東方転心録~少女無表情~   作:ミユメ

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転生モノの小説って案外難しいです。例えばチルノとかチルノとかチルノが特に。
え? 全員同じ? 気のせいである。

不定期更新安定


其之3「紅魔館」

 

 

 吸血鬼…皆はご存知であろうか?

 民話や伝説などで登場する存在で、生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする。「蘇った死人」または「不死の存在」とも言われる。

 狼男、フランケンシュタインの怪物と並び、『三大怪物』と呼ばれる。

 死者が吸血鬼となる場合は、生前に犯罪を犯した、神や信仰に反する行為をする、惨殺された、事故死した、自殺した、などなどで吸血鬼になると言われている。

 人間が吸血鬼となる場合は、吸血鬼に吸血される、吸血鬼の血を飲む、吸血鬼に殺されるとなれる。

 吸血鬼は獲物である人間を惹き付ける為に美しい容姿を持つとされており、性別に関係無く、女性を好んで襲う。

 弱点で代表的なのは日光だ。日光を浴びると、吸血鬼は弱まる。もしくは灰となる。

 他には銀製の武器だ。ただし銀は銀でも純銀に限る。

 余談としては、鏡に映らない。

 

 

 っとまあ、吸血鬼とはそんなモノだ。

 今思えば、血を吸って人を殺せば誰にでも吸血鬼になれるのかなーって思った時期が、私にはありました。

 ――で、だな。何で今吸血鬼の話をしていたかと言いますと…

 

「アハハハハハ! 待ってよお姉ちゃん!」

「…………」

 

 無表情かつ無言で私はとある吸血鬼から全力で逃げているからです。

 あの、誰か助けて!?

 

 

 

遡る事、30分前…

 

 

 

 ただいまマイダアリン紅魔館。

 

 …やめよう、気持ちが悪い。

 

 待たせたな――

 

 いや、これも違う気がする。

 私は湖の真ん中、大きなコンクリート製で出来ている橋の上で紅魔館を見上げながら心の中で色々と考えていた。

 まあ何を考えていたなんか気にしない方が良い。

 それにしても、全体が紅色のレンガで出来ていて気味が悪い。

 そして目の前には体二つ分の大きさがある鉄格子の門があり、その隣である門番さんが眠って(さぼって)おられる。

 はて、これはどうするべきか? 強行突破が良いのであろうか。だがそんな強引な事はあまりにもしたくはない。

 だがそれでは入れないではないか。

 

 じゃあどうする?

 

 ふっ、そんなの決まっているじゃないか。

 押して通れば良いのさ!!

 私は蒼い妖力を両手から出し、それを圧縮して一本の凪ぎ槍へと変化させてそれを金属の門へ振るう。

 ガギィン!っと、鈍い音が鳴り響く。

 だが門は壊れてもいなかった。

 

「………あれ」

 

 うん? あれ?? こ、壊れていないだと…?

 馬鹿な、私の計算は正しかったはず…!?

 いや、もしかしたら簡単に壊せると思って手加減し過ぎたかも知れん。ならば、今度は本気で行こうじゃないか!

 槍を天高く上げ、それを真正面一点集中で渾身の一撃をお見舞いさせる。

 ズガアアァァン!!っと、今度は更に大きな音をたてる。

 しかし――

 

「…………」

 

 門は全くもって壊れてはいなかった。

 ははっ、ワロス。めっさ堅いじゃん。全然ビクともしてない。何で作ったらこんな馬鹿みたいに堅い門が作れるんだ。

 そう思いつつ、私はチラッと門番を見るが、爆睡中。

 あんだけ大きな音が鳴ったのに起きてないとか最早寝ているんじゃなくて死んでいるんじゃないのか。

 まあ起きていないのならそれで良いが、門どうしよう…

 押し通れば良いとかカッコ良く言ったけど、それが出来ていないとかマジ糞じゃん。嫌だもう死にたい。恥ずかしさのあまり死にそう。

 穴があったら入りたい。そしてその穴を誰か埋めて下さい。

 ぶつぶつと心の中で言いながら槍を普通の妖力に戻して橋の隅っこへ行って門番を背にして座り込み、右手の人差し指で橋の地面をぐるぐるとなぞる。

 

 完全落ち込みモード

 

