私は休むのが下手   作:北部九州在住

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閉店間際のスーパー銭湯リセット (by朝倉さくら)

 売文稼業に昼も夜もないくせに、締め切りだけはちゃんと時間通りにやってくる今日この頃いかがお過ごしでしょうか?

 今、まさに修羅場真っ只中なのだが、目がちかちかする。腰が痛い。肩が動かないと体が悲鳴を上げた結果、

 

「モー無理! 天野はるかリセットします!!」

 

と相成ったのである。

 とはいえ、時間は10時を回ったぐらい。

 女一人がリセットをするには遅い時間であって……

 

「そういえば、さくらの奴が言っていたスーパー銭湯のリセットがあったな。

 それをやってみるか」

 

 思い立ったが電話を取ってタクシーを予約。

 車を持たなくても生活できる首都圏の私と、車がないと生活そのものが成り立たない地方民の朝倉さくらとの生活環境の差をここで思い知り、苦笑して自然と体がリセットの方向に向かっているのに気づいたのだった。

 

「予約していた天野ですが」

「はいどうぞ。それでどこまで?」

「スーパー銭湯〇〇までお願いします」

 

 ちなみに、温泉と銭湯とスーパー銭湯の違いはご存じだろうか?

 ぶっちゃけると法律の違いでもある。

 温泉法で規定されているのが『温泉』でこの法律の管轄は環境省。

 公衆浴場法で規定されているのが『銭湯』および『スーパー銭湯』でこの法律の管轄は厚生労働省だったりする。

 たかが温かいお湯と侮るなかれ。

 温泉はお湯そのものに定義があり、銭湯は日常生活の衛生面を支えるという使命がある訳で、お役所仕事にも立ち位置とその仕組みの違いというのは見る人が見れば面白いとは今回の話をしてくれた朝倉さくらの言葉である。

 というか、そういう所から官能小説を書こうとしていたからあんた官能小説デビューできなかったのではと何度突っ込んだことか……話がそれた。

 

「お客さん、今からスーパー銭湯ってお風呂でも壊れたのかい?」

「いいえ。体が疲れてサウナに入りたいなーと思って」

「ああ。『整う』ってやつかい?

 確かに気持ちいいもんだ」

「ですよねー」

 

 銭湯は日常生活の衛生面を支える使命がある為、法律がかなり厳格に規定されている。

 例の病気の時にSNSで話題になったそうだが、唯一生きている『勅令』が物価統制令で入浴料金についてだから、その歴史はかなり古い。

 一方、スーパー銭湯は娯楽施設としての要素が高いという事で『その他の公衆浴場』に分類される。

 まぁ、価格を自由に決められる為それに見合うサービスをという訳で、こういう夜遅くまで営業できるのもスーパー銭湯の売りの一つである。

 ロードサイドのスーパー銭湯についたのは11時前ぐらい。

 裸になって、お湯につかり、何もしないのである。

 

「ぷはー。いい湯だわー♪」

 

 そう。何もせずにただ広いお風呂に入るのである。

 それだけで心と体がリフレッシュできるというもの。

 湯に浸かる事15分ばかり。今度はサウナにお邪魔します。

 

「おー。貸し切りじゃない!」

 

 平日24時閉店間際のスーパー銭湯のサウナなんてほぼ常連客しかいない為に貸し切り

サウナという事もよくある話。

 ここで汗を出して、できればどろっとした汗が出るまでサウナを堪能するのである。

 

「はるかは運動しているから、あまり気にしてないでしょうけど、私みたいな運動していない人間は、サウナに入ると汗の種類が変わるのよ。

 最初はサラサラ汗なんだけど、ドロッとした汗に。

 副交感神経が刺激されている証拠なのよね」

 

 だから、そこまで分かるならなぜ運動しない。朝倉さくらよ。

 そんな事を突っ込みながらも、出た汗をぬぐうとどろっとしていた。

 なるほど。体が悲鳴をあげる訳だとサウナから出てシャワーを浴びる。

 整いたい所だが、それをするにはとち時間が足りない。

 閉店間際のスーパー銭湯というのは、そういう意味でも時間が足りないのである。

 だからこそ、湯に浸かるだけを目的にあとは基本何もやらない。

 贅沢な使い方と言えよう。

 23時ぐらいに湯に浸かり、出たのは24時15分前。

 女の場合髪の乾かしが本当に時間がかかるのだが、時間を確保する為にも何をするのかとしないのかを決めるのがこの閉店間際スーパー銭湯入浴術という。

 ラフな格好でタオルを首に巻いて額の汗を拭きながら帰りのタクシーへ。

 行きとは違うタクシー運転手だった。

 

「スーパー銭湯帰りですか。いいですねー」

「すいませんね。こんな格好でくつろいじゃって」

「構いませんよと言いたい所ですが、送り終わったら俺も入るかな? スーパー銭湯」

「あはは」

 

 今回私が入ったスーパー銭湯は24時までだったが、24時間やっている所もあるのでこういう職業の人も良く使うのだという。

 で、家に到着。

 ここからが、このスーパー銭湯術のキモと朝倉さくらは言っていた。

 

 

 そう。家に帰ってシャワーを浴びるのである。

 

 

 体を洗わなかったのもこのためである。

 家でシャワーを浴びながら体を洗い、スーパー銭湯の余韻を楽しみながら、体を洗い髪を洗いと日常に体を戻してゆくのだ。

 

「あ。なるほど。

 これ、旅の後のリセットと同じだ」

 

 スーパー銭湯という小旅行を堪能し、家のお風呂で日常に回帰する。

 さくらもさくらで、日常と非日常をこうやってオンオフしていたのかと納得しながら風呂上がりの冷蔵庫にスーパー銭湯帰りのコンビニで買ってきたおビール様が!!!!!

 

 これいいわ。

 こんど奴にはお礼を言っておかないと……

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