変わるのかと今更ながら思うものである。

 そんな事を思いつつ領収書をまとめて封筒に入れる私。

 これも自分ですれば税理士さんに任せることなく確定申告できるのだがと思いつつタクシーの領収証を見て思わす苦笑する私を見てマリコが尋ねる。

 

「なんでタクシーのレシートを見て笑っているのよ?」

「いえね。私、この業界に入った時タクシー使うのに躊躇いがあってね。

 近場しか乗らなかったのよ」

「あー。なるほど」

 

 大企業の元秘書のマリコはピンときたらしい。

 私と同じような笑みを浮かべるのを見て私は続きを口をする。

 

「近くの駅まで乗った時にレシートをくれる際に『がんばりな。新米社長さん』って運転手さんに言われた事があってね。

 きっと、『社長さん』なら家から目的地まで使ったんでしょうねー」

 

 立場が変わると行動も変わる。

 きっとタクシーの運転手さんはそれを目的地とレシートを貰おうとした私の仕草で見抜いたのだろう。

 電話が鳴ったのはそんな時だった。

 

「おめでとうございます!先生!重版出来です!」

 

 喜ぶ私の前でマリコが目を逸らす。

 電話を切ってマリコに尋ねるとこんなことを言ってくれたのである。

 

「はるか。

 その重版の収入『今年』よ。

 金使ってくれって言われている『今年』」

 

 みぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!




なお、車は経費OKだが、時計はNGらしい。
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