 に入って十秒経った時だ。

 後ろから何かが刺さる音がする。

 

「痛ぁっ!?」

 

 音が聞こえたと同時に、女性の声がした。

 私は顔を後ろに向けると、帽子の上から銀色のナイフが突き刺さっていた。

 きっとあの帽子の中では血が溜まっているんですね。分かります。

 …まあ分かりたくはないけどね。

 

「って、あれ。秦さんじゃないです、か…」

「美鈴……」

 

 紅 美鈴(ほん めいりん)

 紅魔館の主に仕え、紅魔館で門番をしている。

 具体的には判明していないけど種族は妖怪。また妖怪なので年齢も不詳。

 能力は「気を使う程度の能力 」

 体内のエネルギーやオーラを目に見える形にする能力である。要はかめはめ波を撃てるということ。

 容姿は華人服とチャイナドレスを足して二で割ったような淡い緑色を主体とした衣装。

 髪は赤く腰まで伸ばしたストレートヘアー。側頭部を編み上げてリボンを付けて垂らしている。

 目の色は青がかった灰色。

 身長は、私よりも少し高かった。

 

 その美鈴が私の存在に気付いて私を見る。そして最後らへんから声のトーンを落として行き、何してんの。ってきな顔をする。

 

「……ヘルプミー」

 

 助けてと私は何となく英語で言う。

 

「へ、へるぷ…?」

 

 っとまあ、結果は分かっては居たが、英語なんて美鈴が知っている訳がなく、ぎこちない声でオウム返しする。

 仕方がない、日本語にしてあげるよ。

 

「助けて」

「え、何をですか?」

「入れない」

「いや、じゃあ私を起こして――」

「しんどい」

「…そうですか」

 

 いや納得するんかい。

 「しんどい」から起こしてあげないとか普通ないだろ。「めんどい」なら分かるが「しんどい」じゃねぇ…

 まあどっちでも良いが、取り敢えず入れさせてくれるらしい。

 やったねこころちゃん!

 …何て、自分で自分に言ってどうするって言うんだ。自己満足とか私は要りません。

 

「あの、入らないんですか?」

「入る」

 

 私は立ち上がり、すぐ門前に立つ。すると美鈴は門を横に開け始めた。

 ガラガラガラっと、重々しい音が鳴り響きながら徐々にと開かれる。

 そして三分の二くらいまで開けて「どうぞ」っと言う。

 

「ありがとう」

 

 一言、ただそれだけを言って中に歩いて入る。

 後ろから門が閉まっていく音を聞きながら、紅魔館の大きな扉の正面入り口で立ち止まる。

 どうしよう? インターホン無いや。これはノック式ですかそうですか。

 めんどいなぁ…

 渋々と心の中で言い、右手を上げて握り、裏の方を扉に向けた時だ。突如としてその扉が開いた。

 すげぇ…自動や。

 見てよ! この扉自動やで!?

 最近の幻想郷の文化ってそこまで発展したんだね。驚きと感動のあまり涙が出そうです。

 

「何をそこで突っ立って居るのですか?」

 

 感動のあまり扉前で動けずに居ると、中にいる女性が私に言う。

 あ、なるほど。彼女が開けたのか。

 彼女…十六夜 咲夜(いざよい さくや)

 「完全で瀟洒」の二つ名どおりメイドとしての仕事は完璧で、基本的には従者として非の打ちどころがない。

 だが苦労性なのか、自身で館内の空間を拡張しておきながら掃除が大変だと愚痴を漏らしたり、役に立たないからと妖精メイドたちの仕事まで一人で引き受けてしまっている。

 能力は「時間を操る程度の能力 」

 時間を操るとは、時間を止めて自分だけ移動したり、時間の流れを遅くして超高速で動いたり、時間の流れを速めて存在を変化させる(林檎ジュースを林檎酒に変える等の)能力である。

