私は休むのが下手   作:北部九州在住

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時代小説考

 時代小説とは何か?

 これ思ったよりも難しい問いだったりする。

 ウィキべティアにはこう書かれている。

 

『時代小説とは過去の時代・人物・出来事などを題材として書かれた日本の小説。現代の日本では、明治時代以前の時代(主に江戸時代)を対象とすることが多い』

 

 あくまで過去の時代であって、江戸時代がメインではないのだが、江戸時代が中心になるのは、繋がっている過去の一番わかりやすい所が江戸時代なのだろう。

 それも令和の世になって大分薄れてきた気もしないではないが。

 さらにこう書かれている。

 

『かつては大衆文学はすなわち時代小説であり、広く庶民に受け入れられた。一般に歴史小説との境界は曖昧であるが、過去の時代背景を借りて物語を展開するのが時代小説であり、歴史小説は歴史上の人物や事件をあつかい、その核心に迫る小説である』

 

 ここでは歴史小説との違いについては話が外れるので触れないでおこう。

 ただ、時代小説が大衆文学であり、広く庶民に受け入れられたのはある意味、自分たちの物語として認識しやすかったというのはあながち間違いではない。

 

 たとえば、時代劇のTVでよく見るお城に姫路城がある。

 あのお城国宝なだけに美しいのだが、時代劇で使われ続けた結果、あのお城が江戸、つまり東京にあるという勘違いを起こす笑い話も。

 大衆文学として庶民に親しまれた時代小説は映画やテレビでも素材となり、今もその物語が作られ続けているというのは私たちが歴史の上に居ると感じると思うのだろう。

 

 さて、そんな時代小説だが、ジャンルがいくつかある。

 捕物帳と呼ばれるものは同心や与力や奉行あたりが悪人を懲らしめる話で、『銭形平次』(TVドラマ。原作小説『銭形平次捕物控』野村胡堂)や『鬼平犯科帳』(池波正太郎)が有名だろう。

 これらは勧善懲悪もあって人気も高く、映画やTVによくなった。

 

 伝奇小説は中国の伝奇小説に範を取り、時代背景や実在の人物を借りながら、架空の人物を登場させ現実離れした活躍を描くもの。

 決して妖怪ものではないし、忍者ものでもない。

 だが、ここの有名作品をあげるなら『南総里見八犬伝』(滝沢馬琴)であり、『魔界転生』(山田風太郎)、『真田太平記』(池波正太郎)あたりか。

 物の怪ありお色気あり何でもありで、日本のライトノベルの源流の一つだったりする。

 

 で、そこから派生したものの一つに剣豪小説がある。

 『宮本武蔵』(吉川英治)や『柳生武芸帳』(五味康祐)がそれになる。

 ここまでくると、面白いもので武士とは、侍とはという所にまで迫ってゆく訳で、そんな代表的なのが敵討ちものである。

 そう。『忠臣蔵』(『仮名手本忠臣蔵』)だ。

 最近はだんだん資料とかが発掘された事もあって人気は衰えてはいるが、年末と言えばこれというのは昭和世代ならばわかるだろう。

 

 かと思えば市井小説というもののある。

 武士や公卿やアウトローではなく、都市に住む平民、すなわち職人や商人、あるいはその日暮らしの下層の人々を主人公とした作品。庶民の人情を描いたもので、『たそがれ清兵衛』(藤沢周平)とか。私もここに属していたりする。

 

 更に股旅物なんてもののある。

 主人公を渡世人や侠客とし、アウトローの世界を描いたもので『木枯らし紋次郎』(笹沢左保)なんかが有名だろう。

 

 

 

 まぁ、長々と語った訳だが、こんなにも種類とキャラがある時代小説である。

 お隣さんは何をしているのかという感じで本を読んだ感想がこの話の本題である。

 きっかけは朝倉さくらで、

 

「同郷に時代小説の新人賞を取った人がいるのよ。

 で、応援がてらに本を買ったのだけど凄いよこの人」

 

「へー。何が凄いの?」

 

「ほぼエロなしで人斬り書いてる」

 

「まじ!?」

 

「まじ」

 

 ここだけならノリがマックのJKみたいだが、物書きなんぞしているとこの凄さが嫌でもわかる。

 エロというのは人の欲の一つなだけに客が付きやすく、おまけに書くことで文字数が稼げる上に、起承転結で言う『転』部分を作りやすいという便利アイテムみたいなところがあるのだ。

 それを使わずに本一冊、およそ十万字から十二万字かけて人斬り、つまり人を殺すのみで物語りを構築する事の難しさたるや!

 

「さくら。あんただったら書ける?」

「無理。私は権力欲が強すぎるから人斬りの上を書く」

 

 この女、ジャンル空白地帯を狙って四代将軍徳川家綱時代を書いたはいいが、はまったのが『知恵伊豆』松平信綱や由井正雪ではなく、『下馬将軍』酒井忠清で、だから時代小説デビューできなかったんだよお前はと弄りのネタになっていたり。

 

「そーいうはるかは書ける?

 一冊使って人斬り」

 

「難しいわねー。私はどちらかといえば市井小説で長屋物だし。

 浪人が長屋に転がり込んで、仕官や用心棒は書こうと思えば書けるけど、一冊まるまる人斬りはきついわ」

 

 なんできついかというと、勧善懲悪から外れ、かといってお色気に走れず、権力者の手は血まみれにする訳にもいかず、市井から外れざるをえない連中なのである。

 で、そんな連中がほんとーーーーーーに困った事に時代の表舞台に出て大暴れする時があるから困るのだ。

 

 幕末って言うんだが……銃で潰されるんだよ。こいつら……




そんなノリでちよっと時代小説家筑前助広先生を紹介。

新刊『颯の太刀 好敵手』の感想がこれである。
https://x.com/hokubukyuushuu/status/1877021594754916441

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