私は休むのが下手   作:北部九州在住

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春河童 はじめての政治パーティー

 政治パーティーと言えば、昨今の報道で叩かれたものである。

 そんな批判があれどもこのパーティーがなくならないのは、とても簡単な話。

 政治というのはお金がかかるからである。

 

「さくらー。こっちこっち」

「おー。春河童先生ちゃんとお色気系のドレスを身に着けてえらいえらい」

 

 そういう朝倉さくらはバリバリ夜系で、私たちもちょっとしたパーティードレス装備。

 そう。私たちなのだ。

 まりこだけでなく、観音さんに、雨露しずくちゃんまでお色気パーティードレス装備。

 今回のコーディネート注文は、その経験者のさくらである。

 

「いい。あの手のパーティーは綺麗どころのおねーさんはちやほやされるのよ。

 金と権力をもてあそぶ連中で女が嫌いな奴はまずいないわよ」

 

 ひどい言い方であるが、これも私が応援した都議会議員の先生のパーティーだからこそ。

 さくらに言わせると譜代として客をもてなす側なんだとか。

 なんというか、さくらと話すと現実の政治というより時代劇の空気を感じるのだが……

 

「あら。当然よ。

 この国は武家が天下を取ってから田舎、地方が政治を動かしてきたのだから。

 地方のノリで政治をやり過ぎると、政治資金規正法でアウトになるのが令和の世知辛い所なのよねー」

 

 そんな事を言っているさくらだが、バリバリ戦闘モードに入っている。

 というか、9月8日の夜に即電話をくれたのが彼女である。

 

「はっきり言うわ。これから荒れるわよ。

 あなたのいる場所、関ヶ原前夜と思いなさい」

 

 勝てば大大名。負ければお家滅亡。

 ああ。なるほど。こいつ時代劇適正もあるなとは思ったが、その源流はここか。

 

「いや、私の応援している先生は都議だから国政は……」

 

「なに言っているの!?

 都議ってのはね、選挙区国会議員から見れば家老・重臣格なのよ。

 ましてや、風で勝ち負けが簡単に入れ替わる首都東京の都議会議員。

 もう中立は許されないのよ!!」

 

「はい!!!」

 

 そんなわけでパーティーにやってきたのだが、まず買わされるのが本である。

 議員本人の本であったり、議員のボスの人の本であったりするが、お値段は少しお高め。

 そして、パーティー券を渡してパーティー会場に入る。

 なお、パーティー券もお値段はそこそこしたりする。

 で、出てくる料理が基本しょぼい。

 さくらが解説してくれる。

 

「当たり前でしょ。

 このパーティーは選挙資金を集めるために行うんだから。

 パーティー券の代金と本の代金の利益が選挙資金になるんだけど、パーティーの経費を安くすればするほど選挙資金に回るって訳」

 

 政治に絡んでいなかったら知らなかったこんなトリビアである。

 パーティー券に関するからくりもさくらは教えてくれた。

 

「見ると明らかにこの手のパーティーに来そうもない人がいるでしょう?

 あれは、ただ飯の為に数合わせとして呼ばれたんでしょうね。

 パーティ券を会社で買って、社員にただ飯を奢るという名目でこの場に連れてきているのよ」

 

 限りなくグレーというか今だとNGっぽいやり方である。

 じゃあ、パーティーやめたらと思う私だが、さくらがとても邪悪な笑みを見せて人の欲深さを指摘してくれる。

 

「パーティーなくしたらどうなると思う?

 ジュラルミンケースでぶん殴りに来るわよ」

 

 ジュラルミンケースというのは一億の隠語だそうな。

 汚職というか人の業は深いとさくらを見てしみじみ思う。

 

「いい。

 はるかたちは笑顔で男どもにお酒を注ぐだけでいいから。

 コンパニオンに徹して頂戴。

 難しい話になったら私が出るから、その時には呼んで」

 

 頼もしい事この上ないが、さくらがここまで出張るのには理由がある。

 当人地方の政治に絡んでこういう事をしていただげあって、上京時にわざわざ私が応援した先生の所に挨拶に行って話を聞いてきたらしい。

 で、『あ、これまずい。間違いなくジュラルミンケースでぶんなぐれる』と確信したからだそうで。

 

「はるか知ってる?

 議員話してくれたけど、湾岸開発したいんだってー。

 で、蒲蒲線するけど、大田区としては、それにかこつけて京急蒲田とJR蒲田の間を再開発したいんだってー」

 

 一緒に居た観音さんの方がそれを理解してぽつり。

 

「桁が一つ上がるね。それ……」

「最近は外人系も絡むからね。外人は容赦ないわよ。ジュラルミンケース」

 

 という訳で、バリバリ警戒モードなのである。

 パーティーが始まると議員先生の挨拶に続いて国会議員や自治体首長の眠たくなる挨拶が続くのだが、そうなると参加者の男どもが私たちの胸をまぁこれでもかとみる訳で。

 男のチラ見は女にはガン見でバレバレである。

 マリコは大手企業秘書経験から男どもをあしらい、つゆちゃんは付き添いの夜道氏のフォローで男どもをあしらっている。

 観音さんは場に溶け込んで経営系の話で盛り上がれば、男どもの狙いは当然私に向かう訳で。

 

「これは凄いな。どこのお店なのかな?」

 

 金と欲望だっぷりの脂ぎったおっさんが私に近づこうとして、待っていましたとばかりにさくらがインターセプトする。

 夜嬢の名刺を出しながら、即座にトークで場を支配する。

 

「だめですよ。彼女ペンの人ですから書かれちゃいますよ♥」

「なんだブン屋さんか。危ない危ない。

 君はそっちなのか。良ければこの後良いお店で政治を語らないかい?」

「それもいいんですけど、最近愛人の費用出すの難しくなったじゃないですかー。

 お金を払ってワンナイトなお付き合いが一番ですよ♥」

 

 すげぇ。

 名刺交換で色気を出しながら、『私愛人契約OKです』ってアピールしているのに全部振りやがる。

 政治トークしながら愛人契約もちかければ、『私、そっち系のひも付きですけど』と向こうが勝手に解釈していくれるんだとか。

 なお、福岡に行って金払ってワンナイトなお付き合いをした連中は、まだ老いて盛んな昭和の方々だったと後のさくらは語ってくれた。

 

「みんなお疲れ様。

 こういう場所は、一度は来ておくと創作のネタにはなるわよ。

 人の欲がダイレクトに見れるから」

 

 そう。

 あくまでお金のやりとりはなし。身内ゆえボランティアなのだ。

 その分私たちはネタとして書ける事で利益を得ているのだが。

 さくらは、オチとしてこんな事をいいやがったのである。

 

「まぁ、お金持ちになりたいなら今回のをネタにして簡単になれる方法があるから、教えてあげるわ。

 お金があるなら、再開発前にその土地を抑えておくと値上がりが期待できるわよ。

 そこまでお金がないなら、その再開発に絡む不動産デベロッパーの株を抑えておくといいわ」

 

「はるかくん。さくらくんの今の言葉をするとインサイダー取引になりかねないから気をつけたまえ」

 

 うわぁ……政治って本当に魑魅魍魎の巣だわ……

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