 時間と密接に関係する空間も操作することができ、紅魔館内の空間は彼女によってかなり拡張されている。

 時間を圧縮して、短期間の過去や未来のナイフを同時に発現させる攻撃もできる。この方法を応用して、自身の擬似的な分身を作り出すことも可能。

 時間・空間をどの程度まで操れるのかは定かではないが、スペルカード「咲夜の世界」で止めている時間は約五秒である。

 しかし起きたことを無かったことにするのは、特殊な場合を除いて難しい。

 物が壊れたり、燃えてしまったり、食べてしまった場合は時間を戻しても元には戻らない。

 移動していた物が元の位置に戻る程度である。

 その威力は人間の域を完全に逸脱していると皆から評されている。

 だが弾幕戦で実際やっていることは地味で、多数のナイフが同時に現れて襲いかかる裏には時間を止めてナイフを設置するというなんとも地道な作業がある。

 攻撃力も他のキャラクターに比べると若干低め。また同時に投げるナイフには限りがあるので手持ちが無くなると時間を止めて回収しにいくとか。

 容姿は銀髪のボブに両方のもみあげ辺りから、先端に緑色のリボンをつけた三つ編みを結っている。

 瞳の色は、青であり。

 身長は十代後半以降程度の身長。

 服装は青と白を基調としたメイド服であり、頭にもカチューシャ(ホワイトブリム)を装備。裾の長さは膝上丈~膝丈程度。

 細かなデザインでは襟・肩のひらひら・メイドカチューシャ・帯・前掛け(エプロン)が白で、下の服が青色である。また、腰に銀色の懐中時計を下げている。

 

「感動してた」

「何にです?」

「扉に」

「……変わった思考をお持ちですね」

 

 変な所に勘違いされましたの巻。

 違う、違うぞ咲夜。私は自動で開く扉に感動していただけだ。ただ「扉に感動」してただけじゃないよ!

 何処ぞの扉マニアかってんだ。

 

「それはさておき、そろそろ本当に中に入られたらどうでしょう? …扉から離れたくないとかは言わないで下さいね?」

 

 言うわけねぇだろ!?

 手前が勝手に私の事を扉マニアにさせたんだろうが! 断じて違うぞ。

 私はそうではないと行動で示すべく、速急に中に入ると、扉がいつの間にか閉まる。

 いやもう本当に最近の幻想郷の文化はry

 

「では、お嬢様がお呼びです。ついて来て下さい」

「え…」

 

 え、お呼び…? 私を??

 なっ、なななな何ですかいきなり。私をどうする気だっ!?

 血を飲ませてとか言ってきたらマジで洒落にならないからやめてくださいね。

 

「御早めに」

 

 っと、すでに咲夜は廊下の奥へと行っており、足を止めて私に振り返る。

 

 あ、はい。

 

 私は全然納得仕切れずのまま、咲夜の方へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「こちらでございます」

「………」

 

 …誰か、さっきまでどのくらい歩いたか教えてくれ。少なくとも十分は歩いた気がするんだが。

 は? 短い??

 いや勘弁してください。確かに短いよ?

 けどさ、何で家の中で十分も歩かなきゃなんないのよ。おかしいだろこの館、もう嫌だわ。

 

「お嬢様、彼女を連れて参りました」

「ご苦労、咲夜は元の仕事に戻りなさい」

「畏まりました」

 

 勝手に話を進められ、咲夜は一度私の方へ向いて「では」っと言って一礼し、消える。

 

 速報、私死ぬ。

 

 紅魔館の当主からのお呼び出しとか死亡フラグめっちゃ立ってるじゃないですか。

 誰だよ紅魔館行こうと決めた奴は

 我ながらドジ踏んだと思っている。後悔だってある。だからってもう引き返せないし…

 もし帰れるんだっら妖精のチルノと遊んでおきたい気分だ。あの子馬鹿だけどそれなりに一緒に遊んでて楽しいよ? 馬鹿だけど。

 あとは同じく妖精の大妖精かな? あの子は本当にしっかり者でチルノの姉みたいな感じだ。

 そのうち、本当の姉妹になるフラグが立っちゃうんじゃないかな?

 だがな、私はそんなこと断じて許さんぞ。そんなフラグが立つんだったら私が――

 

「まだかしら?」

 

 折ってやらああああぁぁぁーっ!!

 心の叫びと共に、私は右足で思いっきり扉を蹴って開ける。するとどうであろう、扉が壊れて正面に倒れた。

 

「…………」

 

 部屋の奥で玉座に座っている少女が口を少し開けて固まっているのが伺えた。

 ははっ、すみません。帰らせて頂きます。いや帰らせて!!

