「ジン坊ちゃーん!新しい方々をお連れしましたよー!」
勇儀、飛鳥、耀はコミュニティに招待すると言った黒ウサギと共に四半刻ほど歩いていた。ようやく街の門が見えてきた所で一番前を歩いていた黒ウサギが手を振りながら大声で門の近くにいる子供を呼んだ。勇儀はようやく酒が飲めると思いながら、黒ウサギが道中で言っていた門の前でコミュニティの現リーダーが待っているという会話を思い出していた。
「お帰り、黒ウサギ。そちらの女性三人が?」
「はいな、こちらの御四人様が…」
クルリ、と振り返った黒ウサギの動きが止まる。
「…え、あれ?もう一人いませんでした?目つきと口と態度の悪い殿方が…」
その問いに飛鳥が応える。
「ああ、十六夜君のこと?彼なら世界の果てを見てくるぜ、とか言って走っていったわよ」
あっちの方と指をさす飛鳥。黒ウサギは呆然とした後、自慢のうさ耳を逆立てながら飛鳥に詰め寄る。しかし、飛鳥はそれを飄々と受け流す。勇儀はそんな二人のやり取りを尻目に先程黒ウサギが話し掛けた少年に話し掛けた。
「なぁ、あんたがリーダーかい?」
「は、はい!一応そうです」
突然、額から一本の赤い角を生やした女性に話し掛けられた少年はどもりながらも応える。勇儀は少年を見ながら空になった酒瓶を見せる。
「この辺で酒を売ってる場所は無いか?黒ウサギが買ってくれるって言うからついてきたんだが」
「お、お酒ですか?えっと、それなら歓迎会をしようと思っていたお店にあると思いますよ?」
少年のその言葉を聞いた勇儀は頬を緩ませて笑顔になる。
「そうか、そうか、そいつは良かった。なら、案内してくれるかい?あぁ、私は勇儀、鬼の星熊勇儀だ」
「あ、僕はコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩者ですがよろしくお願いします。えっと、後ろの方々のお名前は?」
「あぁ、黒ウサギに問いただされているのが久遠飛鳥、猫を抱えているのが春日部耀だ。後もう一人居るが、そんなことはまぁどうでもいい。とっととそのお店に行くよ。酒だ、酒!」
勇儀はそういうと意気揚々と三人を置いてさっさと門をくぐった。黒ウサギは一刻半で戻ります、と叫びながら十六夜を探しに行き、残ったジン、耀、飛鳥もお互いに軽い自己紹介をした後、勇儀に続いて門をくぐった。
ー箱庭二一0五三八0外門、内壁ー
先に門をくぐった勇儀はどんどんと先を歩いていくが後に続いていた飛鳥、耀はビックリしたように足を止めた。そして耀が呟く。
「…天幕の中に入ったはずなのに太陽がある」
「はい、箱庭を覆う天幕は中に入ると不可視になるんですよ。そもそもあの巨大な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置された物ですから」
耀の呟きに応えたジンの言葉を聞き、飛鳥が空を見上げ皮肉そうに言う。
「それは気になる話ね。まるで日の光が苦手な…吸血鬼がいるみたいな言い方ね……いや鬼が居たんですもの居ても可笑しくないわね」
「はい、吸血鬼も住んでいますよ」
なんとも複雑そうな顔をする飛鳥。少し遠くから勇儀が声を出す。
「おーい、ジーン!店ってどこだー?」
「あ、今行きまーす!」
ー六本傷の旗を掲げるカフェー
勇儀、ジン、飛鳥、耀の四人は街の一角にあるカフェテラスに座った。するとすぐに猫耳の少女が店の奥から出てきた。
「いらっしゃいませー。ご注文はどうしますか?」
猫耳少女の問いに勇儀がすぐさま応える。
「取りあえず酒をあるだけ頼むよ」
「はーい、お酒をあるだ…え?」
注文を復唱しようとした猫耳少女は驚き、ジンが慌てて訂正する。
「ちょ、ちょっと待ってください!さすがにそれはお金が足りません」
