万魔殿の主〜胡散臭いトレーナーとウマ娘たちは日本を驚かせたい   作:仙託びゟ

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 お久しぶりです(定型文)


理解できません……

「#スイーツクッキング♪ #カレン #with #ボーノ☆ #with #マヤちんチャンネル #with #ビコーペガサス #with #ファル子 #with #ニシノフラワー #with #エイシンフラッシュ」

 

「カレンさん。調理中にウマホを触るなら先にウマホも殺菌消毒するか、専用のカバーを着けてください」

 

「は〜い! 流石フラッシュさん、準備いいですね!」

 

 トレセン学園の家庭科室で自撮りをアップしているのは、『Umastagram』の超有名インフルエンサーであるCurrenことカレンチャン。

 他にも、ウマドルとしてリアルでの活動を主にしているスマートファルコンや、『UmaTok』で動画投稿を行っているチーム《ミラ》のビコーペガサス、カレンチャンと同じくウマスタグラマーであるヒシアケボノや、『Umatube』で配信活動を行っているマヤノトップガンなど、デビュー未デビューを問わず既に世間的な認知度が高いメンバーがコラボして菓子作りの企画を行うために集まっていた。

 そんなこの場を取りまとめているのは、唯一この場でメディア露出していないウマ娘であるエイシンフラッシュだ。

 ひとり毛色の違うエイシンフラッシュが何故この場に呼ばれたのかと言えば、それは彼女の両親が生国であるドイツでケーキ職人を営んでおり、彼女自身も菓子作りを趣味としているからだ。

 

「ボノー、バターの湯煎終わったぞー」

 

「うんうん、おっけー☆ マヤちゃんは薄力粉ふるえた?」

 

「こんな感じ?」

 

「できてるよー! それじゃあこのふたつとお砂糖を、ダマにならないように混ぜていこう!」

 

 ヒシアケボノの音頭で菓子作りが進むヒシアケボノ、ビコーペガサス、マヤノトップガンの組。一方、エイシンフラッシュ、カレンチャン、スマートファルコンの組も順調に進んではいる。

 

「それにしてもマヤちゃん。今回って、フラッシュさんを呼んだのマヤちゃんなんだよね? 正直、あたしひとりでもみんなのこと見てられると思うんだけど」

 

 暗になぜエイシンフラッシュを誘ったのか尋ねるヒシアケボノ。そう、エイシンフラッシュをこの場に呼んだのは、エイシンフラッシュと親交のあるカレンチャンでもスマートファルコンでもなく、あまり接点のないマヤノトップガンだった。むしろ、スマートファルコンはエイシンフラッシュについてきた形になる。

 そしてヒシアケボノの言う通り、単に講師役としてならば普段から料理関係をメインに動画配信をしているヒシアケボノがいれば事足りる。であれば、マヤノトップガンはなぜ、配信関係は素人であるエイシンフラッシュをわざわざ誘ったのか。

 

「んー……なんとなく、かな?」

 

「そっかー」

 

 その答えは曖昧なものだった。マヤノトップガンの洞察力と理解力は彼女自身の論理構成能力を超えており、だから彼女はその類まれなる洞察力で得た結論を、『なんとなく』や『勘』として出力するしかない。

 普段からつるんでいる友人であるヒシアケボノはマヤノトップガンのこういった答えには慣れているため、特段それを追及せずに流した。

 しかし、その答えは間もなく現れることになる。

 

「……カレンさん? それは一体何を……?」

 

「ちょっとアレンジ加えてみよっかなーって! こう、エディブルフラワー的な……」

 

「エディブルフラワー……食用花なんですか? それは」

 

「食べられると思うよ? お刺身に付いてた菊だから……」

 

「捨ててください」

 

 ……結論から言えば、カレンチャンはアレンジャーだった。

 その場のセンスと閃きで新たな道を作っていくという点で芸術家肌なカレンチャンとしてはさもありなんな性質ではあるのだが、こと料理、それもお菓子作りとは相性が悪いのは歴然だ。

 これが並大抵の相手であれば、カレンチャンのカワイイに圧されて流されてしまうのであるが、監督しているのは特に精確さにこだわりを持つエイシンフラッシュである。勝手な真似は許されなかった。