 私は無表情で右足を前にしながら心の中で滅茶苦茶汗を流して少女を見る。

 

「…クスッ」

 

 すると少女は右手で口元を隠し、小さく笑う。そしてその笑いは次第に大きくなって行き、高笑いをする。

 

「あっははははははは!!」

 

 その笑い声は部屋に響き渡る。

 何が面白いのかが私には理解不能だ。少なくとも今言える事としたら謝る事くらいである。

 

「本当に貴女は最高ね、私を楽しませて貰えるわ。中に入りなさい」

 

 笑い終えた少女は扉の事などどうでもいいかの様に言ってくる。

 と、取り敢えずだ。もしかしたら扉の弁償だけで済みそうだし。もしも命を取られるのであれば全力で逃げよう。うん、そうしよう。

 私は決意をし、壊した扉を踏まないように横を通って少女の方へと向かう。

 

「ようこそ紅魔館へ。二度目の訪問、歓迎致すわ」

「ありがとう」

 

 その言葉を聞いて、私は一先ず先にありがとうと言う。

 二度目、っと言うのはまあそのまま言葉通り、私は前に此処「紅魔館」へと行った事がある。確か初めて行った時は…あぁそうそう、紅霧異変の時だ。

 何気無い気持ちでぶらぶらしていると、湖の方から不気味な紅い霧が出ていたから興味本意で行ってみて紅魔館へと入った。

 そして予想出来ると思うが、全員戦いました。はい。とても辛かったです。

 でもただの遊びだったから異変解決はしていない。確かにボスは倒した。だが私は遊びだった故に、異変解決とは言わせなかった。

 今思えば、ただの遊び感覚でボス倒しちゃうとかすげぇ、っと言える。

で、まあボスはこの紅魔館の当主…今私の目の前に居る少女。即ち、吸血鬼姉妹の姉であるレミリア・スカーレットだ。

 約五百年以上の歳月を生きてきた吸血鬼の少女。五歳下の妹がいる。

 吸血鬼としては少食で、人間から多量の血が吸えない。また、吸い切れない血液をこぼして服を真っ赤に染めるため「スカーレットデビル(紅い悪魔)」と呼ばれている。

 幻想郷では億単位の年齢である永琳や百七十万歳以上のてゐを始めとし、千歳や五百歳を軽く超える妖怪たちがザラに居るため五百歳を数える彼女をしてもお子様扱いされる。

 能力は「運命を操る程度の能力 」

 具体的にはこの能力の詳細はわからないが。

 周りにいると数奇な運命を辿るようになり、一声掛けられただけで、そこを境に生活が大きく変化することもあると言う。珍しいものに出会う率が高くなるらしい。

 なお、怪我をして倒れていた者を紅魔館の誰かが助けたことがあったらしいが、のたれ死ぬ筈の運命を、別の運命に変えられた可能性もあるとされている(変えられた運命次第では、人妖になってしまう事もあるという)。

このように「運命」などという実体のない不確定要素を任されたためか、この能力を自力で行使できない可能性が高い。

 容姿は青みがかった銀髪(ウェーブのかかったミディアム~セミロング程度)、もしくは水色の混じった青髪に真紅の瞳。身長は魔理沙や妖夢などよりさらに低い。人間で言えば10歳にも満たないような背の高さだが、背中に大きなコウモリ翼を持つためシルエットは大きい。

 色は白の強いピンク色のナイトキャップを被っており、周囲を赤いリボンで締めている。結び目は右側で、白い線が一本入っている。

 衣服は、帽子に倣ったピンク色。太い赤い線が入り、レースがついた襟。三角形に並んだ三つの赤い点がある。両袖は短くふっくらと膨らんでおり、袖口には赤いリボンを蝶々で結んである。左腕には赤線が通ったレースを巻いている。

 小さなボタンで、レースの服を真ん中でつなぎ止めている。一番上にはS字状の装飾があるが、永夜抄時の衣装では付いていない。

腰のところで赤い紐で結んでいる。その紐はそのまま後ろに行き、先端が広がって体の脇から覗かせている。

スカートは踝辺りまで届く長さ。これにもやはり赤い紐が通っている。

 

「それで、今日はこんな平和な中…何をしに来たのかしら?」

「分からない」

「………は?」

 

 いや、本当に分かんないっす。

 だって何と無くで来てみただけだし、用なんて何もない。

 無意識に此処まで来てた。っと言った方が良いかも知れん。

 私が行く場所なんて全部ランダムなんだよっ! わりぃか!!