「そうかい、じゃあ二升頼むよ」
勇儀はジンの言葉を聞きすぐに注文する量を減らす。ジンは財布の中身を確認して苦しそうな顔をする。しかし、ここでさらに渋ると勇儀の機嫌を損ないかねないと考えたジンは大丈夫か?と目で聞いてくる猫耳少女に、大丈夫だと頷く。猫耳少女はすぐに笑顔になって注文の確認をする。
「はーい、お酒二升ですね、日本酒でよろしいですか?」
「ああ」
店員とジンのやり取りがもろに視界に入っていた飛鳥と耀は遠慮がちに紅茶と軽食を頼んだ。勇儀の隣に座っている飛鳥が呆れた様に勇儀に言う。
「昼間からよく飲むわね」
「二升なんてたかが知れてるよ」
しばらくして先程の猫耳少女がお酒と軽食の乗ったトレイを持って戻ってきた。
「お待たせしましたー。日本酒二升とティーセット三つでございます」
「お!待ってたよ」
勇儀はお酒を受け取るとすぐに星熊盃に注ぎ一気に飲む。
「……ゴクゴク、ぷっはぁ。…いやぁ三十分ぶりの酒はうまいねぇ!」
そんな勇儀の満面の笑みを横目で見ながら飛鳥は、はぁ…とため息をつきジン、耀に話し掛ける。三人が話しているのを見ながら勇儀はひたすら酒を飲み続ける。三人は何やら自分達の持つギフトの事で盛り上がっていた。そして、この店に来てから少し時間が経った。勇儀は早々に一升を飲みほしており、残り一升になった酒をゆっくり味わっていた。すると、四人の座る席に身長が2メートルを超える一人のピチピチタキシードを着た男が来た。
「おんやぁ?誰かと思えば東区画最底辺コミュのリーダーのジン君じゃないですかぁ?」
かけられた声とやってきた男の姿を見たジンがあからさまに嫌な顔をした。
「これはこれはフォレス・ガロのガルド=ガスパー。今日は何の用ですか?」
「いんやぁ?聞けば新たな人材を呼び寄せたらしいじゃないか。そこで、この私がコミュニティの誇りである名も旗も奪われても、まだ!未練がましく過去に縋り付くガキの犠牲者を増やさないためにこうやって足を運んだんですよ」
ガルドと呼ばれたピチピチタキシードが四人の座るテーブルの空席に腰を下ろす。そんなガルドに耀と飛鳥は愛想笑い向ける。勇儀は気にせず酒を飲む。
「失礼ですけど、同席を求めるならまず氏名を名乗った後に一言添えるのが礼儀ではないかしら?」
「おっと、失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ、六百六十六の獣の参加である」「烏合の衆の」「コミュニティのリーダーをしている、って待てやゴラァ!!誰が烏合の衆だ!」
ジンが入れた横やりにガルドが怒鳴りその顔が狼の様に変わっていく。そして腕を伸ばしてジンに掴み掛かろうとする。黙って酒を飲んでいた勇儀が嬉しそうな顔をして声を出す。
「お?喧嘩か?」
勇儀の声にハッ、と我に返ったガルドが失礼。と言って再び席に座り直す。それを見た勇儀はつまらなそうにまた酒を飲みだした。ガルドは努めて冷静を装いながら
「口を慎めよ、小僧。紳士の俺でも聞き逃せねぇ言葉はあるからな」
「森の守護者であった貴方になら相応の礼儀で返していましたが、今の貴方はこの付近を荒らす獣でしかありません」
「ハッ、そういう貴様は過去に縋り付く亡霊と変わりないだろうがよぉ?お前のコミュニティがどういう状況か理解してんのか?」
「はい、ストップ」
ジンとガルドのやり取りを聞いていた飛鳥が止めに入る。
「二人の仲が悪いのはわかったから。…ねぇ、ジン君、一つ質問していいかしら。ガルドさんが指摘している私たちのコミュニティの状況っていうのを説明してくれるかしら?」
「そ、それは…」
飛鳥の質問にガルドと勢いよく言い争っていたジンは言い辛そうに閉口する。そんなジンの様子を見て飛鳥は怪訝な顔をしながらも、さらに言を続ける。
