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「………」
「ん……」
ガタガタと今にも崩れそうな音を立てて山道を走るフェンリルのトラックの中で、安らかに眠るアリサの頬を輪郭に沿ってゆっくりと触れる。
今さっき、ほんの数十分前まで死と隣り合わせ…いや、死神的な奴が俺達全員の首に鋭利な鎌をあてがっている様な状態だったのにも関わらず、彼女は警戒心の無い、心から落ち着いた様子の表情を崩さずに小さな寝息を立てている。
「眠り姫みたいだね…全く起きないや」
「朝から具合が悪いって言ってたからな…仕方ねえよ」
「でも、アリサちゃんが居れば…〝こんなこと〟にはならなかったよね…」
トラックの運転席の方に丁寧に並べられた〝それ〟を横目に、ショートカットの彼女…パスカルは言った。
それに釣られて、俺も黒いビニールシートに包まれた〝それ〟に…目を背けたい〝現実〟に目を向けた。
「ん…景…?」
そしてそれから視線を逸らすと、グッスリと眠っていたアリサが目を覚ました。
アリサは育ちがいいのか…すぐに乱れた髪を整えると、まだ寝足りないと言いたげな目で俺達2人の顔を交互に見る。
「アリサちゃん、おはよう」
「パスカルさん…あれ?今回の任務は3人だけでしたか…?」
「……さあな」
と、俺はまだ少し乱れていたアリサの髪を整えながら言った。
…本当は、俺達3人を含めた7人の小隊だった。
感応種の調査…かなり難易度が高かったがやはりクレイドルの精鋭、任務は極めて順調に進み、難なくクリアして帰投準備に取り掛かり始めたところで……
未知のアラガミに襲撃を受け、3人の命を失いながら、命かながら逃げ出したのだ。
繰り返すように、自分に戒めを刻む様に、もう1度だけ…ビニールに包まれた〝仲間だったモノ〟を見る。
さっきまで一緒に彼女の事や家族の事、趣味やバガラリーの事…くだらない事を言い合っては手を叩いて笑あってたのに、今ではただの死体…モノだ。
仕事柄、こういう割り切らなければならない事は多々あるのだが……これだけはどうしても慣れない。
「……景」
「ん?」
「景のせいではありませんよ。そんなに思い詰めないでください」
「…仕方無いよ。この3人だって、こういう事になる可能性があるのを知っててやってるんだから」
俺の心を読んだのか、表情を見て悟ったのか…2人は無理矢理な笑顔を浮かべて言ってくれた。
そんな2人に同調して俺もなんとか笑顔を浮かべたが…それを聞いてさらに気分は沈んだ。
俺なら助けられたのに。
俺ならあの状況を打開できたはずなのに…
そんな事を考えながら、俺はまたそれを見る。
温もりの消えた仲間達だったもの…仲間達の亡骸を横目に、俺はゆっくりと瞳を閉じた。