 

「本当に、貴女は思考が読めないわね」

「ありがとう」

「ふふっ」

 

 思考が読めないは誉め言葉です。

 ポーカーフェイスなんだから当たり前だ。

 

「じゃあ今日は何をする気なのかしら?」

「ぶらぶらする」

「此処を?」

「そう」

 

 取り敢えずやることが思い付かない以上、この紅魔館をぶらぶらとする。

 そうして何かしたい事を見付けたらそれをする。

 完璧だ。完璧過ぎるぞ私…!

 だがこのプランを実行するにはレミリアの許可が必要である。

 

「ふーん…まあ、良いわよ」

 

 え、まじで?

 アッサリ許可を貰った。良いのかそれで。

 

「何かあったら咲夜を呼んでみなさい。すぐに来ると思うから」

「分かった」

 

 さて、許可を得た事ですし、早速ぶらぶらとしますか。

 私はまず何処に行こうか考えながら後ろに振り返る。そして気付く。扉が直っていると…

 

「…………」

 

 …いやね、本当の本当に最近の幻想郷の文化って言うか扉って凄いですね。自動で開く扉の次は勝手に直る扉ですよ。何これ家に一個欲しい。ぶち壊して持ち帰れば良いのかな?

 

「どうしたのかしら? そこで立ち止まって」

「扉」

 

 後ろからレミリアが何故止まっているのかを聞かれたので、私は扉に指差して言う。

 

「…が、どうしたの?」

「凄い」

「あぁ…そう」

 

 レミリアは最早私が何を言いたいのかが分からずで居た。

 扉が凄いんです。

 まあ、何で直っているか知っては居るんだけどね。

 私は咲夜が直したであろう扉を開け、後ろを見ずに部屋から出て閉める。

 …ん? 何処からか視線を感じる。何処だ……?

 急に、妙な気配と見られている視線を感じ取り、原因を探すべく、右や左と顔を向ける。最後は斜め右後ろの少し下を見て、ようやく原因を見付け出した。

 

「あれ? 見付かっちゃった」

 

 少女はバレたのにも関わらず嬉しそうな顔をした。

 この少女は確か…レミリアの妹、フランドール・スカーレットか。

 フランドール・スカーレット

 紅魔館の主レミリア・スカーレットの妹で、姉と同じ吸血鬼。

少なくとも四百九十五年以上生きているが、少々気がふれているという理由でその大半を紅魔館の地下室で過ごしてきた。

 また本人も外に出ようともせず引きこもり状態だったようで、その箱入り娘っぷりは人間を食用に加工された姿(ケーキや紅茶)以外では見たことがないという程。

 だが紅魔郷の異変「紅霧異変」後は主人公たち(霊夢・魔理沙)と接触したことで外界に興味をもったようだ。

 また、長い間閉じこもって生活していた関係で与えられたものしか食べたことが無いため、人間の襲い方を知らない。そのため、通常の吸血鬼は食事をするために人間を殺さない程度にしか襲わないが、彼女は手加減が出来ないため一滴の血も残さず吹き飛ばしてしまう。

 その歯止めの効かない破壊力は、遥かに姉を凌ぐとされている。

 能力は「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」

 名称通り、対象が物ならば問答無用で直接破壊できる能力である。

 原理的には、全ての物には「目」という最も緊張している部分があり、そこに力を加えるとあっけなく破壊することができるのだという。

 彼女はその「目」を自分の手の中に移動させることができ、彼女が拳を握りしめると「目」を通して対象が破壊されるというらしい、その力は隕石をも簡単に壊すことが出来る。まさに「抗い様の無い恐ろしい能力」なのだ。本人曰く「きゅっとしてドカーン」。

 容姿は濃い黄色の髪をサイドテールにまとめ、姉と同じくその上からナイトキャップを被っている。 瞳の色は真紅。服装も真紅を基調としており、半袖とミニスカートを着用。 またその背中からは、一対の枝に七色の結晶がぶら下ったような特殊な翼が生えている。