「貴方はコミュニティのリーダーなのでしょう?なら、同士として呼び出した私たちにコミュニティがどういう物なのかを説明する義務があると思うのだけれど、違うかしら?」
飛鳥の声はいたって静かである。けれども、ジンは苦しそうに俯く。それを見ていたガルドは顔を狼から人の物に変え、含みのある笑みと上品ぶった声で飛鳥に話し掛ける。
「貴女の言う通りですよ、レディ。新たに呼んだ方々に箱庭のルールを説明するのはコミュニティのリーダーとして当然のこと。その話もせずにコミュニティの勧誘をするなど、言語道断です。レディ達がその説明を受けていないのなら私が代わりに説明いたしますが?」
飛鳥はガルドの言葉を聞き、一度ジンの方を見る。しかし、ジンは俯いて黙り込んだままだったので、仕方なしといった風にガルドに説明するよう促す。
「承りました。…まず、コミュニティとは読んで字のごとく複数名で作られる組織のことです。そして、コミュニティはそれぞれ名と旗印の二つを持っています。それらはこの箱庭世界で活動するにあたり自分がどこの誰か、つまりは自分の身分証として使われる物です。その二つの中でも旗、特にこれはコミュニティの縄張りを主張するためのものでもあります。この店にも大きな旗が掲げられているでしょう?」
ガルドが店の一角を指した。そこには”六本傷”が描かれた旗が揺らめいている。
「もし、自分のコミュニティを大きくしたいのなら、あの旗印のコミュニティに両者合意でギフトゲームを仕掛ければ良いのです。私のコミュニティもそうして大きくしていますからね」
ガルドが自分の胸元に入っている虎をモチーフにした紋様の刺繍を指差す。耀と飛鳥が辺りを見回すと、この店以外のほとんどがガルドの刺繍と同じ旗を掲げていた。
「そう。なら、この周辺のほとんどはあなたのコミュニティが支配しているのね」
「ええ。残す所は本拠のコミュニティが遠い場所にあるか、箱庭上層にあるか……奪うにも値しない名も無きコミュニティのみです」
ガルドはジンを見ながら嫌らしい笑みを浮かべる。ジンは未だに俯いたままで、ローブの端を握りしめている。勇儀はガルドと飛鳥のやり取りと、その間のジンの様子をつまらなそうに黙って見ていた。耀も同様に会話に入るつもりは無いのか静観していた。ガルドがジンから目を離し、再び飛鳥の方を向いた。
「さて、私のコミュニティは置いておきましょう。ここからはジン君とレディ達が入ろうとしているコミュニティのことです。ジン君のコミュニティは数年前までは、この東区間最大のコミュニティでした。それはもう人間の立ち上げたコミュニティでは過去最高と言われて、箱庭上層でも知られるほどでした。まぁリーダーは別人でしたけどね。しかし、そんなコミュニティは敵に回してはいけない存在に目を付けられてしまった。そして、彼らはその存在にギフトゲームを挑まれて……一夜にして壊滅した。この箱庭にて最悪の存在、魔王によって」
ガルドは舞台で演技をするかのごとく、声音を変えながら話す。
「魔王とは、主催者権限…ギフトゲームを挑まれれば絶対にそれを受けなければいけない、という権力を振り回す者達の総称です。…彼らはその魔王との戦いに破れました。そしてコミュニティは名も旗も主力陣も、全てを失いました。…そこで終わっていればその人間が作ったコミュニティは、未来永劫、最高のコミュニティとして語り継がれるはずだったのです。そう!そこで終わっていれば!…しかしそこにいるガキはそうせず、過去の栄光に縋り付いた。結果、そのコミュニティは今や、名も無きコミュニティとしてしか数えられなくなった」
「なるほどね。そのコミュニティの復興のための新たな人材として私たちが呼ばれたら訳ね」
