私は休むのが下手   作:北部九州在住

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山形県と新幹線と芋煮

 雪国で雪見したい!雪見温泉につかりたい!!

 

 そんな事を思っていたら、マリコが手配してくれて新幹線に飛び乗っていた。

 目指すは山形蔵王温泉。

 今は新幹線で気楽に行けるのだが、この新幹線も万全ではないのが困りもの。

 

「福島駅がねー。ネックなのよー」

 

 だからお前九州人だろう。脳内朝倉さくらの解説によると、福島駅にボトルネックがあるのだとか。

 東北新幹線と山形新幹線分岐駅の福島駅の渡り線が一線しかない。

 ここで良く詰まるので現在渡り線をもう一つ作っているのだとか。

 

「これ、結局北海道新幹線対策なのよ」

 

 だがらお前は九州人だろう。朝倉さくらよ。

 彼女の脳内解説だと、現在絶賛工事中の北海道新幹線札幌延伸工事は東京と札幌を四時間で結ぶことを目指しているのだが、その為にボトルネック解消をしているそうで。

 

「ミニ新幹線はね、在来線を使っているのだけど、それの問題は在来線装備だから雪も在来線規準なのよ。

 結果、大雪で秋田・山形のニミ新幹線が詰まってそれが東北新幹線や北陸新幹線に波及……」

 

 こいつ鉄オタだなと今更気づいて朝倉さくらに突っ込もうとしたら、脳内朝倉さくらはこう言い返しやがった。

 

「今の公共事業は道路がメインだけど、昔はダムと鉄道が公共事業の華だったのよ」

 

 あー。ここで奴の得意分野の政経に絡むのか。

 納得。

 

 福島駅から東北新幹線から分かれた山形新幹線はえっちらおっちらと雪山を進む。

 これが難所板谷峠で、ここの雪で山形新幹線が止まる事もしばしば。

 その為、山形県はJRと組んでここに新しくトンネルを掘る事を計画しているとか。計画段階の費用で2300億円なり。

 この金額はそりゃ政治が絡むわと納得したわたし。

 

「まりこー。何で山形新幹線はミニ新幹線なんだろう?」

「私に聞かれても知らないわよ」

 

 ここは脳内朝倉さくらに……はさすがに無理だからマリコ経由でSNSのメッセージを送ったら、返事は即座に来た。

 

「理由は簡単で、『山形県だけで完結できたから』よ。

 新幹線は複数の県が跨ぐ公共事業の中でも本物の伏魔殿の一つなんだけど、山形県って大きいでしょう?

 県の中で調整が片付くのよね。

 同時に、県の中で片づけたから、お金があまりかけられなかったのよ。

 東京直通が一時間に一本から二本確保できているのは本当に大きいのだけど、同時に、ミニ新幹線にした結果性能に制約が出るから、このミニ新幹線を嫌う自治体も多くてね……長崎新幹線……うっ。頭が……」

 

 解説ついでに余計なトラウマまで掘り返した女。朝倉さくら。

  

 ちなみに、私たちは東北新幹線ライン、つまり青森・岩手・宮城・山形内陸部へとよく出向いているのだが、朝倉さくらはデビュー小説の取材がてらに酒田市側に行っているらしい。

 私たちが目指す蔵王が山形新幹線から見て東側にあるとしたら、奴のテリトリーはその西側、月山や鳥海山なのだ。

 もちろん雪国なのだが、あ奴は6月にしか行っていないとか。

 

「元々バースデー割引で福岡-新潟が安かったら行っていたのよ。

 私みたいな九州人が冬にあのあたりに行ったら遭難するじゃない」

 

 身の程を知る女。朝倉さくら。

 冬の東北地方で雪の中を走る恐怖を回避する事を賞賛すると同時に、「来いよ!さくら!!対雪装備をつけてかかってこい!!」と某コマンドーばりに煽りたくなる私。

 結果、今回の話題に繋がる。

 芋煮である。

 

 私とさくらが会ったとしよう。

 互いに山形に旅行に行った身。

 とうぜん美味しいものの話になる。

 

「芋煮食べたよー」

「美味しかったよねー醤油味が」

「え?芋煮ってみそ味でしょう?」

 

 SNSで話題になる東北地方の闇、芋煮大戦である。

 ここでご当地戦争を勃発させても仕方がないが、山形市のある山形県内陸部は『牛肉しょうゆ味』、さくらが行った酒田市などがある庄内地方は『豚肉みそ味の芋煮』なのだ。

 あやつは、それで芋煮を食べた後に「これ豚汁……」と店員に言いかけて笑顔で黙らされたとか。

 こんな事が起きるのも文化的には、山形海岸部『庄内地方』と呼ばれる所は山形県よりも新潟県の方が文化的に近いとかで。

 そのあたりの違いは時代劇まわりの力点にも違いがあったりする。

 県庁がある山形市は武家の街の色彩が強く、近年強くアピールしているのが戦国時代の大名最上義光だったりする。

 一方の酒田は商人の町として知られ、

 

『本間様には及びもせぬが、せめてなりたや殿様に』

 

と謳われ栄華を誇った本間氏をはじめとした町人・庶民視線がかなり強い。

 

「藤沢周平記念館行ってきたのよ。

 小さな書斎が座敷牢みたいでね。

 あ、これエロ書けるなって」

 

 おま、藤沢周平記念館行ってあのエロ仕立て上げてきたのか!!!

 朝倉さくら。

 エロを書きたくて、書き続けて、なぜか政経悪役令嬢でデビューした女。

 

 なお、私が『芋煮食べたい』とぼやいたのを何処からか聞いたあやつは、月ノ瀬観音先生の所に新刊を送った際に芋煮セットをつけてくれた。

 しっかりと山形風醬油味と庄内風味噌味の二つを。

 

 こんな女だが、政治に絡むことになった際にはきめ細かにアドバイスをくれた女だったりする。

 

「無党派の……無党派の大波が来るわ……郵政アゲイン……」

 

 あ、あいつこの間の解散総選挙でまた脳を焼かれてる……そっとしておこう……

 




板谷峠のトンネル費用について
鉄道新線「次の開業候補」を総ざらい〔2〕 期待値の高い路線はココだ! https://tabiris.com/archives/newlinecandidate2026-2/ @旅行総合研究所タビリスより

芋煮会
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%8B%E7%85%AE%E4%BC%9A
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