私は休むのが下手   作:北部九州在住

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『はるかリセット』63話を読んでいたら不意に降りてきたので、データが消し飛ぶトラブルをもろともせず大急ぎで投稿。



大人向け 春河童流創作覚悟のススメ 官能風味

 一応私も売文稼業。

 本屋に己の本が置かれる身として『作家になるには?』なんて質問を聞く事が結構ある。

 そんな訳で、少し大人向け、職業としての売文稼業について語ってみたいと思う。

 大人向けなのは、露骨に欲が入るからだ。

 

 

 あなたが本当に作家を目指すならば、本屋に行きなさい。

 そして、その後に古本屋に行きなさい。

 この二つを欲で見てみると、作家というものの業が見えて来る。

 

 

 私はよく『売文』と口にするが、この蔑称の意味は己の書いたものを金に換える所にあり、この国では金が汚いなんて言われるが、漢字というのは便利な物である。

 『文』の漢字を『春』に変えてみよう。

 『売春』である。

 こんな感じで、体は売らないが文を、ある意味学を売るという事で売文という蔑称は作られたのだろう。

 『作家は精神のストリッパー』なんて言葉があるのだが、その言葉の本質はこんな所にあるのかもしれない。

 

 

 で、これで終わるようならば、貴方は作家に向いていない。

 

 

 考えてみて欲しい。

 作家という生き物は本を売って生活している訳で、本が売れなければ生活できない生き物なのだ。

 高尚な文学結構!

 清貧にて世を嘆き、文で世界を変える気概も結構!!

 だが、食わねば人は死ぬのだ!!!

 そして死んでしまえば!作品は作れないのである!!!!!

 

 だったら売るしかないじゃない!!!!!!

 

 さあ。

 こんな色眼鏡で本屋に入ってみよう。

 そこにある知が、欲に変換される。

 貴方が居るのは、知の歓楽街。学問の吉原。

 古の寵姫から、最新鋭のギャルまでが、貴方という読者を取り込もうとする絡新婦の巣である。

 

 そう。

 『知る』という快楽を読者に与え、高尚な気分に誘い、無知から知へ禁断の林檎を食べさせるのである。

 

 ほら。

 本の表紙たちが着飾った花魁たちに見えて来る。

 手に取ってくれと飾り窓の向こうで読者を悩殺してくるのだ。

 洒落たタイトルや帯の一言に背表紙のコメントまでが公私越しの花魁たちとの小粋なやり取りとなり、ここで読者を誘える本が手に取られて千夜一夜の一夜に誘うのである。

 

 さあ。

 作家の貴方はこの人類が楽園を追放されてから延々と続けられる快楽の都の新参者だ。

 目立つ所に大御所大夫が花魁行列よろしく平積みされており、時代を超えて愛される寵姫の物語は時代が変われども読者を虜にし続ける。

 こんな宴の中で貴方は何を持って読者を虜にする?

 それが言える人間が『作家』という花魁に成るのである。

 

 

 

 それを踏まえた上で、今度は古書店に行ってみよう。 

 書店と古書店の違いは、古書店は売られた本がやって来るという点。

 つまり、古書店にある本たちは全て読者を獲得した本たちであるという事。

 百戦錬磨のリリスの群れが本棚から読者であるあなたを見ているのだ。

 読者が本を選ぶのではない。

 本が読者を選ぶのだ。

 彼女たちの与える悪魔の林檎に溺れろ。

 

「さすれば、貴様も『作家』と呼ばれるだろうよ……!?

 ゲフンゲフン……」

 

 いかんいかん。

 すっかり思考が花魁リリスと化して自然と台詞が口からこぼれてしまった。

 この古書店に自分の本が置かれた時の悦楽たるや!!!

 最低でも読者の一人を蕩けさせてここに送り込んだ証拠に他ならないのだから。

 あ。私の本発見。

 こうやって古書店で本を見つけた時、その瞬間だけは、私もこの店の商品の一つとなり男をたぶらかした花魁リリスとして本棚に鎮座する事になる。

 これは、作者にとって至上の喜びである。

 ああ。

 今日もまた本棚で鎮座している我が娘よ。

 いずれ第二第三の娘たちがそこに座るのでその場所を温めるもよし、また読者を捕まえて知の快楽に溺れるもよし。

 どちらにせよ、読者を誑かせたお前は私が生んだ最高の娘の一人だよ。

 

「これからも末永く宜しく頼む……ゲフンゲフン」

 

 おっと。つい、親バカならぬ作家馬鹿が出てしまうところであった。

 まあ、本というのはそれだけで一つの作品であり、作者の分身と言っても過言ではないので、そういう意味では当然の事なんだけどね。

 しかし、こう考えると作家って奴は本当に業の深い生き物だよね。

 こんな風に作家という生き物の本質を語れるのも作家という職業の特権であり、同時に作家という生き物が抱える病でもある。

 

 いかがだろうか?

 作家という生き物の業の深さを感じ取って頂けただろうか?

 何よりも我ながら救いがないなぁと苦笑しているのは、この幻想が見えた時一心不乱にそれをメモに取っていた己の姿。

 そして、その時の顔が店の窓ガラスに映っていたのだが、まぁ世の女子がしてはいえない悦楽の顔が。が。

 最近はスマホにカメラがついてSNSにUPされるご時世。

 己が知の歓楽街に巣食う花魁リリスに成って読者をもてあそぶのは紙の上だけで十分。

 何しろ作者は神さまでもあるのだから。ただしくは『紙さま』なんだろうが。

 おあとがよろしいようで。

 

 

「あ、〇〇出版の××さん?

 春河童ですが、次の官能小説のネタが浮かびまして。

 ええ。花魁リリスをテーマにした異世界吉原もので……」

 

追記

 花魁リリスだろうが、知の絡新婦だろうが、こういう努力なくして読者は食えないのである。




作家は精神のストリッパー
 誰が言ったか知らないがえらく心に残っている言葉で、今回グーグル先生で調べるとエッセイストと雨宮まみさんという方が言っていたらしい。
 ただ、確証が得られないので、知っている方がいらっしゃったら情報プリーズ。
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