 さらに、手には先端にトランプのスペードのようなものが付いたグネグネと折れ曲がった黒い棒のようなものを持っている。足元はソックスに赤のストラップシューズを履いている。

ピンクの服に水色の髪といった姉と違い、金髪など全体的に赤が強調されている。

 見た目は十歳未満の幼女。

 

 

「ねえお姉ちゃん。フランと遊ぼ?」

「なにで?」

「うーんとね。鬼ごっこが良い!」

「…………」

 

 鬼ごっことか糞懐かし過ぎてヤバイんですけど、どうしましょう。もうそんなの全然していないから体が鈍っているかも知れん。いや、もう体が鈍っているとかそんなんではなく、ルールを忘れてしまっている気がする。

 うーむ。まあフランは何か楽しそうにしているし、これは乗ってみるか…

 

「良いよ」

「やった♪ じゃあフランが鬼ね! 壊されたら…お姉ちゃんの負けね?」

 

 …うん? 壊されたら負け??

 何か物でも渡されるのか。鬼ごっこってそんな何か物持って走る遊びだっけ?

 

「それじゃあ十数え終わるまでに逃げてね。い~ち…」

 

 あ、始めやがった。って言うか物渡されるんじゃないんすか!?

 

「に~…」

 

 だ、駄目だこりゃ。取り敢えず逃げなければいけない。

 私は軽くそう考え、逃げ始める。廊下は一直線で長く、途中右と左がある所を見付けて右へ行く。

 

「じゅう」

 

 遠くの方で十数え終わった声が聞こえた。

 はて、此処からが鬼ごっこの始まり――

 っと、そこで言葉の途中で隣の壁が凄まじい音と共に壊れた。その壁の奥の部屋の中には、一人の少女…フランが居た。

 

「お姉ちゃん見付けた!」

 

 目は血のように紅くなっており、狂気の笑みを私に見せる。それを見た瞬間、私は今年一番の全力で走って逃げる。

 え、ちょ、まっ!

 あれ完全に殺る気満々じゃないですか!

 鬼ごっこってこんな命懸けな遊びでしたっけ!? 少なくとも私の記憶にはご存じありません! もしこんな命懸けな遊びだったら私は今までに鬼ごっこで何人殺って生きてるんだっつうの!!

 

「アハハハハハ! 待ってよお姉ちゃん!」

 

 待てるかど阿呆! もし止まったら殺されるとか何なんだよ! ちょ、あの。真面目に誰か助けてっ!?

 私は心の中で叫びながら逃げ惑う。

 と言っても、フランは飛んで来ている為、速い。

 うっはああああぁぁぁーっ!!

 どうする。このままずっと逃げていても制限時間など聞いてもおらず、終わらない。よもやこの鬼ごっこ、本当に私が死ぬ以外終わる方法が無い。

 …いや待てよ。確か……うん、試す価値はあるか。

 私はある事を思い出し、息を整えて口に出して言う。

 

「咲夜」

 

 十六夜咲夜の名を呼ぶ。

 

「…………」

 

 だがしかし、咲夜所か奇跡さえも出やしなかった。

 おい咲夜てめぇ! 出てこいやああぁーっ!! って危なっ!?

 不意に後ろの方を向くと、フランは魔剣である「レーヴァテイン」をいつの間にか出しており、それを私の首目掛けて横に振ってきたので少し屈んで避ける。

 

「アハッ!お姉ちゃん避けるの上手い!」

 

 あれはまぐれです。

 と言うかこの状況本当にまじで何とか切り抜けなければいけないんだけどさ。咲夜って言っても出てこないし。

 …もしかして声が小さかったとか言わないよね?

 ははっ、まさか、ねぇ……

 私はそう思いつつ蒼い妖力を右手から出して圧縮させ、一枚の怒りのお面「般若」を作って顔に当てる。

 そして息を少し大きく吸って。

 

「十六夜咲夜!」

 

フルネームで叫ぶ。

 

「お呼びでしょうか?」

「あ、ちょっと咲夜~今良い所なのにー!」

 

 同時に、後ろから咲夜の声と、何かに抵抗するかのようなフランの声がする。私は足を止めて後ろに振り返る。

 

「!?」

 

 すると咲夜に両手を塞がれたフランが目を見開いて驚いた。と言うか怖がっている。

 立場が逆転しているかのようだ。

 

「さ、咲夜…あの人、誰…?」

「秦 こころ様ですよ。妹様」

「そうじゃなくて!」

 

 ふむ、私には理解不能である。何故にフランが怖がっているのか…

 考えながらお面を少しずつ顔から離し、お面を裏に向けた時だ。フランが徐々にと普通の顔に戻ってくる。

 まさか…?

