時々こういうエッセイを書いていて、読者からやってくるのが「まず何を片づけるべきなのかわからない」というのがある。
個々の掃除というよりもまず片付けの仕方みたいなもので今日は一本話を作ろうと思う。
いやまぁ、ちょうど衣替えをするので遠慮なく己のネタを文章に……ゲフンゲフン。
Q 何から片づけていいのかわかりません
A 全部片づけろ
いや、この回答侮れないのだ。
大体多くの人が挫折するのが、部屋の中にあるものを必要なものと必要でないものに分ける事が難しい訳で、発想を転換してまず部屋の物を全部無くしてしまい、それからいるものといらないものを分類するという訳。
これを言った人間は続けてこんな事を言った。
「全部片づける場所がない?
レンタル倉庫を借りてもいいし、物がない部屋が一つか二つはあるはずよ。
お風呂とトイレ。ユニットバスになっているなら一つだけど、そこを利用すればいいわ。
そこが散らかっているなら、まず片付けるのはそこ」
この時片付けの説明に用いたのはパソコンのメモリで、部屋が散らかっているというのはメモリが使われている状態だから、メモリを増設するなりお掃除するなりという説明……いかん。ブラック労働時代を思い出して頭が……
その掃除が面倒な人はここだけ業者を頼んでもいい。
二万円は高くないが、己の陣地の費用である。
できないポンコツの城よりも頑丈な陣地の方が安心なのは戦いも掃除も同じ。
私の場合、今回の敵がタンスなので、書斎をこの陣地とする。
次いで、トイレなりお風呂なり書斎なりに置いた荷物だが、当然その場所に置き続けたら使えない訳で、置いた物はまた元に戻すことが前提となる。
しかし、この置きっぱなしの物、例えば本とかCDとかDVDなど、これは本当に必要なものだろうか。
まず、本やCDは買っただけで読まないという人が多いだろう。
そして、音楽はダウンロードで購入してパソコンなりiPodなりMP3プレイヤーなりにデータを入れておけばいつでも聴けるし、最近は電子書籍というものも普及してきた。
そういうものは処分の対象になるのだが、ここで少し私の話をさせてほしい。
私こと天野はるかは作家な訳で、そんな人種は必然的に本を読む訳で、という事は本が散らかっているという事は……
「はるか。何で手が止まっているのかしら?」
「あっ。いやこの本が、この本が……」
「まずは片づける場所を確保しましょう。それから、本の整理ね」
とまあこんな感じになるのがかつての私。
今はこのあたりは意識して片付けの時には読まないようにしている。
やり方は簡単。本を開かずに置くだけなのだが、これは本好きにとってどれほど難易度が高い技か、語りたくなるが話がそれるのでここまでに。
今回は衣替えなのだが、何を考えて買ったんだ過去の私よ……お洒落なパーティードレスなんぞ着ていくことなんてないだろうに……話がそれた。
さて、物を全て動かした事でスペースができたはずだ。
次はそのスペースのみを掃除する。
できたスペースのみでいい。全体の掃除なんてこういうものを読んでいる諸君には早すぎる。
「バルジの戦いでアントワープに行かずにミューズ川の橋を片っ端から叩き落すがごとく」
なんてほざいた某友人。お前バルジの戦いの仮想戦記のネタはマニアックすぎるぞと突っ込みたいが、要するに局所に己の戦力を集中投下するのだ。
その戦果は確実に目に見えるのが素晴らしい。
散らかっていない床。何も置かれていない場所。誇るがいい。貴方は英雄的仕事をしたのだとただの掃除をこれでもかと盛り上げるのだ。
この手の日々の戦果こそ、掃除というものを習得するための最低限の行いなのである。
そして、その戦果地に先ほど移した荷物を戻そう。経験則だが、戻した結果少しだけスペースが余る。これが今回の掃除の本当の戦果という訳だ。
週一は無理でも月一でこういう事をすれば、部屋も奇麗になろうというものである。
さて、ここで問題になるのはゴミである。
ゴミの処分は、これはもう自治体のルールに従うのは当然として、自分の中でどれを必要なものといらないゴミに区別するのか?
これも掃除ができない人にとっては難しい問題だ。
私はそういう時の解決策として、大きなゴミ袋を使う事にしている。
日々のゴミをゴミ袋に入れて、その余ったスペースのみ掃除で出たゴミを出すのだ。
このお話、スペースというリソースを強調しているが、それぞれに制限を設ける事で、掃除そのものにリミットをかけている。
掃除で失敗する人の多くは完璧を目指して何から手をつけていいか分からずに挫折する。
完璧ではなく、出来る所をできるだけでいい。
それを続けていく事が掃除のスキルアップにつながる。
さあ、今日の掃除はこれで終わりである。
この原稿を書きながら部屋の衣替えをしたわけで、今、私のタンスはまっさらなスペースが広がっているのだ。
つまり、ここに新作の服をこれでもかと詰められる訳で……
止めてくれるなマリコよ。今の私はおしゃれ河童なのだ。
かくして小説家春河童大都会に消ゆ。
その先は語らなくていいだろう。
人はこうして賽の河原を崩してゆくのである。
バルジの戦いでアントワープに行かずにミューズ川の橋を片っ端から叩き落すがごとく
『シミュレーション戦記 第二次世界大戦史 (5)』 (ケイブンシャブックス K‐79)
掃除してたら出てきたのでつい……