 

「あ〜……ね」

 

 カレンチャンの性格は付き合いのあるマヤノトップガンならば把握しているだろうし、エイシンフラッシュの几帳面さ加減は学園内では有名だ。ヒシアケボノはマヤノトップガンが何を「わかっちゃった」のか納得して声を上げた。

 

 その後、カレンチャンがたびたびオリジナリティを発揮しようとするところをエイシンフラッシュが止めつつ、ヒシアケボノたちの組に関しては特に問題も起こらず菓子作りは順調に進んでいく。

 やがて、偶然にもデビュー組と未デビュー組で分かれていたこともあるからか、ヒシアケボノたちの組の話題はレースに関するものへと移っていった。

 

「マヤちゃんは神戸新聞杯だよね? 菊花賞トライアルの」

 

「そだよー。モチロン菊花賞が目標!」

 

「アタシはマーベラス先輩がチームメイトだから応援しづらいけどガンバレー……実際、どうなんだ? ()()、攻略できんの……?」

 

 ()()とは言わずもがな、マーベラスサンデーの"領域(ゾーン)"のことであろう。日本ダービーでマーベラスサンデーと対決したときのマヤノトップガンは、マーベラスサンデーの背後につけ続けるという戦法でこれを破りにかかったが、通じることはなかった。

 しかし、そんなビコーペガサスの問いにマヤノトップガンは事もなげに答える。

 

「うん、多分イケると思うよ? なんとなくアレがなんなのかわかったし」

 

「わ、わかるもんなのか!?」

 

「マベちんと一緒にいたらむしろ簡単にわかるよ。多分、ネイチャとかも一緒にレースしたらわかるんじゃないかな?」

 

 ビコーペガサスはマーベラスサンデーと併走したことはあっても、レース中、併走中にあの"領域(ゾーン)"に巻き込まれたことはない。しかし、観客席でレースを観ていたときに巻き込まれたことはあった。

 ビコーペガサスにとって、マーベラスサンデーの"領域(ゾーン)"はまさに理解不能。攻略なんて夢のまた夢としか思えなかった。

 

「そういうビコーちゃんはやっぱりスプリンターズステークス?」

 

「あぁ、そうだぞ。ボノも出るんだよな?」

 

「出るよ〜☆ うふふ、楽しみだね!」

 

 去年ビコーペガサスは本格化前だったこと、相手が絶対王者(サクラバクシンオー)だったこともあり、前年のレコードを超える結果を出したにも関わらず1着をとることは叶わなかった。

 だからこそビコーペガサスは今年のスプリンターズステークスを勝ちたいと思っている。しかしそれと同時に、ヒシアケボノという友人の強さも身にしみて理解できているのだ。

 

 雑談もそこそこにクッキーが焼き上がり、各々大体同量ずつを分け合ってその日は解散となった。撮影された動画は編集したあと、それぞれのチャンネルで投稿されるだろう。

 ビコーペガサスとヒシアケボノは皆と別れたあと、ふたり連れ添って歩いていた。単純にふたりの向かう方向が同じだったからだ。

 ヒシアケボノはそのまま寮へ戻り、後日トレーナーへ渡すつもりでいたが、ビコーペガサスは寮までの中途に《ミラ》のチームルームがあるため、そこでメンバーが自由にとって食べられるように置いておこうと思っていた。

 ツインターボあたりは喜ぶだろうとか、シンコウウインディがワルぶって独り占めしないように注意しなければなどと話しながら、ふたりがチームルームの前まで来た時、不意に、《ミラ》のチームルーム内からガシャンという何かが倒れる音が響いた。

 すわ事件かと、ビコーペガサスとヒシアケボノは慌てて目の前にあった扉を開いてチームルームへと押し入った。

 

「ちょ、ッ……ええっ!?」

 

「……トレーナー……さん……?」

 

 ふたりの前に広がった光景。

 チーム《ミラ》のトレーナー、網の胸ぐらに、ヒシアケボノのトレーナーが掴みかかっているという、剣呑な光景だった。




 職業訓練校に通い始めたことでちょっとゴタついてました。
 Excelの問題の消費税計算で答えが5%換算になっていたのを見て時代を感じました。誰も直さなかったのかよ。
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