私は休むのが下手   作:北部九州在住

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緊急対談!AI小説について語るという体の宴会

 蒲田。某所。

 集まったのは私と朝倉さくらと月ノ瀬観音さんの三人。

 

「かんぱーい!」

 

 まぁ、AI小説の話題とかこつけてまた中華をという話である。

 酒も入っていい気分なのだが、観音さんが当然のようにボイスレコーダーをONにする。

 

「という訳で、昨今とうとう話題になったAI小説について大いに語ってもらおうじゃないか!」

 

「いやまあ、私はわかるんだけど、何故にはるかを?」

 

「愚問だな。さくらくん。

 はるかくんはそもそもAIを使えないじゃないか」

 

「なるほど」

 

「あはは……」

 

 いまだブラック企業時代のトラウマから電子機器にトラウマがある私、天野はるか。

 マリコが居なかったら間違いなく小説家として暮らせていない自覚がある。

 

「という訳で、はるかくんにはAIを使わない小説家として、さくらくんにはAIを使う小説家として大いに語ってもらいたのだよ!」

 

「いやまあ、語れと言われれば語りますけどぉ……

 はるか。ちなみに騒動の発端は知ってる?」

 

「なにかあったの?」

 

「ですよねー」

 

 盛大にため息をついてウーロン茶を飲むさくら。

 この話題がSNS上で界隈を賑わせているゆえに、その界隈から離れている私はまずニュースを知る所から始めねばならないのは、今の高度情報化社会においてデメリットだろう。

 

「事の起こりは投稿小説サイトでAIが書いた奴が一位になった事から始まるのよ」

「ほえー。とうとうそこまで来たのかー」

「AIはイラストでも炎上して騒動になったのだよ。それが小説に来たと」

「で、炎上している理由って何なの?」

 

 私の質問にそこ出身のさくらが応える。

 彼女はこの騒動の前からAI利用を公言しているから、そっちの旗を振って戦っているのだとか。

 

「理由が二つあるの。

 まず一つ目は、投稿数。

 一日38本更新」

 

「38本ですって!?」

 

 さすがにその数に驚く私。

 さくら曰く、一回の投稿文字数はweb小説なら少ないのだが1000字でも38000字。2000字なら76000字である。一日で本ができる文字数は知らない私からすれば脅威でしかない。

 

「で、間の悪い事に、投稿小説サイトはリワードというインセンティブを始めようとしていたの。つまり、読んでくれる人が広告を見てその報酬の一部が作者に振り込まれるやつ。そうなると、リワードで稼ぐためにはランキングに入らないといけないから、この数は驚異よ。しかも、ランキングに特化した小説ときたもんだ」

 

「うわぁ……」

 

 さくらの説明になんとも言えない顔をする私。

 さくらは酔ってないのに、艶っぽく明朗に続きを口にする。

 

「もう一つはコンテストに対する脅威ね。

 大体Web小説のコンテストって一次を突破する作品は200から400ぐらいあるのよ。

 AI小説使いが数に物を言わせて送り込んだらって戦々恐々している訳」

 

「けど、さくらくん。

 それって、作家側の問題であって、読者側の問題じゃないよね?」

 

 さすが観音さん。

 堂々と前の宴会で私たち相手に『人の心がわからない』と言い放っただけある。

 

「ですよー。

 つまるところ、困るのは私たちであって読者はそれを求めている限りはその需要は正義なわけです」

 

「身もふたもない事をどうどうと言うわね。さくら」

 

 

 

「だってはるか。AIに仕事を奪われても私たち小説書き続けるでしょう?」

 

 

 

 ああ。さくらの強さはここにあるのか。

 私も観音さんも、この時のさくらの凛とした顔にちょっと惚れた。

 

「とはいえ、これも私たちは先に小説家として世に出ているからなんだけどね。

 本当にWeb小説バブルの最終電車に乗れたんでほっとしているわよ。私。

 まー、小説家として楽ができるのは短い夢に終わりそうだけどね」

 

「さくらくんは兼業作家だったよね?」

 

「そうですよー。正直、一巻で打ち切りも覚悟していましたが、めでたく六年目突入です!!

 夜の仕事も辞めてないので、打ち切り食らってもなんとか生きていけます」

 

 こいつそーいう所そつないんだよな。

 そんな事を思っていたら、観音さんが私に話を振ってくる。

 

「で、はるかくんはAIについてどう思うのかな?」

 

「数は驚異ですけど、結局書かないとどうにもならないんですよ。小説って」

 

 後輩のひろせとら君にも言ったけど、私たちは詰まるところ書いてなんぼなのだ。

 どこぞのラーメンハゲの言葉ではないが『情報を食っている』小説において、書かねば始まらぬし、という所で私は気づく。

 

「さくら。

 AIがweb小説を学習して作品を作るって事は……物語終わらせられるの?」

 

 その質問ににやりと笑うさくら。

 どうやら当たりだったらしい。

 

「そのとおりよ。はるか。

 現役作家でも難しい『終わらせる事』が彼ら致命的に下手なのよ。

 まあ、打ち切り食らって続きが出ないなんてこの業界……げふんげふん」

 

 さくらのわざとらしい咳き込みに私と観音さんは目を反らしてみないふりをする。

 観音さんは私とさくらを見比べて、こんな事を言ってこの場を〆たのである。

 

「AIが小説家になった際に少し寂しいのは、こうやって宴の席に引っ張り出せないことだな。人と人は最後は繋がるものなのだから」

 

 別れの席で『AIで実害食らったらそれでやけ酒だ!』なんて約束はAIにはできないだろーなー。

 小説家とは、良き事も悪き事すらもネタにする生き物なのだから。

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