私は休むのが下手   作:北部九州在住

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温泉リセット 大分県 長湯温泉

 九州なのに七県とはこれいかに?

 今の九州は、福岡・大分・熊本・佐賀・長崎・宮崎・鹿児島・沖縄の七県である。

 正解は、旧国名で、筑前・筑後・豊前・豊後・肥前・肥後・日向・薩摩・大隅で九州。沖縄はこの時入っていないのである。

 同じく、国扱いだった壱岐・対馬も入っていない。

 まぁ、調べれば面白い話が出てくる九州うんちくはひとまず置いておいて、やってきました!大分県!!

 しっかし、空港が遠い!

 国東半島にある大分空港から対岸が大分県の県都大分市で、その隣が温泉県おおいたの中心である別府市である。

 この連絡にホバークラフトが走っていたりするが、微妙に連絡がよろしくなく目的地を考えたらレンタカーの方がという事で、高速を使って目的地の長湯温泉へ。

 ドライブがてらに現地ならではの飲み物を購入。

 カボスジュースである。

 これも大分県がかぼすの産地だからという事でレモンより甘くなくて酸っぱいが、後味は悪くないといった所。

 あ、くまもん発見。

 あいつ、クマが絶滅九州の地にて着々と勢力を広げており、福岡や大分はやつの占領地という事なのだろう。

 

「しかし、何でここなの?」

 

 離れていることもあって、空港からそのまま高速道路につながる道を走りつつマリコの質問に答える。

 

「日本では珍しい単純炭酸泉。いわばラムネの湯なのよ。ここ」

 

 そんな事を言いながら車は高速と言う山道を登る。

 えらく勾配がきついなと、九州に住む朝倉さくらにマリコ経由で質問を送ったら、しゅばばっっとレスを返してくれた。

 

「なになに……元々は先に大分道ができて、そのあとに東九州道が作られて、その東九州道の前身である宇佐別府道路に繋がる形で作られたと。

 地形的に山の稜線を縫う形で作られたから、見晴らしは絶景……だって」

 

 速水ICから日出JCTを一路湯布院方面へ。

 最高高度734メートルの山登りから一気に降ると見えてくるのは一大観光地の湯布院盆地。

 この玄関口である湯布院ICで降りて車は一路国道210号を南下し、県道30号に乗り換えるのだが、走りやすい事この上ない。

 

「そういえば、さくらが言っていたわね。

 九州の夜は怖くないって」

 

「怖くないって何か?」

 

「オオカミが絶滅し、九州では熊も居なくなった。

 怖いのは人だけって」

 

 あいつ山形旅行で熊の怖さを知ったらしく、九州の山をドライブする時にそれを思い出すのだそうで。

 この山の景色も住む人が違えば景色も違って見えるという一例だろう。

 このあたりの事を『やまなみ』と言うらしいが、山々が連なって見える景色を指す言葉というよりも、同じぐらいの高さの山々が波のように連なると言った方がいい。

 そんな日本の原風景みたいな山間部を更に下る事一時間ばかりで長湯温泉に到着する。

 温泉協会の宣言文に、

 

「簡潔にして格調高い…今風に言えば『企業使命文』じゃない…!

 あなどれないわねここ……!」

 

とマリコが感銘を受けたり、窓から丸見えのガニ湯になんともいえない顔をしたりしつつまずは一泊。

 ラムネ温泉館にて湯治としゃれこむ事に。

 

 飲泉できるのだが、温かい炭酸水という感想。

 ラムネ温泉だから当然の感想である。

 湯船に浮かぶしゅわしゅわな泡。

 これが見たかったのだと湯につかるとぬるい。

 湯の温度は32度なので、春先だと少し寒いがそれでものぼせる事無く長く浸かっていると、ラムネの泡が己の体にまつわりついてゆく。

 

 長湯温泉の歴史は古い。

 記録では風土記に書かれているぐらいで、湯治場として栄えだしたのは江戸時代に入ってから。

 宝永3年(1706年)8月、この地を治めていた岡藩主・中川候の入湯宿泊の便をはかるために、温泉を取り込んだ御茶屋が建設されたのがきっかけとなる。

 が、いかんせん立地がとてもよろしくなかった。

 北には絶大な知名度を誇る、別府・湯布院があり、南にはこれまた観光地として申し分ない阿蘇・高千穂がある訳で。

 そんな中、この長湯温泉はその炭酸泉とその効能で勝負に出た。

 炭酸泉の効能は以下の通り。

 

・血管を広げ、血液量が約1.5倍になる

・毛細血管の活動が活発になり、腰痛が和らぐ

・血圧が下がる

・体内の酸素濃度が上がる

・通常のお湯に比べ約3倍の保温力がある・体の表面が弱酸性になり美容効果がある

・代謝が活発になり、筋肉痛や関節痛の原因となる乳酸の減少を早める

 

 やがて、温泉治療学の見地から炭酸泉の効能を科学的に解明すると、昭和文壇の著名人を湯治に招待するなどの活動によって徐々にその名前が知られるようになる。

 そんな長湯温泉に滞在した文人と言えば与謝野鉄幹・晶子夫妻に種田山頭火、北原白秋などなど。

 このような地道なPRも戦争で一時中断したのだが、昭和から平成に移りレジャーが家族から個人に移りつつある中でその炭酸泉の唯一無二性がしっかりと客を掴んで現在に至る。

 ラムネ温泉サイダーも美味しい事と言ったらもぉ……

 ホットチャイを堪能しながら久住の山々を眺める。

 

「ねえ。マリコ。私たちも湯治としゃれこんで……」

「その間仕事はどうするの?はるか?」

「……はい」

 

 現代社会は世知辛いのである。

 私もせめて一句読むとしよう。

 

 陰毛が 白くなるまで 湯治かな

  河童の姿 しばしとどめむ

 

 マリコがジト目で睨んできたが見ない事にしよう。

 また、炭酸温泉に頭から浸かるのは御免だから。

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