「おそらくそうでしょうね。しかし、考えても見てください。名も旗も失った…身分証の無いコミュニティに何ができるでしょう?それに名と旗は身分証の役割だけではありません。名誉や誇り、魂といったモノを込めて作られる象徴みたいなモノです。それを守れもしないコミュニティに誰が集まろうというのでしょう?…彼は出来もしない目標を掲げ、僅かな生き残りである黒ウサギや子供達に無理を強いているだけです。実際にリーダーとしての活動も十分にしていませんし、コミュニティの経営なども全て黒ウサギに任せている」
長い説明の後、ある程度のコミュニティの現状を聞いた飛鳥は、これ以上はまたジンへの侮辱が続くだけだろうと判断し声を出す。
「それで?ガルドさんは私たちに随分丁寧に説明してくれるけれども、どうしてかしら?」
飛鳥がガルドに問う。ガルドは笑顔で応える。
「単刀直入に言いましょう。もしよろしければ、黒ウサギ共々私のコミュニティに来ませんか?」
その答えに俯いていたジンが慌てて叫ぶ。
「な、何を言い出すんですか!?」
しかしガルドは冷ややかな目でジンを睨みつけながら言う。
「黙れ、ジン=ラッセル。今回の勧誘、テメェはどういう風にした?異世界のレディ達を自分勝手に呼び出しておきながら、理由や現状を話さずに自分のコミュニティに入れようとした」
「そ、それは…」
「何も知らない相手なら騙せると思ったか?あほが」
ジンを睨みつける目がより一層に鋭くなる。ジンはその視線と飛鳥達への後ろめたさから、もう一度俯いてしまった。
「…で、どうすされますかレディ達?あ、今すぐに決めろなどとは言いません。箱庭には召還されてより三十日間はどのコミュニティにも属さなくても良いという自由期間がありますからね。なんなら、一度見学されますか?ジンのコミュニティ”ノーネーム”と私のコミュニティ”フォレス・ガロ”を」
「いえ、結構よ」
「「は?」」
飛鳥の拒絶の答えにガルドだけでなく、ジンも一緒になって驚く。
「だから結構よ。私はジン君のコミュニティに入ろうと思っているもの」
飛鳥は何事もなかったように耀に質問する。
「春日部さんはどうするの?」
「私は、どっちでも。この世界には友達を作りに来ただけだもの」
「そうなの。なら私が友達一号に立候補しようかしら?」
「…うん。いいよ」
飛鳥と耀は二人で微笑み合い、次に勇儀に全く同じ質問をする。
「星熊さんはどうするの?」
勇儀は残り少なくなった酒瓶を置いて飛鳥の方を向く。
「私か?今はジンのコミュニティに入るつもりはないねぇ」
勇儀の答えに飛鳥と耀の答えに安心していたジンはショックを受ける。飛鳥がそう、と言ってさらに問う。
「まぁ、人それぞれですものね。けれど理由を聞かせてもらってもいいかしら?」
「ん?ジンは私を騙そうとした、それだけさ。……鬼は嘘と卑怯者が大嫌いなんだ」
飛鳥、耀、ジン、ガルドは勇儀がそう言うのと同時に辺りの空気が急激に重くなったように感じた。そしてその体は石になったように動かなくなった。だが、それも一瞬のことで勇儀はフッと笑って、でも、と続ける。
「この世界に呼んでくれた礼と、この酒代分ぐらいは働いてやるさ」
勇儀は終わりだと言わんばかりに酒瓶の残りを一気にあおった。ガルドはそんな勇儀に語りかける。
「な、ならば、私のコミュニティはどうでしょうか?私のコミュニティには嘘つきはいませんよ?」
ガルドの勧誘に興味が無いといった風に勇儀は答える。
「私は弱い奴にも興味はないよ」
「な…」
ガルドは面と向かって弱いと言われ、その身を怒りに震わせる。が、声を荒げたりせずに必死に自称紳士としての言葉を探していた。
「お、お言葉ですがレデ」