 一度、お面の表を見る。鬼の顔をしているお面だ。もしかしたらこの顔が怖いのかも知れない。

 私は試しにお面をフランに向けると、そのお面を見て体をビクリと動かして涙目になって行く。

 裏にすると、普通になっていく。

 なるほど、悪魔の娘でも怖いものはあるんだね。念のために覚えておこう。

 心にそう刻んでおき、お面を普通の妖力に戻して体に取り込む。

 

「…用はもう御座いませんか?」

 

 っと、咲夜が言うので、私は無言で頷く。

 

「それでは、これにて失礼させて頂きます」

 

 そうして咲夜は、いつも通りな感じで目の前から消え、解放されたフランは私を見ながら呆然としていた。

 

「何?」

 

 私は気になり、聞いてみる事にした。

 だが答えは、私の心を少し傷付かせる言葉であった。

 

「お姉ちゃん、どうしてずっと同じ顔なの?」

 

 グサッっと、私の心を弓矢が貫く。

 

「鬼ごっこ…楽しくなかった……?」

 

 や、あれは楽しめる遊びではありません。

 少なくとも元気な子供がすると一変して恐怖へと変わりますから。

 

「お姉ちゃん?」

 

 全て心の中で返答していると、フランが私を呼ぶ。

 うむ、これは何か言わなければいけまい。だからってなんと言えば良い?

 「楽しかった」とか言った日から命懸けな鬼ごっことかはしたくはないし。だからって「楽しくなかった」とか子供相手に言える訳もない。

 

 つまり詰んだ。

 

 どうして私って何時もこう詰むんですかね。私が悪いのか?

 は? 表情どうにかしろ??

 知らんがな。この仏顔は変えようにも変えられないんだから仕方ないだろうが。

 それこそもう鬼が殴ってきても変わらないであろう。

 …まあ殴られた時点で即行あの世行きですがね。笑えん。

 

「…………」

 

 あ、いかん。また心の中で変な所まで話が転がってしまった。

 うぅ…これはどうするか。

 …そうだ、無意識だ。よしそれで行こう。

 もう色々とめんどくなった私は無意識に頼る事にした。まあつまり、一度思考を真っ白にしてやりたい事だけをする。

 私は無意識にフランの方へと歩む。そして目の前で屈んでフランと同じ目線にさせて次に右手で頭を撫でる。

 

「よしよし、良い子良い子」

 

 ついでに声までも出す。

 しかしフランの顔は呆然として変わらずのままであった。

 うん、ごめん。今どうしてこうなったのか分からないもんね。何でいきなり慰められているのか分からないもんね…!

 大丈夫だ、私も分からん。

 

「じゃ」

 

 撫でるのを止め、それだけを言って私は立ち上がってフランの横を通って行く。

 おいちょっと待て私。無意識とは言えど子供を放って置くのはどうかと思うぞ!?

 くそ! だがもう遅い。すでにフランから離れている為、とても引き返しづらい。

 

「はた…秦お姉ちゃん!」

 

 そこで、後ろから私の名前で呼ぶフランの声がした。それと同時に私は足を止め、振り返らずに前を見る。

 

「また遊ぼうね!」

 

 元気な声が、廊下に少し響く。

 うん、まあ。鬼ごっこ以外なら…ね。

 

「うん」

 

 聞こえるか聞こえないかくらいの声で、私はただ一言言って頷く。そして、私は足を動かして前に進む。

 

 

 尚、あとから後ろの方でフランが壊した壁について、咲夜に怒られていた事は余談である。




取り敢えず一話に一ヶ所以上、読者様が笑えるシーンが書ければそれで良か。それ以上は求まない。
まあそれはさておき、普通これは初盤の一話から言うことなんですが…指摘、誤字や脱字の報告。ご感想などはしたいと思う時にだけご自由にどうぞ。
お待ちしております。とかは言いづらい性格です。察して下さい。
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