私は休むのが下手   作:北部九州在住

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深夜の電気圧力鍋奉行文学風味

 一人で料理をするというのは結構面倒なものであるが、その最大の理由は洗い物だと思う。

 これが本当に面倒なんだ。マジで。

 とはいえ、現代社会というものは使い捨ての紙の皿や割り箸があるので、食べ終わったらゴミ箱にぽいってのができる訳で。

 そういう回避手段があるのに対して、これはあまり回避手段がない。

 

 

 調理だ。

 

 

 材料を切り、煮る・焼く・蒸す等してご飯とおかずを作る。

 世の主婦の仕事の一つであり、多くの主婦が献立を悩むなんて事もあった調理だが、科学ってすげー。そんな調理を劇的に変えた家電製品がある。

 まずは冷蔵庫。

 こいつのおかけでどれほど生活が楽になったかは言うまでもない。

 食材の保存期間が延び、買い溜めもできる訳で、昭和の時代の家電三種の神器の一つにこの冷蔵庫が入るのはさもありなんと思ったり。

 なお、残り二つはテレビと洗濯機であり、主婦の仕事である料理と洗濯がいかに大変だったかを端的に示していると言えよう。

 話がそれたので、料理に戻ろう。

 その後、料理の家電製品は更に便利な物を世に送り出す。

 炊飯器と電子レンジだ。

 米を洗うだけでスイッチを入れればご飯ができるという事がどれだけ便利な事か!

 電子レンジのスイッチを入れるだけで、料理が暖かくなるという事がどれほどありがたい事か!!

 調理において冷蔵庫・炊飯器・電子レンジは今の現代人には欠かす事はできないものになっている。

 とはいえ、これでもできない事がある。

 煮る・炊く。つまり鍋がらみだ。

 これの何が厄介かというと、保存がめんどうなのだ。

 具体的に言うと味噌汁。

 たとえば、故郷の母の味を思い出して味噌汁を作ったとしよう。

 かつおだしに白みそ、わかめと豆腐と葱を入れてできあがり。

 ここまではいいのだが、この保存、特に夏なんかは鍋を冷蔵庫に入れ忘れるのだ。

 できたての味噌汁は熱いのでそのまま冷蔵庫に入れて、冷蔵庫のプラスチックの板を溶かして割った人間は数知れず。

 反省から冷ます事を覚えるのだが、冷ますという事は30分から一時間放置する訳で。忘れるなんてあるある。そのまま寝て朝になったら腐っていたなんて夏の日の悪夢は今でも思い出したくないものである。

 で、そんなやらかしをし続けた結果、味噌汁をインスタントでしか作らなくなったのだが、とある文明の利器を知り、ついに導入を決意したのである。

 それこそが、タイトルにある電気圧力鍋である。

 

 まず、圧力鍋から説明しよう。

 空気や液体が逃げないように密封した容器を加熱する調理器具で、電気とついているから電気の熱で加熱する鍋なのだが、これが凄く良い。

 先ほどの例として味噌汁を出すが、味噌汁が腐るのは空気中の細菌が適温になった味噌汁の中で時間をかけて繁殖するからなのだが、密閉状態で加熱するという事は細菌が死滅した状況になるので、理論上は繁殖しない事になる。

 そして、こいつの一番良い所はコンセントに繋げる事で長時間の保温機能がついているという点。

 つまり、夕食で味噌汁を頂き、食後に電気圧力鍋のスイッチを入れて加熱させれば朝まで熱々なのだ。

 昨今の夏は暑い夏が多いのだが、こいつを買ってから味噌汁とカレーを腐らせた事がない。

 なんでもっと早く買わなかったのかと後悔するぐらいのおすすめアイテムである。

 そんな圧力鍋だが、欠点が無い訳ではない。

 まず、容量が小さい。

 一人用の電気圧力鍋は、大体中の容量が小型炊飯器ぐらいの容量なので注意が必要である。

 もちろんもっと大きなのもあるのだが、それは家族用でお高くなっている。

 

 という訳で、今日は鍋の気分であり、一人鍋としゃれこむ事にする。

 ただ、この電気圧力鍋で料理をするのは少し味気ない。

 鍋と言うのは、あのぐつぐつに煮立った音や漂う臭いや湯にしみこんでゆく出汁の色が食欲をそそるのである。

 という訳で、コンロで鍋をつくり、あまったものを電気圧力鍋に移して再加熱の後保温すれば、朝ご飯にこの鍋が熱々で食べられるのだ。

 

 ちなみに、今日の鍋は鴨鍋である。

 鴨肉・白菜・水菜・椎茸・舞茸・豆腐・長葱にダシと醤油とみりん。

 今はこれを全部スーパーで買えるのがすばらしい。

 なお、材料すら切っているものがあるのが更にすばらしい。現代社会万歳である。

 ご飯を炊飯器でセットし、水を入れた鍋をコンロにかけて火をつけながら買った材料を適当に切る。

 あとは、時間になるまで灰汁取りをしつつ鍋を見て堪能する。

 今日は一人鍋だが、仲間を呼んでの鍋もまた楽しいものである。

 そういう事をしていた文豪の一人が夏目漱石で、今日の鴨鍋も実はそこからメニューを決めてたりする。

 鴨鍋と夏目漱石にはこんなエピソードがあったりする。

 彼の奥さんは実は料理が苦手で、夏目家には夏目漱石を慕って多くの人がやって来るが、当然夕食もという事がある訳で、その際には近くの鳥料理店から鴨鍋を取り寄せたそうな。

 鍋だから当然料理をする訳もなく、鍋を囲んでの宴会とそこで行われる文学談義はきっと素晴らしいものがあったのだろうなんて妄想していたら鍋がいい感じに仕上がったので一人鍋を楽しむ事にしよう。

 

 鍋!

 ほかほかご飯!

 日本酒!

 

 日本人に生まれてよかったとこころより思う一瞬である。

 

 で、圧力鍋の欠点その二だが、私が買った奴はとにかくアラームがうるさい。

 これ深夜に鍋なんて事をやりだすと、アラームで近所迷惑にという事が起こりかねない。

 私みたいな仕事がフリーな人種にとって、夜の料理で迷惑が発生するというのは結構な大問題なのだ。

 余った鍋を電気圧力鍋で再加熱する際はできるだけ深夜に行わないように。




電気圧力鍋の話は私の実体験である。


夏目漱石と鴨鍋

夏目漱石、門下生を集めて鴨鍋をご馳走し「福引」に興じる。【日めくり漱石/2月13日】 https://serai.jp/hobby/40898


鴨鍋のレシピ
https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/card/704660/
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