「黙りなさい」
尚も言葉を続けようとしたガルドは、しかし飛鳥の発した言葉により勢い良く口を閉じた。ガルドは驚いて目を見開き、口を開けようとするが全く開かない。
「…!?…」
「うん?これが飛鳥の力かい?」
「えぇ、そうよ。簡単に言えば格下の相手に命令することが出来る能力よ」
「ふーん。そりゃすごいね」
ガルドの話と酒を飲みきったことにより勇儀の機嫌はそれほど良くなく返事は素っ気ない。が、飛鳥は気にした様子はなくガルドの方を向く。
「さて、ガルドさん?貴方にはもっと色々聞きたいことがあるの。だから、そこの椅子に座って私の質問に答え続けなさい」
飛鳥に命令されたガルドは今度は椅子に勢いよく座る。その時に大きな音がしたので店の奥から先程の猫耳少女が慌てた様子で出て来た。状況を確認した猫耳少女は急いで仲裁に入ろうとする。
「お、お客様!店内での揉め事は困ります!」
「ちょうどいいわ、あなたにも面白いモノを見せて上げる」
「?」
小首を傾げる少女を確認した飛鳥はジンと猫耳少女に質問する。
「ねぇジン君と店員さん。私思ったのだけれど、この世界では自分達の誇りであるコミュニティの旗を易々とゲームのチップにするものなのかしら?」
「い、いえ。追い詰められた時などでは別ですが、それはかなりのレアケースです。何しろ負ければコミュニティの存続は絶望的ですから」
今一、話の流れが読めていない店員である猫耳少女も取りあえずジンの言葉に同意とばかりに首を縦に振る。
「まぁそれはそうよね。そんな大勝負を強制出来ることこそが、魔王が魔王たる所以なのですものね。なら、魔王でないあなたが、その強制する権限を持たないあなたが、なぜそんな大勝負を仕掛け続けることが出来たのか、教えてくださる?」
その言葉にガルドは悲鳴を上げそうな顔になるが、その口は飛鳥の質問に答えるために開かれる。
「方法は簡単だ。相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。そに動じない所は後回しにして他を取り込んでから圧迫していった」
「…あなた程度が思いつくことなんて、そんなところでしょうね。では、取り込んだコミュニティはどうやって従わしていたのかしら?」
「各コミュニティから人質を数人取ってある」
「そう。それで、その人質は何処に幽閉しているのかしら?」
「もう殺した」
瞬間、ドゴォン!と大砲を撃ったような爆音が響いた。勇儀がガルドを殴った音である。元々機嫌が悪くなりかけていた勇儀がガルドの言葉を聞いて、我慢出来なくなったのだ。ガルドは店の壁を破壊して外へと殴り飛ばされた。勇儀はさらに追い打ちをかけるべく、今しがた出来たデカい穴から外に出た。それを呆然と見ていた飛鳥であったが、このままでは自分達が悪役になりかねないので急いで勇儀の後を追う。外に出ると勇儀がガルドをまさに殴らんとする所だったので飛鳥が待ったをかける。
「ちょっと待ちなさい!星熊さん!」
「なんだい、飛鳥。まさか止めようってんじゃないだろうね」
勇儀の目が飛鳥をチラリと見る。飛鳥はその目に一瞬たじろぐもしっかりとした口調で返す。
「そのまさかよ。とは言っても私も相当ムカついているわ。だから、そこの卑怯者を許しはしない。でも、そのまま殴ると私達が悪者になってしまうわ、複数人で弱者を取り囲んでいるんですもの」
勇儀は飛鳥の言葉を聞き、今の自分の状態を見る。…確かに。
「なら、どうするんだい」
飛鳥はいたずらっ子っぽい顔をしながら答える。
「そこの卑怯者とギフトゲームをするの。フォレス・ガロの存続と、私達ノーネームの誇りをかけた、ね」
勇儀はそれを聞き、なるほどと笑顔を浮かべる。見る人が恐れるような獰猛な笑みを。